【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年   作:バイル77

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PHASE13 怨念の往く先

紅と黒の二色が高速で激突してその度に光の粒子が飛び散る。

ビームサーベル同士の鍔迫り合いが発生したのだ。

互いに互角の出力、戦闘の余波からすでに浸水が始まりだしている区画を照らす。

 

 

『うおぉぉぉぉぉぉっ!!』

 

『ハあァぁァぁァァっ!!』

 

 

先程からこの高速戦闘を続けている紅色は、真が駆る【デスティニーガンダム・ヴェスティージ】だ。

そしてもう片方はMSTシステムで出現した黒色、【黒のデスティニー】。

 

デスティニーガンダム・ヴェスティージの光の翼が煌くと同時に、黒のデスティニーのVLユニットから【黒】が溢れる。光の翼に対をなすような瘴気にも見える闇の翼。

光の翼から得られる推力で押し切ろうとしたデスティニーガンダム・ヴェスティージをその力で押し返す。

 

拮抗状態、しかしすぐに状況が動いた。

 

デスティニーガンダム・ヴェスティージが展開していたヴァジュラビームサーベルを格納したからだ。

当然、鍔迫り合いの状態でビームサーベルの発振を停止すれば、相手側の斬撃は止まらずこちらを襲う。

だがそれが真の狙い。

 

振られるビームサーベルを握るマニピュレータを即座に掴み上げて、掌にある反逆の剣を起動させる。

通常のビームサーベルよりも強力な、クラレント・ビームサーベルで黒のデスティニーのマニピュレータを切り落とした。

ジュッと黒のデスティニーを構成する泥が蒸発する音がする。

かつてラウラが飲み込まれたVTシステムと戦った経験から、マニピュレータ部分を切り落としても内部のオータムには被害はない事は知っている。

 

だが黒のデスティニーも攻撃されるだけではなかった。

クラレントでマニピュレータを切り落とされると同時に左脚部のスラスターを起動させた蹴りを叩き込んできたのだ。

 

密着状態からのカウンター、そのカウンターを空いている手で防御するがデスティニーガンダム・ヴェスティージはVPS装甲ではないため装甲は砕け散り宙を舞う。

 

そして背部の高エネルギービーム砲を展開してこちらに射線を向けている。

発射にマニピュレータが必要ないのか、トリガーを引くことなくデスティニーガンダム・ヴェスティージに高出力ビームが発射された。

 

しかし、そのビームをデスティニーガンダム・ヴェスティージは弾き飛ばされた勢いのままAMBACを駆使して避ける。

そして両機は一旦離れる形となった。

 

 

『く……っ!』

 

 

互いに数度の激突のせいで損傷している。

デスティニーガンダム・ヴェスティージは先の反撃によって腕部装甲と肩部の一部が破損している。

だが黒のデスティニーは破損個所が泥化した後に再構成することで損傷をなかったことにしていた。

 

その様子に内心舌打ちしつつ、真は思考を加速させていく。

 

 

(……純粋な戦闘速度と機体出力は互角、運命ノ翼を使えばこっちが有利。だけど向こうは損傷はすぐに修復されるし、オータムの事なんか考えてもないだろうからスタミナ無尽蔵、持久戦になったら圧倒的に不利。一気に決めるしかない。数ならこっちが有利だけど……)

 

『戦争ノ無い世界、議長のでスてィニープラんで世界ハ変わルンだっ、邪魔ヲするナぁっ!』

 

『……くそっ、本当に俺なのかよっ!』

 

 

思わず毒づいたのと同時にセンサーにとらえる背後の存在。

飛燕とインパルスマークⅡ、簪と本音の存在だ。

高機動を続けるデスティニーガンダム・ヴェスティージと黒のデスティニーを追ってきたのだ。

 

 

(インパルスマークⅡは問題ないけど、飛燕が……簪が予想以上に消耗している。VLユニットの加速がかなりの負担になったか……っ!)

 

 

先程レインとフォルテを撃墜したマニューバによる負担で、先ほどから簪は肩で息をしていた。

VLユニットを持つ飛燕に搭乗している以上、Gに対する耐性は通常のIS搭乗者よりも高い彼女であるが【運命ノ翼】による負担は初体験であり、それが予想以上に高負荷であったのだ。

 

 

(俺一人で……っ!)

