【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年   作:バイル77

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ANOTHER PHASE② あんなにも一緒だったのに

ドレッドノートはショッピングモールからすでに大幅に離れた上空を飛んでいた。

目指しているのはIS学園。

 

本来のドレッドノートの速度ならばすでに到着していてもいいのだが現在は箒を抱えているため、速度を大幅に落としている。

 

コンソールを操作して、カナードはプライベートチャネルをある相手につなげる。

 

 

『ラキ、聞こえるか』

 

『うん、聞こえるよ、兄さん』

 

 

相手はラキーナだ。

 

 

『ラキ、今はどこにいる?』

 

『ブレイク号はIS学園近海にいるよ』

 

 

ブレイク号。

束が拠点としている【ズムウォルト級ミサイル駆逐艦】の事である。

そもそものステルス性能と合わせて、束の改造によりミラージュコロイド技術が搭載されているため姿を消すことが可能だ。

ちなみに名前の由来は、歌姫をぶっ潰すんだからブレイク号でいい、とのことだ。

 

 

『了解した、今、篠ノ之箒を保護してIS学園に向かっている。この速度なら後5分程度で到着できるはずだが、追撃の可能性もある。篠ノ之箒の保護を頼みたい』

 

『分かったよ、私も【ストライク】でそっちに向かうね』

 

『頼む』

 

 

チャンネルを切って視線を抱えている箒に移す。

 

 

「くっ、離せっ!」

 

 

右脇に抱える形になっている箒がジタバタと抵抗する。

それにため息をつきつつ、カナードは彼女を落とさないように手に力をこめる。

 

 

『……黙っていろ。それに今離せば貴様は落下するだけだぞ』

 

 

実際、ドレッドノートが飛んでいる高度は上空数百mであり、専用機を持っていない箒にとっては死ぬしかない高度だ。

 

 

「ぐっ……」

 

『……さて篠ノ之箒、貴様、ラクス・クラインから何か受け取ったりはしていないだろうな?』

 

「ラクス? ミーアさんの事か?」

 

『ああ、で、どうなんだ、答えろ』

 

 

有無を言わさない口調でカナードが箒に尋ねる。

それに少し気圧されつつ箒は答える。

 

 

「姉さんが作ったISだと言うモノを渡された……貴様が乱入してきて受け取れなかったが」

 

 

その返答にカナードは内心安堵した。

 

 

『……そうか、1つ訂正がある』

 

「訂正?」

 

『ああ、貴様が渡されそうになったISは奴が造ったものだ。束が造ったものではない』

 

「違うのかっ!? でもあの人は姉さんの知り合いだと……!」

 

 

驚いた箒が目を見開いてカナードに問いかける。

 

 

『確かに知り合いだ、敵としてだがな』

 

「……敵?」

 

『ああ、世界を、何も知らない人間を自分の欲のために動かそうとしている奴だ。それに俺がお前をこうして護衛しているのは束の頼みだからだ、奴からお前を守ってほしいとな』

 

「……訳が分からない。それに今さら姉さんがそんな……家族がばらばらになったのは姉さんのせいなのに……!」

 

 

束がISを作成したため、箒達の家族は政府が行った重要人物保護プログラムにより日本各地を転々とさせられたのだ。

そして束が失踪してからは姉の分の監視や聴取を繰り返された。

それによって箒が束に向ける感情はマイナス部分が多い。

 

それはカナードも知っている。

束に聞いたからだ。

 

数年前までの束ならば、彼女の自業自得と切り捨てられただろう。

だが現在の束は変わってきている。

 

 

『少し前までの束なら俺も見捨てていた。だがな、今のアイツは自分の罪を償おうとしている』

 

「……罪?」

 

『そうだ、世界を一気に変えてしまった事と、目覚めさせてはならない奴の技術を目覚めさせてしまったことだ。それに束は常々言っている、お前に謝りたいとな』

 

「……あの姉さんが?」

 

『ああ、だからお前も一度は話を聞いてやってほし……っ、追撃がきたかっ!』

 

 

ドレッドノートのハイパーセンサーが後方から高速で接近してくる反応を検知した。

カナードは速度を少し上げつつ後方を確認する。

 

追手は【IS】

機体各部の装甲はマゼンタレッドに染まっており、背部には大型のリアクターが装備されている。

頭部には鶏冠型のセンサーがあり、脚部にはイージスと同じようなブレードが装備されている。

 

そしてその搭乗者は――

 

