真に導く者   作:挫梛道

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強引、無理矢理な自覚は ある…。




突入前日

「ほぅ、サミット…ですか…」

サランに戻り、あのエンドールの兵士に話し掛けられた事を、姫さんが爺さんに告げていた。

その内容は簡単に言えば、エンドールで開かれるサミットに、『アリーナ姫もサントハイム代表として、出席して欲しい』と言う呼び掛けだった。

 

≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪

「え?そんな、急に言われても…」

何処からか、姫さんがエンドール…旦那宅に住み着いていると言う情報を得て、探していたのであろう。

正に今、ルーラで飛び立とうとしたタイミングで呼び止め、話し掛けてきた あの兵士達からすれば、ギリギリなタイミング。

 

その内容に、どの様な回答を返せば良いのか、少し困惑気味な姫さん。

「………………………。」

助けを求める様に、俺やソロの顔をチラチラと伺っている。

仕方無いので、

「済まないが、アリーナ姫は今、具体的な事は話せないが、ある目的を達成させる為の、旅の途中なのだ。

その旅を優先させる為、その当日、絶対に出席するという約束は出来ないが、それでも構わないと言われるなら、席を空けておいてくれたら、有り難い。」

俺が代わりに受け答え。

決して確約でなく、更には口約束な上で、サミット出席の打診に肯の姿勢で返答したのだった。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「悪かったな、本来なら こういう事は、爺さんが決断を下すべきなのだろうが…」

「いやいや、フィーグ殿、良き応えだったと思いますぞ。」

俺も、あの場で自分の勝手な判断をした件で、爺さんに頭を下げるが、逆に「良い判断だ」と言って貰え、一安心。

とりあえずはサミット当日、この旅が どの程度進展しているかは既に予測不可能だが、余裕が有れば、サントハイム組はルーラなり使って、一時的にパーティー離脱すれば良いという考えに収まった。

 

さて…

「ブツブツ…神に仕える身の、この私が…」

次は、あの部屋の隅っこで体育座りをしてブツブツ言っている、あの男をどうにかしないとな。

…てゆーか、俺達がエンドールに行っている間に、一体何があった?

 

「それが分からないんですよ…

クリフトさん、教会から戻ってきてから ずっと、あんな感じでして…」

教会…ねぇ?

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「クリフト、一体、どーしたのよ?」

「姫様ぁ…」

サミットの事をブライに話した後、何故だか解らないけど、宿屋の大部屋の片隅で、身を小さくして座り込んでいるクリフトに、フィーグと一緒に声を掛けた。

 

「…私は、神に仕える身として…相応しくない呪文を得てしまいました…」

サランに着いて直ぐ、クリフトは街の教会を訪れ、教会地下で、魔法陣を使った呪文契約を行ったみたいなんだけど、その時に覚えた呪文が、聖職者としては問題的な呪文だったみたい。

「まさか、透明化(レムオル)か?

何て、羨まs…コホン、けしからん!!」

「違います!」

れむおる?

フィーグの言葉に顔を真っ赤にして否定してるけど、どんな呪文なのかしら?

 

「…じゃ、何なんだよ?」

「は、はい、実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ザキぃ!?何だ、良かったじゃねーか!」

クリフトの言った呪文を聞き、フィーグは凄く良い笑顔。

それで、「ざき」って どんな呪文?

 

「説明しよう!

ザキとわ、術者が囁く言霊により、敵1体の血液を基とする体中の体液を一瞬にして凝固させ、その対象の息の根を一瞬にして止める事が出来る、高位呪文である!

不死(アンデッド)や機械には効果は無いが、戦闘能力的に格上の敵にも、その生命力に拘わらす、勝ちを得られる強力な呪文で、更には一度に複数の敵相手に行使出来る、上位呪文も存在する!」

…何それ、凄い。

尚更解らないわ?

何故クリフトは、そんな強力な呪文を覚えて、凹んでいる訳?

 

「…いくら敵とは云えども、そんな魂の価値を蔑ろにする様な呪文、聖職者として、覚えt(スパーン!)痛いっ!?」

「お前は何を言っているのだ?」

「フィーグさん…?」

あ、クリフトの頭の上に、フィーグの手刀が落ちた。

 

「相応しくないって お前、そもそもザキってな、聖職者が扱う魔法だろ?

