ポケットモンスターSPECIAL 光示す者   作:ワークス

3 / 21
活動報告って大事ですね。



第三話 VSイーブイ 悪との出会い

気が付けばびしょ濡れで森の中に倒れていて。

気が付けば病室でオーキド博士と出会って。

気が付けばもう後戻りできないほどの状況までことが進んでいて。

《四人目の図鑑所有者》は今、大きくため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

カントー地方最大の大自然《トキワの森》。天然の迷路と呼ばれるその森は、文字通り人の手が入っていない自然の防壁を有しており、新たな図鑑所有者ことヒカルはその防壁相手に苦戦を強いられている真っ最中だった。

 

「んー。………迷った」

 

詰まる所、お巡りさん出番ですよ状態。

離れることなく付いて歩くライも全くのお手上げ状態であり、二人は完全にその先の道が見えていなかった。

 

そもそも、どうして迷ってしまったのか。

 

途中までは転々と建てられていた看板を目印にして歩いていた。

しかし、そこで思わぬ障害が現れることになった。

ヒカルはもともとシンオウ地方の出身である。シンオウにもカントーに生息しているポケモンはいくらか出現することは確認されているが、それでもまだ未発見の奴らもいる。

従って、シンオウでは珍しいいもむしポケモン《キャタピー》に興味をそそられ道を外れ探索していたところ。

見事に迷ってしまったのである。

 

「してやられた…。甘く見てたぜ、トキワの森…」

 

自業自得とはこのことである。トレーナーに付いて来たが故一緒に迷ってしまったライは半ば諦めたというような表情をしている。

元の道に戻ろうと先ほどより歩いているのだが,むしろ逆にどんどん奥に進んでいるような気がする。

実際陽の光が届きにくくなるほど濃い緑が茂った場所まで来ているのだが、今の彼らには知る由もない。

 

「どうしよう。このままじゃ他の図鑑所有者を追っかけるどころじゃない。でも現在地が分からないし…」

 

思考は堂々巡りを繰り返すばかり。ヒカルの中には少しずつ焦りが蓄積されていた。

 

(野宿なんかの心配よりもこの森には危険なことがあるのに)

 

そんな考えと共に深いため息をついたと同時に。

 

 

「…………ィっ!」

 

何かの声が聞こえた。

反射的に足を止め、気配を消し辺りに耳を澄ませる。ヒカルの様子に気付いたライも静かに索敵を開始する。

やがてほぼ同時に気付く。

もう一度聞こえたその声に。

 

「………ブイっ!」

「っ…!行くぞ!」

 

ヒカルは咄嗟に走り出した。

うっそうと生い茂る草木には目もくれず突き抜け、ひたすら声のした方を目指す。

 

 

先ほど頭をよぎった野宿よりも危険な事。それは、ヒカルがこの森に初めて来た時の状況に由来する。

目が覚めて暫くすると、森で住むとは考えられないポケモンたちに遭遇したのだ。しかも、普通より遥かに凶暴な状態の。

オーキド博士からもこの森の生態系が少しずつ崩れ始めていると聞いた。つまり、あの時襲われたのはそれを表しているのだ。

間違いなくこの森は、今とても危険な状態にある。

 

そしてもう一つ気掛かりなのは、ヒカルに走り出す要因を作った鳴き声の持ち主。

ヒカルの予想が正しければ、大事に至る前に急いで駆けつけねばなるまい。焦る気持ちをなんとか抑えつつも、走るスピードを上げる。

 

 

 

そして、少し開けた場所に出る。

そこには、

 

「ちっ、面倒なことになってきやがった」

 

こちらに気付き、舌打ちをして、通常より一回り大きくて青白い炎を尻尾に宿したヒトカゲを従えた黒ずくめの男と。

 

「ブ、ブイっ!!」

 

全身傷だらけになりながらこちらを嬉しそうに見つめるイーブイがいた。

 

 

 

 

 

 

   ***

 

 

 

 

 

 

気が付けば、森の中に倒れていた。

 

イーブイは自分の今の状況に困惑しながらも、頭の片隅で冷静に考えをまとめていた。

 

