【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年   作:バイル77

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PHASE6 IS学園

 【IS学園】とは文字通りIS操縦者の為の教育機関のことである。

 

 正確にはISの情報開示と共有、研究のための超国家機関設立、軍事利用の禁止などを定めたアラスカ条約に基づき日本に設置された特殊国立高等学校である。

 

 また操縦者に限らずIS専門のメカニックや開発者、研究者などISに関連する人材はほぼこの学園で育成されている。

学園の土地は本土から離れた離島にあり、あらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されないという規約が存在している。

 

 真には願ったり適ったりの学園でもある。

また日本以外の国家のISとの比較や新技術の試験にも適しており、技術交流などの面で重宝されている。

 

 

「ううっ……」

 

 

 IS学園 1年1組、その中で唯一の男性である【織斑一夏】は周囲からの視線に耐えている状況に置かれていた。

何故ならばIS学園は本来女子高であり、男性は自分一人しかいないのだから。

 

 女生徒達からしてみれば一夏は美形であり、現在学園唯一の男性搭乗者でもある。

好奇の視線を送ってしまうのはしかたない状況であろう。

 

 入学式が終わって教室に入ってからずっとその状況が続いており、そろそろ限界であった。

そしてようやく一夏が待ち望んだ状況の変化が訪れた。

 

 ちなみに一夏にチラチラと視線を送っていた【黒髪をポニーテールにした女生徒】がいたのだが、当の一夏はそれに気づいていてはいなかった。 

 

 

「全員そろってますねー。それじゃあSHRを始めますよ」

 

 

 教室のスライド扉が開き、緑髪の女性。

山田真耶が教室に入ってきた。

 

必然的に一夏から視線は外れ、彼女に集まる。

本日の真耶の服装はスーツではなく、薄黄色のワンピースに大きな黒縁眼鏡をかけている。

 

 

「今日からこの1年1組の副担当となります【山田真耶】です、よろしくお願いしますね」

 

 

 真耶はそう言って一礼する。

生徒たちも座りながら一礼を返す。

 

 

「担任の先生は少し遅れますので、その間に皆さんの自己紹介をしましょう。出席番号順でお願いしますね」

 

「……えっ!?」

 

 

 真耶の発言に自分だけにしか聞こえないレベルで声を出してしまった一夏であった。

この教室に男は自分だけ――必然的に注目されてしまう。

 

 

(どうするっ!? どんな事を言うっ!? そうだ、得意な事……家事とかは得意だな、うん!)

 

 

 自己紹介の内容について思考の海に一夏は沈む。

 

 

 (得意な事と……後は何かな……好きな食べ物とか趣味……うん、これで!)

 

「むら……く……織斑一夏君!」

 

「ふぁいっ!?」

 

 

 自己紹介の内容を頭の中で組み立てていた一夏だが、真耶の声によって現実に戻された。

 

 

「おっ、大声だしてごめんなさい、びっくりしましたか? でも自己紹介の順番が【お】なんだけど自己紹介してくれるかな?」

 

「あ、はい、大丈夫です」

 

 

 そういって立ち上がり、先程まで考えていた自己紹介の内容が頭からすっ飛んでいることに気付いた。

 

 

(やばい、内容忘れたー!?)

 

 

 心の内で絶叫しながら、教室を見回す。

一夏にクラスメイトは何が出るか期待している眼差しを向けていた。

 

 先程考えていた内容を思い出す時間もなく、仕方なく自己紹介を開始する。

 

 

「おっ、織斑一夏です……以上です!」

 

 

 名前のみの自己紹介に一夏以外の1年1組の人間が全員ずっこけた。

そしてその内容について冷徹なツッコミも入る。

 

 

「お前はまともに自己紹介もできんのか」

 

「げぇ、関羽っ!?」

 

「誰が三国志の武将か、馬鹿者」

 

 

 大げさに驚いた一夏の頭に神速の何かがぶつかり鈍い音を立てる。

彼の頭にぶつかっているのは出席簿だ。

 

 

「いっつぅ……!」

 

 

 どう聞いても主席簿で叩かれた音ではないとクラスメイト全員が思い、叩いた人物に目線を合わせた。

 

 

「織斑先生、もう会議は終わられたんですか?」

 

「あぁ。それに件の奴も連れてこなければならなかったからな……クラスへの挨拶を押し付けてすまなかった」

 

「い、いえっ、大丈夫です! 副担任ですから!」

 

 

 真耶の言葉に微笑み、一夏を叩いた人物。

織斑千冬が黒板の前に立って話し出す。

 

 

「このクラスの担任の織斑千冬だ。私の仕事は1年でISについて科を問わず必要最低限の基礎を叩き込むことだ。私や山田先生の言葉はよく考えて自分のモノにしろ、口答えしてもいいがあまり煩わせるなよ?」

 

 

 まるで独裁者のような発言だが、そ の言葉に爆発したかのような黄色い声が教室中から上がった。

 

 

「キャーっ! 千冬様よっ! 本物っ! 世界最強の【ブリュンヒルデ】っ!!」

 

「貴方のようになりたくてここに来ましたっ!!」

 

「ずっとファンでしたっ!!」

 

「叱って下さいっ!」

 

 

 年頃の女の子の言葉じゃないようなものが混ざっており、まさに教室は阿鼻叫喚の文字がぴったりの様相になっている。

その様子に心底鬱陶しそうに千冬が話し出す。

 

