【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年   作:バイル77

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過去編② 出会い

August.7.C.E79

 

 

 地球連合が解体されてから数ヶ月。

かつての連合の主要都市はザフト主導の【鎮圧作戦】により、ほとんどが占領されていた。

旧連合の主要軍事施設はザフトのMSによって破壊、または接収されていた。

また国家の集合体であった連合が解体されたことで、世界中で国家間、民族間での内乱や内紛が再発していた。

 

 長く続く戦乱の世。

人々は混乱が続く大都市から離れ、小さい都市や集落を形成し移り住んでいた。

それに伴い、MSを使った盗賊や夜盗などが多く現れていた。

 

人々は盗賊たちに対抗するため、【傭兵】を雇ったり【自警団】を結成。

ついには独自のコミュニティを形成するまでにいたっていた。

 

 

 とある砂漠地帯

 灼熱の象徴でもある砂漠の大地はすでに夜の帳に包まれ、昼間とは真逆の低温の世界となっている。

 

 

「へっ、この街で5つ目だな……ねえ、頭」

 

「ああ、そうだな。おっとアンタは1つめか、【赤鳥(レッドバード)】?」

 

 

 無精ひげと見事に飛び出たビール腹の2人がナイトビジョン付きゴーグルから顔を離して振り返る。

見るからにナチュラルの2人が背後のキャンプ地にいる人間に話しかける。

キャンプ地と言ってもかなり小さく寝袋などで数人が眠りこけている質素な物だが。

 

 【紅と黒の2色】で彩られたパイロットスーツに【フルフェイスヘルメット】で顔を隠した人物が1人夜空を見上げていた。

 

 

「……そうだな、あんた達の依頼を受けたのは今日だからな。5つ目って事はそれ以前に潰した事があるのか?」

 

 

 【赤鳥(レッドバード)】と呼ばれたその人物が男達に答える。

ヘルメットのバイザーは非透明バイザーのようで顔は確認できず、くぐもった声からすると男のようだ。

 

 

「ああ、小さな集落だったがMSが2機あれば充分だったぜ」

 

「今じゃナチュラルでも充分にMSが使えるからな。鎮圧部隊の奴らなんてこんなところにはこねーしな、MS万々歳だぜ」

 

「なるほど。中々美味くて今度はあの少し大きい街って事か?」

 

 

 赤鳥は男達が見ていた【街】を指差す。

都市と比較すれば小さい規模だが人口は少なくない。

また街の明かりは地上のエネルギー問題もあってそこまで大きくはないが、小さい集落のように夜になると暗闇に包まれると言うこともない。

 

 

「あぁ。せっかく金で動く傭兵が雇えたんだ。あれくらいの街を襲っても充分黒字だろうぜ」

 

「へへ、じゃあ、早速いきましょうぜ」

 

「おお、頼んだぜ、赤鳥さんよ」

 

「……いいだろう。こっちも飯の為には仕事はするさ、住民から奪った食料や報酬は弾めよ?」

 

 

 10分後

 

 盗賊の2人はキャンプ地の背後のトレーラーに寝かされているそれぞれのMS。

2機の【ストライクダガー】へ向かう。

 

 赤鳥はそこから少々離れた砂山に止めた保護シートで隠してあるMS用トレーラーに向かう。

そこに寝かされているMSは【ウィンダム】

かつて地球連合で生産された量産型MSであり、カラーリングは一部黒と赤に変わっている。

 

 

『じゃあ、予定通り頼むぜ、赤鳥』

 

『了解した。退路を確保する』

 

 

 盗賊達が乗っている2機が先行して街を襲い、赤鳥は退路を確保するという作戦だ。

 

 そうここまでは――

 

 

『いくぜ、頭っ!』

 

『おうっ!』

 

 

 2機のストライクダガーがスラスターを噴かせて、大地を蹴る。

残りの手下はジープなどを使って街に向かう

 

 瞬間、【背後】からの【ビーム】によって盗賊の頭が搭乗していた機体がコックピットを貫かれ沈黙した。

 

 

『……え?』

 

 

 突然の事態に立ち止まる手下のストライクダガー。

そこに通信が入った。

 

 

『……騙して悪いがこっちも仕事でな、あの街の人達の為に消えてもらう』

 

 

 ゾッと底冷えした【赤鳥】の声。

それが手下が聞いた最後の言葉となった。

 

 メインモニターには【ビームサーベル】を構えた【赤鳥のウィンダム】の姿。

黒と赤のカラーリングからまるで【鬼】の様に見えた。

 

 手下は碌に抵抗もできずにコックピットをサーベルで貫かれ、蒸発した。

サーベルを引き抜きマウントさせる。

 

 ジープやキャンプ地に残っている残党を、脚部の対人兵器でなぎ倒す。

少しして盗賊の全滅を確認した赤鳥は、通信モニターで目の前の【街】にいる【仲間】に連絡を取る。

モニターに映るのはザフトの緑服の胸部を大胆に開く形でアレンジし露出を増やした服装をしている【アビー・ウィンザー】

 

 

『アビー、こちらシンだ、終わったよ』

 

『シン、お疲れ様です。回収に向かいますので街のほうまで来てください』

 

『了解、後ヴィーノにジャンクの回収を頼むって伝えてくれ』

 

『分かりました、それではまた』

 

『あぁ』

 

 

 傭兵赤鳥(レッドバード)

