【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年   作:バイル77

29 / 132
PHASE8 更識 簪

 時間は過ぎて放課後

 

 すでに夕焼けがIS学園を包んでいた。

1年1組の教室には真と一夏の姿があった。

一夏の机の上には真がISや座学について重要な点を要約したノートが置かれており、彼はそれを自分のノートに写している。

 

 

「やばいって……ここまでついて行けないなんて」

 

「まぁ、やるしかないさ。最低ラインが分かったんだ、後は這い上がるだけだろ」

 

 

 昼休みまでには、表面上は収まっている様に見えるまで真の機嫌は持ち直していた。

実際は家族を貶された怒りは心の中で変わらず燃えているが、流石にクラスメイトの皆に悪いため表面上は隠すことにしたのだ――隠した怒りは【彼女】にぶつければいい。

 

 ちなみに昼食の際に、空気を悪くしたことについて清香や本音達には謝罪している

全員許してくれたのが救いであった。

 

 

「ノートありがとな、真」

 

「こんなの中学で何度もあっただろ? 気にするなって」

 

 

 中学での中間試験や期末試験の際にも一夏にはノートを貸している。

弾や一夏やもう1人の友人の【4人】で試験対策の為図書室に籠った事を思い出した。

弾については、彼の妹に頼まれた真が強制参加させたのだが。

 

 

「んで、なんで俺たちは残されてるんだろう?」

 

「さぁな、山田先生は重要な話があるって言ってたから何かしらあるんだろうけど」

 

 

 本日の授業が終了した際に、副担任である真耶から2人は大切な話があるから教室に残っていてほしいという指示があったのだ。

大切な話と言えば、午後の授業にて専用機の話が出た際に、一夏にも【専用機】が与えられるとの情報が出た。

倉持技研という企業が製作を担当しており、1週間後には間に合うらしい。

 

 閑話休題。

 

 

「まぁ、大体の予想はつくけど」

 

「え。わかるのかよ、真」

 

「多分、部屋割りだろ。IS学園は全寮制だし……1人部屋がいいな」

 

 

 IS学園は全寮制の学園である。

敷地内には大きな学生寮があって、そこで生活できるなんて羨ましいと弾から言われていたのだ。

おそらくはその部屋割りについての説明で残されているのだろうと予測を立てていた。

 

 

「え? でも俺は1週間は自宅通学って聞いてたけど……あれ?」

 

「あ、そうなのか? 何かスマン」

 

 

 しかし例外はすぐ身近にいたのだった。

ではなぜ一夏は残されているのだろうかと疑問に思ったところで、教室の戸が開かれ真耶と千冬が教室に入ってきた。

 

 

「お待たせしましたー。ごめんなさい、織斑君、飛鳥君」

 

「ちゃんと今日の授業内容を復習しているようだな、織斑」

 

「あっ、はい、真にノートを見せてもらってました、ちふっ……織斑先生」

 

 

 一夏が千冬を見ると、彼女は段ボール箱を1つ抱えていた。

千冬が教壇の上に段ボールを置く。

 

 

「えっと、織斑先生、その段ボールは?」

 

「お前らに残ってもらった理由に関連するものさ、山田先生」

 

「はい。2人の寮での部屋割りが決定しましたので、それについての連絡です」

 

 

 真耶から真と一夏は部屋の鍵をそれぞれ渡される。

 

 

「俺は1週間は自宅通学じゃ?」

 

「その点は保護を優先した。なのでお前も飛鳥も今日から寮生活だ。織斑、着替えなどの必需品は私が選んでおいた、その段ボールはお前のものだ」

 

 

 段ボールを指さして千冬が説明する。

千冬が用意した必需品。

おそらくその中に娯楽用品は入っていないだろうなと一夏と真は同じことを考えていた。

 

 

「俺の荷物とかはあるんですか?」

 