イーブイはそもそも野生のポケモンではない。二年前、傷付き当てもなく彷徨っていた彼女を介抱してくれた男の子の手持ちである。

そんな彼は、久しぶりだという家族旅行に出かけていた。勿論、手持ちであり家族でもあるイーブイと、彼女よりずっと前から男の子と暮らしているパートナーのコリンクも一緒だった。

船の上で、いつもとは違い年相応の無邪気っぷりを見せる男の子と一緒に遊んでいる、そんな時だった。

 

 

突然船が揺れた。

 

 

まるで地震に遭ったかのように激しく揺れ、イーブイは表現できぬほどの恐怖を体験した。そんな彼女を必死に守っていた男の子は、まずコリンクをボールに戻した。揺れから二体を守る、それだけに気を取られていたのだろう。

そのあとからの記憶はぷっつり途切れ何も覚えてはいないが、イーブイは結局ボールに戻らず、男の子ともはぐれてしまった。

その事実だけが残り、イーブイは二年ぶりに一人ぼっちになっていた。

 

その時、不意に近くの草むらが激しく揺れた。

普段より模擬戦を行い鍛えていたイーブイは、それに気付くや否や身を翻し臨戦態勢を取った。

暫しの間揺れ続けた後、一人の人間が姿を見せた。

それはイーブイを《アート》と呼ぶ男の子ではなく、胸に《R》の文字を大きくプリントした黒ずくめの男だった。

 

 

 

 

 

 

 

男がイーブイを見つけたのは単なる偶然だった。

たまたまゲットした炎の色が違うヒトカゲのついでに、珍しいポケモンがいないかと入ってみたトキワの森でうごめく小さな影を見つけたのだ。

イーブイは個体数がとても少なく、希少価値も高い。捕まえれば一夜にして出世できることは間違いないだろう。

そして、野生であれば負けるわけがない。

そう思って正面から挑んだのが間違いであった。

 

男は見事に痛手を食らった。

 

そのイーブイが野生ではなくトレーナー付きで、尚且つ高度な戦闘訓練を行ってきたポケモンであるという事を知らなかったからというのは言うまでもなく。

 

しかし、時間が経つにつれ形勢は逆転していった。

トレーナー自らが指示を出すのと、ポケモン自らが判断して動くのとではやはり差が出てしまう。指示を出してくれるトレーナーがいないイーブイは徐々に追い詰められ、全身傷だらけとなっていた。

 

(最初は油断したが、これで捕獲できる…)

 

そう判断した直後。

 

「アート!!大丈夫か!?」

 

猛烈な勢いで突っ込んできた子供に邪魔をされる。

 

 

 

 

 

 

   ***

 

 

 

 

 

 

(ひどいやけどだ…。あいつ、いったい何者なんだ?)

 

ヒカルは全身に傷を負い、やけどの跡が残るイーブイ―――《アート》を抱きしめながら、ヒトカゲを従えた男を睨んだ。

アートは体を震わせながらも、ヒカルに再会できたことを喜び頬をすりつけてきた。そんなアートに笑みをこぼしながらも、同時にこんな風にした男に敵対心を剥き出しにした。

やがて、男が口を開く。

 

「…トレーナー付きだったとはな。だが関係ない。…そのイーブイを寄越せ」

 

決して遊びやごっこではない、本当の殺気を漂わせた声を放つ。それに合わせヒトカゲも火を吹き出し威嚇してくる。

 

「寄越せって、そう言われて素直にはいそうですかって渡すかよ」

 

だが今のヒカルにはそんなことは眼中になかった。

大切な家族を傷付けた。それだけで彼は目の前の悪に抗う目的は生まれていた。

元来より悪いことを許せない性分であることもプラスされ、ヒカルは男に向けて同等の敵意を放った。

 

「なら仕方ねぇな……ヒトカゲ!!」

 

戦闘状態に入ったヒトカゲは、男の声に従いヒカルへと突っ込んでくる。口を閉じ炎をぎりぎりまでため込んだ状態で飛び上がり、放とうとしたその瞬間。

 

「ライ、‘かみつく’」

 

ヒトカゲの後ろから音もなくライが現れ、その尻尾に噛みついた。

 

「なっ!?」

 

男は驚愕の表情を見せる。それに反し、ヒカルの表情は至って冷静だった。

いや、冷酷なほど怒りに満ちていた。

純粋な、仲間を傷付けた敵に対しての怒り。

そしてさらに指示を出す。

 

