砲雷長と神盾   作:みたらし饅頭

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第零隻「神の盾 DDG-190」

日本の海。

それは静かで穏やかな生物がすむ地とも形容される場所。

古来より日本人は、海の恩恵を受けて生きてきた。

そして海の外へも出るようになった。

海の中でも地球最大の海は太平洋といわれる。

太平洋では太平洋戦争と呼ばれる世界最強国とまことに小さな国が戦争を行ったこともあった。

有名どころでは、歴史の授業で出てくるミッドウェー海戦やマリアナ沖海戦。

第三次ソロモン海戦、沖縄特攻などがあげられるだろう。

様々な艦や航空機、兵士が海へと赴き、多くの若く尊い命が散っていった。

国家総力戦を掲げた日本は、300万の尊い命と引き換えに帝国主義という蜃気楼から覚めることになった。

その長きに渡る国家総力戦が終わりを告げてから70年。

幾度の海戦を経た今日の太平洋の海には、日本を守る盾である艦隊が航海をしていた。

我々は、そのうちの一つの存在に目を向けなばならない。

それは艦首に190の番号と、艦尾には「かこ」の文字が入っている艦。

かこ型ミサイル搭載護衛艦1番艦「かこ」と呼ばれる海上自衛隊の最新鋭護衛艦だ。

今、航行中の「かこ」艦内にある頭脳部的役割のCICでは訓練が行われていた。

暗い冷房が効いた室内では、30代と思しき三等海佐の階級章をつけた一人の男性がヘッドフォンをつけて、レーダーに映された光点を集中してみていた。

彼が我々の目を向けるべきもう一つの存在である。

ある光点が映し出された時、一等海曹の階級章をつけた若い男が声を上げた。

 

「対空レーダー目標探知!敵対艦ミサイルと思われます!高速で接近!」

「航海科に通達、戦闘に備えよ。」

「了解!」

 

男性は冷静に対処し、指示を待った。

そのすぐ後で、けたたましい鐘の音とともに放送が入る。

 

『総員対空、対水上戦闘用意!!』

「総員対空、対水上戦闘用意!救命胴衣とテッパチを着用しろ!」

「了解!!」

 

放送を聞いた三佐が声を張り上げると、CICにいた全員が配られた88式鉄帽と救命胴衣を着用していく。

全員が着用したのを確認した三佐は、自分の装備がそろっているかどうかを確認する。

救命胴衣には彼らが背負うべき名である「海上自衛隊」と職が灰色の下地の上に白文字で書かれていた。

その中でも、三佐の救命胴衣には「砲雷長」というCICの長の名前が記されていた。

彼こそ、この先の道の航海を歩む自衛官だ。

砲雷長が確認を終えると同時に、光点は円の中心である本艦に向かってきていた。

 

「『あたご』、SM-2発射!敵対艦ミサイルに向かって飛翔中!」

 

レーダー要員の三等海曹が叫ぶと同時に、敵の対艦ミサイルに対して僚艦であるあたご型護衛艦1番艦「あたご」がSM-2”スタンダード対空ミサイル”を発射したことがレーダーに表示される。

スタンダードを表す光点は、徐々に敵対艦ミサイルを表す光点に近づく。

 

「『あたご』のスタンダード着弾まで5秒前!4、3、2、1・・・マークインターセプト!」

 

レーダー要員からの報告とともにSM-2の光点が消える。

しかし敵対艦ミサイルの光点は残っていた。

これは「あたご」のSM-2が外れたことを意味する。

それを見た若い三等海曹の自衛官は冷や汗をかく。

 

「SM-2外れました!敵対艦ミサイル「あたご」を抜けて本艦に接近!」

「も、も、も、目標よりアクティブレーダー!完全に本艦をロックオンしています!」

「落ち着いてやれ。対空戦闘!」

「ハッ!対空戦闘!VLS発射用意!イルミネーターリンク!発射5秒前!4、3、2、1!発射!!」

「いいぞ。」

 

