残念、テストがあっても書いちゃうんだな。
「ここがクチバシティ…」
カスミとの試合から2日。
ジムリーダーたちからの要請を受けつつも、それを後回しにしてヒカルは旅立った。
その目的地が何故クチバなのかと言うと、そこがカントー最大の港町だからだ。
思い返せば不思議なものである。
ヒカルは元々船でシンオウ地方からやって来たのだ。ならば船の上で何かあったにしても港がある町に辿り着くはずた。
だがヒカルが目覚めたのは内陸にある森だ。
これは明らかにおかしい。
ヒカルは後々そのことに気付き、暫く理由を考えた。
それで出した答えは、
『何が助けてくれたんだろうな』
もちろん海のどこかから遠い場所にあるトキワの森まで運ぶのは容易ではあるまい。
だからヒカルは、それを人がやったとは考えない。人が指示を出し、それに従ったポケモンだとも思わない。
もっと別の、強大な“何か”が助けてくれた。
ヒカルはそう思っている。
そのせいで両親とは逸れてしまったのだが。しかし、二人はヒカルとは違い港まで着いているかもしれない。
そこでヒカルを待っているかもしれない。
だからこそ、こちらを優先した。
両親に会うため。
そして、自分自身が戦うための覚悟を決めるために。
運命の地へと足を踏み入れる。
***
「……て言って、すぐに何か見つかる訳ないよな」
時刻は昼。
目の前に広がる海から風が吹きつけ、決して長くはない髪を揺らす。快晴の今日は、遮るもののないヒカルの肌を容赦なく焼いていた。
あれから数時間。ヒカルは町の中でひたすら聞き込みを行い、二人の影を捜した。
しかし、結果は出なかった。
二人はこの町にはいない。
だが同時に別の場所にいるということである。
選択肢が一つ減ったことは、ヒカルにとって喜ばしいことである。
そんな中で、早く会いたいという気持ちも膨れ上がっているのも事実ではあるが。
いい加減直射日光が嫌になり、首に巻くスカーフを取って頭の上にかざした。これからまたやらねばならないことが沢山あるため、悠長に日陰でのんびりしていられないのだ。
ほんの少し緩和された日差しを受けながら、今側にいない二人に向けて、複雑な想いを馳せていた。
「ちょいとキミ」
「はい?」
「そのポケットからちょこんと飛び出ているのは、もしやポケモン図鑑ではないか?」
「ええ、って何で知ってるの!?」
ボンヤリとさざ波を見ていたヒカルにそう声をかけてきたのは、立派なヒゲをたくわえた老人であった。
老人はヒカルの返答にサングラス越しの目を輝かせ、
「さらに、その腰にあるのはモンスターボールではないか!」
「ええもうそうですよ、何ですか!」
ヒカルはやけくそになって叫び返す。
いきなり話しかけられて、しかもポケモン図鑑を知っているちっこいおじいさんと早く離れたい一心で。
「今ワシの背について」
「気のせいですよきっと」
何だか心を読まれた。
最近こういうのが多いなぁと思ったヒカルだが、その理由はヒカル自身にあることに気付いていない。だからこうして睨まれるのはヒカルの自業自得である。
「まあいい、とにかくその中身を拝見!」
「へっ? ちょ何を!?」
でんこうせっかさながらの動きでヒカルのボールに手を回し素早くスイッチオン。
老人の強引かつ素晴らしい技に呆気に取られている間に、ライたちはその姿を見せていた。
「おおおおお!!?」
老人がさらに喜びの声を上げる。
じっくりと眺められたライたちもジト目で見つめているが、そんなことはお構いなし。
老人はサッと手を高々と掲げ、
「決定! キミを我がクラブ名誉会員とする!」
そう宣言した。
「………………は?」
突然話掛けてきた老人は、《ポケモン大好きクラブ》と称される愛好会の会長らしい。
クラブの集会所に案内される間、ひたすら自分のポケモンの自慢話をされ、酷く滅入った。
段々と足取りが重くなるパートナーを気遣い、ライが時々見上げながら進んでいく。アートたちもヒカルを気にしながら歩いている。
