【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年 作:バイル77
――意識が戻る
「……ここは?」
光のない暗闇の中をシンは漂っていた。
ジェネシスを止める為、デスティニーの自爆によって自分は死んだはずだ。
以前、月でアスランに撃墜されたときは初恋の人物【ステラ】によって似たような場所に誘われた事もあったが、どうやら違うらしい。
「……地獄ってのは味気ないところなんだな……俺にはお似合いか」
死後、罪を犯した魂は地獄と呼ばれる場所に行く。
故郷であるオーブではそのようなことを子供に言い聞かせて、躾を行っていたことを思い出した。
ふと懐かしい気持ちになり目を瞑った。そんな時であった。
「シン、ここは地獄ではない」
背後から低い男の声が響く。
その声はシンにとっては懐かしく、もう聞くことができない【親友】のモノ。
思わず振り返るとそこにはザフトの赤服を着込んだ金髪の男。
親友【レイ・ザ・バレル】がいた。
「レっ、レイっ!?」
「少し見ない間にずいぶんと背が伸びたな、シン」
シンのリアクションを無視して、レイは微笑む。
「無視かよっ!」
「気にするな、俺は気にしない」
メサイア戦役以来の懐かしいやり取りが行われた。
そのやり取りが行われたことで、少し気持ちが落ち着いてしまったシンではあったのだが。
「……それでここはどこなんだよ、レイ」
「ここは確かにあの世でもあるんだが……【境界】なんだ」
「境界?」
「ああ、お前を送るための境界だ」
「俺を? 送るってどこに?」
レイの言っている事が理解できない。
「どういうことだよ、レイ」
「……お前はずっと戦い続ける道を選んだ、それを悪いとは言わない、お前の選んだ道だ」
レイの顔に苦悶の表情が浮かぶ。
「奴らとの戦いも終わり、世界は平和への道を歩み始めている。 だがそのためにお前は死んだ……あまりにも救われなさ過ぎる」
「……レイ」
「……だからお前の魂を平和な世界に送る、お前はそこで生きろ、ここからならばお前を送り出せる」
「はぁ!?」
親友が突拍子のない言葉を出した途端、自分の身体が後方に流れていくのを感じる。
少しずつレイの姿が遠ざかっていく。
「平和な世界って、魂って、送るって! どういうことだよ、レイ!」
「これは俺だけじゃなく、C.E.の死人の総意だ。 お前はそこで幸せになれ、いいか、絶対に幸せになれよ」
「だから訳分からないんだよ、答えろよレイぃい!」
身体がどんどん後方に流される。
泳ぐように抵抗してみるが、速度を少し緩めるのが精一杯だ。
「気にするな、俺は気にしない……そっちで死んだらまた会おう、シン」
「ふっざけんなぁぁぁぁぁ!!!」
せめてもの抵抗に大声でツッコミを入れた。
その直後、意識がまた遠のく。
最後に微笑むレイの姿が見えた。