三佐は三曹の肩に手を置いて落ち着かせる。

落ち着いた三曹は正しい手順を踏んで、模擬ではあるが前甲板VLSに格納されたSM-2を発射させる。

それと同時にSM-2の光点が現れ、敵対艦ミサイルに飛翔する。

 

「スタンダード着弾まで5秒前!4、3、2、1・・・マークインターセプト!」

「目標撃墜!反応なし!」

 

光点同士が重なると同紙に消失し、撃墜が確認された。

それを確認した砲雷長は艦橋へ報告を入れる。

報告から数秒後、艦内放送が流れた。

 

『教練対空戦闘終了!対空戦闘用具納め!』

「教練対空戦闘終了!対空戦闘用具納め!」

 

砲雷長が号令をかけると全員が戦闘態勢を解く。

それと同時にCICにも安どの空気が流れた。

砲雷長はヘッドフォンを外すと一息ついてから目線を上げてレーダーを眺めた。

対空戦闘が終了して数時間後の「かこ」ヘリ甲板では「航海長」と「砲雷長」と書かれた救命胴衣を着た自衛官が、肩を連ねて航跡を見ていた。

 

「菊川。今回の対空戦闘は張り詰めたんじゃないか?」

「そういうお前はどうなんだ尾崎。二佐になって浮かれてるんじゃないか?」

「おいおい、お前より上だからって睨むなよ。」

 

航海長の尾崎康太二等海佐と、砲雷長である菊川雅則三等海佐は笑いつつも会話を弾ませた。

二人は海上自衛隊幹部候補生学校時代から友人で非常に親密な関係であった。

尾崎は防大出身のエリートで菊川は一般大学出身だった。

そのため、昇進スピードも尾崎の方が早く一階級上だが、二人の時には関係なかった。

 

「にしてもびっくりだなぁ。幹補以来だな?」

「そうだな。康太は『こんごう』勤務だったか?」

「おうよ。雅則は『ひゅうが』だったな。」

「あぁ、航海科としてな。」

 

過去の勤務歴を思い出のように話す二人。

二人とも現在の階級に上がるまでの間に各艦を転々としていた。

それが二人の経験値をためることとなり、最新鋭艦搭乗員に抜擢される所以ともなった。

 

「にしてもこの『かこ』はすげえよな。」

「まぁ、最新鋭だからな。砲雷長としての責任は重い。」

「お前が被弾出すわけねえだろ?逆に大和の主砲弾を叩き落としそうだぜ。」

 

最新鋭艦の『かこ』砲雷長を務める菊川を冗談半分でいじる尾崎。

それに菊川は渋い顔をしながら答える。

 

「無茶言うな。いくらイージスシステムでも徹甲弾は叩き落とせんぞ?それに、俺はあの砲雷長じゃない。」

「だな!・・・・・・だけどさ、俺たち戦後の日本人がもしあんな世界に行ったら・・・・。どうなるんだろうな?」

「さぁな。俺はただ自衛隊であることは貫く気だ。」

「一貫性だねぇ・・・。」

 

ある漫画の様なSF展開を考える尾崎は菊川の真面目さに目を細めて溜息を吐いた。

そして時計を確認すると慌て始める。

 

「いけね!予定時間まで10分だ!」

「急げよ。ここから走ってギリギリ艦橋だ。」

「ヘイヘイ・・・お前の二佐昇進試験来年だよな?試験通ったら航海科全員で祝ってやるよ!」

「早くいかないと遅刻するぞ!」

 

予定時刻が迫っていることに気づいた尾崎は大急ぎでヘリ甲板から駆け出す。

去り際には、笑顔を見せながら菊川の昇進祝いをすることを約束して。

戻るまで時間がある菊川は微笑みながら、航跡とそれを照らす夕日へ視線を移し、眺めていた。

変化が起こったのは訓練から数日後の南鳥島沖だった。

夜に航行していた「かこ」の所属する艦隊は赤黒い雲に遭遇していた。

非常時に備えて菊川も救命胴衣を着用した上でCICで指揮を執っていた。

 

