深海棲艦、抜錨!   作:深海棲艦提督

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鎮守府・ならびに泊地と基地の場所が分かりづらいという声が多分出ると思うので、各泊地・基地の場所をマップに記したサイトを置いておきます。

(GOOGLEマップ) https://goo.gl/5u9vYC


ショートランドとブインは近くであり、その若干北にラバウルがある感じですね。

ショートランドの南東に、アイアンボトムサウンドがあります。


鉄底海峡にて敵兵力を漸減せよ

 

 

 

 無事最終作戦が発令される数日前、俺は青葉・夕張と共に作戦の細部を詰めていた。今回の大部分の構想を描いた俺だが、さすがに全ての計画を一人で間違いのなく立案・実行できるような自信はなかったからだ。

 全てを打ち明けた後も、夕張は特に驚いた風はなかった。提督ならいくら深海棲艦といえども、あっさり見捨てるようなことをするはずがないでしょ、とも言われた。やはり、俺の思考は筒抜けだったようだ。

 

 

「で、提督。この作戦の全貌を知ってるのは、今ここにいる三人だけ、ってことですよね?」

「そういうことだな。今のところ、深海棲艦側にも何も話していないぞ」

 

 お盆に積まれたお茶菓子を一つとって食べつつ、夕張が質問する。

 情報の価値を認められたのか、はたまたただ単純に疲れているであろう俺たちを気遣っただけなのか、あの日俺たちに与えられたのは結構豪華めな士官室だった。菓子などの嗜好品も、食堂や酒保に申請すれば全て融通してくれる。当然のように無料で、である。当初、あまりにも良い待遇に毒が入っているのではないか、裏があるのではないか、とかなり疑ってしまったのも仕方がないことだろう。

 結局特にそんな事実もなく、俺たちはありがたくその好意らしきものを受け取っている。特に青葉などは結構頻繁に酒保に色々なものを申請し、果てには高性能カメラなども要求する始末だったため、見かねた夕張に怒られていた。……なお、後日当然のように高性能カメラが届き、青葉を大興奮させていた。

 

 俺も積まれていた煎餅を一つ手に取って齧る。頭を使うときには甘いものがいいとよく聞くが、塩辛いものを食べるのもまた俺は好きだ。特に作戦立案の時は、甘いものを食べると作戦計画まで甘くなるようでどうも気が進まない。単なる験担ぎと言ってしまえばそれまでだが、そんな些細な事でも意外と馬鹿にはならなかったりするのだ。

 

「とはいえ、ここまで来た以上は深海棲艦たちにも全てを話すつもりだけどな。話さなくても支障はないような気がしないでもないけど」

「確かに、よく考えれば深海棲艦側のやることって、どっちでもそう変わらないですよね。提督がかなり大変になっただけで」

 

 夕張の言葉に小さく頷きつつ、また一口かじる。パリッとした食感が俺の口を楽しませた。この煎餅はなかなか良いな、これからも取り寄せることにしよう。深海棲艦側で取り寄せれるのかは知らないが。そういえば、結局あいつらはどうやって人間のものを仕入れているのだろうか? 略奪でなければいいのだが……

 俺がそんなことに思いを馳せていると、青葉が事情を呑み込めていないといった顔で質問した。

 

「あのぉ、お二人だけで話さないでほしいかなぁって…… 当初の計画って、結局どういうものだったんですか?」

 

 そういえば、青葉にはもとの計画を話していなかったか。

 

「んと。簡潔に言うと、敵を干上がらそうという作戦だな。あちらの方が継戦能力が高い以上、艦隊決戦はむしろ不利となる。有利な状況で迎撃し、敵を漸減していくのが基本方針。尤も、これは今も同じだがね」

 

 有利な状況で迎撃したいのは山々だが、それに敵が応じてくれるとは限らない。姫級4隻が集う海域に、誰が好き好んで真っ正面から戦闘を挑むだろうか?