そりゃ確かに見た目、黒呪術師の『死の呪文(デス・スペル)』っぽくて、イメージ悪く見えなくもないけどよ?」

「うぅ…」

あー、そーゆー事か。

本当、真面目だなぁ…。

 

「確かに『ザキ神官』とかの二つ名が就く程な乱発は拙いかも知れんが、切り札として扱う分は、問題無いと思うぞ?

まあ、結局は、使い手の気持ち、覚悟だ。

お前が それでも…って言うなら、お前自身が禁呪として封印すれば良いさ。

只、出し惜しみした挙げ句、取り返しの着かない結末になって、その時に後悔したりとかは絶対にするなよ。

俺が言えるのは、此処迄さ。」

「…………………………。」

フィーグの台詞にクリフト、完成に黙り込んだわ。

でも、悩みは消えたみたい?

 

「姫さん。」

ん?

「後のフォローは、任せるわ。」

散々に言って、最後は丸投げっ!?

…まあ、クリフトは私の臣下だし、私の仕事って言えば、そうだけど。

 

「とりあえずは2人部屋(ツイン)を借りてさ、この前の続きでもしたr「ちょ…続きって何よ!?」

「勿論、ガーデンブルグの地下。」

マーニャね?情報元はマーニャね!

絶対に誰にも(特にコイツには)喋らないって言ったから、話したのに!!

しかも、少し歪曲されてるぽいし!?

 

「大丈夫、クリフトは所謂チョロインタイプだから、一線越えたら簡単に元気に復活するっt(バキィッ!!)OUTHI~!?」

…越えません!!

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「思った以上に、強固な様で…」

明日、儂達はサントハイム城に強襲を仕掛ける予定でいる。

それに伴い、少しでも城の情報を得ようと、皆でサラン警備兵団の詰め所に立ち寄ってみると、丁度、その城への対策会議の真っ最中だった。

この国の王女である、アリーナ殿が同行していたお陰で、部外者扱いされる事無く、それに同席する事が出来た。

 

城への偵察隊からの報告によると…

 

※城の周辺部には、見た事も無い、見るからに強力そうな魔物が徘徊している。

※城門前には、ゴーレム型の魔物が3体、配置されており、城内侵入不可能。

※それ故に、城の内部は、どうなっているかは分からない。

 

…らしい。                                

「…つまりは、そのゴーレムとやらを片付けない事には、始まらないと。」

「はい…そうなります。」

「見た事も無いモンスターって?」

「この周辺にも出現する、暴れ狛犬を強化した様な魔物、巨大な斧を手にして、鎧を着込んだ獣人タイプ、牛と猪と熊を混ぜ合わせた様な獣タイプ、浮遊して移動する人形の様な魔物等…が、現在確認されております。」

「…………………。」

ん?フィーグ殿は、心当たりが有る様な…そんな顔をしていおるな。

 

この後、アリーナ殿、そしてマーニャ殿達が明日、城に攻め入る旨を発言したが、この場の兵士達全員に、危険過ぎると止められた。

彼等からすれば、現状で唯一の王族生き残りである姫君を、危険な目に遭わせる訳には往かぬのであろう。

しかしながら当然、アリーナ殿も そう言われた位で退く事は無く、結局は明日の突入は とりあえず中止、国内の街や村に在中の生き残り兵士の中から、精鋭を選り抜き、突入部隊を編成、その者達と共に、王城奪還を目指す事に決まった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

あの会議終了と共に、サントハイム領内にキメラ便や鷹便、早馬による伝令が出されました。

また、サランから遠い地域については、術者の人が直接、ルーラで連れて来たり。

国内の強者と呼ばれる兵士や戦士が、次々と この街に集結しています。

 

「あら?久し振りね!

貴方も部隊に参加してくれるのね!

凄く嬉しいわ!!」

「あああ…アリーナ殿…!?

ひ、久し振りですな!はっはっは…ハァ…」

先日、フィーグさんと戦い、身体全体、足だけを残して砂に埋められた、戦士・サイモンさんも来てくれました。

サイモンさんはアリーナさんとも武術会で対戦したらしく、その実力を知っているアリーナさんは、心強い戦力が来てくれたと喜んでいます。

…でも、サイモンさんはアリーナさんを見て、何だか怖がっている様に見えるのは、気のせいでしょうか?