「投げつけて‘10まんボルト’」

 

ライは噛みついたままのヒトカゲを地面に叩き付け、その頭上で稲妻のような電撃を浴びせた。

ヒトカゲはそれでも戦闘不能には陥らなかったが、まだ抗おうと両手を付きながらゆらりと立ち上がる。

 

「くそっ、思ったよりも使えないな。こんな雑魚ならゲットすんじゃなかった」

 

黒ずくめの男は、バトルで傷付いた自分の手持ちをねぎらわず悪態を浴びせた。その声はヒトカゲは勿論、対立するヒカルの耳にまで届いた。それでも尚トレーナーのためにヒトカゲは立ち上がろうとする。

 

その姿を見て、ヒカルの怒りは最高潮に達した。

そしてヒカルはヒトカゲに向けてつぶやく。

 

「ヒトカゲ…ごめんな」

 

続いて、ずっと抱き続けていたもう一人の家族へ。

 

「アート、こんな状態のお前に頼むのはすごく嫌なんだけど…、いいか?」

「ブイ!」

 

しっかりとした返事を返し、アートは自ら地面に降り立った。

 

「よし、‘あまごい’!」

 

アートは自らの口元に水の力を十二分に収束させ、空へと一気に解き放った。その力がもたらす効果は、《雨》。

 

「なんだと…!?」

「ライ、最大パワーで‘かみなり’!!」

 

男が再度の驚きを見せる中、小さな電気ポケモンの生み出した、強烈で必中の‘かみなり’がヒトカゲを襲った。

 

 

 

 

 

 

   ***

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんな、アート。道に迷っちまったせいで回復させれなくて」

 

 

 

 

黒ずくめの男との戦闘の後。

ヒカルは静かな寝息を立てるアートを抱きながら森の出口を目指していた。

 

 

 

ヒカルは、アートの使った‘あまごい’の効果により必中になった‘かみなり’を放った。ヒトカゲを確実に戦闘不能に追いやることに成功したのだ。その後‘かみなり’の影響で巻き起こった煙に巻かれて男は姿を消していた。同時にヒトカゲもいなくなってしまっていたので、先に謝罪しておいて正解だったと安堵していた。だが、同時に別の思いが湧き上がっていた。

ヒカルから見てとんでもない外道であった男の手持ちとして出会ったヒトカゲのことを、ヒカルは頭の片隅から離すことが出来なくなっていた。

 

根はとてもいい奴なのだ。しかし、出会ったトレーナーがいけなかった。

 

もし違うトレーナーと出会っていたら、あのヒトカゲはあんな風にして戦うこともなかったのだろう。

そう思うと、ヒカルの胸は少し傷んだ。だが同時に仕方ないと割り切ってもいた。

悪いことをする人は、手持ちにも勿論悪いことをさせる。ポケモンもそのトレーナーに似て、悪いことをすることが正しいと思っていってしまうのだ。こうなるともう、そのトレーナーから更生させていかなければならないので、一般トレーナーが手を出すべきところではない。

 

思わぬところで出会った後悔と、傷だらけのアートを見つめ,ヒカルは複雑な感情に捕らわれた。

 

 

 

 

 

(いけない、それより早くニビシティに着かないと)

 

散々考えを巡らせていた思考回路を無理やり切断し、アートを助けることだけを念頭に置く。走るスピードを速め、木々の間を潜り抜けていく。

少しして、緑の隙間から人工的な明かりが見えた。

 

「ニビシティ、やっと着いた」

 

足を止めずに安堵し、ポケモンセンターを目指して気持ちを新たにした、

 

 

そんなタイミングで。

 

 

 

「……お前」

 

 

 

かみなりに打たれたようなやけどを負った、青白い炎を灯すヒトカゲがヒカルの目の前に立っていた。

 




やっとヒトカゲ出せた…!

これが伏線を貼るってことなんですね。
すっごい大変だ…。回収できなかった時が。

絶対に回収してやる。



そして今回から本文が長くなっていくでしょう。
本音を言えばもっと文字数多くしたいので、もっと長くなると思います。
気長に読んでいただければ幸いです。

追記:今回から改まってサブタイトルに「VS~」としていくことになりました。それと、ヒトカゲの尻尾の炎の色間違ってました。大変申し訳ありません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。