【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年   作:バイル77

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PHASE18 勇敢なる者

『よし、何とか回収終わったな…』

 

 

落下していったストライクの残骸の大部分を回収し、インパルスはゆっくりと高度を下げていく。

すでにインパルスは限界が近い。

エネルギーはまだ残っているが【ウェポンコールシステム】の反動で駆動部が悲鳴を上げている状況だ。

 

だがそれでもこのまま降下していくことは可能――そのときであった。

 

 

<<頭頂部より超高速で接近する熱源を確認、未確認のISと判断、距離200>>

 

 

ハイパーセンサーで確認すると確かに熱源反応がある、しかしそのスピードが速すぎる。

自身の頭頂部から接近していた物体はあっという間に自分の横をすり抜け、凄まじい速さで降下していく。

 

 

『なっ、何だ!?』

 

 

【IS】だ――しかも大型のブースターユニットを装備していた。

 

 

『くそっ、まずい!』

 

 

そのISを【敵】だと判断し、限界に近いインパルスのスラスターを噴かせ、後を追う。

だが速度が出ない――インパルスのスラスター部分からも火花が上がり始めている。

これ以上速度を出せば下手をすればPICの操作すら不能になるかも知れない。

 

 

『くそぉっ! 間に合え、間に合えぇっ!』

 

 

真の叫びが空に木霊した。

 

――――――――――――――――――――

 

 

『こいつ、本当に人間が乗ってんのかよっ!?』

 

 

ステージ内で雪片弐型を構えた一夏が吼える

相対するのはマゼンタレッドの機体――イージス。

 

先ほどまで【人型】だったそれは今やその【姿】を大きく変えていた。

 

流線型――とでもいうのだろうか、両手両脚全てを一方に向けた形態【巡航形態】に変形し、アリーナ内を旋回している。

その速度も異常の一言である、アリーナの端から端までを数秒で駆け抜ける程の爆発的な機動力だ。

 

 

『速過ぎて、衝撃砲じゃ無理! セシリア、狙撃できないの!?』

 

『くっ、先ほどから狙ってますわ!』

 

 

【スターライトMK-Ⅲ】から放たれたレーザーをイージスは人型に変形を行いつつAMBACにより回避する。

逆に右手に展開したビームライフルでセシリアを狙ってきている。

 

 

『くっ!』

 

 

スラスターを噴かせて、ビームを回避するセシリア。

 

生徒達の避難がある程度完了したところで残りを簪に任せたセシリアは、アリーナのシールドが【解除】されている事を確認して戦闘に参加したのだが、まるで【見計らったかの様に】シールドが張りなおされている

――つまり【3人】は孤立しているのだ。

 

ビームライフルによって動きを緩慢にしたイージスに向かって、鈴は衝撃砲を放つため視線を向ける。

イージスが回避行動に移ろうとするが、すでに砲身の作成も完了していた。

 

 

『喰らいなさいっ!最大出力よっ!』

 

 

鈴の叫びと共に衝撃砲が発射されイージスが吹き飛ばされる――

大きく体勢を崩しているが特に傷が付いているようには見えない。

 

 

『嘘っ!? 最大出力よっ!?』

 

『うおおおおおおおおおおおっ!!!!』

 

 

【瞬時加速】――セシリアや真から教わった技術――で一夏は体勢を崩した隙を狙って斬りかかる。

上段から雪片を振り下ろして、捉えたと、一夏は確信していた――がすぐにその考えは粉砕される。

 

イージスの脚部に装備されていた白色の【ブレード】が突如高熱を発していることを

ハイパーセンサーで捉えたのだ。

 

そして、振り下ろされる雪片をブレードキックで弾き飛ばす。

咄嗟にスラスターを噴かせ一夏は距離を取った。

 

イージスも合わせて距離を取り再び巡航形態に変形し、旋回を開始する。

 

 

白式、甲龍、ブルー・ティアーズ――日・中・英の専用機が一箇所に集まるのは中々に壮観だ、

こんな事態でなければであるが。

 

 

『脚にも剣があるのかよっ!?』

 

『何よあのIS無茶苦茶すぎるわよ!? 装甲硬い、蛸みたいに変形する、ビーム撃ってくる、両手両脚に近接ブレード付いてる…もうちょっとコンセプト少なくてもいいんじゃないかしらっ!』

 

『敵に言っても意味がないかと…一夏さん、鈴さん、あのISですが本当に【人】が乗っているのでしょうか?』

 

『さっき俺も思ったぜ、あきらかに人間のできる動きじゃないだろ、変形するとき絶対骨折れるって』

 

 

一夏とセシリアの意見が一致する――明らかにあれは人の動きではない。

そこから導き出される結論は――

 

 

『…無人機って奴ね』

 

『ええ、おそらく間違いないかと、ISの無人機なんて聞いたことありませんが…それに先ほどから私達の攻撃に対応して反撃、ある程度反撃したら変形し離脱というパターンを繰り返していますわね』

 

 

そこまで分析して、セシリアがスラスターを切り離す――無線誘導兵器【ブルー・ティアーズ】として

周囲に展開させる。

 

 

『ちょっと、あのスピードにそのビットが当たるの?』

 

『鈴さん、逆に考えましょう? 当たらなくともいいのです、ティアーズ!』

 

 

ティアーズの速度はイージスの巡航速度には及ばない――だがそれでかまわない。

 

 

『ティアーズを囮にいたしますわ、おそらく機械的なパターンしかとれないのであれば

対応できないはず…とどめはお任せしますわ、一夏さん、鈴さん』

 

 

ティアーズ操作中は行動不能になってしまうため、セシリアは動けない。

だが今ここには仲間がいる――ならば彼らに役目を譲ろう。

彼女の言葉に一夏と鈴が無言で頷き、それぞれの得物に力をこめる。

 

