深海棲艦、抜錨!   作:深海棲艦提督

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深海棲艦の大型艦は、なんかへん

 夜のショートランド基地の食堂は、いつも混雑している。

 

 ショートランド基地はすっかり深海棲艦の本拠地になってしまったが、本拠地にするにあたって基地自体をそのまま流用したため、食堂など諸々の施設はまだ残っているのだ。

 食堂でも、基地のやり方そのままに、人間用のメニューと燃料弾薬等の艦専用のメニューが二種類用意されている。正直、何処から人間用のメニューを提供出来ているのか疑問しか湧かないが、深海棲艦側で何とかしているのだろうか。提督がいなかったら、真面目に深海棲艦たちはやばそうだし。

 

 

 

「テイトク、ヨルノテイショクニナリマス」

 

 なぜかコミュニケーションが取れる食堂の深海棲艦と一言二言交わし、定食のお盆を持ちあげると、手を振っている夕張の隣に座る。いつも通りの様子だが、大方昼のことは綺麗さっぱり忘れているのだろう。

 

「そういえばさ、提督?」

 

 箸をおいて話しかけてくる彼女に、そっと首をかしげて応える。今日の彼女の食事は人間用の方らしい。

 

「ずっと疑問だったのだけど、ここの基地ってどうやって運用されてるのかしらね? ほとんど普通の基地と変わらないじゃない?」

 

 んー、と相槌を打ちつつ俺も箸をおく。確かに、食堂もそうだが深海棲艦の装備や燃料弾薬などはどこから提供されているのだろうか。ブイン基地も支配下におさめているため、ブーゲンビル島やサーモン諸島あたりから持ち出しているのか。しかし、あの島には銅鉱くらいで燃料などは特になかったような記憶があるが……?

 そんなことを夕張に話すと、彼女もそうねぇ、と短く相槌を返した。

 

 しばらく、無言の時間が流れる。

 

「もしかすると、艦娘みたいに遠征しているのかもな。鎮守府どころじゃない数の駆逐艦がいるんだし、戦闘以外に従事していてもおかしくないんじゃないか?」

「え~、それって深海棲艦がぞろぞろと出撃してるってこと? その割にはショートランドは静かだけど」

「いや、ブインもあるからな。元々あちらが本拠地だったらしいし、出撃ならあっちから行くんじゃないか?」

「あぁ~、そうね。でも、あまりぞろぞろと行くとさすがにラバウル基地から捕捉されるでしょうし、遠征してるにしろ、この基地の物資を補えるほど多いとは思えないわね」

「ふむ、確かに。戦艦・空母級もたくさんいるものな、ショートランドには」

 

 既に基地内で確認した中でも、ここ最近数十隻の戦艦や空母が結集していた。

 鬼姫クラスっぽい影も確認でき、中には数ヶ月前に艦娘の総力を挙げて撃破した南方棲鬼などもいるようだ。俺は作戦に従事してなかったから詳しいことは分からないが、結局撃破できていなかったのだろうか。

 

 ……なんとなく、嫌に胸騒ぎがした。

 

 

 

 

 

「アア、基本的ニ海底カラ資源ハ調達シテイルワネ。最近ハ近海ニ艦娘ガ多イヨウダケド、トリアエズハ問題ナイワ……」

 

 開口一番に質問した俺に、謎のドヤ顔をしながら答えてくれる子がいた。

 基本的に週末の夜には、深海棲艦側のボスクラスの子と打ち合わせを行っているのだが、なぜか毎回深海棲艦側の代表は別の子が来ている。俺としては同じ深海棲艦が来てくれたほうがやりやすいのだが…… 今回の子は姿形から推測するに鬼クラスだろうか?