 

この度の王城奪還作戦、参加表明してくれた人達が全員この街に集結する迄、あと3日位は掛かるそうです。

その間に、僕達を含め、既に到着している人達で様々な準備や物資調達、綿密な作戦計画の詰めを話し合い、決行は全員集合の2日後と決まりました。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「お久し振りですぅ♪」

 

作戦参加予定者も全員、この街に集合。

2日後にサントハイム城突入を控えた この日、作戦中心メンバーの1人だった俺は漸く、街中を歩き回る暇が出来た。

 

王族が行方不明となり、不安に刈られた国民を元気付けるという旗の下、国内を殆ど無償で芸能活動で巡っている、吟遊詩人マローニを中心とした、サントハイム出身の芸人達。

そのマローニ達の一団が丁度、サランに戻ってきたと聞き、挨拶に行ってみたら、出迎えてくれたのは、金髪のツインテール美少女。

ポニテから髪型、変えたんだな。

                  

相変わらず、13歳?とは思えない程の兇悪な身体をダボダボなローブで隠している このボクっ娘、その見た目は完全に、神・ヘス〇ィアの金髪版だ。

                  

「やあ、久し振りですね。」

「応。」

そして、ホイミンに続きマローニとも、色々と互いの近況等を話してみた。

                  

「そうですか…いよいよ、お城に…」

「ああ。この街の皆も、その為に姫さんが戻ってきたのは、既に知っているからな。

兵団の士気も上々、期待して良いぜ。」

「それにしても、2日後ですかあ…」

ん?どした?ボクっ娘?

 

「その日はボク達、街の中央広場で公演するから、一緒に行けないです。」

誰が何時、お前を連れて行くと言った?!

てゆーか ま~たまた、新しい詩のネタにする気かい!!?

「そうだ!突撃は3日後にししゃもぉ…

もょれんらない、にょおゆいまてん…」

とりあえず、お馬鹿な発言をしようとしたボクっ娘の両頬をむにっと掴み、上下に むにむにしてやった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

明日の朝、フィーグさん達はサントハイム城奪還の為、街を発ちます。

今夜は直接、お城に突撃する人達を基、その作戦に携わる皆さんが中央広場に集まり、必勝祈願の宴が開かれました。

宴と言っても、お酒は一番最初の一口だけ、ボクやマローニさん達、街に居る詩人や楽師さん、踊り子さん達が、その芸で戦場に出向く人達を激励しています。

 

とりあえず、ボクも一口…

「…って、こぉらボクっ娘ぉ!

お前に酒は、まだ早い!」

あーっ!? ボクの お酒ーーーーーっ!!

 

 

 

作戦成功を祈って楽師さんやボク達詩人が奏で謡い、踊り子さんが舞う。

その中、宴の締めの舞を飾る踊り子さんが、篝火に照らされて姿を見せました。

褐色の肌に纏っているのは、白を基調としたドレスに羽衣という、スタンダードな戦巫女の出で立ち。

両方の手に綺麗な装飾が施された曲刀を携え、長い紫色の髪はポニーテールで結っています。

 

…マーニャさんです。

ボクが知っている、普段からの お酒とカジノと温泉と、そしてフィーグさんLOVEな、あの何時も おちゃらけているマーニャさんでなく、何と表現すれば良いか…踊り子さんのスイッチが入ったと言うべきでしょうか、あんな真剣な表情(かお)なマーニャさん、初めて見ました。

 

バックでフィーグさんの弾く、ツインネックリュートの音色に合わせ、妖しく艶やかで、そして情熱的な必勝の舞を魅せるマーニャさん。

「綺麗…」

普段の あの人の踊りなら、観ている人達は口笛を吹きながら、やんやの声援を飛ばすのでしょうが、今夜は皆、その神秘的な踊りに只、無言で魅入っています。

 

リュートの音が止み、同時に2本の曲刀を交差させて地に置き、跪くマーニャさん。

数秒の沈黙の後、

「「「「「うおおおぉーーっ!!」」」」」

「「「「マーニャーーーーっ!」」」」

「「「「「マーニャっさーん!!」」」」」

その場の皆さん、総出で立ち上がり、盛大な拍手共に大歓声です。

 

