ポケットモンスターSPECIAL 光示す者   作:ワークス

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少し遅くなってしまいました。

何とかいいところまで仕上げるのに手間取ってしまい…。


ああ,ヒトカゲ可愛い…。


第四話 VSヒトカゲ 別れた先の道

「お前、何でここにいるんだ?」

 

ヒカルは目の前に立つヒトカゲに向かってそう問いかけた。

勿論だが、ヒカルにはポケモンの言葉は分からない。

しかしヒカルはそんなことは求めていない。

ただ何故傷だらけのその状態でここにいるのか、ただそれだけを聞いたのだ。

ヒカルが持ち合わせる、ポケモンを想う気持ちだけをもって。

 

 

 

そして。

 

 

ヒトカゲはそっと歩み寄ってくると、ヒカルの腕に抱かれたアートを心配そうに見つめた。

 

「もしかして、気にしてくれてるのか?」

 

ヒカルの問いかけにヒトカゲは頷く。

 

「…そっか。やっぱお前いい奴なんだな」

 

先の戦いの際にも、ヒトカゲは悪い奴のポケモンだが優しさをちゃんと持っていると感じていた。そうでなければ,自らに悪態をつくようなトレーナーのために立ち上がろうとはしないだろう。

敵ながらヒトカゲの優しさに改めて暖かさを感じ,ヒカルは思わず微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「ところでさお前、あいつはどうしたんだ」

 

ポケモンセンターまでの道のり。既に町の敷地には入っているが、ヒトカゲはどこに行くでもなくヒカルの隣を付いて来た。その際ちらちらとこちらを見るが、ヒカルの顔を見ずアートの方を見ていた。まだ完全に心を許したわけではないのだろう。それでも、大切な家族を気にしてくれているのがヒカルには嬉しかった。そして同時に気になった。

 

そんなヒトカゲのトレーナーであるあの《R》服の男はどうしたのか、と。

 

それに対してヒトカゲの反応は、

 

「……………」

 

全くの無反応だった。

鉄壁の守りの如く急に無言を貫き始めた。

つられてこっちまで黙り出しそうになる。

 

(まあ今はアートを気にしてくれる気持ちだけがあるって分かったし良いんだけど)

 

不完全燃焼ではあるが、仕方あるまい。

話したくないことを根掘り葉掘り聞くわけにもいかないだろう。

 

 

 

 

 

 

そうこうしている内に、ポケモンセンターの前まで来ていた。まだ夕方になりかけたところなので、早めに治療にあたってくれるかもしれない。

改めてヒトカゲに何か言おうと下を向いて、

 

「いない…」

 

見事に姿が消えていた。

 

(どういうこっちゃ。あの男についても、今にしても、何か訳ありなんだろうけどなぁ。俺が聞いても答えてくれないし、どうしたもんかな)

 

複雑だった感情がより複雑になった。このまま考えていても更に絡まるだけになりそうだったので、一旦忘れてアートを治療してもらうためセンターへと足を踏み入れる。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

家の明かりが一つ、また一つと消えていく頃。

ヒトカゲは夜のニビを歩いていた。

 

 

 

ヒトカゲが元々住んでいたのは、ここから遥か離れた山の中である。強者ぞろいが生息するというその山で、ヒトカゲは親であるリザードンと静かに暮らしていた。

リザードンはその辺りでは敵なしであった。更に子供を持ってからは、守る意識が強くなり近づく者もいなくなっていった。

そこに、彼らがやってきた。

 

彼らはリザードンを捕まえに来ていた。母親は当然子を守るために彼らに抗った。だが彼らはリザードンを殺してしまった。彼らにとって、弱いポケモンだと判断されたためだ。勿論子供もその認識に入ってしまう。

だが、そのうちの一人が気付いた。そのヒトカゲが他とは違う炎を持っていることに。男はそのヒトカゲをいつか母親と合わせると約束し、捕獲した。任務に同行していた者たちには、ヒトカゲを取り逃がした、と説明して。

 

そうしてヒトカゲはその男の元で暮らすようになった。

 

 

 

 

だが、ヒトカゲはその約束が嘘であるという事を知らなかった。

 

 