 

 

プライベートチャネルが開く。

その通信先はもちろん簪と本音であった。

 

 

『真、私達、も……』

 

『はい。飛鳥君、援護できるはずです』

 

 

いつものゆるさを微塵も感じない、凜とした彼女の表情。

おそらくこれが本当の本音なのだろうと、真は理解した。

 

確かに彼女の機体、インパルスマークⅡのドラグーンならば、黒のデスティニーの機動力を削ぐ事ができる。

だが、あのデスティニーに感じるのは殺意だけだ。

過去の自分は追い詰められていたとはいえ殺意のみを相手に向けたことはなかったはずだが、どうやら調整が施されているようだ。

そんな相手に彼女達を向かわせるのはやはり気が引ける。

 

 

『簪、本音さん……でも』

 

『私は、大丈夫。だから真、指示して。そうすれば、動けるから』

 

 

少しでも呼吸を整えるためか深呼吸をしながら簪が真に告げる。

 

 

(……そうだ、今の俺には側にいてくれる仲間がいる。あの時の俺は周りを見る余裕すらなかったんだよな……)

 

 

一瞬瞳を閉じた真だったが、彼女達の意思を尊重して頷く。

 

 

『……分かったよ。なら3機のコンビネーションで決めるぞ、簪、本音っ!』

 

 

VLユニットを広げ、紅い光の翼が周囲を照らす。

クラレントをビームライフルモードで射撃しつつ、デスティニーが黒のデスティニーへと向かう。

 

それを背後から飛燕がビームライフルで援護し、その後ろから飛び出したインパルスマークⅡの背部ドラグーン【フェイルノートビームクロー】が射出された。

 

 

『こっちの準備はできてますっ!』

 

『本音っ、ドラグーンで牽制っ!』

 

 

真の指示に従い、ドラグーンが黒のデスティニーに向かって行く。

デスティニーガンダム・ヴェスティージも同じタイミングで攻撃を仕掛ける。

 

同時攻撃、黒のデスティニーはこれにも反応を見せた。

フェイルノートを回避しつつ、ビームブーメラン【フラッシュエッジⅡ】を展開して、ドラグーンを操るインパルスマークⅡへ投擲する。

そして闇の翼を広げて、加速してインパルスマークⅡを狙う。

 

 

『オれの邪魔ヲすルなァっ!!』

 

 

今の本音は同時制御が出来ず、ドラグーンを操るには機体を停止していなければならない。

それを黒のデスティニーは見逃さなかったのだ。

だが、それは真達も当然把握している。

 

 

『させるかぁっ!!』

 

『はぁっ!!』

 

 

迫る黒のデスティニーへ背後から単一仕様能力を発動させたデスティニーガンダム・ヴェスティージが追いつき蹴り飛ばす。

脚部装甲の一部が破損したが、今は一切合財無視を選択し、同様にフラッシュエッジⅡを展開して黒のデスティニーに投擲する。

 

黒のデスティニーが投げたフラッシュエッジは飛燕がビームライフルで撃ち落している。

 

デスティニーガンダム・ヴェスティージが投擲したフラッシュエッジを展開したビームサーベルで切り落とした黒のデスティニー。

だが、真はフラッシュエッジを投擲した直後からすでに【テレスコピックバレル延伸式ビーム砲塔】を展開し、単一仕様能力も併用。

超高出力ビームが黒のデスティニーの背部VLユニットを正面から貫いた。

 

当然、黒のデスティニーは体勢を大きく崩す事になる。

その隙を逃す3人ではなかった。

 

 

『本音、使ってっ!』

 

 

飛燕がビームライフルを格納して、両マニピュレータに展開した大型ビーム実体剣【バルムンク】を使用可能状態にして、インパルスマークⅡへと放る。

それをしっかりとキャッチしてビーム刃が展開した事を確認した飛燕とインパルスマークⅡの2機はスラスター出力を全開にして加速する。

 

 

『行くよっ!』

 

『はいっ!』

 

 

2機の狙いは黒のデスティニーの両マニピュレータだ。

 

飛燕がVLユニットによる加速から先行して右マニピュレータを切り落とす。

数瞬遅れて、インパルスマークⅡが左を切り落とした。

2機はそのまま離脱し、そして――広がる紅い翼。

 

 

『うおぉぉぉぉぉっ!!』

 

 

デスティニーガンダム・ヴェスティージは得物を構えず黒のデスティニーに突貫する。

単一仕様能力を使用した最大戦速。

黒のデスティニーに組み付いて最大戦速のまま区画の壁に叩き付ける。

今の黒のデスティニーは両マニピュレータを損失しており、組み付かれた状態では反撃のすべはなかった。

 