「飛鳥の荷物については親御さんの方から送られていて、すでに部屋の方に運び込まれている。 確か段ボール箱2つ分だ」

 

 

 了解しましたと真が返事をする。

それを見計らって真耶が説明を再開した。

 

 

「それでは寮の部屋割りについてなのですが、残念なことに2人の入学は急な要件だったので空き部屋がなくて男子で相部屋という訳にもいかず……女の子との相部屋となってしまいました」

 

 

 真耶の爆弾発言。

まさかの男女で同じ部屋との事だ。

 

 

「それってまずくないですか、いろいろと」

 

 

 流石に部屋割りは同性との相部屋、または1人部屋だと予想していた真が冷や汗をかきながら質問する。

前世のザフトアカデミーは男女別々の部屋だったが、【そういう問題】が起きなかったわけではないのだ。

しかも今回は男女同室であるとの事だ。

 

 

「そこについては一夏、真……お前達を信用している。お前達ならそう言った問題を起こさないとな」

 

 

 織斑や飛鳥呼びではなく、親しい者に向ける口調で千冬が言う。

 

 

「分かったよ、千冬姉」

 

「……流石にそういう問題は起こさないですよ、千冬さん」

 

「助かる」

 

 

 いきなりそういう風に言うのは卑怯だよなぁ、と真は思う。

一夏と真も同じように親しい呼び方で答える。

 

その後就寝時間や寮則、浴場の利用方法等も説明され、真耶に案内されて学生寮に向かう。

 

 

 


 

 IS学園 学生寮 自室前

 

 

「ここだな」

 

 

 一夏と別れて、真耶に指定された部屋の前に真は立っていた。

他の女生徒達は入学式の2週間~3週間前から、学生寮で生活していると先程別れた真耶から説明があった。

 

 ちなみにクラスメイトの反応を抜粋すると――

 

 

「え、織斑君も飛鳥君も同じ寮なの!?」

 

「私の私服ダサくないよね!?」

 

「フフフ……もっと可愛い私服と下着を用意しなければ……!」

 

「あれ、あんた髪の毛青かった?」

 

 

 ――等の反応があった。

 

 

「千冬さんの話の通りなら、もう部屋の中に荷物送られてるはずだけど」

 

 

 自分の両親ならノートPCくらい入れてくれているはず、などと考えながら扉をノックする。

しかし部屋の中からの反応はない。

 

 

「あれ?」

 

 

 再度ノックするが、やはり反応はない。

 

 

「いないのか。まあ、この時間帯だし夕飯かな?」

 

 

 渡された鍵を使ってを扉のロックを外す。

 

 

「失礼します……おぉ」

 

 

 部屋の内装をみて思わず声をもらした。

明らかに学生寮の物ではない内装。

かつて過ごしたディオキアの高級ホテル並だなと思い部屋の中に入る。

 

 

「ルームメイトの人いますかー?」

 

 

 部屋の中で声を出すが、特に反応もない

シャワールームやトイレからも音がしないため、本当に誰もいないのだろう。

 

 部屋を見回すと、部屋の隅に段ボールが2つ重ねて置いてあった。

あれが自分の荷物だろう。

 

 

「……荷物の確認でもするか」

 

 

 制服の上着だけ脱いで、少し身軽になってから1つ目の段ボールを開ける。

中には下着や私服などの衣類、洗面用具などが入っていた。

 

 

「服は問題ないな、もう1つは?」

 

 

 2つ目の段ボールを開くと中には娯楽用品が入っている

予測の通りにノートPCや各種充電器、漫画や小説なども入っている。

 

 

「よしっ、これならオルコットのISの資料集めができる。ありがとう、父さん、母さん……ん?」

 

 

 見慣れない包みが入っており、それを開けると中には【特徴的なバックルが付いたベルト】の様なものが入っていた。

加えてバックルの部分に【手紙】が挟まっていることに気付いた。

 

 

「こっ、これって……真由の【デンオウベルト】か!?」

 

