ポケットモンスターSPECIAL 光示す者   作:ワークス

6 / 21
少し時間が空いてしまいました。

どうもうまくまとまらず…

その分頑張りましたよ。


第六話 VSスターミー 初めてのゲット

暗い洞窟を、ヒカルは歩いていく。

途中気にかけるように振り返ってくるリザードの《ルドラ》に、軽く手を振って答えてやる。

中に進めば進むほど光を吸収してしまう洞窟。

そんなオツキミ山内部を進んでいた。

 

不意に、ごつごつした岩場に出た。天井の岩には大きな穴が穿たれており、大小さまざまな岩が転がっていた。

そして、かすかに残る戦闘の痕跡。

 

「ここがタケシの言ってた《謎の崩落事故》跡か」

 

二週間ほど前に突如として起きた崩落事故。一週間ほど前にようやく通れるようになったと聞き、ヒカルはどうしてそんなことが起きたのか気になったので聞いてみた。すると、

 

「さあな。ただ、何らかのバトルがあったらしいって話を聞いたよ」

 

タケシはそれ以上に何かを言おうとしていたようだが、何も言わなかったので結局スルーした。

 

確かに激しい戦いだったのだろう。それは岩場の様子を見て容易に想像できた。

これがもし、タケシが言っていた《敵》に関わることなら、ヒカルとて放ってはおけない。その敵はもしかしたら、ルドラとも関係があるかもしれないから。

ハナダに着いたらあの人に聞いてみようと決めたところで、視線の先に太陽の光が見えた。

 

 

 

 

「さてと、早いとこ町に着かないとな」

 

洞窟を抜けルドラをボールに戻して、ヒカルはなだらかな斜面を下っていた。既に町は視界に入っている。

途中バトルを申し込まれたりして体力がなくなってきているライたちも早く回復させねばならない。

そう思って足を速めたとき、

 

ビュルンっ、と目の前を何かが通り過ぎた。

 

「――っ!」

 

ヒカルは咄嗟に回避行動をとり、ボールを構えながら先ほどの正体を捉えようとした。

再び戻ってきた何かはヒカルの目の前で立ち止まり、中心のコアを点滅させた。

その姿を見てヒカルは、

 

「…ヒトデマン? こんなところに住んでるのか?」

 

きょとんと目を丸くさせた。

確かに近くに水場はあったが、こんな山の方にヒトデマンが果たして住んでいるのか。

シンオウで見に付けた知識とはかけ離れており、故に戦闘モードであった意識はそこで中断された。

そんなことも露知らず、ヒトデマンは右側の突起をくいっ、くいっと動かした。

 

「……挑発してんなこいつ。バトルがしたくて飛び出してきたってところかな……いいぜ、その勝負乗った!」

 

ヒカルは満面の笑みでヒトデマンに応えるべく、ライのボールを投げた。

ライが地に足を付けた瞬間、ヒトデマンは突進するように向かってきた。

 

「かわせ!」

 

真っ直ぐ突っ込んできたヒトデマンを余裕でかわす――――とはいかなかった。

突進の勢いを殺さず器用に方向転換をし、ライの身体にクリーンヒットさせる。

 

「っ、結構やるな」

 

すぐさま立ち上がった様子を見るとライもまだまだ余裕があるようだ。だが、早期決着をすることに決め指示を飛ばす。

 

「“かみなり”」

 

丁度上空に浮遊していた厚めの雲。それを最大限利用した電気タイプ最大級のわざをぶつけた。途端にかなりのインパクトが辺りを襲い、土煙が視界を奪う。

その場を動かず防御の指示を出しながら、ヒトデマンの様子を窺う。あれだけの攻撃だから耐えてる、なんてことはないと思うが。

 

と思ったのが間違いだった。

 

「ライ!?」

 

煙の中から縫うように、姿の見えないライ目掛けて襲い来る影が一つ。

もちろんそれは対峙しているヒトデマンであり。

その身体には確かに“かみなり”がヒットした焦げ跡がある。

 

(まさか、あの攻撃を耐えた…!? 水タイプに効果抜群なのに!)