 

『VTシステムと同じならぁっ!』

 

 

黒のデスティニーの胸部を一瞬だけクラレントで焼ききり、泥の様になった部分に機体出力を最大にしてマニピュレータを刺し込む。

瞬間、黒のデスティニーは狂乱した様に叫びだした。

 

 

『議長のでスてィニープラんで世界ハ変わルンだっ、何デ邪魔をォぉォぉぉぉっ!!』

 

『言っても無駄かもしれないけど言ってやるっ!平和は誰かが作り出すもんじゃないっ!皆で作り上げていく事なんだよっ!これ以上俺の声で叫ぶなぁっ!』

 

 

ズブズブとマニピュレータが沈み込んで、中にいる者に手が届いた。

しっかりと握りこんで無理矢理引っ張り出す。

暴れる黒のデスティニーの抵抗で、真は右瞼の上を切り裂かれるがもはや止まらない。

 

泥の中から真が引っ張り出したのはオータムであった。

すでに意識は無くダランと首を垂れているが、呼吸はしっかりとしているようで胸は上下していた。

 

 

『ガッ、マゆ、ステ……ガガ……っ!』

 

 

ガクガクと黒のデスティニーが痙攣し、機体から泥が溢れて崩れ落ちて行く。

そのままでも行動不能になるのは目に見えている。

 

だが、真はオータムを抱えたまま右マニピュレータにアロンダイトVer2を展開してビーム刃を起動させる。

 

 

『……俺はもう昔の俺じゃない。支えてくれる人がいる、仲間がいる。ケリは俺がつけるっ!』

 

 

上段から振り下ろされた一撃は黒のデスティニーを真っ二つに切り裂いた。

そして機体全てが泥になり、ボロボロになったリジェネレイトへと戻り、エネルギー切れからか待機形態へと変わった。

 

 

『……ふぅ』

 

『お疲れ様、真』

 

 

デスティニーに飛燕が接近して、簪が告げる。

 

 

『あぁ、簪も。無理させて悪いな』

 

『ちょっとキツいけど大丈夫だよ。真、目は大丈夫?』

 

『あぁ。目を直接切ったわけじゃないから……っと、本音さんも、ありがとう』

 

 

右目を止血しながら後方にいるインパルスマークⅡを駆る本音に感謝の言葉を告げて振り返る。

するとどういう訳か少し不貞腐れたような本音の姿が目に入った。

 

 

『……本音って呼んでくれないんだ』

 

『え?』

 

『ううん、なんでもないよー。お疲れ様、あすあす、かんちゃん。私があの2人を回収しておくねー』

 

 

いつもの調子に戻った本音は撃墜されて意識を失っているレインとフォルテの元に降下して行く。

真からは彼女の表情は見えない。

 

 

(……駄目なのに、駄目って分かってるのになぁ……)

 

 

レインとフォルテを回収した彼女はチラリと上にいる真と自身の主である簪に視線を向ける。

2人は戦況を海上にいる束に連絡しているようだ。

 

 

(……真君)

 

 

そう羨ましそうに主である簪を見つめた時だった。

 

――海洋プラント全体に振動が奔った。

 

 

―――――――――――――――

MSTシステムが発動したのと同刻――

 

迫るビームをあざ笑いながらAMBACで回避するロキプロヴィデンス。

すると突如としてディスプレイが展開された。

 

ライリーは立ち上がったディスプレイを一瞥した後、嘲笑を浮かべた。

 

 

(……ほぉ、まさか起動するとは思わなかった。存外彼女達も役に立ったか、まぁ、もとよりあまり期待はしていないが)

 

 

それに気づいたラキーナは言葉を投げる。

 

 

『何を笑っているんだっ!』

 

『フフフ、君にはあまり関係……いや、かつての君を倒した、シン・アスカが今、飛鳥真と対峙しているのだよ』

 

『真とっ!?どういうことっ!?』

 

『……今起動したのはVTシステムの下地になったMSTシステムと言ってね、C.E.で戦乱を駆け抜けていたシン・アスカを再現するシステムなのだよ。歌姫、ラクス・クラインはそれほどまでに彼を欲していたという事さ、愛など粘膜が作り出す幻想に過ぎないと言うのにね』

 

 

私には理解できないよと告げたライリーに、楯無の【霧纏の淑女】のランスに装備されているガトリングガンが放たれ、弾丸をAMBACで回避しながら続ける。

 

