また、モブ(?)回です。
「開祖曰わく…
其の技、猛き虎が地を往く獲物を狩るが如く、上体を起こし両の爪を振り上げたと思わば、次の瞬間 身体毎、一気に其の爪、大地目掛けて落とすが真髄也!それ即ち…」
鋭い爪と牙を光らせる、白虎の獣人・ベンガルに対し、手拭(バンダナ)を頭に巻き、白い半袖半袴の胴衣を着た、格闘家な格好の中年男が必殺技の構えを見せる。
その口上の様に、大きく広げて上方に向けた両手を勢い良く振り落とし、
「猛虎落地勢ぃーーーーーーーーっ!!」
「??」
虎の魔物に対抗し得るは、『虎』の銘を冠する技こそが相応しい。
…そう思ったかは定かでは無いが、この格闘家が技を繰り出した瞬間、白皮の人虎の動きが止まる。
それは別に、大ダメージを受けたからでは無く、その格闘家の技を繰り出した後の姿勢に理由があった。
両膝を着き、両手を前面に突き出し平伏せた体勢。
その、所謂『DOGEZA』にしか見えない その体勢に、半獣半人…半身は人の身であり、それ相応の知性を持ち合わせているからこそ、この人虎は何が起きたのか解らず、その身を固めてしまうのだった。
結果的に出来てしまう、一瞬の硬直。
パァアン!!
「…??!」
その隙を逃さず、格闘家のパーティーメンバーである、長い水色の髪を後ろ頭上方で2つに結った小柄な少年が、白虎の至近距離、真正面に素早く踏み込むと、その顔前で両手を大きく前に突き出して合掌。
それによって響き起こる、質量を持った大音量の衝撃波が、一瞬の虚を突かれたベンガルの脳髄を直撃、気絶(スタン)させるのに成功する。
「でぇいやぁ!」
間髪入れず、今度は紅眼白髪の少年が飛び込む。
古代神聖文字が刻印された、黒い刀身の短剣を、ノーガードな脇腹に刺すと、
「ファイア・ボルト!」
メラともギラとも、系列が異なる炎の魔法を その刀身に喚び起こし、体内から炎上させ、焼き払っていく。
「ぐわああああああああぁっ!?」
そのショックで気絶から目を覚ますと同時に、苦痛の叫びを吐く獣人。
「よし、皆、下がってろ!」
更には派手な装飾が施された、紅い全身鎧を纏った戦士風の男が、前に出て叫んだ。
「「はい!」」「うむ!」
先に攻撃を仕掛けていた3人が左右に散り、道が開けたのを確認すると、男は右手に持っていた青く輝く剣を鞘に納め、やはり独自の魔術系スキルなのか、身体全体から その鎧の如くな真紅の炎を燃え上らせると、其の儘 特攻。
その身は正しく戦士の兜の造りにある、大きく翼を広げた鳥の如く、巨大な焔の鳳と化し、その嘴が、翼が、鉤爪が、燃え盛る刃となり、正面に立ち詰めとなっている獣人に直撃。
虎の獣人の身を、紅蓮の炎が包み込んだ。
「ふにぎゃああああああぁっ!!」
立ち登る業火の柱の中、ベンガルは断末魔の中で燃え尽き、そして その屍は また、跡形も無く消滅していった。
「あれ?これは何だろう?
ドロップアイテムかな?」
この後、この戦闘の痕の焦げた床に落ちてあった、奇妙な色形をした結晶の様な物を白髪の少年が拾う。
…尚、この件は天空の勇者と その仲間達とは関係無く、この少年自身が歩む物語へと、繋がり続くのだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「おお!何と云う素晴らしいコンビネーションであろうか!
少しトリックプレイな感も有ったが、見事な足止め、連撃からの撃破!
誠、チームプレイとは、斯く在りたい物であるな!」
…どうも皆さん。
お久し振り?です。フィーグです。
現在 俺達は、サントハイム城2Fで魔物の群れと交戦中。
そんな中、俺達と同じく このフロアにて、魔物と戦闘をしていた第7チームの戦いぶりを見ていたサイモンが、それを大絶賛。
「余所は良ーから!
