【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年 作:バイル77
【ドム・トルーパー】と【ペルグランデ】をカナードとクロエに任せたデスティニーは、ラクスを追跡していた。
両者ともVLを搭載している機体の為、わずかな時間で戦闘宙域から大きく離れメサイアに接近していた。
そして突如としてラクスのISのVLから溢れていた光の翼が消失し、彼女は機動を停止する。
ビームライフルを構えたまま真も停止すると、ラクスは反転して真にオープンチャネルで通信をつなげてきた。
一瞬、以前の様に量子ウィルスによるクラックも考えられたが、量子ウィルスについては束によるセキュリティの強化が施されているため気にする必要はない。
『ようやく……ようやく、2人だけになれましたわね、シン』
ラクスは頬を紅潮させつつ、シンに微笑む。
だが真は彼女の言葉と表情を無視して、躊躇なくライフルのトリガーを引いた。
発射されたビームはやはり【ゲシュマイディッヒ・パンツァー】によって歪曲し、無効化されてしまった。
『あら、いきなり積極的ですわね、シン』
『……アンタは何でこんな事を……メサイアを地球に落とすだなんて事を、そんな平気な顔で実行できるんだっ!?』
C.E.でのコロニー落下事件、通称【ブレイク・ザ・ワールド】
戦争と悲劇の象徴であり恒久的な安定軌道をとっていたはずのコロニー【ユニウスセブン】が過激派テロリストの手によって地球に落下してしまった事件。
当時のデュランダル政権下のザフトも阻止作戦を取ったが失敗、地球の都市部に甚大な被害を出す結果となった。
この事件を発端として【メサイア戦役】が勃発、世界は再度戦乱に包まれていったのだ。
当然、ラクスもこの事件については知っているはず。
だというのにそれを平気な顔で実行できる彼女を真は理解できないのだ。
『貴方を私から奪った【あの小娘】のいる世界なんてもう必要ないからですわ』
浮かべていた微笑を消し、まるで氷の様に冷たい嘲笑を浮かべる。
『ふざけるなっ!そんなことの為に……メサイアほどの質量の物体が落ちたら甚大な被害だけじゃないっ、地球が寒くなって人が住めなくなるってこと、アンタにはわかってるはずだろうにっ!』
『ええ、存じていますわ』
まるで聖母の様に微笑み、ラクスは真に返答する。
その表情に真は絶句してしまった。
真は【花】を、【命】を散らさないために戦っている。
だが彼女は【命】を何とも思っていない事を理解してしまったのだ。
その様子を確認したラクスがふと思い出したかの様に告げる。
『しかし……心残りなのは【あの小娘】をこの手で直接消すことができなかったですわね……まあ、オータムさんとデストロイならば問題ないでしょうね』
【あの小娘】――ラクスの言葉が指しているのは【簪】の事であろう。
あえて簪を始末したかったと言葉に出すことで、真の動揺を狙っているのだ。
しかしその言葉に真は欠片も動揺する様子はなく、大型ビーム実体剣【アロンダイト】を展開する。
【ゲシュマイディッヒ・パンツァー】はあくまでビームを【歪曲】させることで無効化しているだけであり、ビームサーベル等の近接格闘武装ならば影響はほぼないといっていい。
『……ラクス・クライン、アンタは【勘違い】をしてる』
ラクスの言葉を鼻で笑い、アロンダイトを構える。
起動したアロンダイトの刀身にビームが奔り、デスティニーの腕部装甲の黒を紅く照らす。
『【勘違い】……この私がですか?』
少し驚いたかのようにラクスが首を傾げた。
VLユニットを広げ、刀身ビームと同じ紅い翼を広げる。
『簪や一夏達……俺の大切な仲間達は、デストロイなんかに負けやしないってことだっ!』
VL最大稼動状態移行、それによって得られる莫大な推力でラクスに斬りかかる。
広がった紅い光の翼をラクスは恍惚とした表情で眺めていた。
『……シン、やはり貴方は私に相応しい殿方……っ!』
ラクスのIS【ホワイトネス・エンプレス】に接続されている背部・腰部のマニピュレータがまるで【人間の腕】の様に広がる。
『貴方の全力を受け止めてから、私の【ホワイトネス・エンプレス・エンブラス】の力で貴方を抱きしめて差し上げますわっ!』
アロンダイトの刃が迫る中、彼女の意識の中で【水色の種子】が弾けた。
―――――――――――――――――
時間はシャトル打ち上げ直後まで遡る
『篠ノ之、すまない、助かった』
紅椿によって消費したエネルギーを回復した暮桜、千冬が箒から離れる。
暮桜は表面装甲が少々破損、紅椿も同様に装甲にダメージを受けているが、戦闘には支障はない。
『エネルギーの方は大丈夫ですか?』
『ああ、問題ない、しかしあの【デストロイ】とか言うIS……全身がビーム兵器だと思えるほどの重武装ISだな』
