Fallout: City of New York   作:42代目ムアイク

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【Intermedio゛Vault 66゛】

【DAY1】

 

 ついにその日がきた。

 審判の日というやつが。

 最上部のブラストドアが閉じられ、我々は残りの人生をこのVault 66で過ごすことになる。

 Vault 66の内部の動向は、やはりショックなのだろう誰一人として騒ぎもしない。死んだように静かだ。いやこの表現は、地上がどうなったかを思えば不謹慎な物言いだな。

 職員は訓練通り、ちゃんと職務をこなしている。頼もしいかぎりだ。

 私にしてもそうだ。Vault-tec本社への最初の報告をさっき書き終えたばかりだ。

 誰も返信してこないが、そうなっても欠かさずに報告するように命令されている。仕事はちゃんとこなす。これまでもそうだったし、死ぬまでこのプライドを抱えていきたいものだ。

 

【DAY336】

 

 俺は本社からこう説明されていた。

 民主主義者と共産主義者を一箇所に閉じ込めて、どのような事態となるかを観察するのがVault 66の役目であり、その経過報告をするのが監督官の職務であると。

 おや待てよ。

 民主主義者と共産主義者が核戦争やらかしたら必要になるからと核シェルターであるVaultを作り上げた連中が、民主主義者と共産主義者を一箇所に閉じ込めたらどうなるのか分からないのか?

 この計画を承認した連中が俺よりも高給取りだとは、信じられない。

 クソッ。

 嫌になってきたが、俺は相変わらず答えの返ってこない報告書を送り続けていた。部下がワーカーホリックの監督官だと呼んでいたが、自分でもそれが事実だと確信し始めていた。

 さて、Vault 66の愛すべき住人たちについて話そうか。

 民主主義者については、特筆すべきことはない。連中はマジョリティで、星条旗よ永遠なれを歌う典型的なアメリカ市民だ。Vault 66の住人に委ねられている主だった仕事を占有して、幸せそうだった。

 対して中国人は、それほどハッピーではない。

 誰がどう見ても、あの黄色い肌におうとつの少ない顔では共産主義者だとバレてしまうから、隠れようがないのだ。

 今日も全身の骨が折られて胸にナイフで星印を刻まれた死体を回収した。血がしみれば赤い星になるのだ。芸術家め。

 これでリンチ死したのは14人目だ。この調子でいけば、中国人はもうすぐVault 66から絶滅してしまうだろう。

 証言する奴など1人もいない。だから言ったろう? 民主主義者はマジョリティだ。身内をかばい合っている。

 死体の回収は気分が悪い。

 ミシシッピー生まれの黒人としては、リンチ死には嫌な記憶が蘇ってきて、気分ばかりが沈んでいく。

 Vaultでは埋葬することができないから、家族との別れが済めば、最下層部のG.E.C.Kで分解してしまう。火葬場よりも合理的だというのが上の判断だろうが、栄養分は農薬として再利用して、それ以外の余った部分を容器に詰めて遺族に渡すというのは、これもまた気が重い仕事だった。

 だがしたたかな奴らも居るもので、ソ連系の共産主義者がその代表だ。ソ連か、まだあったとはな。

 なにせ連中の殆どが゛善なる゛白人だから、リンチの標的になった者は1人もいない。それどころか、共産主義者だと気がつかれてすらいない。本社の奴ら、よく見つけ出しててきたものだ。

 最近では、生活向上委員会とかいう互助会を立ち上げで隠れ蓑にしている。レッドチャイニーズお断りの、読書会や奥様方がアフタヌーンティーを楽しむ民主主義的な平和活動だと誰もが思っているが、裏では共産主義者の会合が開かれている。

 Vault 66は盗聴器だらけだ。あれがなかったら俺も騙されていただろう。本当にしたたかな奴らだ。

 あの会合では武装蜂起の話題すら飛び出すが、監督官はVault住人の活動に口出ししてはならないと定められている。ただ見守り、観測報告を飛ばすだけだ。誰が読むのか知らないがな。

 まったく。嫌な仕事ばかりだ。

 

【DAY1000】

 

 多分、これが最後のエントリーとなる。

 数日前に、新ペストの感染者が大量発生した。それも、発症者はVault-tecの社員だけときている。そう、俺ももう終わりだ。キーボードに吐き戻してそれでも動くターミナルに感動しながら、死につつある。

 きっとあの健康診断で打たれた予防接種とやらが原因だろう。

 あのやぶ医者め。きっと知ってて「これで新ペストには罹らない」などと言ったのだろう。内心で爆笑しながら。

 おそらく、これも計画の内だ。

 俺が死ねば、規定によれば監督官は選挙で新たに選ばれることになる。住人の中から。

 選挙の結果を見ることはないが、見たかのようにどうなるかが分かるな。

 最近は、釘と木材の紛失が続いていた。核兵器の代わりに原始時代の流儀で、民主主義者と共産主義者は穴ぐらの中で決着をつけるつもりだろう。バカどもめ。

 もう目が霞んできた。まともにモニターも見れない。

 心残りは多い。

 ろくでもない企業に就職しちまったとか、自宅の猫Mr.バブルスがどうなったかとか、中国人がほとんど死に絶える前に助けてやれば良かったとか、悔いばかりだ。

 今までの日誌を最後の報告書として送りつけてやろう。奴らが何をやったか、すべて教えてやろう。多分無駄だが。

 俺が死んでも構わないということは、監視する方法が別にあるということだろう。もしかしたら、俺もまた観測対象だったのかもしれない。

 やっぱり、さっさと辞めておけば良かったよママ。

 

 

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