あなたのしらないハリー=ポッター   作:おーり

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ラヴコメの練習中


ロンが西向きゃ東だフォイ

 

「うわ、なんかキモい馬」

 

 薄荷くんは中身の割にあんまり嫌そうでは無い声を日本語で上げました。

 彼の前にはホグワーツ本校舎へと彼ら生徒たちを連れて行ってくれる何台かの馬車、そしてそれを牽引するセストラルという天馬がいます。

 しかし件の馬に誰もが気に懸けた様子が無いので、この国では普通なのかな、という思考で表情に出さず済ませていた薄荷くんです。それなら声に出さなければいいのでは、とも言えますが、物語の導入として何か口出しして貰わなければ作家泣かせも良い処なのでした。

 

 本当の処、このセストラルという馬は『死に触れたことのある者にしか見えない』という特徴を持ちます。

 しかし、そもそも病院という施設や葬式という文化がある世の中で、家族の死にすら触れない、という子供は少数ではあっても消して居ないわけでは無いはずです。

 斯く云う薄荷くんも、少し前に彼の(ひい)お祖父さんが親族一同に見守られる中118歳の大往生を布団の上で遂げたばかりなので経験ありなのです。

 事実、件の曾お祖父さんご本人から「よく見とけ、これが人が死ぬと云う事だ」と看取られることを呵々大笑していたというのだから、随分とはっちゃけたファンキーな爺様であったことが覗え易いエピソードでした。

 それは兎も角、見た目こそ色々危うい馬ですが、人外についての耐性はそこそこある薄荷くん。

 むしろ弱々しく見えているので、その点だけが心配に思うちょっと優しい少年でした。

 

 話を戻しますが。

 汽車の中では赤毛の少年の使い魔であるネズミを茉莉ちゃんが捕えて来てしまってひと悶着あったり、結局ネビルくんのトレバーが見つからないまま到着してしまったり、と初手から踏んだり蹴ったりなホグワーツです。

 結局トレバーとは一体ナニモノだったのでしょう。

 ネビルくんのイマジナリーフレンドでは無いことを祈るばかりです。

 

「見えたぞ、アレがホグワーツだ」

 

 赤毛の少年と共にいたメガネの少年に特に聴こえるように、案内人だと名乗ったハグリッドという大男が声を上げます。

 遠目に見える城のような建物よりも、いつの間にか別行動となっていたハーマイオニーの方が気になる薄荷くん。

 彼女は件のメガネの少年と同じ馬車に乗っており、気づけば外れていた薄荷くんは後ろの方の別の馬車です。

 彼女の立ち位置が心なしかメガネくん(略)とちょっと近しいような気がしなくも無く、汽車の中で話しかけてくれたことが少しだけ嬉しかった薄荷くんは、ちょっとだけ心の片隅に不満を抱いていました。

 

 カルガモの親子のようにぞろぞろと、大男に連れられて暗闇の中を突き進む様はむしろハメルンの暗喩みたいですが、そんな物騒な連想をするのは薄荷くんくらいしか居なく、大した不満も抱かずにローブ姿の子供たちはホグワーツ城へと近づいてゆきます。

 しばらくすれば少々薹の立った熟年の魔女が子供たちの牽引を引き継ぎ、荘厳な扉が開かれ、目にも眩しい大聖堂のような大広間へと案内されました。

 読者の皆様お待ちかね、組分けのお時間です。

 

「……~~だ、スリザリンはいやだ……!」

「――ハリー・ポッター、グリフィンドォォォル!」

 

 ――わえっひょぉぉぉいいぃぃぃやっふぅぅぅ!!!

 

 とかなんとか、まあ眼前でブツブツ呟いていた眼鏡くん(略)の言動が目ざとく気になったのは薄荷くんだけのご様子で、彼を確保できたことで豪い大盛り上がりな寮生らにやや引き気味な薄荷くんです。

 なんでしょうね、有名な少年なのでしょうか。

 尚、彼より前に呼ばれていた薄荷くんはレイヴンクローという読書家の集まりでした。

 別段彼本人は本を読む方、というだけで執着しているわけでは無いのですが、どうにもストーリーさんから要らない子扱いされた気がしなくもありません。

 しかしそんなやや遅いネグレクトに異論も唱えることも無く、用意された豪勢な晩御飯に舌鼓を打つ薄荷くんでした。

 