そして その拍手と歓声が止まぬ中、マーニャさんが退がると同時に、アリーナさんが、皆の前に立ちました。

「(スゥ…)皆、今回は、私達の お城を取り戻す為、集まってくれて ありがとう。」

深呼吸の後、此の場の皆に聞き渡る、大きく そして澄んだ声で、話し始めました。

                  

「「「「「「「…………。」」」」」」」

先程、マーニャさんに向けて声援を送っていた人達も、このアリーナさんの言葉に、顔を引き締め直し、目の前の王女様に注目します。

                 

「明日、私達は いよいよ、サントハイム城奪還の為、城に攻め入ります。

城門を守護している魔物の為、城内の情報は全くと言って良い程ありません。

どんな凶悪な魔物や罠が潜んでいるか、分からない。

もしかしたら、今回の戦いで大怪我をするかもしれない…

最悪、命を落とすかも知れない…

…でも!!

それでも戦わなければ!勝たなければ!!

サントハイムの未来は無いわ!

絶対に勝ってみせる!

絶対に城を取り返してみせる!

だから皆お願い…皆の命、私に預けて!!」

…………………………………………。

アリーナさんが一通り話し終えた後、また長い沈黙が、この場を支配。

そして暫くして、

「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」」」」」

「「「「「姫様ーーーーっ!」」」」」

「「「「アリーナ様ーーーーっ!!」」」」

さっきのマーニャさんの時以上の、盛大な拍手と大歓声が、広場に木霊しました。

この後、一応は宴は終了、解散となりましたが、それでも明日、城を攻め入る兵団の皆さん達による、士気を上げ、必勝を誓う雄叫びは夜遅く迄、止む事は有りませんでした。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

実は姫様には、宴が終わった後に、話があると言われていました。

そして宴終了後、私は待ち合わせ場所である、教会の裏庭に1人、居ます。

 

中央広場の方角からは、未だ、明日の戦いに参加される皆さんの雄叫びが鳴り響いています。

近所迷惑…いえ、それは殆ど無いですか。私が広場を去る頃は、御近所の皆さんも一緒になって、必勝を誓う声を上げていましたから。

 

…それにしても姫様、遅いなぁ。

まだ向こう側で、後片付けとかしてるのかなぁ?

私も手伝いに、彼方側に戻った方が良いのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴメン、クリフト、待った?」

「……!!」

そんな事を考えていたら、姫様が現れました。

 

 

「い、いえ、全然大丈夫です!」

 

 

 

 

 

 

 

「「……………………………………。」」 

 

 

 

 

 

 

話がある…そう言って呼び出した姫様ですが、何も言わずに私の隣に立ち、ただ黙っているだけです。

「「あ、あの…あ…!?」」

あわわ…やってしまいました…。

この無言な空気に耐えられず、此方から声を掛けようとしたら、姫様も同じタイミングで話し掛けられてしまい、見事にハモってしまいました。

「え…えと…」

「いえ、姫様から、どうぞ…」

「ぅん…」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

は、ハモったぁーーーっ!!

 

なかなか話しを切り出すキッカケが掴めず、漸く勇気を出して、声を出そうとした瞬間、クリフトも同じタイミングで話し掛けてくるなんて!?

まあ、その直ぐ後の「お先に どうぞ」の言葉に甘えさせてもらうけど。

「…いよいよ…だね。」

「…はい。」

 

…そう、いよいよ私達は、明日、サントハイム城に突入する。

人伝になるが、現在 城に居座っているというバルザックとやらは、魔族から強大な力を得ているという。

多分、あのキングレオと同じだと思う。                  

今の私で勝てるのか…?

確かに、キングレオでサントハイムの事を知った後も、フィーグの止めが有ったからだけど、直ぐに攻め入る事無く、実戦を重ねたり、装備も充実させた。

それでも正直 不安だし、少し怖い。

 

 

バルザックが城に居座ってる件と、お父様達が消えた件は無関係だと思う。

だから、バルザックを倒し、城を取り戻した処で、お父様達が戻ってくるなんて事は無いと思う。

 

フィーグが前に言っていた。

城には、攻撃を受けた跡も無ければ、城内に居た人達の死体も全く見つかってない。

恐らくは、魔法による集団転移を受けて、何処かに捕らわれいる可能性が高いと。

だったら、今回は 少なくとも、お父様達が戻る場所は取り返さないと。

それにバルザックから、何か情報を聞き出せるかも知れないし。

だから、絶対に負ける訳には いかない。

城の奪還は私の、私達…いえ、サントハイム国民、皆の願い。

お父様…お城は、このアリーナが必ず取り戻してみせます!

