砲雷長と神盾   作:みたらし饅頭

2 / 4
アーケードやってきました。
制限ありだったので短かったですが、菊月、金剛、暁をGETしました。
では第一隻開始でございます。


第一隻「砲雷長と『かこ』」

「うぅぅぅ・・・・。」

 

気を失った菊川は床に倒れこんでいた。

頭を押さえつつ、作業台をつかんで立ち上がるとレーダーは正常に表示されていた。

だがすべてが正常ではなかった。

 

「皆・・・どこへいったんだ?」

 

CICには誰もおらず、菊川しかいなかった。

普通、上官からの命令がない以上は持ち場を離れることは自衛隊に置いてご法度である。

その上、ここは艦の頭脳ともいえるCIC。

余程の事がない限りはCICからいなくなるということはないのだ。

 

「全ての火器システムは異常なし・・・・念のために鍵は持っておこう。」

 

菊川は持っていた発射キーを確認すると、まずは状況把握のために艦橋に向かうことにした。

しかし、艦内に不審者がいる可能性も踏まえて、まずは武器庫へと向かった。

武器庫に辿り着くと、所持していた鍵を開けて部屋の中に入り、拳銃保管庫の鍵を開ける。

そして中から自分に充てられた番号の拳銃を取り出すと、実弾を込めて撃てる状態にしてから、それを構えて艦橋へと向かった。

途中、食堂や士官室等を見回って声もかけたが、誰一人として自衛官の姿が見えない。

そのことに緊張と不安感を覚えた菊川の拳銃を握る手は、汗ばんで小刻みに震えていた。

自分が自衛官であることを思い出し平常心を保ちつつ、菊川は艦橋までやってきた。

一気には艦橋のドアを開けず、まずは耳を当てて中の状況を探る。

耳を当てて意識を集中してみると、中から歩行音と女性が何かを呟いている声が聞こえた。

何を言っているまでは把握できないが、菊川はその声に聞き覚えがあった。

意識を失う直前に自分に引き返せと言ってきた女性の声だ。

 

(あの女・・・・艦を乗っ取ったのか?にしては静かだ・・・・まずは聞くのが一番だろうな。)

 

菊川は意を決してドアのノブに手をかけて深呼吸をする。

そして落ち着いたのを確認してから一気にドアを開き、艦橋へ駆け込む。

駆けこむと同時に、即座に女性へ拳銃をつけつけた菊川は声を上げた。

 

「自衛隊だ!おとなしく手を挙げろ!!」

「うわぁぁ!タンマタンマ!!」

 

だが張り詰めた菊川の緊張は、一瞬で崩れ去った。

目の前の女性は、身長165~170で特徴的な露出の多いセーラー服。

一部だが露出しているところには黒いサラシの様な布が巻かれており、前髪は左目を隠しているほど長く、後ろ髪も腰のあたりまで長い。

更には後ろ髪を結っている赤いリボンも足先に至るまで長い。

その上、靴かブーツかよく分からないものも重厚そうなデザインとなっている。

以上の特徴から菊川はあるキャラクターを思い出す。

目の前の女性に全く瓜二つな、加古型重巡洋艦二番艦「加古」をモデルとした「加古改二」。

艦娘と呼ばれるゲーム内のキャラクターだ。

菊川自身、そのキャラクターが登場する「艦隊これくしょん~艦これ~」をプレイしていて加古も保有している。

そのため目の前の加古には馴染みがあった。

 

「・・・・・・少し聞くが・・・・加古・・・・・なのか?」

「あー・・・・砲雷長が思い浮かべてるのは先代だよ。」

「は?」

 

目の前の女性に質問する菊川だったが、予想外の言葉に疑問符が大量に出現せざるを得なかった。

疑問符に埋め尽くされ、ショート寸前のところに女性が声をかける。

 

「とりあえず拳銃を下してくれよ。私対抗できるもの持ってないだろ?」

「・・・・・それもそうだな。」

 

女性が手を頭ぐらいの高さまで持ってきてひらひらさせるのを見た菊川は拳銃を下す。

だがまだ油断できないため、利き手である右手に握りしめている。

それを見た女性はため息をつく。

 

「はぁ・・・だから対抗する気ないって。といっても砲雷長は心配症だっけ・・・。」

 

ブツブツという女性に菊川は少々苛立ちを覚える。

女性はわざと咳き込んだ後、菊川に向かい合う。

 

「んじゃ、自己紹介と行くか。日本国海上自衛隊所属、かこ型ミサイル搭載護衛艦の1番艦『かこ』ってんだ、よっろしくぅー!」

「・・・・・・・はぁ?」

 

菊川は間抜けな声を上げた。

目に前にいる女性が、あろうことか自分が乗艦して砲雷長を務める艦だと言い出すのだから仕方ない。

少々開いた口がふさがらず何度も頭で聞いた言葉をリピートする菊川。

念のために間違っていないかを確認することにした。

 