 

 ×  ×  ×

 

 

「あ、ハッカ。おはよう」

「よーネビルくん、おはよー」

 

 翌朝、初めての寮生活ということで寝つき難く、しかし余裕を持って生活する心構えを忘れたくない薄荷くんが出て来た頃には、大体の生徒たちが朝食を終えようという時間帯です。

 グリフィンドールに修まったネビルくんに先に見つかり挨拶を貰いましたが、呼び捨てにされると何かしらもやもやっとした違和感が拭えない薄荷くん。

 早くも異文化コミュニケーションの壁にぶち当たっている模様です。

 

「これから朝食なの? ハッカって1人部屋?」

「おうそーだ、聞いてくれよネビルくん。同室の奴が全然俺に配慮してくれなくってさ。此れが異文化の壁?」

 

 実のところ、彼と同じ部屋になったレイヴンクローの同級生と碌なコミュニケーションがとれておらず、普通に寝坊しただけの薄荷くんでしたが。

 詳細を聴く処にうっすらと状況を把握したネビルくんは、聞いてはいけないことを聞いたのだろうか、と少々の困惑顔を晒します。

 

「ハッカ……ひょっとして友達出来てないの……?」

「失礼じゃねネビルくん? というか、キミは暗に友達になってくれないという答えかチクショウ」

「いや、ほら、僕はグリフィンドールだし」

 

 申し訳なさげな口調ですが、その実内心では就きたかった寮に選ばれてちょっとだけドヤ顔のネビルくん。

 選民思想は誰の下にもあるのです。そうあなたのとなりにも……。

 

「――他所の寮生と騒ぐより、先に朝食でも取るべきじゃないのか?」

「あ。アリスくん」

「その名前で呼ぶな」

 

 こげ茶の混じった黒色で少々野暮ったく整えられていないぼさぼさ髪の少年が、空となった配膳片手に彼らの後ろをすれ違い様に注意したところ、気づいた薄荷くんをにべもなく切り捨てました。

 レイヴンクロー新入生の最初の授業は魔法史学だ、と言い捨てて去ってゆく姿は一陣の風を思わせます。

 

「今のが同室のアリス・ページくん。昨夜からあの通りなんだよ」

「仲良くなる気サラサラないね。ハッカ、何か嫌われるような事でもしたの?」

「……いや、距離を詰めようかと『オンナノコみたいな名前だよな!』って……」

「それだろうね」

 

 実は日本で妖怪女子(モンスターガール)に囲われていた薄荷くん。

 男子の友人がなかなか出来ず、その弊害がこんなところに発揮されました。

 何気にハーレム野郎だったことに全ドクシャが歯噛みします。がっでむ。

 

「いや、でもその後にフォローはするつもりだったんだけどっ。俺も英訳すればミントだからお揃いだよな、って感じで!」

「お揃いを許容する男子ってそうそう居ないよ……」

 

 ネビルくんの言葉に頭を抱える薄荷くん。

 項垂れたままですが、とりあえず済ませるべきことを片付けてしまおうと、絞り出すような声音で問いかけました。

 

「……朝飯、残ってる?」

「……果物とフレークが一応」

 

 

 ×  ×  ×

 

 

 遅ればせながら魔法史、つまりは魔法世界史とやらの授業を片付けた薄荷くん。

 隣の席を確保しつつも、やはりにべもないアリスくんの様子に気疲れしつつ、次の授業へと赴こうとしていた時でした。

 

「ハッカ?」

「ん? あー、ハーマイオニー。昨日ぶり」

「貴方は今が魔法史だったのね」

 

 すれ違い様に、纏まっているようなばらけているような、他寮の一団と遭遇しました。

 その中にいたハーマイオニーちゃんに先に気付かれ、顔を向けた先にはちょっと気になっていた子がいたことに安堵の薄荷くん。

 アリスくんを初めとしたレイヴンクローの皆様には普通に置いて行かれましたが、話が通じない相手といるよりはまだこちらの方が彼にとっては安牌です。

 

「ハーマイオニーは何の授業だったの?」

「変身術よ。マクゴナガル先生が、っと、これは云わない方が良いかもしれないわね」

「え、なになに、気になる」

「ふふ、授業を受けるまでのお楽しみってところね」

 