「姫様?」

「ひぃああああああああぁっ!??」

「姫様ぁ??」

「ご、ごめん!考え事してた!」

あー、びっくりした!

少し長く、考え過ぎてた!

心配気にクリフトが声を掛けてきても、仕方無いわ。

 

「ん、ごめん、ちょっと考え事してた。」

「…大丈夫ですよ。」

え?

「大丈夫、明日は…勝てますよ。

ソロさんが、フィーグさんが、ブライ様が、皆さんが…勿論、私だって居ます。

1人で背負う必要は無いですから。

陛下や大臣様も、きっと無事ですから。

ですから明日は、陛下達が戻ってくる場所を、皆で取り戻しましょう。」 

………………………………………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、何が どうなったかは覚えていなく、気が付いたら、私はクリフトの胸元に顔をうずめて、大声で泣いていた。

クリフトは そんな私を、無言で優しく受け止めてくれていた。

何故、あの場で、あんなに泣いたのか…自分でも解らない。

記憶の限りでは、泣いたりなんて、物心付いてからは お母様が亡くなった時以来な気がする。

 

「ごめん、クリフト。

それと、ありがとう。

何だか貴方の御陰で、緊張が ほぐれたみたい。」

「そ、そんな勿体無い御言葉…」

漸く落ち着いて、とりあえず お礼を言ったけど、この堅物真面目男は相変わらずな受け応え。

全く…少しはフィーグの いい加減さを見習いなさいよ!

 

 

…漸く理解した。

こんな堅物は、自分から動くなんて有り得ない。

だから私は、お礼の意味を込めて…

あの時は、薬を飲ませる為という事で、ノーカンだったけど、今回は そういうのでは無く、私自身の感情で、私自身から…

 

                 

chu…

                 

「ひ、ひひ…姫様ああぁっ!!???」

…えへへ…しちゃった♪

でも、これは かなり、恥ずかしいわ。

誰も見ていなくても恥ずかしいのに、よくもマーニャとフィーグは人前で、あんなにも ちゅっちゅちゅっちゅ出来るわね?

                 

「…迷惑だった?」

「い…いえいえいえいえ!とんでもない!

寧ろ、申し訳無いと言いますか…し、正直、その…」

「嬉しかった?」

「…は、はい…。」

「ん、正直で良ろしい。

それじゃ これは、正直者への御・褒・美♪」

chu~u…

「んぷはぁ…姫様あ?」

ん…やっぱり恥ずかしい…。

でも、悪い気はしない。

 

「えへへ…しちゃったね♪」

「は…はい…」

「しかも、2回も…

クリフトは勿論、解ってるよね?

王族の接吻の意味。」

「…はい。」

「ん…それじゃ、そーゆー事だから。

…嫌?迷惑?」

「とと、とんでも御座いません!

ただ、私と姫様では…」

「身分の事なんて、誰も聞いてないわ。

クリフト個人は どうなの?

私の事、どう思ってるの?

私は…クリフトの事…好きだよ…

分かるでしょ?好きでもない人と、その……スなんてしないし。」

「ひ、姫様…!

は、はい!わわわ、私も、姫様の事を…」

…あれから、クリフトも凄くテンパりながらも、以前から ずっと持っていた、私に対する自分の気持ちを、はっきりと教えてくれた。

…に、しても…

あわわわ…言ってしまった…。

しかも、クリフトの気持ちも知ってしまったからか、尚の事、凄く恥ずかしくなってきたんですけど!!

落ち着け、落ち着くのよ私!

クリフトは基本、へたれだから、こーゆー時は、私がリードしないと!

 

「身分の問題は大丈夫よ。

女王に即位したら、強権発動させて誰にも文句、言わせなくするから。」

「はぁ…」

そう、その時になったら、誰にも文句は言わせない。

ブライにも…お父様にも。

 

「それじゃ最後に大切な事…覚えてる?