男はヒトカゲを捨てた。先の戦いで戦力外と判断したが故に。

珍しい青白い尻尾の炎を持ったヒトカゲを手放すことに多少の惜しさを感じたようだが、それでも戦力にならないのであれば切り捨てる。それが男の所属する集団のやり方である。

ヒトカゲの目の前でボールを粉々に踏みつぶしながら吐き捨てた。

 

 

『お前なんか捕まえるんじゃなかったぜ。こんな奴のせいで足引っ張られるのは御免だしな。せいぜい自分で何とかするんだな』

 

 

ヒトカゲには何を言っているのか、最初は理解できなかった。だが男が姿を消し時間が経つにつれ、その意味がやっと分かった。

つまりは、見放されたのだと。

そして、親を探す気などなかったのだと。

ようやくそこで、ヒトカゲは果てしない絶望を感じた。

そんな時、自分が元主人と戦ったトレーナーの姿が目に入った。腕には、自分がやけどを負わせた相手が大事そうに抱えられていた。

ヒトカゲはただ自分が傷付けた相手が、自分たちを退けた人間がどんなものなのか気になり、その男の子に近付いた。

そんな彼は、ヒトカゲが傷付けたポケモンを見るや『いい奴だ』と言った。

ヒトカゲは疑問を持った。自分が仲間を傷付けたのに、不快に思わないのだろうかと。だが、そんな様子は微塵も見せず、ただついて歩く自分を払い除けようともしなかった。

 

 

ヒトカゲの中に迷いが生じた。

 

 

 

彼は一体何者なのだろうかと。

自分は、これからどうするべきなのかを。

 

 

 

そして、もう一度あの少年と会ってみるべきかと。

 

 

 

 

 

   ***

 

 

 

 

 

町の中から小さな叫び声が聞こえて、ヒカルは半開きの目をこすった。

時刻は真夜中。ヒカルは絶賛爆睡中であった。そんなヒカルを添い寝していたライが急かすように見つめてくる。事実,叫び声を聞いて起きたのはライであり、彼は気付かず寝続けるパートナーを起こしたところだった。

 

(何だってんだ、こんな夜中に…。睡眠妨害なんてただじゃ済まされないぞ…)

 

寝ぼけながら上着に袖を通し、ライをボールに戻す。アートはまだ治療中であるので連れていくことは出来ない。

部屋を出てロビーに向かうと、消灯されているはずのそこは煌々と明かりがついており、ポケモンを抱えたトレーナーたちが群れを作っていた。

 

「な、何があったんだ?」

 

驚きの色を隠せないヒカルの声が聞こえたのか、そのうちの一人が丁寧に話してくれた。

 

「商店街の方を歩いてたら、突然襲われたんだ。尻尾が青白い炎のヒトカゲで、滅茶苦茶強いんだ」

「青白い炎のヒトカゲ!?」

 

ヒカルに更なる驚きを与えたそのトレーナーは自分のポケモンが心配になったのか、それ以上こちらを見ることはなかった。だがヒカルにはそんなことも眼中になかった。

そして次の瞬間、彼は走り出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(あいつが、無差別に人を襲うなんて、そんなのあり得ない!)

 

ポケモンセンターから全力疾走で商店街まで走ってきたが、ヒトカゲの姿を見つけられないまま十分ほどが過ぎた。あちこちに焼け焦げた跡が残り、商品を台無しにされた店主が頭を抱えて唸っていた。

何処も彼処も酷い有様だった。これを全て、あのヒトカゲがやったというのだろうか。

 

 

 

 

―――いや、きっと理由があるはず。

 

(考えるんだ、きっと、これまでのあいつの行動の中にそれが分かる事がきっとあるはず…!考えるんだ……!)