お前は目の前の敵に、集中しやがれ!!」
「せいっ!(ズバァ!)ん?何か言ったか?」
「別に…」
ちぃ、サイモンのヤロー、鋼の剣を一閃して犀男の首を刎ると、俺の突っ込みの当て付けな如く、嫌みったらしく話し掛けてきやがった。
その表情はフルフェイスの兜で見えないが、間違い無く したり顔なドヤ顔に なっているのだろう。
「…何でも…無ぇよ!!」
ズッブァアッ!!
そんな俺も、ミステリドールを一撃破壊。
会心の一撃になったのは、決して断じて、八つ当たり効果なんかでは ないからな!
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
「そっちも終わった様ね!
皆、大丈夫?」
「「「「「「「「はっ!」」」」」」」
姫さんのパーティーや、その他のモブ達も、請け負った敵を撃破、どうやら このフロアの敵は、粗方片付けたみたいだな。
どどどどどどどどどどどどどどどどどど…
「「「「「「アリーナ様~!」」」」」」
「「「「!!?」」」」
そして けたたましい足音と共に、城1Fで、捜索・戦闘をしていた、総勢約50名の兵団員や冒険者パーティーが、此の場に やってきた。
「1Fの敵は、全て倒したみたいだから、2Fに上がってきたわ!」
装備からして、魔術士か回復役の女が、代表して姫さんに報告。
「そう…御苦労様。
…よし、第3~10チームは此の儘、2Fを捜索していって!
私達と第2チーム、そして今、こっちに来てくれた第11より先のチームは、上のフロアを目指します!」
「「「「「「「「「応!!」」」」」」」
姫さんの指揮に、雄々しい掛け声で応える兵士達。
未だ、多少の負傷者は出ているが、死亡者は0(ゼロ)。
その負傷者達も、回復魔法や、各個人が持ち合わせの薬草や秘薬(ポーション)で、ダメージ回復しており、問題は無い様だ。
「そうだ、フィーグさん、『アレ』、やりませんか?」
「ん?『アレ』?やるのか?」
「ええ。今、皆さん勢揃いみたいですし、此の場で改めて志気を上げてみるのも、悪くは無いでしよう?」
俺に話を振ってきたのは、トルネコの旦那だ。
「そうですね。」
「えぇ、やりましょうよ。」
「…って、ゆうか、今やらないと、何時やるの?って感じですね。」
「やろやろー!!」
『アレ』…
実は数日前から今回の作戦の為、サランに到着してきた兵士や冒険者達に「こんなの どーよ?」って感じに、ネタ感覚で仕込んだりした掛け声があるのだが…
どうやら皆さん、やる気満々、ノリノリな感じだ。
まあ、今の城主であろうバルザックには、俺達の侵入は既にバレバレだろうから、今更 多少、集団で大声張り上げても、本当に今更だろう。
「しょーがねぇなぁ…
それじゃ、1人称は『俺』で統一するぞ!
姫さん…最初の掛け声、よろしく。」
「ん。それじゃあ、いくよ…」
姫さんに皆が注目。
「せーの!
\俺達は、強い!!/
約100人による雄叫び。
最高潮に達した志気の中、部隊は此の儘2Fに留まるグループと、上のフロアを進むグループに別れる。
そんな中、上のフロアを目指すグループ、姫さんから殿(しんがり)を任された、俺達のチームを除けば、その最後尾に位置していた第20チームの黒髪の若い男が、階段を登る前、振り向き様に
『それじゃあモブキャラの皆さん、2Fは任せますね♪』
グッシャァッ!!
ガタガタガタガタガタガタガタガタ!!!
…って、何を言っているのだ、あの男わ!?
本人からすれば、エールな心算だったのだろうが、この たった一言で、2Fに残る、殆どの者の心を一瞬にして へし折りやがった。
皆、蹲り跪き凹み頭垂れ、orzっている。
「あ…アンタは何やってんのよ!?
馬鹿?馬鹿なの?ってか馬鹿でしょ!?
この お馬鹿!!
