【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年   作:バイル77

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PHASE17 心なき人形

飛翔していくストライクを追いながら、真にチャンネルが繋がる。

繋がる先は、アリーナで避難誘導を行っているはずの教師陣。

 

現在の高度はすでに千メートルに迫ろうとしていた。

 

 

『こちら第2アリーナ管制室の織斑だ、飛鳥、何をしている!? 敵を追っているのか!?』

 

『その通りです千冬さん、トリコロールの奴の狙いはどういう訳か俺みたいなんです、だからアリーナから離れて奴を追いつつリスクを分散させます!』

 

『勝手なことをっ!』

 

 

千冬の怒声がチャンネルを通じて真に届く。

 

 

『それは分かってます、でもだからって奴を逃がすわけにはいかないでしょう!?それに奴の狙いが俺なら皆から離れれば安全のはずだ! 捕まえても見せますよ!だからお願いします、千冬さん!』

 

 

ストライクが突如反転し、真に向かってビームを放ってきた。

 

それをスラスターを噴かせ、横方向に回避しつつ千冬に頼む。

正直なところ、撃墜ならともかく捕縛する自信はないがこうして彼女の通信に返答していたらいつか落とされる。

 

 

『ちっ、真、無事帰還しろ、それが条件だ!』

 

『了解っ!』

 

 

チャンネルを切りつつ、右手に持つライフルでストライクを射撃する。

自身と同じ様にスラスターを噴かせ回避される。

 

ストライクは回避しつつ、【ビームサーベル】を展開――背部スラスターが火を噴き

真に向かって突っ込んでくる。

 

 

右上段から振り下ろされる一撃を同じように【ビームサーベル】を展開して防ぐ。

互いのサーベル同士が干渉し鍔迫り合いの形になる。

 

 

(今のサーベルの出し方から見るとコイツは【MS】じゃなく【IS】……!)

 

 

ストライクがビームサーベルを展開した方法はインパルスと同じ量子展開――ISの武器展開と全く同じ方法だからだ。

 

 

『ならこれはどうだ!』

 

 

左脚部のバーニアを点火、そこから得られる推力を威力に変換してストライクに蹴りを叩き込む。

その衝撃でストライクは吹き飛ばされる。

瞬間、真は【フォールディングレイザー 対装甲ナイフ】を1本展開してストライクに投げつける。

 

ISのパワーアシスト込みの超振動ナイフの投擲だ、並みの装甲ならば傷が付くか破壊される。

だがその投擲されたナイフを、体勢を立て直したストライクは右腕部の【装甲】だけで弾き飛ばした。

 

それは真にある事実を知らせることとなる。

 

 

(やっぱり【PS装甲】!)

 

 

PS装甲――正式名称【フェイズシフト装甲】。

一定の電圧の電流を流すことで相転移する特殊な金属でできた装甲である。

相転移した装甲は一定のエネルギーを消費することにより、物理的な衝撃を無効化する効果を持つ。

 

 

『インパルスもガイアもVPSじゃないってのにっ…!』

 

 

PS装甲に実弾、実体兵器は有効ではない。

正確に言えば衝撃は【完全には防げない】、【エネルギーの消費が高まる】と言うリスクもあるがそれを補うメリットだ。またISで使用できる武器にはエネルギー兵器が少ない点もメリットだろう。

 

当然、日出もインパルスガンダムやガイアガンダムに【VPS装甲】

PS装甲の発展型装甲を搭載しようとしたが、シールドエネルギーを多く消耗するデメリットから搭載は見送られた。

そもそもPS装甲には特殊な装甲材が必要となる、装甲材の鍛造コストや技術の不足もあり搭載ができなかったのが事実であったが。

 

 

ストライクが再び距離を取ってライフルを展開。

旋回しつつ、真に向かって放ってくる。

展開したシールドで防御し、拡散していくビームは空に溶けて行く。

 

それを確認したストライクは再び近接戦闘に移るべく、サーベルを抜く。

対した真も同じくサーベルを展開し、高速で切り結ぶ。

 

 

サーベルが有効でないことを確認したストライクは再び真から距離を取った。

その手にはライフルを展開してる。

 

勝負はほぼ拮抗状態。

だがその中で真はある違和感を感じていた。

それはストライクの挙動にあった。

 

 

『……なんだ、この違和感は?』

 