 大部分の人は、そいつらを誘きだして各個撃破しようとしたり、何かしらの手を使って弱体化させようとしたりするだろう。少なくとも、その海域に無策で挑もうとはすまい。何も対策を立てずに挑む奴は馬鹿か天才のどちらかに限られる。

 しかし俺たちにとって、それは非常に困るのだ。

 

「当初は、この基地に罠を仕掛け、資源などを焼き払った上で艦隊決戦に挑む予定だった。俺がここに来たのはその為だな。しかし、それを本当に実現させれると思うのは、いささか希望的観測過ぎる」

「ですね。普通に考えて、撤退するか立て直して慎重に進みますしねぇ」

 

 最悪の事態、つまりラバウルに籠られるとさすがに勝利が見えなくなってしまう。時間はこちらにも味方してくれるだろうが、あちらにはもっと味方するだろう。万全の準備を整えて、万全の索敵の元に進軍されるなど、悪夢でしかない。

 

「そうそう。こちらの作戦なんて、奇策の部類だからな。一発芸のようなものと言ってもいい。敵を驚かせ、混乱しているうちに一気に畳み掛ける、ただそれだけだよ。疑いを持たれ、慎重に進まれるとどうしようもなくなる」

「ふむふむ…… ああ、なるほど! 青葉、分かっちゃいました! 姫級の存在を伝えたのも、三式弾をわざわざ開発して渡したのも、十分倒せるという判断をさせるためだった、ってことですよね? 

 鬼級だけでなく姫級までも確認された! って言われて、姫級は本当に一隻だけなんだろうか、なんて疑う人いないでしょうからねぇ。あえて詳細を伝え索敵をさせない、ですかぁ。ミスリードでよく使われる手段ですねぇ」

「そういうことだな。嘘は言っていないが全てを話していないってやつだ。一応念には念をいれて、敵が全力を繰り出すまでは飛行場姫以外の姫級も出さないつもりでもある」

 

 青葉の物わかりが良くて何よりだ。ほぉー、と言いながら感心している青葉に、俺もまた内心で感心する。もし敵に回っていたら、俺は危なかったのではなかろうか?

 青葉の言う通り、俺の一連の行動は全て、こちらの手の内を晒さないこと、ただそれだけに集約されている。艦娘側が全戦力を以て飛行場姫を攻める、ただそれだけで此方は勝てるのだ。さすがの艦娘といえども、あの艦隊に勝てる訳があるまい。これで勝てなかったら白旗を上げて降伏するレベルである。

 

 まずは補給線を細く延ばさなければならない。それには敵地奥深く――こちらにとっては味方陣地奥深く、だが――まで深入りをさせることが重要である。細くなった補給線を叩き、同時に敵主力艦も叩く。修復や補給の手段を封じた上で、ようやく勝負になるかといったところなのだ。

 

 

「でも、提督。艦娘を沈める、ないし大打撃を負わせて暫く戦闘不能にさせるという選択肢もあるはずですが、なぜそちらを採られないんですかぁ?」

「ん……? 艦娘は大破しない限り轟沈しない。疲労が極端に溜まっているときなどの例外はあれど、原則は単発の戦闘で撃破は不可能。青葉もよく知っていることだと思うが……」

「ああ、いや、そうではなくてですねぇ。ええと……」

 

 青葉が言葉を捜しながらゆっくりと話す。

 

「要するに、母港に帰投するまでは、修理とかはできないわけでしょう?」

「うむ、それはその通りだが。しかし、大破したらすぐ艦娘は帰投するからな、大破状態で会敵するということはまずありえない。我々だってそうだっただろう?」

「ええ、それは分かってますよぉ。さすがの青葉でも、大破状態で撃破できるとは思ってないですよ? しかしそこでですねぇ……、こういうことを利用して……」

 

 青葉が俺のほうに身を乗り出し、耳打ちをする。それに合わせ、邪魔なお菓子のお盆を傍に押しやり、俺も耳を近づけた。

 小さい声を苦労しながら聞き取りつつ、段々その全容が明らかになるにつれ、俺の唇の端が吊り上がっていくのが分かる。まるで噛み合いの良い歯車のように、俺の計画の不備が見事につながっていくような気がした。

 俺と夕張が顔を見合わせ、二言三言質問した。青葉はすぐに返答する。夕張の目が見開かれた。

 

「……なんというか。青葉も割とえげつないことを考えるんだな、結構恐ろしく思えてきたのだが……」

「えぇー…… そんな、青葉、提督のために考えたのにぃ……」

「いやいや、褒めているんだぞ? しかし、それにしてもえげつない……」

「……」

 

 どこか釈然としない顔の青葉を見て、ふふ、とつい笑みを漏らす。ああ、青葉に相談してよかった。

 その後、ぷいっと顔を背け、すっかりへそを曲げてしまった青葉が発見され、俺は慌てて彼女の好きそうなお菓子を持って、ご機嫌をとる羽目になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒトヨンマルマル。

