【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年   作:バイル77

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PHASE19 光を切り裂いて

ドレッドノートの右腕に展開された【ビームマシンガン】から放たれた弾丸がイージスに向かって奔る。

イージスは発射の前に人型のまま【瞬時加速】によって回避を行っていた。

 

そしてドレッドノートの射線から外れるとビームによる反撃を行う。

だが発射されたビームはドレッドノートの手の甲から広がる【光の膜】によって弾かれる。

 

 

『無駄だ、その程度でドレッドノートは貫けん』

 

 

イージスの反撃に対し、冷酷な笑みをカナードは浮かべつつビームマシンガンによる射撃を繰り返す。

イージスは再び巡航形態に変形して、回避行動に移る。

互いに膠着している状況だ。

 

この状況をカナードは好機と見て、プライベートチャネルを傍で状況を見ていた一夏につなげる。

 

 

『織斑一夏、聞こえるか』

 

『おっ、男っ!?』

 

 

一夏の驚きも仕方がないだろう、男性搭乗者は自分と真を合わせても全世界で2人――だが目の前のISの搭乗者は男なのだ。

 

 

『あんた、何者だよ!?』

 

『そんなことはどうでもいい、それよりもまだ動けるか?』

 

 

質問を流したカナードが逆に質問で返す。

その質問に白式の状況を確認する。

 

これまでの戦闘では特にダメージも受けていないし、鈴との試合は中断されており衝撃砲を1撃喰らったのみでエネルギーもそこまで減っていない。

零落白夜もまだ十分に使用可能である。

 

 

『そりゃまだ行けるけど……!』

 

『確実に仕留める為に力を貸せ、俺が隙を作る、貴様は奴を仕留める準備をしていろ』

 

『隙を作るって……アイツ相手にかよ!』

 

『俺とドレッドノートならば可能だ、黙って準備をしていろ!』

 

 

一方的にそう言ってカナードはチャンネルを切る。

一夏との通信中も絶えずビームマシンガンで弾幕を張っていた。

時折飛んでくる反撃も全て【アルミューレ・リュミエール】によって無効化している。

 

 

(……そろそろのはずだ、AI操作から遠隔操作に切り替わったのなら焦れてくるはず)

 

 

互いに膠着した状況を打破するにはどちらかが大きく動くほかない。

イージスが巡航形態のまま【瞬時加速】で大きく距離を取った。

 

そしてカナードに向かって両手足を【華】の様に開き大型ビーム砲【スキュラ】の発射準備に入る。

カナードの口元に笑みが浮かぶ。

 

 

『それを待っていたぞ!』

 

 

ドレッドノートの両手からALの光が溢れる。

そしてそのまま両手を組み合わせると、【光の幕】は両手を頂点としたドレッドノートの全身を覆う【円錐形】に変化する。

 

その形状はまるで【突撃槍(ランス)】の様に見えた。

 

イージスの【スキュラ】が発射され、ドレッドノートに迫る。

ドレッドノートはスラスターを全開に噴かし、ビームに突っ込む。

 

 

『うおおおおおおっ!!』

 

 

スキュラとドレッドノート。

両者がぶつかり合い閃光が激しく迸りステージを照らす。

 

スキュラのビームは【突撃槍】によって拡散され続けていた。

 

【アルミューレ・リュミエール・ランス】

それは【アルミューレ・リュミエール】の発生方向と形状を変化させ、強力無比なランスとして使用する形態。

 

C.E.でのカナードにとってのかつての愛機【ハイペリオンガンダム】でも使用していた技だ。

ドレッドノートはビームを切り裂きつつ、イージスに迫る。

 

イージスのスキュラは発射中は動くことができない、ビームの照射を止めた時にはすでにドレッドノートは目の間に存在していた。

とっさに回避に移るが、カナードにとっては遅すぎる。

 

 

『逃さんっ!』

 

 

そのままALランスでイージスをスキュラ発射口から貫く。

だがまだ完全な機能停止には至っていない。

 

 

『今だ、織斑一夏っ!』

 

 

カナードの叫びと共に彼の頭上から一夏が――白式が【雪片弐型】を上段に構えて急降下してきた。

零落白夜を使用しているため、刃が輝いている。

 

 

『チェストオオオォ!!』

 

 

――一刀両断

 

イージスが真っ二つに切り裂かれ地面に向けて落下していく。

装甲からも色が落ち灰色に変化していた。

 

 

『やった……のか?』

 

『……そのようだな』

 

 

イージスの残骸からはエネルギー反応は検出されない。

自爆の可能性を考えていたカナードは一息入れてから機体を反転させ上昇させていく。

 

 

『おっ、おい、どこいくんだよ!?』

 

『……俺の仕事は終わった、帰還するまでだ』

 

 

一夏の質問に返答すると同時にチャンネルが繋がる。

 

 

『黙って帰すと思っているのか、貴様』

 

 

カナードが後方を確認すると、千冬がいた。

避難誘導が終わりようやく戻ってきたのだ。

 

彼女は量産型IS【打鉄】を身にまとっており、手には近接ブレードを握っている。

カナードへの声色には脅しの色が含まれていた。

 

 

『俺のクライアントは貴様ではないし、従う義理も義務もない』

 

『何だと……!』

 

 

涼しい顔で千冬の脅しをカナードは躱す。

 

そして思い出したかの様に嫌らしい笑みを浮かべた。

元々千冬からは口元しか見えていないが。

 

 

『そうだ、束からのメッセージを預かっている、織斑千冬……【IS学園を守ってほしい】、確かに伝えたぞ』

 

『束からだとっ!? 待て、貴様っ!』

 

『ではな』

 

 

