【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年   作:バイル77

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INTERMISSION 初めてのデート

週末 学生寮 一夏/シャルロットの部屋

 

 

「なあ、変なところないよな?」

 

 

私服姿の真が一夏とシャルロットに自分の服装について尋ねる。

 

今日は以前に簪と約束したデート当日である。

彼女とは部屋が一緒であるため、準備をしたいと言って先に部屋を出てプランの確認等々の為に一夏とシャルロットの部屋に来ているのだ。

 

 

「別に普通だと思うけどなー、シャルは?」

 

「えっ、そこで僕に振るのっ!? うん、大丈夫だと思うけど……」

 

 

グレーのインナー、黒のテーラードジャケット、薄茶色のカーゴパンツと言う組み合わせの真を見る。

特にシャルロットから見ても違和感はない。

 

真の私服を見るのは初めてだが充分着こなしているように見える。

待機形態のインパルスはドッグタグなのでアクセントとしてもちょうど良い。

 

真が服装を気にしている理由は聞いている。

初めての【デート】との事だ。

 

デートで緊張して、助言を求めてきているのだ。

先日の模擬戦で彼のことを恐ろしいと感じてしまったがこういう普通の面があるのだから恐れる必要なんてないんだと、シャルロットは友人への認識を改めていた。

 

 

「……緊張してきた」

 

 

胸を押さえて深呼吸している真を見つつ、一夏は苦笑している。

 

 

「そこまで緊張することか?」

 

「……お前、そういう発言、箒や鈴の前でするなよ。ぶっ飛ばされるぞ?」

 

「えっ、どういうことだ?」

 

「一騎や総士や剣司にちゃんとデートプラン聞いてたけど……本当に上手くいくかなぁ……」

 

 

一夏の質問をスルーしつつ、真はデートプランを思い返す。

ちなみに一騎、総士、剣司とは真や一夏の1つ下の後輩である。

特に剣司は1つ下ながら彼女もちであり、真は彼にデートプラン等を相談していたのだ。

 

 

「僕は大丈夫だと思うけどね、デートって事は今日の模擬戦には参加しないんだよね?」

 

「ああ、カナードとキ……ラキーナが相手の模擬戦だろ、予定があるってカナードに伝えたから」

 

 

真が簪とのデートを約束した後、カナードとラキーナと各国代表候補生(加えて一夏と箒)を対象にした模擬戦の予定が組まれたのだ。

これは戦力把握と戦力増強をかねて、束が企画したものである。

当初はせっかくの週末が潰れてしまうとほぼ全員が参加しない予定であったが、篠ノ之束による専用機メンテナンスがあると聞いた途端、手のひらを返して全員参加するようになったと言う。

 

この模擬戦は任意参加なので、真と簪は参加しないこととしている。

 

 

「……そろそろ時間だから、ありがとうな、一夏、シャルロット」

 

 

真が立ち上がって部屋の扉を開ける。

 

 

「おう、がんばれよ、真」

 

「簪さん楽しませてあげてねー……って僕達もそろそろ準備しないと」

 

「おっと、そうだった!」

 

「そっちも頑張れよ、カナードとラキーナは強いぞ」

 

「おう」

 

「うん、頑張るよ」

 

 

真は一夏達と別れて、学生寮の入り口へと向かう。

待ち合わせ場所はIS学園近辺のショッピングモール レゾナンスだ。

 

 

―――――――――――――――

ショッピングモール レゾナンス内 カフェテラス

 

 

「……先に着いちまったな」

 

 

カフェテラスの日陰の空いた席に座りつつ、少し前に購入したカフェオレに口をつける。

季節は梅雨に入っているが、天気は快晴であり過ごし易い気温と湿度だ。

すでにここで待っていると簪には連絡している、待ち合わせ時間より10分先に到着してしまったが。

 

 

(張り切りすぎだろ、俺……)

 

 

苦笑しつつ、カフェオレを飲み進める。

ふと視界の端に水色の影が映りこんだ。

視界を合わせると、簪が小走りでこちらに向かってきていた。

 

赤紫のワンピースに薄手の白いカーディガン、そしてワンピースと同じ色の帽子を身に着けている。

 

 