 

ヒカルはひたすら考える。

森の中で出会ったときの事。

敵として戦ったときの事。

町の入り口で再会したときの事。

 

 

 

 

 

そして一つの答えを導き出す。

 

 

 

 

 

   ***

 

 

 

 

 

「とうとう追い詰めたぜ……観念しろっ!」

 

少年は、不思議な色の炎を灯したヒトカゲを路地の行き止まりに追い込んでいた。三面は高い壁に囲まれ、残る一面は少年が塞いでいる。

これまで何匹ものポケモンに勝負を挑み、既に体には傷がたくさん付いていた。まだまだ弱い少年のコラッタでも勝てるかもしれない。

 

「いざ、しょうぶっ…!?」

 

と思った矢先、急に後ろに引っ張られた。

尻餅をつき思わず顔をしかめながら、引っ張った原因である少年を見た。

 

「何すんだよ!僕は」

「こいつは俺に用があるんだ。悪いけど黙っててくれないか」

 

男の子の顔を見ずそう言うと、少年は一歩前へ出た。調子を崩された男の子は渋々路地から退散していく。そして少年は不敵な笑みを浮かべる。

 

「よう、ヒトカゲ。町の人たちに迷惑かけて、さぞ楽しいんだろうな。だったら俺とも勝負しようぜ。昼間のときとどう違うのか見せてくれよ」

 

そういってヒカルはボールを構えた。

ヒトカゲは警戒し、けん制のための‘ひのこ’を放った。それはヒカルの頬を掠め、小さな焦げ跡を作った。

だがヒカルは動じない。

 

「何だよ、そんなもんか?もっと全力で来いよ」

 

ヒカルはさらにヒトカゲを挑発した。ヒトカゲも‘ひのこ’を次々に放ち、ヒカルの足元や顔の横を掠めていく。

 

「どうしたんだ、俺に当てないのか。そうだな、弱いんだったら、そんなことも出来ないか」

 

その言葉はヒトカゲの心にとげを刺した。力をため込んだヒトカゲは、'ひのこ‘を放つつもりで高温の‘かえんほうしゃ’をヒカルに打ち込んだ。

 

「ぐぅっ!!」

 

ヒカルが吹き飛ばされ、地面にうずくまった。

その姿を見て、ヒトカゲはようやく気が付いた。

自分が‘かえんほうしゃ’を覚えたということを。

ヒカルがボールを構えながらも、ポケモンを出していないということを。

 

 

 

 

 

 

 

「…っへへ。やっと気付いたか。お前は弱くなんかない。お前は十分強いんだよ。あいつが、尻尾の炎が違うってことに気を取られて、お前の本当の強さに気付かなかっただけなんだ」

 

 

 

 

 

 

それは、ヒトカゲが自覚していなかった、《強さ》の証明。

その結晶が、今しがた自分が使った"かえんほうしゃ"。

 

「お前は強い、でも、悪いことには使うな。お前は優しいんだ。お前は捨てられたのかもしれない。でも、お前は一人じゃない。俺たちがいる。俺がいる」

 

ヒカルの体は"かえんほうしゃ"によってダメージを負い、服が焼け焦げていた。しかしそんなことは気にしない。

ヒカルはただ、一匹のポケモンを助けるために体を張っている。同じ目線に立とうとしている。

それはかつて、傷付いて彷徨っていたイーブイを助けたときのように。

大切に思う気持ちを示すため、空のモンスターボールを差し出した。

 

「お前がもし、俺を受け入れてくれるなら…。俺がお前が強いってこと、ちゃんとあの男に分からせてやるから…。友達になってくれないか?」

 

 

 

少し前まで敵だった彼ら。

しかしそこには、確かに《何か》が生まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

「クゥ…」

 

暫く静寂が続いた後。

ヒトカゲは、差し出されたボールに手を付けた。

淡い光に包まれながら吸い込まれ、数回揺れた後確かにその中に納まった。

 

 

 

 

 

 

   ***

 

 

 

 

 

 

「っていう訳で、これから一緒に旅をすることになったんだ。ライ、アート、色々あったけど、仲良くしてやってくれ」

 

ヒカルの言葉にライとアートは多少疑いながらも、受け入れる旨の言葉を発した。

 

「それと、お前もな。二人と仲良くしてくれ。……《ルドラ》」

「……クルゥ…」

 

《ルドラ》と呼ばれたヒトカゲは、静かに頷きながら尻尾の炎を揺らした。

 




四千字越えか…。もうちょい書けるようにしたいな(読者の方々の負担を増やすだけですが)。


という訳でやっとヒトカゲもといルドラがパーティインしました。

ヒトカゲってどういう風に鳴くんだろうと十分ほど迷ったのは秘密です。
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