ガーデンブルグでの事…」

「はい?」

「その…あの時の…クリフトのD…T…は…って台詞の事。」

「ぁ…」

クリフトも思い出したのか、顔が真っ赤に なったわ。

 

「一応、私も王族だし、クリフトも職業的にアレだし、その…あーゆーのは きちんと式を挙げる迄、待っていて欲しいって言うか…駄目?」「待ちます!」

早っ!即答っ!?

…その後、その やり取りに、互いに どちらからともなく笑い合い、その後も2人で今迄の事、この先の事等、色々と語り合った。

そして、

「クリフト、今夜は ありがとう。

こんな展開は予定外だったけど、色々と話せて良かったわ。」

「いえ、姫様。此方こそ…」

「アリーナよ。」

「はい?」

「普段は兎も角、2人きりの時は名前で、呼び捨てで呼んで。敬語もダメ!」

「わ、分かった…アリーナ…。」

「ん、ん♪そろそろ、宿に戻ろうか。

あんまり遅過ぎると、皆が心配するだろうし、何よりも『奴等』に怪しまれるわ!」

「そ、そうでs…だな。」

よーし、タメ口、頑張れ~!(笑)

こうして、2人で宿に戻ろうと思ったけど、その前に…

「ねぇ、今夜は最後に、もう1回、ちゅーしよ?♪」

「はい?」

「今度はクリフトの方から、して欲しいな~?」

「わ、分かった、アリーナ…」

クリフトは そう言うと、私の両肩を掴み、ゆっくりと顔を近付けてきた。

そして、お互いに目を瞑り…

パキッ…

「「!!?」」

えっ?ぱき…?

唇が重なる迄、あと数㌢な処で、この教会の庭先、私達の背後に位置する巨木の裏側から、まるで枝が折れた様な音が。

 

「だ、誰?誰か居るの?」

「「「………………………………。」」」

迂闊…全く街中だったから油断していたけど、少し感覚を研ぎ澄ましただけで、気配だだ漏れじゃない!

 

「cocka-a-doodle-doo!」

「ホーシ!ツクツクホーシ!ツクツクホーシ!ツクツクツクツク…」

「ほぉ~…ほけっきょぅ、けっきょぅ…けきょけきょけきょけきょけきょけきょ…」

……………………………。

「鶏さんは、こんな夜に鳴いたりしませんから!」

「蝉も鶯も、季節じゃないわよ!!」

鶏に蝉に鶯。

確かに物真似芸としては、結構 上手い部類に入ると思う。

でも この場では、無駄に上手く感じる分、余計にムカついてきたわ。

 

「さっさと出てきなさい!

その大木毎、粉々になりたいの?」

「「「…………………。」」」

必殺の構えを見せても、木の陰から出てくる気配は無い。

な・ら・ば・仕方無い。

「クリフト、私が全部、責任を取るわ。

貴方のザキ、喰らわせてやりなさい!!」

「……!? ストップ!ストぉーーップ!!」

よっぽどザキが怖かったのかしら、観念して木から出てきたのは3人。

 

「…ったく、マーニャさんが時間帯考えずに、鶏の真似なんざするから…」

「はぁ!?フィーグとホイミンが、季節感考え無しなチョイスするからじゃないの!」

「な!?…バレた直接の原因は、マーニャさんが小枝を派手に踏んだからですぅ!」

黙りなさい!

 

「アナタ達、何時から見ていた?…なんて事は、聞かないわ。

とりあえず、此の場に正座。」

「「「へ?」」」

「イ・イ・カ・ラ・セ・イ・ザ・シ・ロ?な?」

「「「は…はひ…(」゚O゚L)…」」」

さあ、OHANASHIの時間よ!

 

 




「~にしてもフィーグ、アンタ、鶯の真似、上手かったわね~?」
「応よ!世界で2番目な自信あるぜ!
因みに1番は、ぐっ〇んだ!」
「「「「「誰、それ?」」」」」

‡‡‡‡‡‡【次回予告!!】‡‡‡‡‡‡

次回:真に導く者『サントハイム城(仮)』
乞う御期待!!
コメントよろしくです。
 
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