 

ヒカルが驚愕している合間もヒトデマンは襲い来る。何とかギリギリでかわしているが、決定打を受けるのは時間の問題だろう。

かと言って、ここまでの防御力を見せられればポケモン交代をするわけにもいかない。アートではパワーで負け、ルドラでは相性の面で危ういかもしれない。それに何より、闘争心に火が付いたライを引っ込めては後で痛い目を見るのはヒカル自身だ。

 

早期決着をする、その意味合いをヒカルの中で少し変える。

目的はバトルの決着ではなく、

 

「ライ、“かみつく”から叩き付けろ!」

 

何度目かの攻撃をかわし交差した瞬間、ヒトデマンの突起の一つに食らいつく。その勢いのまま飛び上がり、上空から叩き付けた。

ここまで攻め続けていたヒトデマンの動きが一瞬止まる。

その機を逃さず、

 

「“10万ボルト”!!」

 

至近距離からの電撃を浴びせ、余波を受けた地面から再び土煙が巻き上がる。

今度はすぐに煙が晴れ、のろのろと立ち上がろうとしているヒトデマンが見えた。

 

「今だあっ!!」

 

ここぞとばかりにヒカルは大声を出す。

そして行うは、変更された目的の実行。モンスターボールを構え、投げる。つまり――――捕獲。

 

緩やかな曲線を描きながらボールは投擲され、ヒトデマンへと吸い込まれる。

ボールから飛び出す様子はなく、その中に確かに納まっている様子がその場からでも見えた。

 

「――――――っはぁ~~」

 

それが認識できた途端、ヒカルとライは揃ってその場に座り込んだ。深いため息が二人から漏れ、ようやく終わったのだと実感できた。

のろのろと立ち上がりながら先ほど投げたボールへと歩み寄り、そこにいるポケモンを外に出した。

 

「…まだ元気じゃん……どんだけタフなんだよお前…」

 

ヒトデマンはチカチカとコアを点滅させる。そのまだまだ余裕綽々な様子にげんなりとするが、それも過ぎたこと。

頭を切り替え、ヒカルはヒトデマンに向かって話しかける。

 

「まあゲットしちゃったけど、お前が行きたくないならまだ野生に戻れるよ……どうする?」

 

そう問いかけてみる。

対するヒトデマンの反応は、

 

(ぷるぷる)

「なら一緒に来るってことでいいかな」

(こくこく)

 

どうやら一緒に来てくれるらしい。ヒカルは、改めて仲間が増えたことに不思議な感慨を覚える。

カントーに来るまでに二匹、こちらに来てから一匹と仲間を持つヒカルだが、野生のポケモンをゲットしたことは一度もない。ルドラのケースを”野生のポケモン”として捉えられないのもあるが。

 

つまり、これがヒカルにとっての”初ゲット”となる。

 

まあそんなことはさておき、さてどんな名前を付けようかと、参考までにと思い図鑑を開いた。傍にはライが歩み寄り、ヒトデマンが何故か戦闘に備えるかのように構えだした。

 

「お前、ひょっとしてライとバトルがしたいから付いて来るのか…? まあいいけど…って、お前図鑑の説明よりでっかいんだな」

 

画面に表示された数値と目の前にいる実物の予想数値がかなり違う。一回りと言わず二回りほど大きい。

実物を始めてみたヒカルにはそれがどういう理由で大きくなったのかは分からないが。

なので気にしないことにした。

 

「お前は防御がかなり高いんだな…よし、決めた!」

 

図鑑を勢いよく閉じながら、大きい声で宣言する。

 

「お前の名前は、今日から《ロンド》だ!」

 

 

 

 

 

 

   ***

 

 

 

 

 

 

「久しぶりじゃのう、ヒカルよ。元気にしとったか?」

「ええまあ色々ありましたが元気でしたよ、オーキド博士」

 

ハナダシティのポケモンセンター。ライたちの回復を頼んだ後、真っ直ぐ通信機の前まで直行し予め決めてあった相手―――オーキド博士へと通信を繋いだ。

理由はもちろん、タケシから聞いたことの真偽。

挨拶をほどほどに交わし、ヒカルは躊躇いもなく本題を切り出す。

 

「博士、《ロケット団》って知ってますか?」

「……………」

 

オーキドはしばらく押し黙る。

難しい顔をしながら通信機越しにこちらの顔を見つめて、やがて大きなため息をついた。

 

「お前さん…どこでその名を聞いたんじゃ?」

「タケシに会ってそれで。それに一度奴らに会った事があったので」

「何っ!? その話詳しく聞かせるんじゃ!」

 

 

 

ヒカルは博士と別れた後、トキワの森やニビシティであったことを全て話した。

難しい顔だった博士はより険しい顔に変わっていった。

 