 ネタバレしてしまうならば、にゃんこに変身して見せたマクゴニャガル先生が実にマグル(魔法を使えない人々)のよく浮かべる魔女像そのものであった、というサプライズでした。

 薄荷くんも例に漏れず、その際に「魔法使いは動物に変身するモノが主流だと思ってた」発言を零したわけですが、例外なく変身出来るわけでは無いという事実と、動物に変われる『動物もどき(アニメーガス)』という存在を先走って知ることとなります。

 未登録の『動物もどき』が近場に居ることを知るのは、もう少し先の話でした。

 

「ハーマイオニー! そんな奴と話してると置いてくぜ!」

 

 そんなちょっとした談笑を愉しんでいるところへ、不仕付けな声が怒り交じりに飛びます。

 誰だ、と特に理由も無さそうな物言いに薄荷くんが振り返ると、赤い髪の少年がハーマイオニーよりむしろ薄荷くんの方を睨んでいました。

 ネビルくんを初めとして男子には君付けが主義の薄荷くんですが、初対面で睨まれるような相手ならばコイツは別にいらないかも、とうっすら思っていました。

 

「ロン、ちょっとくらい話していたっていいじゃないの」

「フン! そいつはスキャバーズを喰う様な化け物フクロウを飼ってる奴だぜ、信用できるもんかい!」

 

 訂正、汽車の中での茉莉ちゃんの被害者でした。

 悪いことしたなぁ、と流石の薄荷くんもちょっとだけ申し訳なく思います。

 

「おやおや、キミの処の古ネズミの駆除を率先してくれたのは彼だったのかい?」

 

 そんな彼らに、当然のように絡んでくる少年がいました。

 子供なのにオールバックという個性あふれる髪型で、典型的な子悪党みたいな子だなぁ、と薄荷くんはちょっとだけ失礼な感想を抱きます。

 

「確か彼はマグル出だったかな。知ってるかウィーズリー? マグルには人の生活に悪影響を与える動物を駆除してくれる【ホケンジョ】という仕事人がいるんだぜ。彼は仕事をしただけじゃないか、怒ることはないさ」

「なんだとぉマルフォイ!」

「むしろ感謝するべきさ、ネズミはマグルの間では【ビョウゲンタイ】っていう不潔の象徴なのさ。『役立たずのペットを殺してくれてありがとう』って言ってやれよォウィーズリーィィィ!? 新しい使い魔をキミのママにねだる良い理由になったじゃないかァ! アハハハハ! ヒャーハハハハハハッッ!!!」

「マルフォォォォイッッッ!!!」

 

 科白の途中で堪えられなくなり声が震えていた少年が、最後には高笑いまで付け加えました。

 少々鼻に付くねっとりとした口調がスネ夫みたいだなぁ、と薄荷くんの中で普通に株価がダダ下がりです。

 色々と妙に知ったかぶりしているような節が無いわけでもありませんが、普通に仲の悪そうなこのふたりの遣り取りには『どっちの陣営にも巻き込まれたくねぇなぁ』と至極真っ当な感想を抱いた薄荷くんでした。

 

「それ以上は止めろよマルフォイ。ボクが相手になるぞ」

 

 今まで黙っていた眼鏡の少年が前へ出ました。

 というか居たのかお前、みたいな感想しか今のところありません。

 件の眼鏡を見ると、オールバックの彼は小物臭い高笑いをぴたりと止め、見下す目を彼らへ向けました。

 

「――フン、キミに用は無いのさポッター。ボクは今、彼と挨拶をしようとしているところなんだ」

 

 おいやめろ巻き込むな。

 そうクチにしたかった薄荷くんですが、今口を開けば絶対碌なことに巻き込まれかねない、と理解しているので一先ず状況を見守るのみです。

 あと訂正しておきますが、列車の中で茉莉ちゃんはネズミの息の根までは一応止めていません。

 

「キミはマグル出身の割には見どころがありそうだ。ボクはドラコ・マルフォイ、仲良くしようぜ」

「……あー、ハッカ・ケイチョウだ」

 

 薄荷くん自身には彼に敵対する理由も無いので差し出された握手を取りますが、それがきっちりと彼らの結託にでも見えたのでしょう、眼鏡と赤毛の彼らは酷く苦々し気な顔つきでふたりの遣り取りを睨みつけます。

