【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年   作:バイル77

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過去編⑧ 友として

『テロリスト共がぁっ!』

 

 

1機のグフ・イグナイテッドがテンペストビームソードを構えて、Gタイプ――ガンダムタイプのMS目掛けて切りかかる。

 

だが、グフの斬撃は目の前のガンダム、トリーズンデュエルガンダムには届かなかった。

テンペストが命中する直前にトリーズンデュエルは自機のマニピュレータ、人間でいえば上腕でグフのマニピュレータをはじいたのだ。

 

当然、弾かれた斬撃は虚空を切り裂く。

 

 

『テロリストか、確かに間違ってはいない。だが貴様らは歌姫の言葉を絶対的に肯定して、思考を停止している。仮にもザフトを継ぐ者たちがその体たらくではなぁっ!』

 

 

ビームサーベルを起動し、そのままグフを切り裂く。

切り裂いたグフから離れ、爆発が発生すると同時に機体のレーダーがこちらに向かってくるMSを検知した。

その数はドムを中心にした15機。

だがその程度で止められるイザークではない。

 

 

「俺も甘く見られたものだな……っ!」

 

 

微笑を浮かべ、コンソールを操作する。

すると背部のウィングユニットからドラグーン機動翼が切り離され、宙域の敵MSへと群がる。

 

ドム達も群がるドラグーンに気づき、スクリーミング・ニンバスを展開した。

しかし、スクリーミング・ニンバンスは前方を守る障壁だ。

 

機敏かつ精密に動くドラグーンならば、即座に無防備な背後に回ることも容易であった。

そして、漆黒の宇宙に15の爆発の華が咲いた。

 

 

『こちら、イザークだ。ミネルバⅡ聞こえるか』

 

『はい、聞こえています』

 

 

ドラグーン機動翼を機体に戻し、ミネルバⅡへと通信を送る。

通信ディスプレイに映るのはアビーであった。

 

 

『すでにインフィニットジャスティスは進路を変え、デスティニーの、シンの方に向かったようだな』

 

『えぇ。確認しています。現在シンと交戦中です。ストライクフリーダムについてはパルス小隊と交戦しています。今のところ作戦は予定通り進行しています』

 

 

アビーが現在の戦況をイザークに伝え、彼はそれに頷く。

 

 

『了解した、こちらは引き続き戦闘を継続する』

 

『了解しました。ご武運を』

 

 

通信が終了すると共に、高速熱源を機体のセンサーが検知した。

 

 

「っ!」

 

 

すぐさま機体を横に逸らす。

瞬間、上空から無数のビームが降り注ぎ、数瞬前までトリーズンデュエルが存在した場所を薙いだ。

そのあまりの火力に思わず冷や汗が流れた。

 

上方にいる機体。

それを確認したイザークは驚愕に目を見開いた。

 

 

「っ、あれはフリーダムっ!?」

 

 

そう、こちらを砲撃してきたMS。

それは英雄がかつて搭乗していた機体であり、その活躍ぶりから最強の名をほしいままにしていたMS。

フリーダムガンダムであった。

 

 

『流石イザーク、完璧に不意打ちだったんだけどなぁ』

 

 

そのフリーダムから通信が届き、通信用ディスプレイには色黒の男性が映る。

彼は朗らかな笑みを浮かべていた。

 

 

『ディアッカっ、貴様かっ』

 

 

かつてのジュール隊副官、【ディアッカ・エルスマン】

イザークと共にヤキン・ドゥーエ、メサイア戦役を戦い抜いた人間であり、イザークにとっては数少ない心を許せる人間だった。

そしてその彼が乗っているMSの名は【Λフリーダム】

ストライクフリーダムの少数量産機として極力性能の低下を抑えるをコンセプトに開発されたエース用の量産MSである。

発展型VLユニットはオミットされたが、デスティニーに搭載されていた光圧推進スラスターを装備する事で機動力も原型機に近い水準であった。

それに伴いこの機体を乗りこなせるのは一部のエースのみ、ディアッカはその条件に当てはまっていた。

 

 

『Λフリーダムっ!その機体に乗って出てきたということは……っ!』

 

『そう言う事っ、お前等を止めなきゃいけないんだよ、何としてもねっ!』

 

 

光圧推進スラスターの一部がドラグーンとして切り離され、クスフィアスを射撃位置に起こしトリガーを入れる。

フリーダム系列が伝説となった理由の1つであるフルバーストだ。

圧倒的な火力による面制圧。

それがフルバーストモードの最大の強みだ。

 

