【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年   作:バイル77

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PHASE30 運命の鼓動(後編)

――爆発がアリーナに衝撃を奔らせる。

 

 

「真っ!!」

 

 

観客席から悲鳴に近い簪の声が響く。

簪から見ても完全に回避が行えない状況で直撃を受けていた。

ようやく想いが通じ合った相手が爆発に飲まれる様を見て、ISには絶対防御がある事すら頭から抜け落ちて取り乱してしまった。

 

だが、すぐさま冷静な思考を取り戻すことができた。

 

――何故ならば爆炎の中から【蒼い光の翼】が現れたからだ。

 

 

―――――――――――――――

 

蒼い光が見えた瞬間、凄まじい速度で【デスティニーシルエット】に換装したデスティニーインパルスが爆炎から飛び出してくる。

爆炎に紛れて【シルエットの残骸】が地面へと落下していくが、インパルス自体の損傷は少ない。

 

 

『ちっ、シルエットを盾に使ったかっ!』

 

 

カナードの推察は当たっていた。

真はビームの直撃を受ける直前に背部の【ソードシルエット】をパージしていたのだ。

 

パージしたシルエットがビームの直撃を受けて爆発。

本体であるインパルスは爆発を直で受けてしまいシールドエネルギーが減ってしまったが、ビームの直撃を受けるより遥かに消費エネルギーは少なくて済む。

 

 

『うおおおおおおっ!!』

 

 

VLはすでに最大稼働状態であり、先ほどまでのソードインパルスとは比べ物にならない機動力で斬りかかる。

咄嗟にビームサブマシンガンを構えたドレッドノートであったが、すれ違った一瞬の間に斬りおとされてしまう。

サブマシンガンを切り落としたインパルスは戦法をヒット&アウェイに切り替えたかのように、再び斬りかかってくる。

 

 

『ちぃっ!』

 

 

スクラップと化したサブマシンガンを放り棄てて、両手のALを展開。

発生率を最大にし【球体状】に変形させる。

 

流石のカナードであろうともVLユニットを最大稼働したデスティニーインパルスの機動を正確に把握するのは困難であり、スラスターを兼ねているイータユニットは一部損壊している。

そのため完全防御の形態をとり、超高速で動くデスティニーインパルスの攻撃をALで防御、ビームコーティングが施されたエクスカリバーがALを突き破るまでのタイミングで反撃を狙う。

背部のイータユニットをALハンディの起動を妨げないよう展開。

近接戦形態である【ソードモード】に変形させる。

 

だが真の狙いはALを突き破る事ではなかった。

超高速で接近、瞬時にエクスカリバーを格納し球体状のALに組みつきそのまま加速していく。

 

そして地面に押し付けて引きずり始める。

 

 

『無敵のALでもこれならぁっ!』

 

 

ALの弱点、それは消費するエネルギーが多いことである。

前世のMS【ハイペリオンガンダム】に搭載されていた同シールドは消費エネルギーが多いため稼働時間に限界があり、核エンジンを搭載した【スーパーハイペリオン】に改修することで問題点をクリアする必要があったほどだ。

IS【ドレッドノートH】に搭載されているALも同じように展開しているだけでシールドエネルギーを絶えず消費していく。

 

そしてこの状況。

【防御せずにはいられない状況】に陥らせる事でエネルギーを消費させるのが真の狙いであった。

 

もちろんこの手段を取ったインパルスにもリスクは存在している。

発生しているALをマニピュレータで無理やり押さえつけているのだ。

また今装備しているシルエットは【デスティニーシルエット】であるため、凄まじい勢いでエネルギーが消費されていく。

 

【フォールディングレイザー対装甲ナイフ】を展開。

ビームコーティングされているナイフでALを突き破り、ドレッドノートの胸部装甲やシールドバリアを繰り返し傷つけることでエネルギーをさらに減少させていく。

 

 

『ぐう……っ!』

 

 

ALを貫いたナイフが胸部装甲を傷つけ、衝撃が走るたびにカナードの口から苦悶の声が上がる。

 

 

―――――――――――――――

 

 

(真のあの動き……【S.E.E.D.】かな)

 

 

模擬戦の一部始終を見ていたラキーナが真の動きが明らかに変わったことに気付く。

VL最大稼働状態を維持し続け、カナードのサブマシンガンを一瞬で破壊する事からも伺える。

 

 

(それに……この威圧感、殺気……言うならばプレッシャーかな)

 

 

離れた観客席にいるというのに真から放たれる威圧感から少しだけ嫌な汗が流れる。

それはラキーナだけではなく一夏や簪達も同じであった。

少なからず恐怖を感じている者もいるだろう。

 

特にそれが顕著なのはシャルロットのようだ、彼女は冷や汗を大量に流している。

 

 

(……代表候補生でも生の殺気なんて感じる機会もないだろうし、仕方ないかな……)

 

 

再び視線を模擬戦に戻す。

再び状況は変化していた。

 

 

―――――――――――――――

 

 

『舐めるなぁっ!』

 

 