動揺した千冬の隙を突き、チャンネルを強制的に切断してスラスターを噴かす。

凄まじい速度で高度を上げていく。

 

ステージのシールドは解除されているようであり、打鉄などの量産機では追い付けない速度だ。

追跡は不可能だろう。

 

 

『束の関係者なのか、奴は……!?何が起こっているというのだっ!』

 

 

ギリっと歯ぎしりをしつつ上昇していくカナードを見えなくなるまで睨みつけていた。

 

 

――――――――――――

 

『戻ってきたっ!?』

 

 

インパルスはボロボロの状態でゆっくりとした速度でしか降下を続けることができなかったが、前方からISの反応を検知し停止する。

凄まじい速度で上昇してきたISは目の前で停止する。

 

搭乗者の顔はツインアイタイプのセンサーで見えない。

 

 

『飛鳥真……いや、シン・アスカ、久しぶりだな』

 

『男っ!? それにお前なんでそのことをっ!?』

 

『……そうか、センサーで顔が見えないか、これでどうだ?』

 

 

カシャッとISのセンサーが両側に開き、搭乗者の顔が露わになる。

真はその顔をよく知っていた。

 

かつて傭兵として戦っていた自身に接触してきた男。

キラ・ヤマトと同じスーパーコーディネーターであり、共にネオ・ザフトとして駆けた男。

因縁に決着をつけろと激励してくれた戦友。

 

 

『カナードぉっ!?』

 

『……そこまで驚くものか、貴様……それに声で気づいてもいいだろうに』

 

 

目を点にして驚き、素っ頓狂な声を出した真にカナードは顔を苦笑させる。

やれやれとカナードがため息をついて、アリーナでの顛末を語る。

 

 

『イージスは俺と織斑一夏が倒した、被害は出ていないから安心しろ』

 

『なっ、なんでお前がここにっ!?』

 

『そういった話はまた今度だ、さっさと帰還しなければ面倒なことになるからな』

 

 

そういってインパルスの横を上昇していく。

反転して真が叫ぶ。

 

 

『帰還って、どこにだよっ!?』

 

『篠ノ之束の所だ、俺と【もう1人】は束に協力している』

 

『はぁっ!? 束さんと!?』

 

『ああ、そして今回の襲撃だが……この世界にいる【ラクス・クライン】の仕業だ』

 

『なっ!?』

 

 

カナードの言葉に真が驚愕の表情を浮かべる。

 

 

『アイツがいるのかよっ!? 何でっ!?』

 

『さあな、だが今はそれだけしか話せん、ヤツは【束の技術と記憶】を持っているから何をしでかすかわかったもんじゃない……だから自由に動ける俺達が動く。お前は2人目としての立場があるからIS学園から動けないだろう? ならばここを守れ、いいな』

 

『まっ、待てよ、カナードっ!』

 

『いずれ正式に連絡を行うよう束に伝えておく、じゃあな』

 

 

真の静止の声を無視して、ドレッドノートは高度を上昇させていき、やがて感知範囲外に出ていく。

 

 

『ラクス・クラインが……この世界にいるのかよ……!』

 

 

顔をしかめ、そう呟いた。

 

――――――――――――

 

 

『……何とかついたか』

 

 

カナードと別れた真がストライクの残骸を持ったまま、ようやくアリーナまでたどり着く。

アリーナにすでに生徒たちの姿は見えない。

 

 

『色々ありすぎて混乱しそうだ……とりあえずは千冬さんに報告だな、何とかなったし……っ!?』

 

 

さらに高度を下げようとした瞬間、インパルスのスラスターが完全に停止した。

同時にPICも稼働率を低下。

 

どんどん落下していく。

ストライクの残骸から手を放してしまい、残骸はそのまま落下していった。

 

 

『うわああっ!?』

 

 

このままでは地面に激突する

だが急に【柔らかい感覚】がして落下が停止した。

 

 

『大丈夫だよ、真』

 

 

落下を受け止めてくれたのは【簪】であった。

【打鉄弐式】で受け止めてくれたのだ。

 

 

『お疲れ様、真』

 

『簪、ありがとう、助かったぁ……っ!?』

 

 

簪に助けてもらった真だったが少々体勢がまずい、彼女に抱きしめられている形になっている。

女の子の柔らかい感覚が伝わってくる。

簪もそれに気づいたのか顔を赤くしていた。

 

 

『ちょっ、簪、この体勢はさすがにっ!』

 

『おっ、お願いだからちょっとじっとしてて……!』

 

『わっ、分かった……ごめん』

 

 

抵抗しようとしたが無駄だった。

そのため真は地面に下りるまで、簪に抱きしめらている格好だった。

 

 

――――――――――――

 

 

「……あ~あ、流石に勝てませんか」

 

 

目の前に映っていた空間投影ディスプレイを消して、桃色の髪の女性。

【ラクス・クライン】は笑みを浮かべつつ呟いた。

 

 

「失敗作とはいえ【スーパーコーディネーター】……おっと、この世界ではナチュラルでしたわね、彼も私も……となると単に経験不足ですわね、仕方ありませんか」

 

 

クスクスとテーブルに置いてあったグラスに注がれた赤い液体を口に含む。

 

 

「ふふっ、お遊びのつもりでしたのに、まさか束さんやカナードまで出てくるとは思いませんでしたわ、それにシンも相変わらずのご様子……身体が火照ってしまいましたわ」

 

 

着ていたドレスを脱ぎ捨て、生まれたままの姿となり扉に向かう。

 

 

「シャワーでも浴びませんと……これからが楽しみですわね、まずは亡国の方々とも連絡を取りませんと、それに【軍用のIS】とやらも見てみませんとね、フフフ……!」

 

 

狂ったようなラクスの笑い声が響いた。

 

 


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