 

「あ、なるほどね。海底資源なら主に島の方面へ目を光らせている軍が見つけれるわけがなかったわね。ほら、提督、遠征してるわけじゃなかったじゃない!」

「遠征と似たようなもんだと思うが…… 海底資源から調達するのは盲点だったな。それなら物資は補えるだろうね。……人間の食事が出るのは納得いかないが」

 

 対面の深海棲艦を見習ったのか、謎のドヤ顔を向けてくる夕張の額にデコピンをかましつつ、さてそろそろ本題に入ろうか、と姿勢を正す。それを見て、額を抑えて痛がっているふりをしていた夕張も真面目な顔を作る。なんだかんだで彼女も空気を読める子なのだ。

 

 

「さて、まずは深海棲艦側の装備の話から入りたいんだが。あー、はっきり言って、深海棲艦の装備配備はお粗末に尽きる。寧ろどうやって装備を配備しているのか疑問に思うレベルなんだが…… 良ければ、深海棲艦側がどういうシステムを採ってるのか教えてくれないか? ええと……」

「……南方棲戦鬼ヨ。ソウネ、装備ハ海底ニ埋マッテイル物カ、鹵獲シタ装備ヲ改装シテ使ッテイルワ。武器庫ニ適当ニ転ガッテイルカラ、ソノ中カラ、リコ達ガ適当ニ配ッテイル感ジネ」

「はぁ? 論外じゃない、それ。装備は色々試して自分に合うものを見つけなきゃ。ねぇ、提督?」

 

 思いのほか適当な状況に頭を抱えつつ、ヒートアップしそうな夕張を抑えてため息をつく。これは提督以前の問題なんじゃなかろうか。いや、指揮者がいなければこんなものなのだろうか……

 

「その状況は極めて不味いな…… ということは、駆逐艦などにはもしかして装備配備が間に合ってないんじゃないか? 5inch単装砲のみの装備の子とかいたようだが」

「エエ、提督ノ言ウ通リネ。ソレニ、半年ホド前ニ艦娘ガコチラヘ強襲シテ来タ時ノ被害モ、カナリノモノニナッテイルワ。泊地棲鬼ガナントカ修理完了シテイルクライネ。泊地棲姫モ沈ンデシマッタシ……」

「そもそも装備配備できるほどの物資が足りないのか…… 海底資源で賄えないのか?」

「……ソウネ、今アルノハ、各資源30万ホド。ココノ工廠ヲ使ッテイイノナラ、半分ノ子タチナラ配備デキルカシラ。全員ニ配備シヨウト思ッタラ、モット南方マデ進出シナイトダメネ」

 

 半分、か。何やら大量過ぎる資材の量が聞こえた気がするが、目の前の深海棲艦、南方棲戦鬼が言うには、鬼・姫クラスの子や戦艦・空母の子の資材が莫大にかかるそうだ。鬼・姫クラスの補給は一度に一人につき資材が5000くらい吹っ飛ぶらしい。いくらなんでも大食らいすぎだろうに。50の弾薬でフル補給できる夕張を見習ってほしいと切実に思う。

 

 

 資材問題以外では、工廠を使うことは多分大丈夫だろう。ブイン基地の工廠も動かせるかもしれない。失敗する可能性も含め、10万もあれば良い装備が量産できるはずだ。俺に随行していた駆逐艦の子や、ブイン基地に元々いた子を遠征に出せば、使える資源量も少しは増えるだろう。

 

「まぁ、状況は分かった。どうせ当面は旗艦から新装備を配備することにする予定だったし、おいおい配備していけばいいだろうね。名付けて駆逐flagship・軽巡flagship、ってところか。一応書類も作っておいたぞ、見るか?」

「エエ…… アリガトウ、オ願イスルワ」

 

 ちらりと夕張の方に目をやると、彼女もこちらの考えを察し、南方棲戦鬼の前に渡しておいた書類を広げた。

 

 

 

 

 【深海棲艦新装備表】

 

 名称:深海駆逐艦flagship

 装備可能スペース:おおよそ3つ

 装備:電探・水中探信儀・爆雷投射機

 

 

 名称:深海軽巡洋艦flagship

 装備可能スペース:おおよそ3つ

 装備:5inch単装高射砲・爆雷投射機・水中探信儀

 

 

 名称:深海重巡洋艦flagship

 装備可能スペース:おおよそ4つ

 装備:8inch三連装砲・6inch連装速射砲・22inch魚雷後期型・偵察機

 