インパルスに組み付かれ地面に押し付けられていたドレッドノートが自らALを解除。

そのまま引きずられつつも、イータユニットからビームサーベルを展開し斬りかかる。

 

だがALが消えた瞬間、すでにインパルスはドレッドノートから離れていた。

インパルスが離れると同時にイータユニットから発生していたビームサーベルは寿命が切れた蛍光灯の様に明滅した後、発生を停止する。

 

 

(機体の挙動が明らかに速くなった……【S.E.E.D.】か)

 

 

真に起こった変化を推測しつつ残存エネルギーを確認――残り2割までエネルギーが減らされている。

 

 

(……次の接触で最後か)

 

 

損傷しているイータユニットをパージ、そして左手に装備されているALハンディを格納。

即座に右手に展開し、装備されているハンディと組み合わせて【◇型】に形を組み替える。

そして最大出力でALを発生させる。

発生されたALはまるで【光壁】の様に厚く、通常時より激しく輝いている。

 

 

(最大出力か……さしずめハイパーALサーベルってところか……これで勝負を決める気か、カナード)

 

 

対するインパルスも残りエネルギーは2割を切っている。

むしろこのまま膠着すれば確実に先にエネルギーが切れてしまうのは明白だ。

 

故に次の激突の為に準備を行う。

ビームライフルを展開し上空に向けて発射、同時にVLを起動する。

 

発射されたビームは全て【光の翼】の中に吸収されていき、最大稼働状態時よりも巨大な光の翼を広げる。

 

 

(エネルギー干渉機能でVLの速度を上げる気か、真)

 

 

互いに得物を構え、スラスターを噴かせる。

 

 

 

『うおおおおおおおっ!!』

 

『はあああああああっ!!』

 

 

互いの咆哮が轟く。

攻撃の速度はVLを限界を超えて駆動させているインパルスの方が速い。

エクスカリバーがハイパーALサーベルを切り裂き、ドレッドノートの胸部装甲を切り裂く。

 

 

『ごっ……おああっ!!』

 

 

凄まじい衝撃が搭乗者であるカナードには伝わっているはずだが、ダメージを負いつつも彼は残ったハイパーALサーベルでインパルスの胸部を突く。

 

 

『がっ……!』

 

 

互いの攻撃の衝撃から弾かれるように正反対に吹き飛ばされた。

先程の激突で両者ともに【絶対防御】が発動していた。

 

 

―両者、エネルギー切れにより引き分け。試合時間、5分3秒―

 

 

そして模擬戦の終了コールがアリーナに響いた。

 

―――――――――――――――

模擬戦終了後 学生寮 自室

 

 

「……勝てなかったか―、まあ、相手がカナードだしなぁ」

 

ベッドに腰を下ろした真が呟く。

模擬戦終了後1時間ほど経過した現在、シャワーを浴びた真は簪と共に部屋に戻っていた。

 

模擬戦後にインパルスを束に預けたが、一向に第二形態移行を起こす兆候は見られなかった。

そしてとりあえずは保留と言う形でその場は解散となったのだ。

 

ちなみに破損したソードシルエットについては束が修復してくれている。

 

 

「……でも、負けてなかったよ」

 

 

簪はそう言いつつ、真の隣にそっと腰を下ろす。

 

 

「でも機体の相性的に不利だったし、実質負けだよ、本当にALは敵に回すと対処に困る」

 

「……そうだね」

 

「……怖かったか、俺?」

 

 

真の言葉にピクッと簪が反応し、少し申し訳なさそうな顔で彼を見つめる。

 

 

「……ごめん、少しだけ」

 

「謝る事じゃないさ、殺気なんて本来感じないモノだし」

 

 

苦笑しつつ頭を掻く。

 

 

「……昔から危険な場面とか集中力が極限まで高まると頭がクリアになってさ……模擬戦の時みたいにいつもはできない動きができるようになって……おかしいだろ、こんなのさ」

 

 

自嘲気味に真が笑う。

だがそんな彼の手を簪が優しく握る。

 

 

「簪……」

 

「……確かに少し怖いと思った、けど私は大丈夫、だからそんな顔しないで」

 

「……ありがとう、簪」

 

「うん」

 

 

微笑む彼女に心が温かくなるのを感じる。

ふととあることを思いついた。

 

 

「そうだ、簪……今度の週末、どこか出かけないか?」

 

「……えっ?」

 

 

真の言葉を聞いた途端、簪の顔が真っ赤になる。

同じく真も頬が赤い。

 

 

「そっ、それって……デート?」

 

「……ああ」

 

「あう……行けるよ、大丈夫、予定空いてるから」

 

「そっ、そっか……よかった」

 

 

顔を真っ赤にした2人はそのまま手をつなぎつつ沈黙してしまう。

しばらく後に、本音が夕食の誘いに来たが2人の様子を見てお邪魔でしたーと帰ってしまい、2人が慌てたのは別の話である。

 

 

 





次回予告
「INTERMISSION 初めてのデート」

週末に彼女と出かけること…人これをデートと呼ぶ。
漢を見せろ、飛鳥真!

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