 

先ほどからライフルでの射撃、有効でない場合はサーベルでの近接戦闘をストライクは繰り返している。

 

ストライクにはインパルスの【シルエット・システム】の前身でもある【ストライカー・システム】があるはずだが

ストライカーは先ほどから高機動用のモノを使用しており、変えてくる気配もない。

ストライカーについてはインパルスのようには変更できないのかもしれないが。

 

ストライクは全身が装甲で覆われており、搭乗者を判断できなかった。

いや、真は思い込んでいた。

 

この搭乗者は【キラ・ヤマト】だと――

 

だが戦士としての勘が告げる、こいつは違うと。

 

 

『こいつ、無人機か!?』

 

 

キラ・ヤマトならばこんな機械的なパターンで攻撃を仕掛けては来ない。

あまりにも機械的なパターン行動。

 

それが無人機と判断した理由だ。

 

 

(ISで無人機なんて可能なのか……っ?いや、今はそんなことよりっ!)

 

 

インパルスの実体シールドをストライクへ投げつける。

それはあまりにも単純なシールドの投擲――当然ストライクは回避に移る。

 

 

『逃がすものかっ!』

 

 

自身が投げた実体シールドにライフルで射撃を行う。

投げたシールドには対ビームコーティングが施されており、ビームを拡散させることで無効化できる。

そう、【拡散】させるのだ。

 

放たれたビームは実体シールドによって拡散され、拡散されたビームがストライクの右腕を貫く。

貫かれた装甲が右腕ごと爆散し、大きく体勢を崩すストライク。

無人機と判断したとおり、吹き飛んだ右腕部分には生身が存在していなかった。

 

この隙を見逃す真ではなかった。

 

 

『インストレーションウェポンコール、【エクスカリバー】っ!!』

 

 

フォースインパルスの装備ではなくソードインパルスの装備である【エクスカリバー】が右手に展開された。

 

【ウェポンコール】

フォースインパルスに搭載された特殊コードであり、音声認識で別シルエットの装備を10秒程度フォースインパルス状態で展開することができるシステムである。

 

一見現在開発中のデスティニーシルエットや他のシルエットのお株を奪うような物だが、当然デメリットも存在している。

このシステムはあくまで高機動仕様に調整されたフォースシルエットで近接格闘武装や遠距離射撃武装を扱うため、きわめて扱いが難しい点。

音声認識のため、相手にどの装備を使うか判断されてしまう点。

展開できる時間も極めて短く10秒程度である点。

加えて、別シルエット装備を展開中は、機体の稼動部に負荷をかけシールドエネルギーを大きく減少させ続け、システム停止後にはインパルスの全面的なオーバーホールが必要になる点。

 

――だがそれを使いこなしてこその【スーパーエース】だ。

 

 

『うおおおおおおおおおっ!!』

 

 

フォースインパルスのスラスターから生まれる爆発的な推力によって、ストライクへ突貫する。

エクスカリバーの刀身を奔るビームをコンソールで調整。

少量のエネルギーを犠牲に切っ先までビームを迸らせる。すでにインパルスのエネルギーは6割程度まで減っていた。

 

しかしエクスカリバーが届く前に、ストライクが体勢を立て直してライフルで射撃を敢行してきた。

 

だが放たれたビームは真には届かなかった。

【瞬時加速】により横方向に回避していたのだ。

そして合わせて別のスラスターによって連続で行う【瞬時加速】

 

――通称【二重加速(ダブルイグニッション)】によってストライクに迫る。

 

完全に不意を突かれた形となったストライクには回避ができなかった。

 

 

『これで…終わりだああっ!!』

 

 

鈍い金属音と共にストライクの腹部

ちょうどMSならばコックピット部分をエクスカリバーは貫通していた。

貫通すると同時に、エクスカリバーを振り下ろして両断する。

 

両断されたストライクは先ほどまで装甲を彩っていたトリコロールカラーから【灰色】に変色する。

 

PS装甲が落ちた証拠である。

 

ISならば必ず搭載されているはずの【絶対防御】が発動しなかった点は気がかりだが、

回収してから調べればいい。

 

 

『はぁ、はぁ……やったぞ……!』

 

 

マニューバによって乱れた呼吸を正しつつ、完全に沈黙して落下していくストライクを回収するため真はスラスターを噴かせた。

 

 


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