それに引き換え、目の前を歩く会長殿はそれに全く気付く様子はなく、どんどん進んでいく。
だが、辿り着いた集会所の中も似たり寄ったりであった。
私のポッポはこんなに可愛い、私のドククラゲなんか何たらかんたら………などと話している人混みをかき分け、ようやく落ち着い座れるところまで来れた。
「ささ、座りなされ」
「やっと、座れるぜ……はは」
勢いよくソファに座り込み、さほど強くないスプリングがヒカルの体を少し持ち上げた。それを見て、ライとアートが本気で心配そうな顔をする。
「大丈夫だって……うん」
にっこりと笑って見せ、二人の頭を撫でてやる。目を細めて気持ち良さそうにしてくれたので、先ほど感じた疲れが少し抜ける。
その際ルドラがこちらを睨んだような気がしたが、良く分からなかったのでスルーする。
「さて、さっきはどこまで話したかの」
「もういいですお腹イッパイです」
「むう、ワシとしては話し足りないのじゃが……」
「か、勘弁してくれ……」
ヒカルはもう涙目だ。
もう逃げようかと考えたところで、先ほど気になったことがあったのを思い出し、口にする。というか、それを聞くためにここまでついてきたのだ。
「会長」
「ん?」
「何でポケモン図鑑を知ってたんですか?」
「それは、レッドくんが持っとったからの」
「レッド!?」
「ちょい待ち! あんた今レッド言うたか!?」
「誰!?」
さっきから何だかてんやわんやだ。
今度はちょっと癖のある髪の青年が食いついて来た。と言うかレッドを知っていた。
レッド。
マサラタウンのレッド。
オーキド博士からポケモン図鑑を託され、
カスミが教えてくれた、素質を持った有望なトレーナー。
その人物の名が、たまたま出くわした老人から出たのだ。そして、レッドを知る別の人物までも現れた。
これは確かな収穫だ。
「ああ、つい熱くなってしもたわ。わいはマサキ、ポケモンの転送システムを作ったのも、このわいや!」
「って本当!?」
「嘘なんかつくかいな」
とんだところで本当に凄い人と出会ってしまった。
転送システムはカントーのみならず他の地方でも流用されている画期的なシステムである。研究者たちが研究室から出ず研究が出来るのは、偏にこのシステムのお陰と言っても過言ではない。
そんなものを作った人とこうして会えたのは、もしかしたらレッドのお陰か。
「マサキさんは、どうしてレッドを知ってるんですか?」
「マサキでええよ。いやな、アイツに以前助けられてな。文字通り、命の恩人や」
「………わぁ…」
「お前さん信じとらんやろ」
出会ったのはだいぶ前のようだ。ならこの近辺にいるかも、という考えはなくなる。
「ワシも大切なポケモンを助けてくれたからのぉ」
「アイツこんなとこでもなんかしとったんやな、まあレッドらしいけど。クチバ湾の生態調査しよう思うて来たけど、偶然っちゅうのは凄いな、ホンマ」
マサキと会長はそのまま会話を続けようとした。
しかし、ヒカルは聞き捨てならない言葉を聞いていた。
「会長」
「何じゃ? ワシはこのマサキくんを我がクラブに入れようと」
「今助けてもらった、って言いましたよね? それって、誰に何をされたんですか?」
「………それは、のぉ」
饒舌なまでに喋り倒していた会長が言葉を濁す。
そして出てきたものは―――
***
「こんなところで、会えるなんてな」
ヒカルは再びクチバ湾に来ていた。
しかし、場所は先ほどとは違う。
ロンドに乗って、海の上を漂っていた。
目的は一つ。
「《ロケット団》………許さない…!」
レッドの足跡を辿り、ロケット団という《悪》を見つけた。
かつて敗れたというロケット団幹部は未だ行方知れずの《クチバジムリーダー》らしい。
その情報だけでもヒカルの正義感に火をつける。
さらにその影が関わっているのかいないのか、クチバ湾で最近ロケット団が目撃されているらしい。
ここまで来れば、ヒカルはもう放っておけない。必ず探し出し、警察に突き出すのだ。
だが、
「…………でも、いない……」