「ごっ、ごめん、待った?」

 

「えっ、あっ、大丈夫。俺の方が早く来すぎただけだから……!」

 

 

彼女の私服姿を見た真は見惚れていたことに気づき、照れ隠しの為に一気にカフェオレを飲み干す。

 

 

「よっ、よし、行こうか!」

 

 

真が簪に手を差し出す。

緊張しており、すでに顔が赤くなっている。

 

 

「うっ、うん」

 

 

その手に答えて、優しく握り返す。

いわゆる恋人つなぎの状態で二人はカフェテラスを離れる。

 

―――――――――――――――

 

ショッピングモール レゾナンス内 ゲームショップKAIBA

 

 

真が考えていたデートプラン――流れとしては買い物に食事、ショッピングモール内にあるゲームセンターで遊ぶという流れだ。

現在は買い物の為にゲームショップに来ている。

 

何故ゲームショップなのかというと、彼女が近々新しいゲームが発売されると楽しみにしていたのを覚えているからだ。

 

 

「【IS EXVSFB】?」

 

「うん、簡単に言えばISのバトルアクションゲームだよ」

 

 

店頭ではゲームのプレイムービーが流れており、簪は嬉しそうな顔でパッケージ裏を見つめている。

ムービーでは千冬に似ているキャラクターが専用機である【暮桜】を纏い他のISと戦っているプレイムービーが流れている。

 

 

「なるほど、過去のヴァルキリーとかブリュンヒルデを模したキャラを使えるのか」

 

「うん、織斑先生モチーフのキャラは結構な強キャラだよ、特格からの居合いは初見じゃ絶対に避けられないと思う」

 

「おっ、おう……」

 

 

ゲームはそこそこやる真だが専門用語が出てくると流石に反応に困る。

するとプレイムービーが変わり、解説キャラとして主題歌を担当しているバンドのメインボーカルの人物を模したキャラが出てくる。

なぜかムービー内で解説を行っているキャラはかつての気さくな上司に声も顔も似ている。

 

 

『新キャラとしてなんとなんとついに男性キャラが登場だぁ! その名も【イチカ・オリムラ】と【シン・アスカ】!』

 

「はぁ!?」

 

 

紹介ムービーに自身と一夏にそっくりな男性キャラが登場し、真が思わず素っ頓狂な声を上げる。

 

 

「新キャラとして織斑君と真をモチーフにしたキャラが出てるの、織斑君の方は近接しかできないから難易度が高いけど」

 

 

一夏モチーフのキャラが白式を纏い、自身をモチーフとしたキャラと剣で切りあっているムービーが流れている。

 

 

「真をモチーフにしたキャラは高いポテンシャルを持った万能キャラで……ちゃんとシルエット交換も実装されてるよ、ほら、変わった」

 

 

ムービーの中で【シン・アスカ】がインパルスのシルエットを【デスティニーシルエット】に交換し、空を翔けている。

 

 

「本当だ。ってこのキャラの声、俺の声じゃないか?」

 

「このゲームの開発に日出工業も協力してるからだと思う。たぶん、何処かで録音されてたと思うよ」

 

「マジかよ、優菜さん……」

 

 

もう苦笑しか出てこない真であった。

 

 

「……よし、買うか」

 

「え?」

 

「ん、前からこれ欲しかったんじゃないのか?」

 

 

財布を出しつつ、首を傾げる。

 

 

「わっ、悪いよ、ちゃんと自分のお金で……!」

 

「払わせてくれよ、元々そうするつもりだったんだ。大丈夫。これでも日出のテストパイロットなんだ、金は有るからさ」

 

 

真は現在所属している日出工業から高校生では贅沢しても使いきれないレベルの給料が払われている。

その為元々簪に買ってあげるつもりだったのだ。

 

 

「うぅ……」

 

「な?」

 

「……ありがとう」

 

 

顔を赤くしつつ、簪が嬉しそうに頷く。

それを見た真も微笑みを浮かべた。

 

 

―――――――――――――――

同時刻 IS学園 生徒会室

 

 

「……尋常じゃないくらい忙しいぃぃい!」

 

 