その正体である【シン・アスカ】は、傭兵として世界を回っていた。

 

 今ある【花】を散らせない。

【奴ら】と決別し、傭兵になってからようやく見つける事ができた自分の信念。

 

 またシンは1人ではなかった。

MS1機分の金が溜まるまでは傭兵部隊【サーペントテール】の世話になっていたがそこから独立した後、かつての同僚であった【アビー】や【ヴィーノ】等の元ミネルバクルーが、ジャンク屋から古ぼけた型だがMS搭載可能な船を購入し、サーペントテールを通してシンに合流したのだ。

正直シンは驚いた、自分になんでついてきてくれるのかと。

それにアビーはこう答えた。

 

 

「今のザフトにはかつて私達が志したモノは残っていませんから……それに1人では守れる【花】も少ないでしょう?」

 

 

 そこからシンやアビー達は【赤鳥傭兵団】を組織、小規模ながら活動を行っていたのだ。

立場や力が弱いモノ達からの依頼を優先し、時には大きな仕事を弾薬費にもならない金額で受けたり、時にはこうして汚れ仕事等を請けたりしていた。

 

 

「……ふう」

 

 

 ウィンダムを自動走行モードに切り替えて、MSトレーラーに着く前にドリンクと携帯食料を口に運ぶ。

食糧事情はあまりよろしくないが、そこは仕事を終えた後だから遠慮はせずに。

 

 

「……こうしていても……守れる花は俺達の手の届く範囲だけ……か……」

 

 

 コックピットの中で1人シンは呟いた。

 

 


 

 

 数日前

L3中域

傭兵部隊X乗艦 オルテュギア ミーティングルーム

 

 

「【シン・アスカ】との接触……だと?」

 

「はい、カナード」

 

 

 傭兵部隊Xの乗艦、オルテュギアの一室に一組の男女がいた。

 

 男の方はまるで拘束服をボディアーマーのように改造した服装をしている。

アメジスト色の瞳に、光を反射させるかのように綺麗な黒の長髪、加えて顔は美形だ。

男の名前は【カナード・パルス】

 

 女の方は少し目つきがキツイが充分美女といえる顔つき、また眼鏡をかけ服装は解体された旧連合のモノを着ている。

女の名前は【メリオル・ピスティス】

 

 

「【元ザフトのトップエース】……消息は不明だと聞いていたが?」

 

「ええ、ですが今回のクライアント【バックワード】と呼ばれる組織ではその情報を掴んだモノかと」

 

「【バックワード】……確か【アマルフィ】とか言う女が興して、メサイア戦役後から活動してたNPO。胡散臭いな、それに何故俺なんだ? 叢雲劾、サーペントテールに行きそうなものだが?」

 

 

 カナードは眉を顰めてメリオルから渡されたタブレットを操作している。

 

 

「クライアント側からは何も」

 

「……」

 

 

 メリオルからの返答を聞いてカナードは少し思考の海に沈む。

 

 

(シン・アスカ。元ザフトのトップエースで前議長ギルバート・デュランダルの懐刀と呼ばれた男か。キラ・ヤマトを落とした唯一の人物で、今の世界で何をしているのか気にはなるが……存外俺もこだわっているようだな)

 

 

 少しだけ笑みを浮かべて、現実に帰還する。

 

 

「いいだろう、元々奴については気になっていた」

 

「では依頼の方は受託、詳細を後ほどそちらに送ります。それと進路を地球へ変更します……よろしいですか?」

 

「頼む、それと【ドレッドノート】の整備に向かう、何かあれば連絡をくれ」

 

「分かりました、カナード」

 

 

そうして2人はミーティングルームを出て行く。

 

 


 

 シンが盗賊を殲滅してから、数日が経った。

 

 赤鳥傭兵団と砂漠の街との契約終了日となり、赤鳥傭兵団は街を去る準備に追われていた。

シンもさすがにパイロットスーツでうろつくわけには行かず、作業着で作業を行っていた。

 

 

「なぁなぁ、傭兵の兄ちゃんはもう行っちまうのか?」

 

「ん、ああ。残念だけど……そういう仕事だからね、ごめんな」

 

 

 自分に話しかけてきた5歳程度の男の子だ。

コーカソイド系はこの地方では珍しい。

 

 

「んー、仕事じゃ仕方ないよな……あっ、そうだ、兄ちゃんに会いたがってる人がいるよ」

 

「俺に会いたがってる人?」

 

 

 少年の言葉に首を傾げて、彼が指差す方向を見る。

そこには仇敵と同じ顔をした男が立っていた――いや、目つきはキラ・ヤマトよりも鋭い。

 

 

「探したぞ、傭兵赤鳥……いや、シン・アスカ」

 

「っ、誰だアンタ! キラなのか!?」

 

 

 懐に手をしのばせ、いつでも自動拳銃を抜く用意を整える。

 

 

「俺はカナード……カナード・パルス。お前と同じく傭兵だ。仕事でな、貴様に会いに来た」

 

「俺に……だと……?」

 

「ああ、お前を連れてこいとの【依頼】だ」

 

 

 カナードが不敵に笑う。

これが【心折れぬ戦士】と【宿命を超えた戦士】の最初の出会いであった。

 




傭兵になったシンは少しでも花を散らせないために戦ってました。


実はカナードとは会っていたシン。


少しずつ逆襲のシンに近づいていきます。
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