 

 作戦発令後、7時間が経過した時点で既に、艦隊司令部は阿鼻叫喚の巷と化していた。

 ドックは艦娘で溢れかえり、次々と高速修復剤が消費される。急遽使う予定の無かったショートランドのドックが整備され、艦娘を収容し始めた。何度目かの入電が入る。

 

「パラオ泊地所属、第七任務艦隊です! 敵潜水艦から被雷、護衛駆逐艦の朝潮、及び大潮が大破! 艦隊としては作戦行動に支障なし、護衛に荒潮を付けて2隻を帰還させます!」

「またか! ……分かった、急ぎ2隻を帰投させよ。できれば第八任務艦隊と合流し、対潜警戒を厳として航行せよ。いいか、対潜警戒任務を怠るなよ! 次被雷するようなことがあれば許さぬからな! わかったか?」

「……第七任務艦隊、了解しました」

 

 ガシャン、と叩きつけるように電話機を置き、中将は肘掛椅子に乱暴に身を沈めた。爆発しそうな焦燥を何とか抑えつつ、彼はイライラと髪を掻き毟る。

 これで何度目だろうか、潜水艦の脅威にさらされるのは。度重なる被雷の報告に、受話器を取る手が怒りで震え出したのが5度目辺りだったことは覚えている。電話をとった回数など、10度目から数えることをやめていた。数えないうちは、被害の状況から目を逸らしたままでいられる。

 

 まるで高所の綱渡りのようではないか、と中将は思った。足を踏み外せば潜水艦の脅威にさらされる。今まで梯形陣や単横陣といった、おおよそ雷撃に即していないであろう陣形で押し寄せてきたからこそ、おざなりな対潜警戒で済んでいたのだ。これが雷撃に即した陣形で押し寄せてくるだけで、これほどの脅威となったのか……

 既に、対潜警戒を厳とする命令は各艦隊に出している。先ほどの第七艦隊にも伝わっていたはずだ。既に分かっているのだろうその命令を、何も言わず拝命した彼女らは何を思っていたのだろうか。

 

 分かっていても止められない。奴らの魚雷は主力艦こそ標的とはしてこないものの、護衛の駆逐・軽巡洋艦を狙って執拗に雷撃を仕掛けてくる。そして護衛がいなくなれば、こちらからの攻撃を気にすることなく悠々と主力艦に雷撃を叩き込み始めるのだろう……

 

 

 思考の渦に巻き込まれそうになったその時、中将の肩がポンポンと叩かれた。

 

「まぁまぁ。そう焦らずに行こうじゃないか。司令部が焦ってちゃあ、全体の作戦にも支障が出るからね」

「……しかし大将! このままでは敵姫クラスと会敵する前に全滅する可能性だってありえます。それに……」

 

 口早に捲し立てようとした中将を、大将の大きな手が制止する。引っ切り無しに何かの声がしている司令部の中で、そこだけに一瞬沈黙が降りた。

 

「……すみません、大将」

「いや、いい。君の気持ちもわかる。しかし、焦っていても状況は好転せん。最新式の、三式ソナーや三式爆雷の配備を命令しておいた。少なくとも今から出る艦隊の護衛駆逐艦は、三式セットを装備することになる」

「申し訳ありません、大将に動いていただいて。これで潜水の被害は軽減されるでしょうか」

「……正直、どうだろうな。軽空母にも対潜哨戒機を配備しているが、どうにも数が足りぬ。いや、それよりも……」

 

 大将は言いよどむと、そのまま口を閉じた。沈黙がまた少しの間辺りを満たす。

 

「いや、やめておこう。とりあえず、今あるものの配備は完了するはずだ。工廠は機能しているかね? 急いでありったけの対潜装備を作るのだ。オートジャイロの配備もだ」

「了解いたしました」

 

 踵を返して命令を各所に伝えようとした中将の耳に、司令部の将校の話し声が聞こえた。この状況についての話のようだ。彼らの感情は、話を聞いているだけでもすぐわかる。不安、恐れ、そして焦燥。

 中将はその内容を聞き取ると、少し辺りを見回した後、もう一度大将の元へ向かった。書類と格闘しようとしている大将は、それでも彼の接近に気付いているようだった。

 

 

「……しかし大将。これ以上被害が嵩むようなら、ええ、撤退をですね、考えねばならぬかと愚考いたしますが」

 