 

「…………毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。逆に感心させられる。それともなにか?誰かが私のクラスだけ馬鹿者を集中させているのか?」

 

 

 少々語気が荒くなっているが、それは火に油を注ぐだけだった。

 

 

「キャーっ! もっと叱って罵って下さいっ!」

 

「我が生涯に一片の悔いなしーっ!」

 

「まだよっ、まだ終わらないわっ!」

 

 

 その様子に顔に手を当てて千冬はため息をついた。

 

 

「……織斑、さっさと自己紹介を続けろ」

 

「えっ、千冬姉っ、まだやるのっ!?」

 

「当然だ馬鹿者。それと織斑先生だ」

 

「……はい、ちふっ……織斑先生」

 

 

 身内への親しい呼び方を注意し、訂正させる。

しぶしぶ従った一夏に視線が集まりある女生徒が声をもらす。

 

 

「えっ、先生と織斑君って姉弟なの?」

 

「あ、確かに……苗字同じだし」

 

「……貴様ら、いい加減に無駄口をたたくな、さっさと自己紹介を進めろ」

 

 

 千冬の鶴の一声で雑談は消え、自己紹介が再開された。

一夏は真耶に話しかけられる前に考えていた自己紹介の内容をかろうじて思い出して自己紹介を完遂した。

 

 ちなみに自己紹介の中には女尊男卑に影響を受けている生徒が数人いたが少数派であった。

クラス全員の自己紹介が終わったことを確認した千冬が黒板の前に立つ。

 

 

「さて全員終わったな、知ってのとおりこのクラスには希少な男性搭乗者がいるんだが……実はこのクラスには【もう1人】増えることになってな」

 

 

 その言葉に教員と一夏を除く全員が息を飲む。

その視線は自然と教室の戸に注がれている。

 

 

「飛鳥、入ってこい」

 

「はい」

 

 

 教室のドアが開かれ、一夏の見知った顔が入ってくる。

漆黒の様な黒髪に特徴的な紅い瞳、自分と同じくらいの背格好。

 

 幼い頃からの親友である飛鳥真だ。

一夏と同じIS学園の男子生徒用制服を着ている。

 

 

「真っ!?」

 

「久しぶりだな一夏」

 

 

 約一月振りにあった親友同士にしてはやけに軽い挨拶を真が投げかける。

 

 

「なっ、なんでここに……!?」

 

 

 自分以外の男がこの場にいることが不思議でならないようだ。

目を丸くしながら真に問いかけた。

 

 

「いやいや。お前の適性が判明したから全国一斉でテストされたじゃないか……もしかして知らなかったのか?」

 

「ああ、初耳だ」

 

 

 おいおいと内心思いながら、真はため息をつく。

一夏はどこか世間に疎い処がある。

それをフォローしてきたのは真や弾だったが。

 

 

「……今度からニュースくらい見ようぜ」

 

「そっ、そうする……」

 

 

 真の背後にいた千冬からの無言の圧力を受けて、早々に一夏は自席に座る。

 

 

「やれやれ。飛鳥、自己紹介を」

 

「はい、ちふっ……織斑先生」

 

 

 千冬に返事を返し、真は教室を見渡す。

自分に向けられる好奇の視線に内心苦笑しつつ簡易な自己紹介を開始する。

 

 

「はじめまして。といっても全員知ってるだろうけど2人目の男性搭乗者の飛鳥真です。所属は日出工業で趣味は読書とトレーニング。色々と迷惑かけるかもだけどこれから1年よろしく」

 

 

 軽く一礼して教室を見渡す

すると再び教室は黄色い声で溢れまるで爆発するかのように騒がしくなった。

 

 

「織斑君もカッコいいけど飛鳥君もいいっ!」

 

「織斑君の柔和なイケメン具合もいいし、飛鳥君の強面イケメン具合もいいっ!」

 

「紅い瞳……うっ、私の封印されし魔眼が……線が見えるっ!?」

 

「飛鳥×織斑で新刊いけるんじゃあっ!」

 

「なにそれ詳しく、3万までなら出す」

 

 

 キャーキャーと黄色い声が響く中、真は疲れた様な呆れた様な顔をしていた。

 

 

「なんか色々と聞いちゃいけない単語が聞こえた気がする……はぁ……」

 

 

 横目で千冬を見ると、彼女も疲れたように顔に手を当てていた。

 

 

(お疲れ様です、千冬さん……しかし意外だな……)

 

 

 心の中で千冬に手を合わせて、教室を見回す。

 真はこの状況を意外に感じていたのだ

ISは本来の用途である【宇宙開発用パワードスーツ】よりも現在はスポーツとしても広まっているが、既存の兵器を超える【超兵器】でもある。

ただし、基本的には欠陥も抱えている発展途上のものであると。

 

 事実彼の中では【IS】は【MS】と同様のモノだと認識している

つまり簡単に人の【命】を奪えるモノ。

 

 それに関わる人間を育成する教育機関なのだから、前世のザフトアカデミーのレベルまでは行かなくとも、もう少し規律がある教育機関だと思っていたのだ。

明らかになった実態は、そこまで普通の女子高と変わっていなかった。

 

 

(……まあ、そこまで気にするのはやめよう、初日から疲れる)

 

 

 自分と一夏のカップリングがどうこう言っているクラスメイトを見て小さくため息をつく真であった。

 

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