「・・・・・この艦・・・つまりお前は『かこ』なのか?」

「そうだけど?」

 

何当然のことを聞いていると言わんばかりに女性は首をかしげる。

それについていけない菊川は目元を左手で押さえて溜息を吐いた。

 

「あっ、信じてないな~?」

「そりゃ目の前に女性が現れて『自分、艦なんです!』なんて言われて信じれるかい。」

「ほほ~う。なら私が知ってることを言うぞ~。」

 

呆れた表情をして信じ切れていない菊川に、自分の事を信じさせようと知っていることを話して信じさせるという女性。

それに対して菊川はできるものならやってみろという顔で女性を見る。

女性は自信満々に語りだした。

 

「砲雷長の名前は菊川雅則、階級は三等海佐で横須賀基地所属。1987年7月15日大阪府生まれの29歳。身長178㎝、体重70.4㎏。半年前に就役した私に砲雷長として配属。艦これ提督で海自、軍艦オタク。いっつも艦内に私物で艦これ関係の小説とか持ってきてるよな?尾崎二佐とも仲いいしさ。あっ、あと独身で童貞。」

「ホンマか・・・・。」

「ヘッヘ~ン。砲雷長の事なら何でも知ってるぜ!」

 

名前に階級、誕生日と出身地、身長、体重、経歴、趣味、行動、友人関係まで言われた菊川は関西弁が出るほどに驚き、信じるしかなかった。

そんな菊川を見て、かこは誇らしげに胸を張った。

現状が科学的に証明できないのは百も承知の菊川だが、とりあえずは行動を起こすのが先決と考えた。

そして行動のための情報を得る為、かこに尋ねた。

 

「かこ。艦長や副長はどうした?」

「それが見当たんねーんだ、どこ探してもいないしさ。代わりに妖精ならいたけど。」

「妖精?」

 

かこに情報を求めたが、あえなく空振り。

だが代わりに妖精を見つけたという情報から菊川は疑問符を浮かべた。

それが何であるかを示す様に、かこは艦橋に設置されている羅針盤を指さす。

 

「ほら、羅針盤の上にいるだろ?」

「こんにちは砲雷長!」

 

かこが指さした先には身長10㎝ほどの二頭身の人型生物がいた。

その生き物は海上自衛隊の作業服と「かこ」の識別帽、救命胴衣を着用していた。

菊川はこの生物に見覚えがあった。

艦これに登場するキャラクターで俗に「妖精さん」と呼ばれている。

様々な二次創作で役割や由来があるが一般的には「艤装の操縦者」として知られている。

そんな存在が目の前で敬礼をしているという事実に本来なら驚いて声も出ないのだろうが、オタク気質か、かこに驚きを連発されて慣れてしまったせいで菊川自身も驚かなくなっていた。

 

「お、おう。で、この妖精だけか?」

「いや、ほかにも数十人。艦長と副長にあたる妖精さんはいなかったね。聞いたらこの妖精さんは航海長だとよ。」

「尾崎と同じ役職か・・・・。」

「尾崎二佐ほどではありませんが頑張ります!」

 

菊川が尋ねると、加古はまだ数十人いるという。

ぴょんぴょんと跳ねながらアピールする航海長妖精をかわいいと思った菊川であったが、優先順位を考えてその考えを放り投げる。

 

「とりあえず艦長と副長の妖精がいないんじゃ現状の指揮官は誰だ?」

「砲雷長じゃない?」

「妖精には階級がないので自衛官は砲雷長さんだけです。」

 

二人に突き付けられた現実に菊川は目元を押さえる。

まさかの艦長抜擢となってしまい少々不安感が襲ってくる。

だが仕方ないと割り切り、自分にできることを全うしようと決意する。

 

「仕方ない・・・・現状最高階級の俺が指揮を執る。かこ、現在位置は?」

「南鳥島から36度、5000先の洋上。ついでに機関は停止状態で僚艦も無し。」

 

かこから聞いた位置を脳内の航海図にあてはめた菊川は、指示を下した。

 

「弾は残ってるはず・・・進路270度、機関第二戦速で横須賀帰投を目指す。」

「了解、進路270、取り舵いっぱーい!」

 

菊川が示した方向に、かこは舵をとる。

機関がガスタービン特有の音を立てながら起動すると、艦はゆっくりとその鋼鉄の巨体を動かして南鳥島から横須賀へと進路を取った。

大体の進路と状況を確認した菊川は、CICへと戻っていた。

CICには数名の妖精だけで管理されており、大まかに分けられているものの、妖精さんの力で操作できるという。

菊川は大まかな指示を出すと戦闘がかかるまで情報を集めていた。

JSATでは衛星を捉えられず、満足な戦闘はできない状況であった。

特に驚愕したのはデジタル表記の時計が1986年8月15日を示していることだった。

菊川が異変に遭遇したのは2016年の8月15日。

年以外はズレがないことに違和感を覚えつつも、菊川は眼前の問題である航海に集中することにした。

航海が始まってから4日後、菊川たちは何とか横須賀近海へと近づいていた。

菊川は、CICを砲雷士妖精に任せて艦橋にやってきていた。

その隣では、かこがぴったりと立ってる。

菊川は艦内電話を手に取るとCICに連絡を入れた。

 