ややあって、

 

「はあ……あいつも大概じゃと思っておったが、お前さんもとはな…。全くお前さんたちは何かに憑かれとるんか」

「憑かれてるってどういうことですか?」

「そこはあまりつっこまなくてよろしい」

 

何故か博士に拒まれた。

 

「…結局、ロケット団って何なんですか?」

 

これが、ヒカルの聞きたかったこと。

アートを狙い、自らの手持ちであったルドラに罵声を浴びせ捨てた、そんな奴らとはいったい何者なのか。

自らのポケモンを想う気持ちと相反する信念を持った彼らについて、ヒカルはどうしても知りたかった。

 

「――――あいつらはポケモンを使い悪事を働く秘密結社じゃ。商売としてポケモンたちを捕らえ、実験体として扱い、時として殺してしまうとも聞く……決して許されない奴らじゃよ」

 

 

そこまで話したところで、オーキドはヒカルの表情が変わっていることに気付いた。

敵意に満ちた、険しい顔。

 

この少年はとても純粋だ。そして無垢。

ポケモンたちを真摯に思いやる心を持つ、とても真っ直ぐな少年だと。

だが同時に脆いものだと思った。

初めて会ったときは抱かなかった、この少年を大切に思う気持ちがオーキドの中で芽吹いた。

 

 

 

だからこそ、歯止めをかけるために言葉を続ける。

 

「じゃが、焦ってはいかんぞ。今のお前さんじゃ対抗するのは難しいだろう。それに、ジムリーダーに会うように言われておるのだろう?」

 

やや間があって

 

「……はい」

「なら、そっちを優先すべきじゃ。決して一人で挑んではならん」

「……はい、でも」

「手持ちはまだ六体集まってはおらんだろう……仲間をもっと増やすんじゃ。たくさんの仲間とともに挑むのならば、わしは止めはせん」

 

たくさんの仲間――――それはポケモンに限らず、トレーナーの数でもある。ヒカルは既にタケシという強力な助っ人を味方につけている。

そういう人をもっと増やす。そして、全員で挑む。

それが、ヒカルにとって一番の方法であるということはよく理解できた。だが同時に、今もロケット団によって虐げられているポケモンたちがいると思うと、黙っていられなかった。

 

「ヒカル」

「っ…!」

 

博士が名前を呼ぶ。

ヒカルのことを思って言ってくれている。それはヒカル自身にも分かる。

 

(今は、待たなきゃ……何より、ライたちに無理をさせれない)

 

今のライたちでは実力的に及ばないだろう。

だからヒカルは堪えることに決めた。

必死に心の中で渦巻く敵意を鎮めて、ずっと待っていてくれたオーキド博士に笑みを見せる。

 

「分かりました。ありがとうございました」

 

そう言って頭を下げる。

オーキドは分かってくれたことを察し、小さく頷いた。

 

「うむ、これからも頑張りたまえ。わしも応援しとるからの」

「はい!」

 

このときのヒカルの瞳は、真っ直ぐな光を宿していた。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「さあ、試合を始めましょ!」

「ほんとどうしてこうなったんだろう」

 

オーキドとの会話から一時間後。

ヒカルはハナダジムのジムリーダー・カスミと試合を始めようとしていた。

 

 

 

 

自分の考えを改め、この町に来た目的を果たすためジムに向かったところ、カスミに挑戦者と勘違いされ有無を言わせず「勝負よ!」と言われ退路も断たれてしまった。

なし崩し的にバトルに応じることとなったが、ヒカルはこの状況に全くもって納得はしていない。

おまけに正式に定められた一対一というルールを無視し、二対二で戦うと言い出したのだ。

もう何が何だか分からない。

 

「スタちゃん!」

「ライ!」

 

ボールから放たれた二体は互いに臨戦態勢を取り、動くタイミングを計っている。

じりじりと時間が流れ、ライが足を少し動かしたとき。

 

「“バブルこうせん”!」

 

カスミが指示を飛ばした。大量の泡がライに向かって飛来する。

指示を受けずともライがそれをかわし、前進する。

 

「“10万ボルト”!」

 

スターミーまであと二メートルのところまで迫り、ライは電撃を放った。当たればもちろん効果は抜群だが、

 

「当たらなければ効かないわよ!」

「くっ!」

 

いとも簡単に攻撃をかわすスターミー。想像より素早い動きに驚くが、すぐに思考を切り替え攻撃の手を考える。

 

「“こうそくスピン”!」

 

だが、カスミの手はまだ続いていた。

ものすごい速度で回転を始めたスターミーはライ目掛けて突進してくる。

 

「地面に“かみなり”!」

(えっ!?)

