真に導く者   作:挫梛道

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お久し振りに御座います!!
 



サミットの異変!

「陛下、お久しぶりに御座います。」

「ふむ…お主、暫く見ぬ内に逞しくなったみたいだな。

少し顔付きが変わっているぞ。」

 

サミット当日。

エンドール城へ やってきた俺達。

お姉さんズと旦那とは、此処で一旦、城内の一般解放のエリアで別れる事に。

マーニャさんが「え゙ー?何で私等、奥迄進めないのよー!?差別!差別~!!」って、ぶーたれていたけど、無視無視。

…で、俺とソロは、クリフトや爺さん同様に、姫さんの御付きポジションとして城内を進む事に。

そして其の先で我が君主である、ブランカ王と ばったり対面、冒頭の会話に繋がるのであった。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「「うげっ!? お、お前わ…?」」

…………………………………………。

「うげっ」とわ失礼な。

あれから俺は、姫さんと別れ、陛下の御付として、城内を廻る事に。

まあ、俺的には どちら側でも良かったのだが、陛下の護衛として傍らに居た兵士団長(ジジイ)に、「お前は我々に付いて来い」と捕まったのだ。

因みにソロは其の儘、姫さん達と一緒だ。

そんな中、顔合せしたのが

「これはキングレオ王。

お久しゅう御座います。」

「ううう、うむ…」

キングレオ王(and大臣)である。

…って、何なのだ?その顔わ?

そんなに俺と遭うのが嫌か?

少し、ビビリ過ぎでね?

トラウマ、持ち過ぎだろ?

 

「ガーデンブルグの件では、彼方の女王に宛てて貰えた書状、感謝しております。」

「あああ、ああ、あれは お主が…」

今の俺は陛下と同行している。

即ち、ブランカの代表として、この場に居る訳だ。

それ故、陛下の顔に泥を塗るわけには行かず、如何にコイツ相手でも礼節を持った姿勢で接する。

尤も あの書状については、本当に感謝しているからこその、純粋な礼なのだが。

 

「ふむ…。キングレオ王、貴殿も此方のフィーグの潔白を唱える文を彼の国へ送って頂けたのか。

この者の主として、儂からも礼を、言わせて貰おう。感謝する。」

「ぁあ…ぅ、うむ…」

陛下からの謝礼の言葉に、気拙そうに言葉を詰まらせるキングレオ王。

ん。気圧されてるね。

ふっふーん!やはり、"王"としての格は、我が陛下の方が遥かに上だぜ!

嘗て魔族と繋がり、自分の父親を謀略で陥れ、王位に就いた様なヤローとわ違う!

 

「陛下…失礼ながら、お耳を…

(ボソ…)察するにキングレオ王は、謝礼の言葉等を受けるのが苦手な、所謂 照れ屋さんな模様。

とりあえず此の場は これ以上の言葉を重ねず、去るのが好しかと。」

「ふむ…成る程な…

…それではキングレオ王、また後程に。」

「う、うむ…」

王族が纏う氣(オーラ)とでも言うべきか…

俺としては、明らかに陛下に気圧され、テンパっているキングレオ王を見て、もう少し内心で『(爆)!腹筋が割れますね!』していたかったのだが、先に進みたかったのも事実だし、助け船を出してやる事にしてやった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「あら?」「む?」

フィーグさんがグレイグさんに拉致られた後、僕達アリーナさん一行と顔を合わせたのは、ソレッタ国王。

今回は上半身マッチョ…失礼、真っ裸(パ)に首タオルな農夫スタイルでなく、きちんとした王族仕様な出で立ちです。

                  

「お久しぶりです、ソレッタ王。」

「ふむ…姫も、変わらぬ様じゃの…」

パデキアの件で、互いに恩人な関係に在ると言っても良い、ソレッタの王様とアリーナさんが、まるで王族同士な様な、会話を交わしています。

アリーナさん、あーゆー言葉遣いも出来たんですね…って、ゴメンナサイ。

恰も人の心を読んだみたいに、こっちを睨まないで下さい。

 

「…………………………………。」

「…何か、困り事でも?」

あ、そうそう。

実は このソレッタ王、会った時から少し、表情が優れていなかったんです。

それを察したアリーナさんが、尋ねてみたら、

「実は我が国の、馬鈴薯の収穫祭と、このサミットの日程が重なってのぉ…ハァ…」

…らしいです。

何だかリアルにorzっていますよ?この王様。

こういうので凹むって、流石は農業国家の王様って言って良いのですかね?