トリーズンデュエルはスラスターとAMBACを駆使しつつ、その火線を回避していく。

 

 

『ディアッカっ、貴様はなぜ奴らに与するっ!?』

 

『そんなの決まってるでしょうよ』

 

 

トリーズンデュエルからの反撃のビームライフルを回避して、ディアッカはその答えを告げた。

 

 

『――クラインの連中に勝てるはずがないんだよ。俺たちはさ』

 

 

先程まで朗らかであったディアッカの声色は静かなものへと変化していた。

 

 

『貴様何を……っ!?』

 

『メサイア戦役の時、優勢だったデュランダル議長はラクス・クラインに負けた。彼女の一声でザフトから離反する奴らは少なくなかった』

 

『それは……っ!』

 

 

ディアッカの言う通り、かつての戦いではラクスの言葉でザフトから離反した兵は少なくなかった。

イザークやディアッカも部下の為とは言え、その中に含まれている。

 

 

『それにただのテロ組織だったはずのあいつらがザフトの最新鋭機をも上回る性能のMSを持ってたんだ、あいつらを敵に回すってことはその力が自分に向けられるってことだ。俺はそれが怖い、だからあいつら側につく。ま、ミリィもいるし勝ち馬に乗るとでも言うべきかな?』

 

 

ディアッカの言い分も分かる。

一テロ組織に過ぎなかった当時の歌姫の騎士団が、ザフトや連合の最新鋭MSを超える機体を開発していた。

その圧倒的な性能を目で見たイザークは確かに恐怖も感じていた。

 

 

『貴様とて分かっているだろうっ、今の地球圏の現状をっ!それを見て見ぬふりをするというのかっ!』

 

『言い方を変えればそうなるな。人間だれしも自分の命が可愛いんだよ。俺はお前やシホちゃんみたいにあいつらに歯向かう気は毛頭ないんだよ』

 

 

Λフリーダムのドラグーンを、トリーズンデュエルがドラグーンで迎撃しつつの高機動射撃戦。

機動力だけならば、Λフリーダムがトリーズンデュエルを上回っている。

 

だが、高機動MSとの戦い方ならばイザークも心得ている。

 

 

『……そうか、分かった。ならばディアッカ、貴様は俺の敵だっ!』

 

 

ドラグーンを射出し、ビームライフルのトリガーを引く。

放たれたビームは高速機動を続けていたΛフリーダムの右脚を正確に貫いた。

右膝から下が爆発によって弾きとび、Λフリーダムは大きく体勢を崩した。

 

 

『っ!?』

 

 

追撃のビームライフルの射撃を、ディアッカは舌打ちしつつ回避していく。

 

並みのパイロットであるならばΛフリーダムの高速機動を読みきる事は不可能だ。

だが今のイザークは違う。

 

ネオ・ザフトとしての潜伏期間に、仲間であるシンと幾度となく模擬戦を行った。

彼が搭乗しているデスティニーガンダム・ヴェスティージは超高速機動が可能な正式VLユニット搭載型MSだ。

傭兵として汎用MSを乗りこなして腕を上げていたシンと双璧を成すレベルに、イザークも技量が上昇している。

ならば光圧スラスターを搭載しているΛフリーダムを捉える事は不可能ではなかった。

 

だがディアッカも歴戦のMSパイロット。

ダメージによって崩された体勢をAMBACで切り戻し、クスフィアスを起動させる。

しかし、ビームサーベルを振り上げたトリーズンデュエルが既に至近距離に接近していた。

 

 

『やられるかよぉっ!』

 

 

あえて、そのビームサーベルを左脚で受けるΛフリーダム。

サーベルによって左脚は切り落とされてしまうが、相手の動きは止まる事になった。

互いのドラグーンはお互いを狙いつつ射撃しているが、そのうちの1基がトリーズンデュエルを捉えた。

 

 

『そらぁっ!』

 

『ちぃっ!』

 

 

スラスターを噴かせてドラグーンからのビームを避けようとしたが、反応が一瞬だけ遅れた。

トリーズンデュエルの右脚をビームが貫いた。

幸い爆発はしなかったが、内部を焼かれたためにスラスターも反応していない。

 

互いのドラグーンが一旦エネルギー補給の為に戻ってくる。

それを確認したイザークが叫ぶ。

 

 

『ディアッカ、貴様は俺が止めるっ、それが友としてできる最後の事だっ!』

 