「状態はどうだ?」

「対空、対水上レーダー、ソナー、リンク14正常稼働。」

「VLS、ハープーン発射管、主砲、CIWS、魚雷発射管の正常稼働確認。」

「異常はないな・・・。」

 

菊川は異常がないことに安堵する中で不安感があった。

かつて読んだ漫画で似たような展開があったのだ。

それが頭をよぎるが、漫画の事だと頭を振って考えをかき消す。

そして識別帽を深めに被ると、レーダーを射貫かんという鋭さで睨み付けた。

程なくして、異常な雲が覆う海域に艦隊は踏み込んだ。

異常と呼ばれる異常はなかったものの、菊川の不安感はぬぐえていなかった。

念のために艦内電話を使い、艦橋にいる尾崎に連絡を取る。

 

「艦橋、CIC。此方砲雷長、尾崎航海長との対談を求めます。」

『許可しよう。』

 

電話口から副長の竹田二等海佐の声が聞こえて雑音が聞こえてから、尾崎の声が聞こえてきた。

 

『此方航海長。どうした砲雷長?』

「航海長、現在の海上はどうですか?」

『あー・・・・とにかく赤黒い雲が不気味だな。4㎞先の「あたご」は視認できるぐらいには晴れてるぞ。』

「了解しました。ありがとうございます、質問は以上です。」

『了解。以降も警戒を続けてくれ。』

 

二佐と三佐という関係上、敬語で話す菊川は、聞きたいことを聞くと礼を述べる。

尾崎からの言葉を受け取った後、艦内電話を切って受話器を元に戻す。

そしてCIC内の航海図を眺め始めた。

かつて「ひゅうが」航海科所属だった時の経験を生かして、予定航路の進路と現在の速度でどれだけの時間を要するかを算出する。

だが、その時に異変が訪れた。

 

「なんだこれは・・・!レーダーに障害!」

「主砲射撃管制装置、CIWS、イルミネーターに異常発生!」

「リンク14、作動しません!」

「復旧急げ!艦内電話は!?」

 

装備に異常が出た報告を受け、菊川は復旧を急がせる。

次に、艦内電話を確認するために受話器を手に取るがノイズしか聞こえなかった。

 

「艦橋、CIC!艦橋、CIC!くそっ!」

 

菊川はイラつきをぶつけるように受話器を叩きつけながら戻すとレーダーを見る。

しかし、未だ砂嵐状態だった。

更に問題は起こり始める。

 

「あ゛っ・・・頭が・・・・!!」

「なんだこれ・・・・!!」

「どうしたっ!」

 

菊川以外の自衛官が苦しみだしたのだ。

全員が頭を抱えて苦しんだ後、床に倒れこむ。

菊川が脈を測ると、脈はあるため生きてはいるようだった。

 

「いったい・・・・何が・・・。」

 

一人しか起きていないCICで菊川は呟いた。

茫然とする菊川にある声が聞こえてきた。

 

『・・・・・・・・長・・・・・・・・・て・・・・・・・・。』

「誰だっ!!」

 

菊川が周囲を見回すが誰もいない。

それに声も艦に乗艦していない女性の物だった。

 

『砲・・・・・長・・・・・・・・して・・・・。』

「砲・・長・・?俺の事か?」

『砲雷長!引き返してくれ!!』

「うっ!!」

 

女性の声がはっきり聞こえると同時に菊川は立ちくらみ、意識は深い底へと投げ込まれた。

かこ型ミサイル搭載護衛艦1番艦「かこ」は完全に操作するもののを失った艦となってしまった。




艦これアーケード始まりますね。
私は予定上、明日から参戦ですが。

というより今回艦娘出てませんね。
すみません。



次回「砲雷長と『かこ』」
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