 

『ただ再現できたはずなのだがISに搭載しても起動すら出来ない失敗作でね。必要な要素は集めてあるはずなのに、結局不明なまま放置されていた代物さ。スコールやオータム達のISを建造した際にシステムを保険程度に搭載していたが……こうなるとは思わなかったよ』

 

 

ストライクがビームライフルで狙うが、瞬時に展開されたドラグーン10基が彼女を狙う。

だが、ストライクは以前とは違う。

 

 

『この程度ならばっ!』

 

 

瞬間的に加速すると同時に、ストライクはマドカによって遠隔操作され、精密なAMBACでビームを回避した。

 

 

『……別の誰かの感覚?ならばこれならどうだね?』

 

 

瞬時に5基のドラグーンが展開され、それぞれが別角度からストライクに向かってビームを降らせる。

しかし、そのビームは彼女に届く前に空中に舞っている【水】によって減退し、消滅する。

 

 

『させないわよっ!』

 

 

楯無の【霧纏の淑女】のアクア・ヴェールだ。

高機動を続けながら、彼女は自機とストライクの周囲にヴェールを展開している。

これによりある程度ならばドラグーンを無視する事ができる。

 

 

『ふっ!』

 

 

瞬時加速による急機動でロキプロヴィデンスはビームサーベルを展開しながら接近。

同時にビームスパイクを起動したドラグーン3機が同時に迫ってくる。

 

 

『マドカっ、前に出るよっ!』

 

『分かっているっ!』

 

 

ストライクは回避ではなく逆にフラガラッハを展開して加速。

ロキプロヴィデンスと鍔迫り合いの形になるが、それは一瞬。

相手に組み付くのが狙いであった。

 

 

『ぬぅ……っ!』

 

『これでぇっ!』

 

 

I.W.S.P.パックから得られる推力で、強引にロキプロヴィデンスと【位置を入れ替える】

その直後、迫っていたスパイクドラグーンは機動が鈍り、消失した。

消失したドラグーンは機体の背部ユニットに戻っている。

 

 

『この距離なら、いくらドラグーンを使えてもぉっ!!』

 

 

ロキプロヴィデンスの肩部にフラガラッハを突き立てる。

ビーム刃が存在しているため、PS装甲を貫通してダメージを与える事が可能だ。

 

 

『ぐぅっ……だが甘いっ!!』

 

 

スパイクドラグーンとして展開されたドラグーン5基が密着状態であるライリー毎ストライクを襲う。

 

 

『何っ!?』

 

『ラキーナ離れろっ!』

 

『離さんよっ!!』

 

 

ロキプロヴィデンスの肩部に食い込んだままのフラガラッハを手放して離脱を図ろうとしたが、自機体の負傷すら厭わずにスパイクドラグーンを突撃させた。

 

2機のビームスパイクがストライクの背部ストライカーパック【I.W.S.P.】の主要ウィングとスラスター部分を破壊して爆発が起こる。

凄まじい勢いでエネルギーが減り、残り5割程度まで減少する。

 

しかし当然ロキプロヴィデンスもただではすまない。

ストライク毎スパイクドラグーンを突撃させた影響で三基のドラグーンを喪失し、腰部装甲と背部ユニットに損傷が見られる。

だが、ストライクが負ったダメージよりは軽傷に見えた。

 

 

『ラキーナちゃんっ!』

 

 

すかさず楯無の霧纏の淑女がランスでライリーに刺突を繰り出す。

それをストライクを弾き飛ばし、その衝撃によって離脱。

 

離脱すると同時に楯無に向かってドラグーンを射出する。

 

 

『くぅっ!』

 

 

アクアヴェールによる防御とAMBACよってビーム回避しつつ、損傷したストライクへ寄り添う。

 

 

『ラキーナちゃん、ストライクの損傷はっ!?』

 

『……っ、I.W.S.P.へのダメージが深刻です、くそっ!』

 

『……他のシルエットは?』

 

『……駄目です、I.W.S.P.程の総合力を持ったストライカーは他には……っ!』

 

 

ギリッと歯軋りしたラキーナであったが、次の瞬間、まるで天啓の様な秘策を思いついた。

自身の考えが間違いなければ損傷したI.W.S.P.に代わる、戦力になるはずだ。

 

 

『楯無さん、最大出力のアクアヴェールでの援護お願いしますっ!』

 

『えっ、えぇっ!』

 

 