何しろ、行政を大臣さんに丸投げして、自分は率先して畑仕事に勤しむ様な御方ですから。

 

「滅茶苦茶 薄くスライスした馬鈴薯をサッと素揚げして、塩をパラッと振って掛けたのは、絶品なのだぞ?」

知っています。

パリっとして、美味しいですよね?

前、フィーグさんに作って貰いました。

因みに僕は、事前に鶏と野菜の出汁(スープ)に一晩中 浸し、その味を染み込ませておいのを揚げたヤツの方が好きです。

 

「それとな、茹でた馬鈴薯を潰して、炒めた挽き肉と玉葱と混ぜてな、それを掌サイズの楕円形なメダルっぽく形を整え、パン粉をまぶして揚げたら…」

はい。それも知っています。

サクッ、ホクッで、凄く美味しいですよね。

アリーナさんクリフトさんも、「ん、ん。」て、頷いています。

そして更に次々と、馬鈴薯のレシピを語り出す王様。

 

「それからな、やはり茹でた馬鈴薯を擦り潰して、牛乳や鶏の出汁と混ぜ馴染ませながら煮込めば…」

「それ、氷結呪文(ヒャド)なんかで一気に冷やして飲んでも、美味しいわ。」

「な、何と?!それは、真か?」

あ、この王様は、冷製スープは御存知無かった様で…

                  

「醤油と酒をベースにした出汁で、豚肉や他の野菜等と一緒に煮込めば…」

「ネネさんの得意技だ!」

はい、そうですね。

ネネさんの作った その料理、凄く美味しかったです。

トルネコさんの家で皆で御馳走になった後、その味に感動したマーニャさんが、作り方を教えて貰う様、頭を下げてましたね。

ん。フィーグさん、爆裂して下さい。

                  

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「久しいの、アリーナ殿。」

「バトランド王も、お変わり無く。」

儂とベア将軍を護衛として、今回のサミット参加の諸国の王族のお歴々と挨拶を重ねていた陛下の前に現れたのは、アリーナ殿達だ。

陛下とアリーナ殿は、儂が勇者…ソロ殿と合流を果たし、その報告の為に一時帰郷した際以来の顔合わせである。

アリーナ殿の父君である、サントハイム王と我が陛下は、大学時代からの友人。

それも相成ってか、親身に語りかけてる陛下。

サントハイム城奪還の件も、時事通信で報じられる前に、直接に儂が報告した際は、凄く喜んでおられた。

                  

「ん?」「む?」「あら?」「ぬ?」

そんな中、儂達の前に姿を見せたのは、フィーグ殿とグレイグ殿。

…と、いう事は、此方の御仁が、ブランカ国王ですな。

 

「前の会談以来か。バトランドの。」

「ふむ。其方も久しい。ブランカの。」

以前のサミットで面識があったのであろう、陛下とブランカ国王が再開の言葉を交わし、

「お初にお目に掛かります、ブランカ王。

アリーナ・インティ・ジ・アレアナ・サントハイムと申します。」

「おぉ!貴公がサントハイム王女の、アリーナ姫か。

其方の事は、此方のフィーグから、話は少し聞いて…

…フィーグ?お主は何を、腹を抱えて蹲っておるのだ?」

…どうやらフィーグ殿は、アリーナ殿の その普段とは全く違う振る舞いが、壺に嵌まった様だ。

 

「(ボソ…)フィーグ、後で〆る…!!」

アリーナ殿?どうどぅ…

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「ほぅ?あの時振りだな、勇者殿よ。」

 

アリーナさんがフィーグさんを〆た後、僕達に声を掛けてきたのは、スタンシアラの王様です。

 