 

 包みから出てきたのは、仮面ライダーシリーズで用いられる変身アイテムを模したなりきり玩具であった。

ただ真が今持っているものは【大きな友達】用の値段が高く豪華なものだが。

 

 何でこんなもんを?と思い、付属していた手紙を開く。

内容は簡単で筆跡は真由のモノだ。

 

 

 ――お兄ちゃんへ

 

 寂しいと思うので真由の宝物を送ります。

たまには帰ってきてライダー見ようね。

 

 追伸

 お兄ちゃんはリュウタと声似てるから一発芸とかもできるよ!

ルームメイトの人驚かせちゃえ!

 

 

「ほんとに真由はライダー好きだよなぁ……そんなに似てるかな、俺の声」

 

 

 このベルトを使って変身するライダーの声の1つが、真に似ているらしく小遣いをためてこのベルトを購入していたことを思い出した。

真由が彼女なりに自分を応援してくれていることに感謝し手紙をしまう。

 

 

「……」

 

 

 ふと使いたくなったのでベルトの電源をONにして、腰に巻く。

大きな友達用なので真でも余裕をもって巻くことができる。

バックル部分についている【赤・青・黄・紫】の4色のボタンの内、紫を押すと、軽快な待機音が流れ出した。

 

 右手に同じく包みに入っていた【定期券の様なパス】を持つ。

仮面ライダー電王はこの【ライダーパス】と【ベルト】を使って変身するライダーだ。

 

 

「変身!」

 

 

 叫びと共にバックルにライダーパスをかざす。

【Gun form】と言う音声と共に軽快な変身音が流れる。

 

 もちろん番組の様に実際に変身しているわけではない。

だが気分はすでに仮面ライダーであり、これがなりきり遊びの醍醐味だ。

 

 

「お前、倒すけどいいよね? 答えは聞いてない!」

 

 

 仮面ライダー電王 ガンフォームの決め台詞をバシッと決める。

内心、凄く似てたんじゃないかと称賛していた時であった。

 

 

「……何やってるの?」

 

 

 背後から女の子の声がしてピシッと部屋の空気が凍った。

 

 振り返るとそこには水色の髪に眼鏡をかけた女の子が、部屋の扉を開けつつこちらを見ていた。

水色の綺麗な髪の毛は肩口くらいの長さで、サイドの髪の毛がふわっとカールしている。

腕輪のような装飾物などで微妙に制服が改造されており、加えて特徴的なヘッドセットが目を引いた。

 

 そして自分と同じく紅い瞳がこちらを見つめいているが、困惑の色が強く浮かんでいた。

 

 

「……つかぬ事をお聞きしますが……どこあたりからご覧になっていたのでしょうか?」

 

 

 冷や汗をだらだらと流しつつ、何とかそれだけを彼女に尋ねた。

 

 

「……変身音終わったあたりから見てた」

 

 

 その言葉に蹲り頭を抱える真であった。

 

 

 


 

 

 私、【更識簪】は正直言って困惑していた。

何故ならば、食事と睡眠の為に自分の部屋に戻ってきたら2人いる男性搭乗者の1人【飛鳥真】が腰に【変身ベルト】をつけて仮面ライダー電王の変身ポーズをとっていたからだ。

しかも腰に巻いているのはプレバンの【デンオウベルト】、私は【とある理由】から購入時期を逃したので購入できなかったアイテムの1つだ。

 

 

「お前、倒すけどいいよね? 答えは聞いてない!」

 

 

 彼の声は、電王に出てくる電王ガンフォームの【リュウタロス】にそっくりだ。

ガンフォームの特徴であるダンスの様なポーズも完璧に合っている。

 

 それに【飛鳥真】という名前も【ウルトラマンダイナ】の主人公【アスカ・シン】と読みが同じだ。

私の持っている変身アイテム【リーフラッシャー】でポーズ取ってくれないかなと一瞬考えたが、何故彼がここにいるのか聞く必要があった。

 