ラキーナの指示に従って楯無はアクアヴェールを展開させる。

それに合わせて、ディスプレイを展開したストライクは装着しているI.W.S.P.を量子格納する。

 

マニピュレータを一時格納し、凄まじい速度でディスプレイをタイピングして行く。

それに合わせて次々にディスプレイが展開し、消えて行く。

 

 

『I.W.S.P.パックをメンテナンスモードで確認、損傷率確認57%っ、破損ウィング・スラスター共にエールストライカーより外部接続、クリアっ!武装はソード、ランチャーから補填、バランサー調整っ、オールクリアっ!』

 

 

タイピングが完了すると同時に、先程格納したI.W.S.P.の他に3つの背部ユニットのパーツが展開される。

I.W.S.P.パックの背部スラスターが一部外されており、そこにエールストライカーの大型スラスターユニットが組み込まれる。

同じように主要ウィング部分もエールストライカーが補填しており、右肩にはランチャーストライカーパックの肩部バルカン砲、左肩にはソードストライカーパックの【ビームブーメラン マイダスメッサー】が装備されている。

 

そして両マニピュレータにも【シュベルトゲベール ビーム大型実体剣】と【超高インパルス砲 アグニ】を装備している。

ラキーナが行ったのは損傷した【I.W.S.P.】に現在使える3つのストライカーを【組み合わせる】行為。

I.W.S.P.を素体にしての、今のストライク全ての力の結晶【完全形態】

 

――名づけるならば【パーフェクトストライカー】

 

 

(まさか、彼女は今の一瞬でISのプログラムを書き換えたというのっ!?いや、ソフトだけじゃない、ハードまで一瞬で調整を……何て子なのっ!?)

 

『楯無さん、1つお願いがあります』

 

『……ええ、分かったわ』

 

 

楯無に作戦を伝えたラキーナは、アクアヴェールを突き破ってシュベルトゲベール ビーム大型実体剣を構え、ライリーに向かって行く。

 

 

『ほう、この状況で新しい装備かね、だがそれでも届かないっ!』

 

『いや、届かせて見せるっ!その為の力だからぁっ!』

 

 

展開されたドラグーンは今ロキプロヴィデンスが使える12基全てだ。

 

 

半数がビーム砲台、もう半数がビームスパイクとして瞬時展開され、ストライクを襲った。

ビームがアグニを貫き、ビームスパイクがストライクに着弾する。

 

 

『今だ、楯無っ!』

 

 

ラキーナが叫んだ瞬間、ストライクが【爆発】に包み込まれた。

その爆発は清き激情(クリア・パッション)、発生させたのは当然楯無だ。

 

 

『何っ!?』

 

 

何故、味方をと驚愕したライリーだったが、それは一瞬。

何故なら操作していたドラグーンの半数、スパイクドラグーンとして操っていた6基の反応が消えたからだ。

 

ライリーが迎撃をしてくる事を読んでいたラキーナは、自分毎ドラグーンを破壊させたのだ。

パーフェクトストライカー状態ならば爆破を受けても、その装備の数からダメージを各部位に分散させる事が可能であった。

 

そして爆発を突っ切ってくるストライク。

ダメージはあるものの、機動は死んではいない。

 

 

『ラキーナ、決めなさいっ!!』

 

 

ビーム砲台としての機能を残しているドラグーン6基をガトリングガンで撃墜しながら、楯無が叫ぶ。

 

 

『このまま決めろ、ラキーナっ!!』

 

 

ストライクと同期してくれているマドカが叫ぶ。

 

 

『ラキーっ!!』

 

 

ラキーナを信じて戦いを眺めていたフレイが叫ぶ。

それだけでラキーナの身体に力がみなぎった。

 

 

『はぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

『まだだっ、まだ終わらんっ!』

 

 

ビームサーベルを起動して、シュベルトゲベールのビーム発信装置部分を狙うが遅かった。

サーベルごと左マニピュレータを破壊してシュベルトゲベールはロキプロヴィデンスを切り裂いた。

 

 

『ぐぅっ!!?』

 

 

胸部装甲部分に一文字の傷跡を刻み込む。

そして【絶対防御】が発動、これによってロキプロヴィデンスのエネルギーはほぼ0の状態となった。

 

 

『……私達の、勝ち……だっ!』

 

「……そのようだね」

 

 

息を切らせながら、ライリーに告げる。

この時点で敗北は確定的。

だというのに、ライリーは何故か笑みを浮かべていた。

 