折角 皆、良い感じにスーパーハイテンションクライマックスだったのが、ぐだぐだに なっちゃったじゃないのよ?!」
『い、いや…僕は そんな心算じゃ…』
パーティーメンバーであろう女が、怒りの形相で男の両肩を掴み、思いっきり揺らしながら問い詰めているが、本当に「何やってんの?」って感じだ。
「「「「…………………。」」」」
2F残留組で まともに立っているのは、先程の戦闘で、サイモンがベタ褒めしていた、あのパーティーだけだ。
その彼等ですら、この光景に どん引きしていらっしゃる。
「…すまない、アンタは治癒術師(ヒーラー)みたいだな?
アンタ達のパーティーは 此の場に残り、倒れた人達の回復や、ガードを頼まれてくれないか?」
「仕方無いわね…任されたわ!」
はい、ヨロシクお願いします。
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
サントハイム城3F。
「破ぁっ!」
拳法着を身に着けた長髪の優男が、幾本もの鋭く長い鋼針を、サブナックのに投げつけて撃破。
更に袖の中、暗器な如く仕込んでいた鉄の爪の様な武器で、背後から襲ってきたオックスベアを、斬り裂き斃していった。
そして蝙蝠をモチーフにしているのであろう、その見た目以上の防御力が有ると思われる、胸元が開いたバニーちゃん風の…マリーさんを思い出させる様な、エロっぽい装備のエロっぽい お姉さんが、
「ふっ…」
これまたベロリンマンを彷彿させる、分身技を披露。
ベンガルを前後に挟み、『2人掛かり』による、まるで鏡合わせの様な拳と蹴りの連打で仕留めt…ぐぇっ!?…って、マーニャさん、チョークチョォーーーーーォックぅ!?
べ、別にエロい目で見ては いませんから!
お願い!信じて!
「不潔です。」
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
「てぇいやぁ!!」
ガギィ!ドゴォ!バシィ!
「これ以上、魔物達の好きには絶対に させないわ…絶対に!
城の魔物、全て追い払ってやる!」
魔物の群れを前にした、姫さんの技が冴える。
「うむ!城に住む事を許されるのは高貴なる者だけです。魔物なんぞ、以ての外!
こっ酷い目に遭わせ、追い出してやりましょうぞ!てぃ!ヒャダルコ!」
「しかし、魔物の数が、不自然な程に多過ぎます!
やはり件の、バルザックとやらを討たない限りは…せぇいやぁっ!!」
その姫さんの勢いに牽引されるが如く、爺さんとクリフトも、魔法を唱え、剣を振り翳す。
しかしクリフトの言う通り、何時かの海賊船の時の様に、魔物を喚び寄せる根源…今回の場合は、この魔物(ホムンクルス)の集団を次々と造り出していると思われる、バルザックを倒さないと終わらないだろう。
「姫さん!此の儘じゃジリ貧だ!
俺達だけで、上を目指そう!」
「う…わ、分かったわ!
皆、私達とフィーグのチームは、王の間に向かうわ!
直ぐに終わらせてくるから…お願い!
それ迄、保ち堪えて!」
「サイモン!アンタは此の場に残って、皆を指揮してくれ!」
「お、俺がぇ!?」
「ああ、任せたぞ!」
「お、応ぅ…」
こうして俺達、『導かれし者達』フルメンバーで、上階を目指す事に。
「皆、死んではダメよ!
もし死んだりしたら、王族の権限乱用して、張り付け火炙りの後、断頭に処してやるんだから!
そんなのイヤでしょ?
だから お願い…絶対、死んではダメ!
これは、サントハイム第1王女としての、命令よ!!」
…まあ、数ヶ所、突っ込みたい部分が有るが、今回はスルーしておこう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そして俺達は、バルザックが待ち構えているであろう、王の…謁見の間の、扉の前に辿り着いた。
「…ん、やっぱり そうよ。
アイツ、必ずこの先に居るわ。
分かるの…血が熱くなるの。
私の中の魂が、アイツを倒せって求め訴えるの。」
「はい、城を支配している禍々しい気が、一層に強くなりました。
間違い無く この先に…バルザック…!!」
とりあえず、モブ(?)の出番は終了。
次回、初の(?)留守番役無し!
導かれし者達フルメンバーで、バルザックと対峙!
次回、真に導く者
『錬金術師・バルザック』
乞う御期待!コメントよろしくです。