『言ってくれるね、イザークっ!一応そっちはテロリスト側なんだけどねぇっ!』

 

 

再度ドラグーンを射出してくるΛフリーダム。

ドラグーンの数は8基。

トリーズンデュエルのドラグーン4基の倍。

単純に火力もトリーズンデュエルを上回っている。

 

 

『どんな汚名もかぶる覚悟はできているっ、俺達は何としてでもあの歌姫を止めなければならないんだっ!』

 

 

中距離、遠距離での射撃戦ではΛフリーダムを落とす事は困難だ。

ならば接近し、一気に叩く。

すでにプランは出来ていた。

 

 

『うぉぉぉぉっ!!』

 

 

スラスターを全開に噴かせたトリーズンデュエル。

機体に向かって降り注ぐ緑色のビーム。

 

だが、それを紙一重でトリーズンデュエルは躱していく。

 

 

(チャンスは一瞬っ、意識を研ぎ澄ませっ!)

 

 

自身の持つ技術を全てつぎ込んで、トリーズンデュエルは高速でΛフリーダムに向かう。

研ぎ澄まされた意識はまるで水面に落ちる一滴の水滴の様に静かであった。

 

迫るドラグーンはビームライフルで逐一迎撃する。

その全てが今の研ぎ澄まされたイザークの意識から逃れられずに落とされた。

 

そしてついに、サーベルが届く至近距離までたどり着いた。

被弾は一発だけ掠ってしまったことを除いて皆無であった。

 

だが、その動きはディアッカも捉えていた。

 

 

『甘いなっ、イザークっ!』

 

 

カウンターで振るわれた、Λフリーダムのビームサーベル。

トリーズンデュエルが振り上げていた右腕をサーベルごと切り落とした。

 

 

『これで終わりだっ、イザークっ!』

 

 

ディアッカが勝利を確信した。

その瞬間、無手であるはずのトリーズンデュエルの左マニピュレータ。

正確には掌に当たる箇所から光が放たれた。

 

 

『イザ……ク……っ』

 

 

Λフリーダムのコックピット横を、トリーズンデュエルのマニピュレータから伸びたビームが貫いていた。

 

トリーズンデュエルの両マニピュレータに装備された近接格闘用の装備。

デスティニーに装備され、現在のデスティニーガンダム・ヴェスティージにも受け継がれた【パルマフィオキーナ】の改良型。

デスティニーガンダム・ヴェスティージに搭載されたクラレントの試作型【アガートラム】

 

クラレントとは異なり、ライフルモードへの使い分けはできない。

だが、その分出力だけならばクラレントのビームサーベルモードよりも高く、初見殺しとしての機能は充分にあった。

 

 

『……さらばだ、ディアッカ』

 

 

そう静かに告げたイザークの操作によってトリーズンデュエルのアガートラムはΛフリーダムを一文字に切り裂いた。

切り裂かれたフリーダムから溢れた無数の火花が推進剤に引火、瞬く間に爆発が起こりΛフリーダムはその業火に焼かれて消えていく。

 

 

『……隊長、大丈夫ですか?』

 

 

鳳仙花のパーソナルマークが施されたグフに乗ったシホが、トリーズンデュエルのイザークに接触回線で尋ねる。

余談だが、シホが搭乗しているグフはかつてイザークが搭乗していたものを譲り受けたものである。

 

 

『……あぁ、大丈夫だ。シホ、貴様は?』

 

『ここに来るまでに右マニピュレータを撃ち抜かれましたが、戦闘は可能です』

 

『分かった。だが念のため一旦後退しろ、残りは1機でもなんとかなる』

 

 

少しだけ声が上ずっているイザーク。

当然、シホはそれに気づいた。

だが彼の意思を尊重して通信に返答した。

 

 

『分かりました、隊長。お気をつけて』

 

 

グフがスラスターを吹かしてトリーズンデュエルから離れていく。

シホの撤退を援護するため、トリーズンデュエルはドラグーンを展開し、迫るザク達に相対する。

 

イザークは無言で機体を操作し続ける。

ヘルメットのバイザーの内側に煌く球体がいくつも浮かんでいた。

 

 




イザークがネオ・ザフト戦役の時に何をしていたのかになります。
VSディアッカが答えでした。
ディアッカって割と狡猾な設定らしいんですけどね。

次回予告

「過去編⑨ 戦女神VS大天使」

「タンホイザー発射後、全速――対アークエンジェル用シークエンス、【コールブランド】っ!」

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