 

ヒカルの指示はスターミーを攻撃するものではない。だが地面にかみなりを打ち込むことで何が出来るというのか。

そもそも、雲などない室内では打てないのではないか。

そんなカスミの疑問は次の瞬間答えを見せる。

 

強力な電撃が地面に当たり、そこに溜まっていた水たまりに通電して《水と電気の壁》が生まれた。既に近くまで接近していたスターミーはブレーキを掛けられず、壁に激突した。途端“かみなり”の余波がスターミーを襲う。

 

「くっ、スタちゃん、上昇して“バブルこうせん”!」

 

奇抜な防御に度肝を抜かれながらも、すぐさま反撃に出る。指示に素早く応えたスターミーは、壁にある穴、真上から攻撃を放った。

壁により突進じみた攻撃を防ぐことは出来たものの、二手目を防ぐことは出来ず、ライは攻撃をもろに受け吹き飛ぶ。

ライは地面に倒れるも、すぐに立ち上がりまだ動けることをパートナーに伝えた。それを見てヒカルは胸を撫で下ろす。

 

(さすがジムリーダー…タケシもそうだったけど、やっぱり強い)

 

なし崩しとはいえ、バトルはバトルだ。やってよかったと認識を改める。

 

「ふう…驚いたわ。まさか“かみなりに匹敵する電撃”を放つなんてね」

「室内でかみなりを使えないのは雲がないからだ。でも、ポケモン自身はかみなりを放てるほどの電気を持ってる。雲越しでやってることをすっ飛ばしただけさ」

「……ますます面白いわねあんた……まるであいつみたい。次はどんな奇策を披露してくれるのかしら?」

「じゃあ、これならどうかな」

 

カスミの期待に応え、ヒカルはたった今考え付いた作戦を実行する。

 

「走れ、ライ!」

「逃がさないわよ、スタちゃん!」

 

スターミーを中心として走るライを“バブルこうせん”が迫る。しかしライのスピードには追い付けず次々と攻撃が外れる。そのままライはスターミーを中心として走り続ける。

 

「(攪乱しようってことかしら…でも)スタちゃん、“こうそくスピン”!」

 

その場で回転を始めたスターミーは、体を縦にしたまま走るライへと突撃する。

 

「っ、車輪みたいに転がるなんて!」

「ふふふ、このスタちゃんからは逃げられないわよ!」

「―――なんて、この時を待ってたぜ、ライ!」

 

後三メートル。

ライはそこで急ブレーキをかけた。

 

「え!?」

 

カスミに驚愕の色が浮かぶ。

後一メートル。

ライはブレーキの勢いを殺さぬまま、後ろを振り向き

 

「かみつく!」

 

すぐ目の前まで迫っていたスターミーに噛みついた。

勢いを完全に相殺はできず、しかし確実にそのスピードを削ることに成功し。

 

「10万ボルトオォォォォオ!」

 

ゼロ距離から放たれた“10万ボルト”が、スターミーを襲った。

その電撃は目も眩むほどの光を放ち、瞬く間に二人から視界を奪った。

 

やがて光が収束する。

かみつくと電撃から解放されたスターミーは、コアを弱々しく点滅させた後ばたりと倒れた。

 

「スタちゃん!!」

「よっし!」

 

まずは一体。ジムリーダーのポケモンを倒せたことに思わずグッと握り拳を作る。ライも嬉しそうに鳴いている。

 

「なかなかやるわね。でも、この子に勝てるかしらね」

 

そう言って取り出したモンスターボールから感じる気配に、ヒカルは戦慄した。

 

(この感じ、今までのポケモンとは何か違う…!)

 

果たして、その予想が正しいのかどうか分からないまま、

 

 

 

「さあ、出番よ《ギャラちゃん》!」

 

 

 

かつてロケット団に実験体とされ、一人の少年によってカスミのもとに戻ってきたポケモンが放たれる。

 




え、初ゲットはヒトカゲさんじゃないのかい?
いいえ、こちらが初なんです。
野生をゲットするという明確な意思をもって行ったのはこちらなんで。


という訳で、ようこそロンド!
ここではレッドへのフラグ立てれないからねカスミさん!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。