 その言葉を発したとたん、中将の耳には、はぁ、とため息をつく音が聞こえていた。静かに首が振られる。呆れたような表情を作った彼は、くるりと後ろを向くと、皆に聞こえるように大声で喋りだした。

 

「撤退だぁ? おい、君からそんな言葉が出るとは思わなかったぞ。いいか、まだこちらの主力艦艇は無傷のままだ。対潜装備も順次配備されておる。重巡級以上には、三式弾を完備してある。撃破できる見込みは十分にあるはずだ。

 それとも何か? 君は今まで、当海域を制覇してきた資源や数々の苦労を無駄にしろというのかね」

「いえ、そういうわけではありませんが…… しかしですね、このままだと一方的に被害が増えるばかりであり……」

「うるさい! しかしも案山子もないわ。だいたい我々は……」

 

 これから大将の話が延々と続こうかといったその時、彼の声は空気を割くかのように鳴り響いた電話の音によって遮られた。イライラとした雰囲気で大将が受話器を取ると、二言三言話した後、勢いよく電話台にたたきつける。備え付けのベルが、衝撃でガチンと音を立てた。傍に立っていた下士官がびくりと震える。

 

「また被雷ですか…… やはり大将、ここはいったん引くべきでは」

「……ならん。それは絶対にならん。いいか、我々は連合を組んでここまでやってきた。目標は敵深海棲艦の掃討だ。かなりの準備も整えてきた。今敵を撃破しなければ、いつ撃破できるかもわからぬ。

 先ほどの艦隊も、海域の3/5を踏破したとも言っていた。つまり、目標まであと半分以下らしい。……それでもまだ、今ここで引き下がるなどと考えている奴がまだいるか? 儂に物申す奴がここにいるか?」

 

 シン、と今度こそ部屋中を沈黙が満たす。全てを貫くような眼光が彼らの体を貫いた。黄昏のように暗い室内の中で、大将の刃のように鋭い目つきに堪えられるものは誰一人としていなかった。

 

 

 大将と中将は密かに目配せし合い、同時に頷きあった。将官にもなって、お互いこの程度の論理が分からないはずもない。わざわざここで話した理由を大将は察し、また彼への感謝を込めてもう一度だけ頷き返した。

 ただ、司令部トップの二人ですら、この地獄を抜けた先に果たして何が得られるのかが分からなくなっていた。姫級の撃破という目標と、基地内の実験でも無類の強さを発揮した三式弾と言う特攻装備の存在が、彼らを支える全てだった。

 

 誰もが、慢性的な消化不良のような感情を抱いていた。どこかで誰かが、鶏の肋、などと呟いた。もちろんそれは大将の耳にも届いていたが、彼はそれを綺麗さっぱり無視することにした。

 

 

 

 




海域名:アイアンボトムサウンド
A:昼戦 敵通商破壊部隊

潜水カ級flagship、潜水カ級elite、潜水カ級elite、潜水カ級elite(陣形:単縦)


提督「なんでこいつら、雷撃しかしないのに雷撃命中低い梯形陣形とか単横陣形組んでるの? 全部単縦でいいじゃん」

アイアンボトムサウンドの道中が既に鬼畜すぎてボス艦隊にすらたどり着けないかも……




【今日の艦船・潜水カ級flagship】

kancolle deta:耐久37 火力0 雷装108 装甲30 対空0
装備:22inch魚雷後期型、22inch魚雷後期型、21inch魚雷前期型


深海棲艦の中でまともな装備をしている数少ない例のうちの一つ。
魚雷攻撃しかできないため、魚雷を限界まで積むのは至極当たり前のことであり、特にコメントすることもないであろう。

単縦陣で潜水艦が待ち構えている海域はほとんどなく、現在通常海域で存在しているのは、1-5と1-6の潜水艦隊の二種類。
問題の単縦潜水は1-5の一番最初、Aマスに存在しており、1-5の事故率を跳ね上げているのであるが、そのマスの編成がこうだ。


A:敵偵察潜水艦
潜水カ級elite(陣形:単縦)

まさかの単艦である。


しかし単艦でありながら、2~4割くらいの確率でこいつが味方駆逐艦や軽巡洋艦をワンパン大破させて来るという暴れっぷりである。
偵察とは何だったのか。


一人いるだけですらこの大惨事であるため、作中での潜水艦の活躍ぶりは言わなくても容易に想像がつくであろう。
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