 

『……殺しはしない、アナタには何故こんな事をしたのか話して貰う』

 

「何故?ククク……ハハハハハッ!」

 

 

ラキーナの言葉にライリーはまるで狂ったように笑い出す。

 

 

『何がおかしいんだっ!』

 

「ハハハ……いいだろう、教えてあげよう。私の目的?それは君を殺す事だ(・・・・・・・・・)、それだけが出来ればいい」

 

『私を……っ!?そんな、そんな事の為にっ!これだけの事をアナタはっ!?』

 

「私はこの世界では何もない虚ろな存在。この身に残ったのは憎悪。世界、ニュートロンジャマー、キャンセラー?そんなモノはどうでもいい。私という存在、この魂を生み出す事となった元凶、君を殺す事が出来ればどうでもいいのだよっ!」

 

 

笑みを浮かべながらライリーはロキプロヴィデンスのコンソールを呼び出してディスプレイをタッチした。

最後の力を振り絞ったかの様な、ラキーナが反応できない速度であった。

 

――瞬間、海洋プラント全体に振動が走った。

同時に浸水が始まる。

 

 

『なっ、何をっ!?』

 

「フ、フフフ……この海洋プラントには情報漏えいを防ぐために自爆装置が備え付けられていてね。今、それを起動させた」

 

『自爆装置っ!?』

 

「ハハハ、かつてのサイクロプスとはいかないが、この海洋プラント全てを消滅させるには充分な代物、そしてプラントごとの連結も解除されそれぞれの区画が水没しているっ!」

 

『何ですって!?』

 

 

機体のハイパーセンサーを使って楯無が周囲の様子を探る。

確かにこの区画への侵入に使った移動区画が爆破で吹き飛び、そこから浸水が始まっていた。

 

 

『くっ、脱出しないと……っ!』

 

『……逃がしはしない、キラ・ヤマトぉっ!』

 

 

僅かに残ったエネルギー全てを使ってビームサーベルを発振させたロキプロヴィデンス。

だが――次の瞬間、ライリーの胸をIS用ナイフが貫いていた。

 

彼女の身体を貫いたのはストライクの【装甲コンバットナイフ アーマーシュナイダー】

ビームサーベルを発振させた時点で機体のエネルギーは尽きていた。

その為、絶対防御も発動はしなかった。

 

 

「……っ!」

 

 

血を吐き出して、ライリーはラキーナに抱きつくように倒れこむ。

致命傷を負ってもまだラキーナの首に手を伸ばす。

 

だが、それもすぐに力なく手が離れてとぎれた。

 

 

『……何でそこまでアナタは1人だったんだ。アナタにだって側にいてくれる人はいたはずなのに』

 

 

彼女の苦悩は分からないでもない、もしかしたら自分もそうだったかもしれないからだ。

だが、道を間違い迷った自分にさえ、手を差し伸べてくれる人間はいた。

 

ライリーにもそういった人間はいたはずなのに、彼女は拒絶したのだろう。

すでに意識は無いライリーにラキーナは告げる。

 

 

『……アナタは寂しい人だ。私は、アナタとは、違うっ』

 

 

そう言ってライリーの遺体を抱えてストライクを浮上させ、海上の束達に連絡を入れる。

 

 

―――――――――――――――

 

暗い闇の中、ライリー、いやクルーゼは目を覚ました。

その姿はかつての自分、ザフトの白服姿であったが仮面はつけていなかった。

 

 

「……私は、また負けたのだな」

 

「……もういいでしょう、ラウ」

 

 

そんな彼に語りかける声があった。

振り返ると、ザフトの赤服、自分と同じ境遇の少年。

【レイ・ザ・バレル】がそこにいた。

 

 

「レイか……」

 

「ラウ、もう安らかに眠ってもいいはずだ。俺はずっと貴方のそばにいます」

 

 

レイがクルーゼの手を取る。

その時クルーゼは気づいた。

 

自分が欲したのは、自身の手を握ってくれる存在だと。

あまりに気づくのが遅くてふと、笑みを浮かべるほどに。

 

 

「……レイ、君は私の側にいてくれるんだな」

 

「はい、貴方は俺の兄であり、父であり、家族ですから」

 

「……そうか、ありがとう。レイ」

 

 

そう言ってクルーゼは瞳を閉じる。

その表情はとても安らかなものであった。

 





次回予告
「Epilogue 繋いだ手」


「ありがとう、ラキーナ」
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