 だから完璧になりきれている彼には悪いけど質問することにした。

 

 

「……何やってるの?」

 

 

 ビクンッと彼が振り返って、私の顔を見る。

彼の顔には「見られた」と書いてあるようであり、凄く焦っているように見えた。

 

 

「……つかぬ事をお聞きしますが……どこあたりからご覧になっていたのでしょうか?」

 

 

 何とかそれだけを声に出せたらしい。

うん、私も同じようにポーズ取っているときに【本音】に見られたことがあるからその気持ちはよく分る。

 

 

「……変身音終わったあたりから見てた」

 

 

 彼にそう告げると、蹲り頭を抱え始めた。

本音に見られた時の私と同じ反応をしていて少し面白かった。

 

 

 部屋の中を見渡すと、朝にはなかった段ボール箱が2つあった。

先生から聞かされていた【ルームメイト】は彼なのか。

 

 

「もしかして……ルームメイト?」

 

「……みたいだな」

 

 

 彼が頭を抱えるのをやめて立ち上がる。

私よりも20cmくらい身長が高いから、その顔がまだ赤くなっていることがよく分かった。

 

 

「なんか色々とごめん、1年1組の飛鳥真です、よろしく」

 

「1年4組の更識簪、よろしく」

 

 

 お互い自己紹介を終える。

彼は【変身ベルト】を外してしまい始めた。

 

 

「飛鳥君、それ……プレバンのだよね?」

 

「更識さん、知ってるのかこれのこと」

 

「知ってる。後【更識】って呼ばないで、そう呼ばれるの嫌いだから……【簪】でいい」

 

 

 家の古いしきたりもあるけど、私にとってそこまで拘束力があるものじゃないから、特に気にしない。

 

 

 「あ、じゃあ、俺も【真】でいいよ。簪はこれのこと知ってるんだな」

 

 

 彼の表情から照れた感じが消え、嬉しそうな顔をしている。

 

 

「私もライダー好きだから……でもちょっと忙しくてそれ買えなかった」

 

 

 思い出されるのは私が今アリーナの整備室で取り組んでいることの【原因】を作った企業。

だけど彼にはあまり関係のない話だからちょっとだけぼかして伝えた。

 

 

「そっか。実はこれ妹の物なんだ、宝物だってさ」

 

「真には妹がいるの?」

 

「あぁ、寂しくないようにだってさ。だからって入れるかなとは思うんだけど、やっぱり嬉しいや」

 

 

 私達とは違って、いい兄妹関係を築けているんだろう

羨ましいと思う、私と【お姉ちゃん】なら絶対こうはいかない。

 

 

「……いい妹さんなんだ」

 

「兄離れができてないとも言うと思うんだけどな……っとそうだ、荷物の整理とかしないと」

 

 

 その後、彼の荷ほどきを手伝いシャワー等のルールを決めた。

荷ほどきと部屋の整理はそんなに時間がかからず終わり、夕食に向かった。

 

 その時たまたま本音が食堂にいたので一緒に食事を取ることになった。

本音が彼にニックネームをつけていることを知ったが、それについてはノーコメントで。

 

 夕食の後、自然にライダーやウルトラマン等の特撮番組の話を彼とした。

その時にリーフラッシャーを貸したら、ちゃんと「ダイナアアアア」と叫んでくれた。

デンオウベルトにも触らせてもらった。

やっぱり出来がいい、欲しくなる。

 

 異性で自分と趣味の合う人間とは初めて会った気がした

私の場合は避けていただけなのかもしれないけど。

 

 もう1人の方がルームメイトじゃなくてよかったと思う。

【打鉄弐式】の件でうまく接することができなかったと思うから。

 

 気が付いたら消灯時間間際だったから、彼に感謝して床につく。

久しぶりに楽しいと思える時間だった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。