「ふむ。儂が授けた兜だけでなく、その鎧に盾…

どうやら其方は本当に、あの伝説の勇者な様だな。」

僕の装備(天空シリーズ一式)をまじまじと見ながら、話し出すスタンシアラ王。

 

「勇者…確か、ソロ・ボッチと申したな…

儂が其方に兜を託した件が、間違いでは無かったと証明される日が来るのを、期待しておるぞ。

世界中の民が、心から笑い合える日が訪れる事をな…」

スタスタスタ…

それだけ言うと、スタンシアラ王は、お供の大臣さんと近衛兵みたいな人を従えて、去って行きました。

…認めて貰えるのは凄く嬉しいですが、ぶっちゃけプレッシャーです。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「ぅげ!?あ、貴方達ゎ…?!」

顔を合わせた早々に、さっきのキングレオ王よりも御無礼な台詞を吐いているのは、ガーデンブルグの女王だ。

 

「貴女、あんな事をしでかしていて、まだ女王御付きの兵士で居られるの!?」

「ぐぐぐ…っ!!」

そして姫さんが、女王でなく、その傍らに付き従っている金髪メガネの女兵士…以前、クリフトを手籠めにしようとしたカトレアさんに、思いっきりガンくれています。

ええ、クリフト君を庇うかの様に、後ろ側に退かせて。

それは正に、ヒロインを護るヒーローの如しな画。www

 

「初に御目に掛かるな、ガーデンブルグ女王よ。

先日は儂の書状、申し出を受け入れ、フィーグと その仲間達の潔白を認めてくれた事、感謝する。」

「陛下に同じく。ウチのバカ孫の言い分を聞き入れた事、有り難く思っておりますぞ、女王陛下。」

「ぅう…」

そんな女王に、ウチの陛下と兵士団長(祖父っちゃん)が、感謝な言葉に見せかけた、"圧"の有る言葉(笑)を、更には!

「ブランカ国王と同じく、我が国の戦士の……(略)……誠に、痛み入りますぞ。」

バトランド国王の、同じ様な"圧"を込めた、長~い御言葉。

まあ、家臣思いには評判高い両国王の、その家臣を冤罪で尋問やら投獄やら、挙げ句には外様の来訪者でしかなかった俺達に、国の抱えていた問題を丸投げで渡したりしたのだから、仕方無い。

 

「かはぁっ!!?」

「「「じょ…女王様ぁ??!」」」

そして兵力に於いても、世界の2トップと言っても良い、ブランカとバトランドの両国王からの有り難い御言葉に、ガーデンブルグの女王様はHPとSAN値をガリガリと削られ、最終的にはオーバーキルで、倒れてしまった。

参ったなぁ…この女王には、ロザリーヒルの情報を聞き出そうと思っていたのに。

こりゃ、会議の終わった後の話になりそうだね。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

『『『『…………………………。 』』』』

世界中の大小様々な主要国家の代表者達が、エンドール城の大会議室に集ったわ。

それぞれが用意された席に着き、無言で今回の国際会議(サミット)開始を待っている。

私も御付きの、クリフト、ブライ、ソロを後ろ側に立たせて着席。

私の右隣には、バトランド国王が着いていて、その後ろには、護衛役のライアンと もう1人、確かバトランド王宮戦士団を束ねる将軍だったかしら?

凄く強そうな男の人が、立っている。

因みにフィーグは この大きな円卓テーブル、私と ほぼ向かい側の席に座っている、ブランカ国王の背後に、グレイグさんと一緒に控えているわ。

 

「…コホン、皆、席に着いたみたいだな…」

『『『『『『…………!!』』』』』』

今回のサミット開催国である、エンドールの国王が、議長席から立ち、私達各国の代表に向け、口を開いた。

ついに始まるのね。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「…今回の話し合いの主旨、皆にも事前に伝えているが、以前から世界中で まことしやかに囁かれていた、地獄の帝王と呼ばれている存在の復活だが、バトランド王?」

「…うむ。」

少し長い、議長役のエンドール王の前口上から始まった会議。

そのメインの議題である、地獄の帝王の事柄について、その件を いち早く察知し、其れを倒し得る存在である勇者(ソロ)を捜す行動を起こしたと言って良い、バトランド王が話し始めた。