 

 名称:深海戦艦flagship

 装備可能スペース:おおよそ4つ

 装備:16inch三連装砲・16inch三連装砲・偵察機・電探

 

 

 名称:深海正式空母flagship

 装備可能スペース:おおよそ3つ

 装備:艦戦・艦攻・艦爆

 ※工廠で強化型艦載機に変更

 

 

 名称:深海輸送艦flagship

 装備可能スペース:おおよそ3つ

 装備:6inch連装速射砲・5inch単装高射砲・5inch単装高射砲

 

 

 

 

「特に変更した部分は、駆逐艦や軽巡洋艦かね。彼女らは当面は主に対潜警戒に従事してもらう予定だ。前回、艦娘側が潜水艦の連続運用で作戦を立てていたのに対処する形だな。まぁ、これは君も経験していることかと思うが……」

「……エエ、コチラノ対潜攻撃ハ、艦娘ニハホトンド効カナカッタワネ」

「だろう? あとは重巡洋艦の砲を増設して連撃可能にしたり、艦載機の強化くらいか。戦艦は電探を載せるくらいで特に手を付けていない。あとは輸送艦も自衛手段持たせてみた」

 

 さくさくと説明したせいか、彼女は飲み込むのに時間がかかっていたようだったが、やがて整理がついたのかコクリと頷いた。

 

「フム…… ナルホド、分カッタワ。リコ達ニモ見セテクルワネ。アト私達、鬼・姫クラスノ装備モ見テオイテクレルト嬉シイワ」

「良いぞ、夕張あたりに渡しておいてくれると助かる」

「エエ。ソウスルワ」

 

 そう言うと、彼女は渡した書類をまとめて帰っていった。

 

 俺がぼうっと開いたままの扉を見ていると、隣の夕張が、「忘れたのでしょ。私が閉めてくるわね」と言って立ち上がる。ああ見えて深海棲艦たちは意外と礼儀正しいのだが、扉を書類で手が塞がっていたのか、今回は単に閉め忘れていたのか。

 何も背負っていない夕張の背中から、棚の上に置かれた艤装に目を移し、背もたれに深く身を沈めながらぼんやりと見つめ続ける。いつものことながら、事務仕事を終えた後はなんとなく体がだるくなる。鎮守府や基地配属の時は、仕事が終わっても出撃アラートなどが鳴って忙しかったが、このショートランドではまったく聞かない。そもそも、着任してから機能を設定した覚えもないので、恐らくはスイッチが切られたままなのだろう。

 とはいえ、ここは深海棲艦の居城。深海棲艦が攻めてくる道理はない。当面は大変で平和な日常が続くだろう。初日のようなことが起こったり、深海棲艦が何らかの理由で俺たちを害そうとしない限りは、だが……

 

 

「きゃあああああああああ!?」

「ッ! どうした夕張!?」

 

 ぼんやりとした意識が一瞬で覚醒した。俺は跳ね起きると、一瞬で夕張の元へ駆け寄る。驚いたような表情の夕張を無理やり背に隠すと、俺はドアの向こうを警戒した。したが……

 

「ア、イヤ、怪シイモノデハナイノダケド。チョット提督ニ話ガアッテ」

 

 無抵抗を表すつもりか、バンザイの仕草をしつつ南方棲戦鬼がおずおずと言った。後ろには南方棲戦鬼によく似た深海棲艦と、長い白髪と飛行甲板らしきものを携えた深海棲艦がいる。前者は見たことがあるが、後者も姫クラスだろうか。

 

「……なんだ、南方棲戦鬼か。驚かすなよ。てっきり敵が襲ってきたのかと」

「イッタイ誰ガ攻メテクルトイウノヨ……」

「……誰でもいいじゃないか。それより、何の用だ?」

 

 何となく目を背けつつ、ごにょごにょと誤魔化す。じとー、とこっちを見ている夕張と目があった。

 

「……ねぇ、提督? 何してるのかしら?」

 