 

『【アスラン・ザラ】か!』

 

 

カナードが振り返りつつ、空いている左手に展開した【ビームマシンガン】を放つ。

だが相手もその射線を読んでいるため、スラスターを噴かされ回避された。

 

アスラン・ザラ。

歌姫の騎士団の正義の剣――【無限の正義(インフィニットジャスティス)】を駆っていた男。

 

世界を混乱に陥れた英雄。

シン・アスカによって討たれた英雄。

 

 

『キラっ!? いや、違う……なるほどお前が【カナード・パルス】か』

 

 

アスランにとってカナードの顔と声は親友である【キラ・ヤマト】と瓜二つだ。

 

だがその目つきだけは彼とは異なる。

より鋭いことを理解したのだ。

 

 

『貴様等は何のために篠ノ之箒を狙う?』

 

 

カナードがアスランに向けて質問を飛ばす。

その意図は時間稼ぎ。

 

ブレイク号とラキーナが来る時間を稼ぐためだ。

流石のカナードでも箒を抱えたままでは碌な戦闘機動など取れない。

 

 

『彼女は篠ノ之束の妹だ。篠ノ之束は天災で何をしでかすか分からない……実際にラクスが彼女に接触しているからな。だから保護する為に行動を起こしたんだ』

 

『……ふん、その対象にISを与えることが保護……か……』

 

 

ククッと笑いを噛み殺した表情をカナードは浮かべる。

それを見たアスランは顔をしかめているが、警戒は怠ってはいない。

 

 

『何がおかしいっ……! 俺達はラクスの目指すISのない平和な世界の為に戦っているっ!』

 

『では聞くが、ISが無くなれば本当に世界は平和になるのか?』

 

『なんだとっ……!?』

 

 

ため息をついてカナードは口を開く。

ハイパーセンサーはまだラキーナの反応を捉えていない。

 

『確かにISの登場によって世界が大きく乱れたのは確かだ。世界の軍事的なパワーバランスはISに支えられていると言ってもいい。だが貴様らが力ずくでISを無くしたところで以前の様な世界には決して戻らんだろう、むしろより多くの混乱を生むだけだ。世界の軍事的パワーバランスの混乱、女性利権団体の失脚による混乱、貶められていた男達による社会的地位の復権による混乱、これらに動じた諸問題。貴様はある程度は落ち着いている今の世界を、混乱に落とすと言ったと同義なんだぞ?』

 

『確かにISを無くすことにも問題はあるっ……だが俺やラクスは戦う! その覚悟はあるっ! 争いを行う連中を無くさなければ人類はいつかまたC.E.のような戦争を行うかもしれないんだっ!』

 

 

アスランが反論するがそれを冷たい表情でカナードは見ていた。

本来ならばまだ時間稼ぎをしなければならないが、目の前の男にガラでもなく怒りがわいたのだ。

 

 

『自分達以外の力を持つものを全て敵とみなして叩き潰す。この世界でも貴様は歌姫の人形ということか、英雄が聞いて呆れる』

 

『何だとっ!?』

 

『自分で事を考えない奴を人形と呼んで悪いのか?』

 

『俺達は自分の意思で戦っている! ISを無くして世界を平和にさせるためにっ! その邪魔をするのならば……俺はこの【インフィニットジャスティス】で貴様を討つッ!』

 

 

そう言ってアスランは左手にビームサーベル、右手にビームライフルを展開させる。

まだラキーナの反応は捉えられていない。

 

 

(チッ、俺も甘いな……篠ノ之箒がいなければどうとでもなるが……!)

 

 

空いている左手に展開していたビームマシンガンを格納すると同時に左手の手の甲から【AL】が△型の盾として展開される。

IS【ドレッドノートH】のALは、かつてのカナードの愛機であるMS【ハイペリオンガンダム】の様に球体型に展開して360°全てを防御することが可能だがそれは両手を使える状態での話。

今は箒を抱えてしまっているため球体状に展開することができない状況だ。

 

だが、ただのビーム程度でALを抜くことなど不可能である。

インフィニットジャスティスが放ったビームをALは何の負荷もなく弾き飛ばす。

 

 

「きゃあっ!?」

 

『そのシールドはアルテミスの傘かっ!』

 

 

ビームライフルが無効化されることを理解したアスランはライフルを格納し、両手にビームサーベルを構えた。

同時に両脚部のブレードも起動して、接近戦の構えを取る。

 

 

『うおおおおおおっ!』

 