 

『お行きなさい!』

 

 

セシリアの指令の下4機のティアーズがイージスに向かって行く。

やはり巡航速度には追いつけないが、異なる角度からレーザーを放てばダメージを与えられるはず。

 

ティアーズが射撃位置に付いた――

イージスが一瞬、ガクンッと目に見えない程度に【痙攣】していた事にセシリアは気づかなかった。

 

 

瞬間、捕捉していたイージスが視界から消え、レーザーは空を切る。

 

 

『えっ?』

 

 

3人が思わず口を揃えてしまう。

正確にはハイパーセンサーで確認できていたが、確認するのはあくまで人間。

突然の事態に思考は固まってしまうモノだ。

 

イージスの位置は先ほどの位置から真逆の位置にいた。

イージスの取った行動――それは

 

 

『【瞬時加速】!? なんてスピード!?』

 

 

イージスが行ったのはただの【瞬時加速】――現在のイージスは移動のための最適化形態である【巡航形態】だ。その速度は人型のそれをはるかに超えていた。

 

イージスの両手足がまるで【華】の様に開き3人に機体の向きを合わせている――中央部に溢れるのは【光】

 

 

『まずっ!? 一夏っ!』

 

『くっ!? 回避がっ!』

 

 

咄嗟に鈴はすぐそばにいた一夏を弾き飛ばす。

セシリアはスラスターをティアーズとして射出していたため、回避が遅れる。

 

次の瞬間にはセシリアと鈴が光に飲まれ、ステージに地面に叩き付けられていた。

 

 

『っ、鈴、セシリアっ!?』

 

 

弾き飛ばされた一夏が体勢を立て直す――地面に叩き付けられた彼女達は意識を失っているのかピクリとも動かない。だが【絶対防御】が発動しているのか傷はそこまでのモノではないように見えた。

 

 

『くっそぉっ!』

 

 

何もできなかった無力さを噛み殺しながら、イージスに向けて視線を送る。

セシリアが先ほど分析したところ、【無人機】であるとのことだが一夏にはまるで【笑っている様】に見えた。

 

その時であった――

 

 

「一夏ぁ! 男なら…男なら、そのくらいの敵に勝てずしてなんとする!」

 

 

アリーナのスピーカーから響く大声――ハウリングも大きく発生していたが慣れ親しんだ声を聞き間違えるわけはない。アリーナの中継室に【箒】がいるのだ。

おそらく想いを寄せる一夏の激励だろう――【戦闘中】にも関わらずだ。

 

 

それにイージスも気づく。

 

 

『箒!? 何を! 逃げろぉ!』

 

 

一夏の叫びもむなしく、イージスのビームライフルが向けられる。

ステージの外ではISを纏った簪もそれに気づいて顔を青くさせつつ、中継室に向かうが間に合わない。

 

 

『っ!? やめろおおおおおおおっ!!』

 

 

【二重瞬時加速】――真とセシリアから切り札として教わっていたモノだが、間に合わない。

その瞬間、ハイパーセンサーが【何か】を捕らえた。

 

 

 

<<超高速で接近する熱源を確認>>

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

「!?」

 

 

発射されたビームに死の予感を感じた箒は思わず目を閉じる。

だが――死は訪れなかった。

 

何故ならば、【光の幕】のようなモノが目の前に広がっていた。

光の幕で発射されたビームは拡散され、無効化されていたのだ。

 

よく確認してみるとISを纏った【誰か】が自分を守っていることが分かった。

 

口より上部を完全に覆うようなツインアイタイプのセンサーが装備され、

巨大なランチャーのような砲塔を2門、非固定浮遊部位として浮遊させていた。

 

【光の幕】は両手のマニピュレータ部――人間で言うところの【手の甲】から広がっている。

 

 

『篠ノ之箒…だな? 何をしている、死にたいのか!?』

 

「おっ、男の声っ!?」

 

 

目の前のISから箒に声が届く。

 

 

『さっさと避難しろ、ここは戦場だ!』

 

 

青年は【光の幕】を展開しつつ、目の前の【イージス】に目を向ける。

背後では簪が箒を保護し、中継室から連れ出していた。

 

 

『…AI操作から遠隔操作に切り替えたようだな』

 

 

武器である【IS用ビームマシンガン】を展開してかまえる。

 

 

『だがその程度で…俺と【ドレッドノート】を止められると思うなよっ!』

 

 

IS【ドレッドノートH】の搭乗者――【カナード・パルス】の咆哮が響く。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

暗い一室――

 

 

「…あれはカナード・パルス」

 

 

【桃色の髪】を持つ女性が自身の目の前の空間に投影されている映像を見つつ呟いた。

 

 

「…フフフ、まさか彼もこの世界にいるとは思いませんでしたわ」

 

 

思わず笑みがこぼれる。

まるで新しいおもちゃを得た【少女】の様に。

 

 

「まさかハッキングして張りなおしたシールドを一方的に破られるとは思いませんでしたわ、

アルミューレ()リュミエール()】…流石私の【半身】が作成した【IS】と言ったところでしょうかね」

 

 

空間投影ディスプレイに目を移し、操作を再開する。

 

 

「シン・アスカ、カナード・パルス、そして織斑一夏…ああ、目移りしてしまいますわね」

 

 

頬を朱色に染めた女の声が響いた。

 

 




舞い降りる剣、フリーダムじゃなくてドレッドノートだけど!

桃色の髪、一体誰なんだ…!


しかし、イージスだけ初期GATシリーズの中で異質すぎる…。
巡航形態の高速機動からの一撃離脱に、スキュラでの対艦戦闘能力、
全身サーベルとも言える武装具合…あきらかにおかしい。




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