 すっと目を背けると、南方棲戦鬼と目が合う。もう一度目を背けると、再度夕張と目が合う。挙動不審になった俺に対し、後ろの深海棲艦からの目線も厳しくなった気がした。

 

「アー、驚カセテスマナカッタ。提督ニオ礼ヲ言ウツモリダッタンダ」

「え、お礼? 提督に?」

 

 首をかしげる夕張に、南方棲戦鬼がソウダ、と頷く。南方棲戦鬼が手で合図すると、後ろの深海棲艦たちが前へ出る。確か、南方棲戦鬼にそっくりな方は、南方棲戦姫だったか。

 

「私達ノ為ニココマデ考エテクレルトハ思ッテイナカッタ。アリガトウ、リコ達モ」

「アリガトウ、コレデ勝テルカモシレナイワ。私ハ今度コソ、ヤラレハシナイ」

「私ハ人間二提督ヲヤラセルノハ反対ナノダケド。デモ、オ礼ハ言ウ。アリガトウ」

 

 思わず夕張と顔を見合わせ、きょとんとする。

 あまり深海棲艦のためといった感じではなく、自分たちが死なないためという考えが強かったのだが…… 俺も単純なもので、こう感謝されると満更でもなくなってきてしまう。俺も夕張も、特に深海棲艦に恨みがある、とかではないわけだし。

 

 

 去っていく彼女らを見送ると、提督質には俺と夕張が残された。

 なんだか恥ずかしい雰囲気を壊すかのように、俺は夕張に軽口を送ってみる。

 

「まぁ、なんだ。お礼を言いに来るから扉を開けたままにしていたんだろう。夕張は予言者としては失格だな。あ、秘書艦としても微妙かもしれないが」

「なっ。提督こそ、敵襲かってあれだけ慌ててたじゃない! 本当に敵襲でも私を庇ったらダメじゃないの。私と違って戦闘能力もないんだし」

「……それは、そうだな」

「もう、私たちは提督がいないとやっていけないんですからね。もっと自覚を持ってください!」

「……ああ、その点に関しては十分に分かっているとも。ところで、そろそろ寝る時間……」

「やっぱり提督は危なすぎます! いいかしら、そもそも提督というのは……」

 

 藪をつついて蛇を出す、とはこのことだろうか。非常に逃げ出したいが、確かに今回は俺が悪い。素直に説教されるべきだろう。いつもは立場が逆になってしまった。

 

 恐らく夜中説教されるのだろうと覚悟を決めつつ、そういえば彼女が楽しみにしていた深夜アニメがあったな、と思いだす。これは明日朝になってまた彼女が不機嫌になるパターンなのだろうか。……やっぱり今すぐにでも逃げ出したくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 ショートランド・ブイン両基地の奪還、及び前作戦で撃破し漏らした南方棲戦鬼の撃破を目標とし、大規模な艦娘の艦隊が接近中だ、と言う知らせを聞いたのは、次の日の朝のことだった。

 ……どうやら、俺も予言者としては失格らしい。

 

 

 

 




南方棲戦鬼のドヤ顔はすごい。


【今日の艦船・駆逐イ級flagship】

kancolle deta:耐久39 火力32 雷装60 装甲24 対空24
装備:電探、水中探信儀、爆雷投射機

対潜特化した駆逐艦。現在はExtra Operationのみに出現。1-5と5-5。

1-5では外れマスに出現するため出会う機会は皆無と言っていいが、5-5では全マスに出現する。
彼女らの対潜攻撃は鬼畜極まりなく、単縦陣でさえこちらの潜水艦をワンパンしてくる。
とはいえ、潜水艦を連れて行かなければ他の駆逐flagship艦より雑魚になってしまう。

キラ付け潜水でレ級の砲撃を、大和型にバルジ2積みでレ級の雷撃をほぼ無効化できる潜水ルートでは、打ち漏らすとレ級よりひどい事故要因として一部の提督を苦しめているとか。





次章、「決戦! サーモン諸島での反撃!」
数多の提督を絶望に叩き込んだあのイベントが舞台となります。
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