 

背部リアクターのスラスターを全開に噴かせた加速により一瞬で距離をつめる。

そして息をつく暇もない連撃を繰り出し始める。

 

並のIS乗りであればこの時点で撃墜されている。

それだけアスランの接近戦技術は高いのだ、それこそヴァルキリークラスと言ってもいい。

 

また脚部ブレードが曲者である。

通常のサーベルと軌道が異なる点や脚部に装備されているため蹴りの要領でシールド越しの攻撃も行えるからだ。

 

だがカナードも並のIS乗りではない。

 

繰り出されるサーベルの軌道やビームキックの軌道全てを予測してALシールドを構えていた。

そしてALシールドにサーベルが触れた瞬間、ALシールドをまるで受け流す様に動かすことで衝撃と威力全てを受け流していた。

 

 

『その程度で俺とドレッドノートを攻略できると思うなぁっ!!』

 

『ならばぁっ!!』

 

 

アスランの咆哮と共に、彼の意識の中で【種】が弾けた。

 

 

瞬間、攻撃の速度が大幅に上がった。

 

 

『ぐっ、【S.E.E.D.】かっ!?』

 

 

より高速化された連撃に受け流しが間に合わずシールドごと吹き飛ばされ、大きく体勢が崩れてしまった。

 

 

『ぐうっ!?』

 

「きゃああっ!!」

 

 

箒を落とすまいと右手に力を込めた為に、より体勢を崩してしまった――アスラン相手にこれは致命的である。

AMBACも間に合わない。

 

 

『終わりだ、カナード・パルスっ!』

 

 

上段から振り下ろされるビームサーベル。

カナードの頭部を狙っており、高出力のビームサーベルならば絶対防御を抜いてくる可能性もある。

 

 

『まだだぁっ!!』

 

 

瞬時に全身のバーニアを操作し最低限の姿勢制御。

同時に背部スラスターを全開に噴かした突進を繰り出す。

S.E.E.D.を発動しているアスランの攻撃にカウンターをぶち当てたのだ。

 

アスランも完全に捉えたと思った攻撃であったため、回避が間に合わずに弾き飛ばされる。

 

 

『ぐうっ!?』

 

 

カナードは瞬時に左手のALの収束率を変更。

ALをサーベル状に変更して体勢を崩したアスランに斬りかかる。

 

 

『終わるのは貴様だっ、アスラン・ザラっ!!』

 

『この程度ぉっ!』

 

 

キックの要領で脚部ブレードを使いALブレードを弾く。

そしてアスランは距離を取る。

互いに距離を取ってにらみ合いの格好になる。

 

 

『ちっ、流石にやるなっ……!』

 

『くっ、まさかカナード・パルス……お前がこれほどの力を持っているなんて……!』

 

 

互いに次の手を思案する。

その時両者のハイパーセンサーがある存在を捉えた。

 

それはかなりのスピードで向かってくる。

黒髪の女の子が搭乗するISであり、カナードがよく知っている存在。

 

 

『ラキかっ!』

 

『間に合ったっ! 兄さん、大丈夫っ!?』

 

 

ラキーナ・パルスがISを身に纏って駆けつけたのだ。

彼女が纏っているISは、飛鳥真専用機である【インパルスガンダム】に類似した特徴を持っていた。

 

生身より二回りほど両腕/両脚が大きく見えるマニピュレーターに装甲、装甲はトリコロールカラーで彩られている。

背部ランドセルのコネクト部分にはインパルスガンダムの【フォースシルエット】に類似した【エールストライカー】が装備されている。

 

これが彼女のIS。

【GAT-X105 ストライクガンダム】をモデルにしたIS――【ストライクガンダム】だ。

 

 

突然の乱入者を睨みつけたアスランであったが、すぐに驚愕の表情を浮かべる。

 

 

『ラキ……だと……!? それにその顔はまさか……!』

 

『……久しぶりだね、アスラン、【僕】だよ』

 

 

まるで旧友と話すかのように、ラキーナの口調が変わる。

 

 

『キラなのかっ!!』

 

『……うん、久しぶりだね、アスラン』

 

 

ラキーナ・パルス。

【キラ・ヤマト】は展開したビームライフルを構えつつアスランに答えた。

 

 

かつてC.E.で駆けた二人が今ここに出会ってしまった。

 

 

 

 




次回予告
「和解」


姉と妹すれ違い会った2人の思いは通じ合うことが出来るのか。


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