「CIC、艦橋。周囲に異常はないか?」

『待ってください・・・・レーダーに感なし。』

 

砲雷士からの通達に安堵する菊川だったが、その安堵はソナーからの報告で書き消される。

 

『ソナーに感!潜水艦が6隻!音紋解析不可能!速度8ノットで本艦に接近中!距離3500!』

「艦橋、ソナー!なぜ探知できなかった!!」

『水中雑音の多い、表面層の音響屈折部にいた模様!この時代の浦賀水道のデータが不足しています!!』

「馬鹿者!妖精とはいえ4日間のお前の練度不足だ!・・・・かこ!対潜警戒を厳となせ!」

「了解っと!」

 

ソナーに感があり、それが潜水艦だと判明した以上、菊川がとるのは海戦の回避となる。

もし相手方が海軍ならば、日本には海上自衛隊がない確率が高くなる。

そうであれば相手からしたら、見たこともない艦が進行してくる。

となると迎撃されるのがオチだろう。

菊川もそれが避けたく思い、艦橋で迅速な指示をとる。

しかし、時代はそれを許さなかった。

 

『ソナー、艦橋!水中から雑音!潜水艦が魚雷を発射した模様!175度から4発接近!雷速44ノット!距離3200!』

「総員配置に着け!対潜戦闘用意!」

 

艦内放送を終えた菊川は艦橋の机を殴りつける。

だが魚雷はいまだに接近してくる。

CICからは続報が次々と報告される。

 

『魚雷、本艦に命中するコース!接触まで2分10秒!』

「どこに命中する!?」

『本艦左舷艦尾!』

「面舵いっぱーい!」

「面舵一杯!」

 

魚雷の進路を聞いた菊川は、かこに面舵をとる様に指示をする。

最大戦速で航行しているためかなりの揺れだが戦闘を行っている以上、そんなことを言ってはいられない。

 

「舵戻せ!進路280度を維持!」

「進路280度ヨーソロー!!」

 

舵を戻した「かこ」に魚雷が接近してくる。

それを発見した航海科妖精は声を上げた。

 

「魚雷、距離50!」

『30!』

 

CICでもギリギリの距離で魚雷の光点が「かこ」の光点を過ぎ去る。

それは艦橋のウィングからも確認されており、妖精たちは声を上げた。

 

「魚雷4本!本艦左舷3メートルを通過!躱しました!」

「安堵するな!CIC、潜水艦の魚雷発射位置に照準!」

『了解!方位140度、距離3500!』

 

CICに潜水艦の位置を照準する菊川は思考を巡らせていた。

ここは相手にとって庭の様な物、つまりは例え迎撃しても追撃の可能性もある。

何より自衛官としての菊川が先制攻撃を禁じていた。

同じ日本人同士で血を流すことを認めようとしなかったのだ。

だが、相手は殺す気で来ている、そうなれば自衛隊は正当防衛をするしかない。

相手の命を奪う「実戦」に菊川は震えていた。

その菊川の手を、かこは優しく握った。

突然の事に顔を上げた菊川の目には笑っているかこが映った。

 

「砲雷長。この時のために訓練してきたんだろ?今が自分の出せる力を出し切るときだぜ。大丈夫、私がついてる限り失敗はないから!」

「・・・・・かこに励まされるなんて俺もまだまだだな。」

「なんだよそれ!」

 

自分がいるから大丈夫と励ますかこに菊川は自分が未熟だと感じた。

そう言われて、ウガーと腕を振り上げながら怒るかこに菊川は噴き出す。

そして、かこの頭に手を置いて優しく撫でた。

 

「ありがとうな、かこ。少し勇気が出た。」

「任せとけって!砲雷長の艦だぞ?」

「それもそうだな・・・・総員有事の衝撃に備え!指示があるまでは発砲は厳禁だ!」

 

かこに貰った勇気を胸に、菊川は艦内放送を入れた。

各妖精が準備に入る中、菊川はこれから起こる戦闘を心の隅で恐れていた。

だが、隣に立っているかこの事を見ると、そのことは気にならなくなっていた。

奇しくも、これが日本国海上自衛隊とこの世界の日本国防衛組織との最初の接触となるのだった。




次回「殺られる前に」


命を守るというただ一点において、命を奪える武力<ちから>を持つ者は存在を許されるのだ!

―かわぐちかいじ著「ジパング」第1巻、航跡4「生存者」より
 角松洋介二等海佐
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。