そう、先ほどからずっと捜索を続けているのだが、一向に見つからない。
今日は何もしてないのだろうか―――と思った、その時。
キラリ、と光るものが見えた。
次の瞬間。
「っ、回避!!」
ヒカルの指示に即座に反応したロンドがその場で緊急回避を行う。
ほぼ同時にロンドがいた場所に“ソニックブーム”が当たり、高々と水飛沫を上げる。
「っ……あれは………!」
水飛沫を掻い潜り攻撃をしてきた方向を睨む。
そこには、四体のレアコイルと‘宙に立つ’男がいた。
金髪のトンガリ頭、鍛え上げられた身体と厳つい風貌。
その男は音もなくヒカルたちへと真っ直ぐ向かって来た。
近くなってさらに先ほど聞いた容姿と合致することを確認する。
ヒカルの手が無意識のうちに拳を作り、睨みつける目が鋭くなる。
そんなことを気にもせず、男はサングラスを外す。手に持ったそれで目の前にいる子供を指しながら、
「ガキ……こんなところで何してんだァ?」
クチバジムのリーダーにしてロケット団幹部、マチスが立ちはだかった。
***
「マチス……お前が」
「ガキのクセにオレ様のことを知ってんのか。なら、オレ様はお前をぶっ潰せばいいんだな?」
そう言って指をパチン! と鳴らした。
すかさずレアコイルが“ソニックブーム”を繰り出す。
「ロンド!」
細かく指示を出さずとも意図を汲み取り、ロンドは次々と攻撃をかわしていく。
「ケッ、やっぱ普通のガキじゃねぇな。‘あの小僧’と同じか。まあいい、さっさとぶちのめしてやるぜ!」
レアコイルの攻撃がより激しくなる。
ロンドも完全にはかわし切れなくなり、徐々に被弾していく。
「あの小僧…!?」
「そうだよ、あの《レッド》とか言うガキだ」
「レッド…!」
ここでもまたレッドの名が出た。
どうやらレッドは敵にも有名らしい。尤も、今対峙しているマチスはそのレッドに敗れたらしいが。
「っ…負けられ、るかよ!」
だがヒカルはレッドではない。勝算がある訳でもない。
だが勝たねばならない。
それがヒカルの決めたことだから。
ロケット団を倒すと決めた、その意志を示すのだ。
「ロンド、ジャンプ!」
敵の攻撃を掻い潜り、マチスの目線まで飛び上がる。その高さ、約六メートル。
驚異的なジャンプ力を見せたロンドは、ヒカルを乗せてマチスへと近づく。
そして並行に並んだ両者の間に見えない火花が飛び交い、
「てりゃあっ!!」
マチス目掛けて飛びかかった。
が、
「ぶあっ!?」
見えない壁にぶつかり、そのまま弾き飛ばされる。
「電磁のバリアー。あのガキにゃ閉じ込めてやったが、オレ様が乗れば強固な壁になるって訳さ」
落下するヒカルの耳に届く言葉。しかし、今はそれに構っている暇はない。
ロンドに助けて貰おうと目線を向けるが、バリアーの一部を解いたレアコイルが再び攻撃をしている。ロンドは回避するのに精一杯でこちらには手が回らない。ヒカルには他の水ポケモンはいないので交代も出来ない。
つまり、絶体絶命。
「―――諦めるかよっ!」
水面へと近づく中、ヒカルがとった行動は、別のポケモンを繰り出すこと。
それはヒカルにとって賭けであり、
「頼む……助けてくれ…!」
ヒカルからの信頼の証。
「ルドラああああっ!!」
真下へと放たれた光はヒカルの声に同調し、膨張する。
その光の中心にいる影は、対になる翼を広げ大きく羽ばたき―――ヒカルを見事にキャッチした。
「はは…ナイス、ルドラ」
ハナダから来るまでの成果が実り、新たな姿を得たルドラは一際大きく吠えた。
その一瞬の隙を突いて、ヒカルの耳に届いた声。
「エレブー、“かみなり”」
おり? 思ってたより短いぞ?
でも多分次は長くなる。
さて、マチスが登場しました。
やっとやりたい話の一つが出来ました。
個人的に電気タイプ大好きなのですが、ポケスペの印象強くてゲームとかのマチスあまり好きじゃないです。シトロン派です。
このオレ様マチス様には色々頑張って貰いましょうか。
あれ? ルドラいつの間に進化するレベルまで上がったんだい?
ごめんなさい、作者が下手くそなんです。