 

「…他にも、バトランドだけでない、世界各地で報告されている、野外のモンスターの活性化も、地獄の帝王復活の影響を受けていると考えても良いと思う。

それと…」

話してる途中で一度、バトランド王は私に顔を向けると、少しだけ気拙そうな顔で、

「此方に居られるアリーナ姫の御国元、サントハイムでの集団失踪も、関与していると見るのが、自然…であろう。」

…の言葉で、一端 話を区切った。

 

「…しかし本当に、地獄の帝王なる怪物?の存在が…」

「正直、噂だけで、眉唾物なのだが…?」

「魔物は魔物。

凶暴化するのは、今更、珍しくも無かろうに…」

そんな中、未だ地獄の帝王の存在を信じていない諸(モブ)国の王も、少なからず居る。

決して、モンスターによる被害が無い訳では無いが、それを地獄の帝王復活と結び付けようとは しないみたい。

も~!これじゃ、対策も何も無いじゃないのよ!!

 

「あの…よろしいですか?」

「ん?どうぞ、アリーナ姫。」

挙手して、発言の権利を得て、

「此処に居る皆さんも御存知な筈ですが、サントハイム城の集団失踪事件。

幸いにも私は、その時に城を離れていて、その難から逃れる事が出来ました。」

自分の…自分"達"の私見を話す事にした。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「…私は その能力に目覚めていませんが、サントハイム王家は代々、先詠みの家系でも在ります。

件の神隠し、父である王が地獄の帝王の復活を予見して…」

姫さんが今迄の旅を通じての、謂うならば俺達の考えを述べ始めた。

本当なら俺やソロが語るべきなのだが、この様な場所で、一介の王族の御付きに過ぎない俺達に、そんな権利は無く。

そんな中、自分達が魔族と通じていたのを此の場で暴露されないかと、思いっきりテンパった顔をしているのは、某国の王様と大臣。

大丈夫だよ。姫さんだって、TPOは辨えているさ。…多分(笑)。

…って?!

 

『『『『『『『『!!?』』』』』』』』

この会議室に居る者の一部も、"空気"が変わったのに気付いた様だ。

何と表現すべきか、重苦しい…とも少し違う、どす黒い何かが辺りを漂っているかの様な、不快な空気。

 

「「「「陛下!」」」

「「「国王!!」」」

「姫様!」

「女王!!」

一応は、王族の護衛の任に就き、この会場に来た者達だ。

各国の王族の護衛役は全員、この異変に気付いた様だ。

各々の(…一部、この異変に気づいていない)君主を護るように後方へ下がらせ、臨戦態勢に入っている。

 

「フィーグ!抜かるなよ!!」

「分かってる!」

当然 俺も祖父っちゃんに言われる迄も無く、槍を構え、何時でも戦える姿勢を取る。

 

「フィーグさん!!」「フィーグ殿!」

そして何かを察した様に、ソロやライアンが俺に呼び掛けるが…

ああ、分かっている。

この空気、俺は…俺達は、知っている。

 

『くっくくく…』

「「「「「「「「!??」」」」」」」」

部屋の皆が どよめく中、何処から不気味な嗤い声が聞こえたかと思えば、先程迄 議長であったエンドール王(今は衛兵の後ろに居る)が居た位置に赤く光る魔法陣が現れ、その中から

『ふん…各国のトップが集まると聞いたから、何事かと思えば…』

聖職者の衣を着込んだ蛇顔の魔族と、

『アァッ…カガミィイイッ…!!!!』

全身、禍々しい造形の鎧と兜、そして剣?斧?…な武器を手にした、魔族?の男が現れた。

やはり、この空気の変わり具合は、あのサントハイム城で感じたのと同じ、魔族が転移で現れる時の、独特の雰囲気だった。

…って、赤髪って、もしかしなくても俺の事?

こっち睨んでるし!?

あんなの、知り合いに居たか?

 

 




 
フィーグの祖父のグレイグですが…
ドラクエ11に同名キャラが登場するらしいですが、何の関係も無いです。
 
次回予告!
『出でよ新必殺技!③(仮)』
乞う御期待!!
 

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