 オマエラもうちょっと子供らしい顔しとけよ。

 

「――いこうハーマイオニー、あんな奴と話すことなんてないよ」

「まったくだ! マーリンのヒゲ!」

 

 薄荷くんには与り知らぬ捨て科白を遺して立ち去ってゆく眼鏡と赤毛。

 というかそもそも、彼らと積極的に関わろうと薄荷くん自身は思ってもみなかった事態なのですが、何故に裏切り者みたいな目を向けられているのかが理解しきれぬ薄荷くんです。

 そんな同寮生の有様を見たにも拘らず、しかし取り残されるわけには行かない心情でも働いたのでしょう、フォローを淹れ切れなかったと言いたげな態度でハーマイオニーちゃんは躊躇いがちな顔を薄荷くんへと向けました。

 

「ごめんなさい、なんだか変なことに巻き込んじゃって……」

「いや、置いて行かれるわけにもいかんでしょ。俺は良いから行きなよ」

「っ、ええ、またねハッカ」

 

 女の子って大変だなぁ、と色々骨身にも染みている彼女らの生態事情を察しつつ、薄荷くんは踵を返すハーマイオニーちゃんを見送ります。

 女子に限らず、人間は兎に角群れたがる生き物ですから、その辺りに神経を使い切れない薄荷くんには少々畑違いな心持ちになるのかもしれません。

 今からこんなだと将来的にもコミュ障真っ逆さまです、皆さんも気をつけましょう。

 

「ふん、優しいじゃないか。キミのフェニミストぶりは英国紳士のようだぜ」

「そいつはどうも。本場のジョンブルに褒められるとは思ってもみなかった」

 

 一部始終を見終えたドラコが鼻で笑っています。

 よくよく見れば薄荷くんのこともやや見下している感が視線に混じっていますので、この場では単純に先程の赤毛少年を逆撫でする為だけに薄荷くんを利用したのでしょう。

 その辺りも看破しつつ、根性土留色だなコイツ、と薄荷くんも内心で吐き捨てます。

 何気に似た者同士かもしれません。

 

 そんな胎の内が漆黒の闇なふたりの遣り取りを、最後まで見守っていたのはドラコの取り巻きとしか思えない同じ寮生のスリザリン組です。

 彼らの前だからというわけではなさそうですが、微妙にかっこつけたがりな雰囲気を纏わせつつドラコは薄荷くんへと指を突き付けました。

 

「一つ忠告しといてやるよ似非紳士。この学校では、誰と仲良くした方が良いのかをよく考えておくことさ」

「……みんないっしょ、じゃダメか英国紳士」

「ダメだね。ボクらはともかく、特にグリフィンドールのようなダンブルドアの腰巾着がそんなことに頭を使う余裕なんてあるものか」

 

 鼻で笑い飛ばしながら悪し様に言い切るその姿は、しかしひょっとしたら随分と根が深い問題なのかしら、と薄荷くんの『友達百人』を目指す志を圧し折るくらいには辟易とさせる物言いです。

 まあ、現状同室の者とも友情を育めていない彼にとっては、どのような形ですらも大言壮語でしょうが。ハハッ(嘲笑。

 

「ま、考えることだね。それがキミたちレイヴンクローの取り柄だろ?」

 

 遠回しに『頭でっかち』と言い捨てて去ってゆくドラコ。

 しかし、今のところ同寮に一切の仲間意識を抱いていない薄荷くんは、そんな彼らへ呑気に手を振って見送るのでした。

 余談ですが、彼らが先程から口にしている英国すなわちイギリスは貴族の国。階級社会です。それは格差社会とは一線を画す、それぞれの分野での領分に口を挟まない、という決まりごとが暗黙の了解として各位に備われている区分意識であり、己の分を全うするという矜持に基づいた飽く迄対等な人間関係を顕す社会を意味します。

 ドラコ・マルフォイの抱く魔法使い至上主義は、恐らくそういった意識の高い矜持に則った己を律するが故の発言……ということはほとんどなく、単純に親の教育が失敗しているのでしょう。どっとはらい。

 

 




・ハーマイオニーちゃんがヒロインっぽい!
・ははーん、この作者原作あんまり覚えてねーな?
・地の文より科白の方もうちょっとガンバッテ!

以上の点以外に感想が在ったら宜しくお願いします
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