机の上で頭を抱えつつ楯無が吼える。

国家代表の仕事や家の仕事。

シャルロットの件について一段落ついたため、根回しと公表のための準備に楯無は追われているのだ。

 

 

「お嬢様、大丈夫ですか?」

 

「ありがとう、虚ちゃん……でも駄目、気になって仕方ないわ!」

 

 

椅子から立ち上がった楯無を見て、虚がため息を漏らす。

その様子をお菓子を食べながら本音が眺めていた。

 

 

「たっちゃんはあすあすとかんちゃんのデートが気になるの?」

 

「そうよ! 今愛しの簪ちゃんは真君とデート中! これが気にならないわけないわ!」

 

 

そのまま、生徒会室を出て行こうとした楯無を、虚が力強くガシッと引き止める。

 

 

「……駄目ですよ、お嬢様、仕事から逃げないでください」

 

「ヒィッ、虚ちゃん、目が据わって……っ!」

 

「お嬢様がいなくなったらその分増えるんですから……逃がしません」

 

 

ハイライトの消えた目で虚が楯無を睨む。

その目に抗うことができずに楯無は机に引き戻された。

 

―――――――――――――――

 

ショッピングモール レゾナンス内 ゲームセンターYU-GI

 

買い物を終え、腹拵えを終えた2人はショッピングモール内のゲームセンターで格闘ゲームをプレイしていた。

プレイしている格闘ゲームは、かつて週間漫画雑誌に連載されていた漫画の格闘ゲームであり、世紀末バスケとも揶揄されているゲームである。

2P側の簪は白髪の病人キャラ、1P側の真は主人公で胸に七つの傷があるキャラを使っている。

 

 

「ぐあー、勝てねーっ!」

 

「やった、3連勝目……っ!」

 

 

どこが病弱キャラだと真が叫ぶ。

一瞬にして画面端まで到達できる速度と、発動時の当たり判定が極端に小さくなる移動技を駆使され、まともに反撃もできずにボコボコにされてしまったのだ。

 

 

「激流では勝てないよ……?」

 

 

少し自慢げな顔で真に笑いかける。

 

 

「くっそぉ、やってやる。やってやるさっ!」

 

 

100円を投入して、今度は金髪のキャラを選択する真であったが、結局勝てずに5連敗に喫すのであった。

 

―――――――――――――――

IS学園 学生寮 自室

 

 

デートを終え、2人は自室に戻ってきていた。

学生寮には門限があるため、少し早めに2人は帰路についていたのだ。

 

 

「今日は楽しかった、本当に楽しかったよ、真」

 

「ああ、俺もさ」

 

 

2人がベッドに腰を下ろす。

 

 

「……真」

 

 

きゅっと真の右腕に簪が抱きつく。

突然の彼女の行動に驚く。

 

 

「……どうした?」

 

「ううん、こうしたくて……駄目?」

 

「……いや、大丈夫だけど」

 

 

内心ドキドキしており、互いに顔はすでに真っ赤になっている。

真より身長が小さいため、簪が少し熱っぽい視線で自分を見つめていることに気づく。

 

そして彼女は目を瞑る。

 

 

(ちょっ、これって……!)

 

 

ジッと何かを待っているかのように簪はそのまま動かない。

だが自身の右腕を抱きしめる身体が震えているのが分かる。

 

彼女が内気であることは知っており、この行動は相当な勇気を出した行動であることに気づいた。

 

 

(……勇気、出してくれたのか……)

 

 

その勇気に答えるため。

 

 

――少しずつ顔を近づけて、唇を合わせた。

 

 

「……んっ……」

 

「……」

 

 

数十秒は互いにそのまま動かなかった。

そして真の側から離れる。

 

 

「……しちゃったね」

 

「……だな」

 

 

先程の行動に不思議と互いに笑みが浮かんだ。

 

 

「好きだ、簪」

 

「……うん、私も好きだよ、真」

 

 

その後、先程買ってきたゲームソフト【IS EXVSFB】を2人でプレイしたが、やはり簪には勝てずにボコボコにされてしまう真であった。

 

 

 





次回予告

学年別トーナメント、2人1組で戦うイベントが迫る。
そして再び立ち込める暗雲…奴の目的とは?

「タッグ結成」

真に少しずつ魔の手が迫る。

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