『ええ、加えて【腕】を分離して飛ばすなんて非常識な機能がある。厄介ですね』
エネルギーの補給を受けている千冬と箒は最前線から少々離れた空域で滞空している。
シャトルを無事に打ち上げることに成功した箒達であったが、数で圧倒しているというのにデストロイに有効打を与えられずにいた。
その理由は単純、デストロイの性能の高さだ。
現在デストロイの相手をしているのは箒を含めて、一夏、千冬、セシリア、鈴、ラウラ、シャルル、楯無、簪の9人である。
利香とナターシャは、アマノイワトに残された日出社員の救出に向かっている。
アマノイワトの構造を知り尽くしている利香と、その利香をよく知るナターシャならば別働隊がいても対処できるとの判断だ。
『鈴さん、後ろですわっ!』
『分かってる……ってのぉっ!』
甲龍が貸与されている対ビームシールドで自機の背後に発射されたビームを辛うじて防ぐ。
甲龍にビームを放ったのはデストロイの【両腕】、【シュトゥルムファウスト】と呼ばれる装備だ。
【シュトゥルムファウスト】
本体から分離し、ドラグーン端末となって操作が可能なアームユニット兼攻守システムである。
ドラグーン端末としては大型の部類にはいるがその分推力も高く、ビームの出力も高い。
オリジナルのデストロイと同じく相応の空間認識能力、つまりは【適正】が必要となるが、ISのデストロイは機体に【ISコア】を複数搭載し演算ユニットとして利用しており、搭乗者の敷居はオリジナルよりも相応に低くなっている。
『そこだ、喰らえっ!』
『ティアーズフルバーストっ!』
『ロックオンはできてるっ!』
鈴が防御に成功したことで、アームユニットは無防備、ラウラ、セシリア、シャルルからの反撃が降り注ぐ。
しかし、デストロイ本体を操るオータムは笑みを浮かべていた。
『甘いんだよ、餓鬼どもぉっ!』
無防備であったアームユニットから【ビームシールド】が展開され、反撃は全てビームシールドに弾かれてしまった。
【ソリドゥス・フルゴールビームシールド】がアームユニットに搭載されているのだ。
また本体にも同様のモノが搭載されており、水蒸気爆発や【偏向射撃】による奇襲を全て無効化されている。
余談だが、オリジナルのデストロイに装備されていたのは【陽電子リフレクター シュナイドシュッツ】と呼ばれる装備である。
シュナイドシュッツにはビームを一定の長さで発振させ続ける兵装には無力な一面が見受けられたため、ラクスの手によってより信頼できる【ソリドゥス・フルゴール】に変更されたのだ。
『ビームシールドが腕にも付いているのね、【
武装である大型ランスが一部破損している楯無が呟く。
破損により、近接戦闘及び内蔵ガトリングガンによる射撃にも支障が出ているようだ。
『ビームシールドなら織斑君や織斑先生の【零落白夜】、バルムンクでも切り払える……けど、近寄らせてくれない……っ!』
VLユニットを広げた飛燕、簪が楯無の言葉に返す。
先ほどのセシリア達3人の攻撃を防いだデストロイ。
その全身に装備されているビーム砲塔から反撃のビームが嵐の様に発射される。
光の翼から得られる推力とAMBACでビームを回避した簪に通信が繋がる。
その相手は一夏だ。
一夏は零落白夜を起動し、ビームを防いでいた。
いくら以前と比べて技量が上がっているとはいえ、簪や他の代表候補生、千冬と比べるとどうしても劣る。
零落白夜を盾として使用するのも致し方ないのだ。
『零落白夜の最大出力ならこのビームの嵐でも耐えれるはずだ、そうだろ、千冬姉っ!?』
ビームを回避しつつ、箒と共に前線に復帰した千冬に叫ぶ。
『……おそらく最大出力で突っ込めば近づけるだろう、しかしあの弾幕だ、エネルギーが確実に足りなくなるし、切り払うにしても限度がある……無理だ』
千冬から返ってきた言葉は不可能と言う言葉。それに小さく無念の声が一夏の口から漏れる。
このまま膠着した状況になるのは避けたい。
皆が何か策はないかと思考を奔らせた時だった。
『……なら【隙】を作ればいいんですね?』
簪が千冬に力強い視線を送りつつ尋ねる。
『更識……できるのか?』
『簪さんっ!?』
『簪ちゃん、まさか貴女、【囮】にっ!?』
楯無の言葉に簪が頷く。
そう、簪が提案するのは、自身を【囮】にするという策だ。
『私の【飛燕】にはVLユニットがあります、機動力での撹乱ができるはずです……それに【とっておき】がありますから私だけでもいけるかもしれません』
『……簪ちゃん』
『大丈夫。信じて、お姉ちゃん』
簪が楯無に微笑みつつ告げる。
『……分かったわ、何かあったらすぐに援護に入るからね』
『うん』
楯無の言葉を確認し、飛燕のVLユニットを最大稼動状態に移行。
光り輝く蒼い翼が広がりデストロイに向かう。
千冬達との通信はプライベートチャネルとしてセシリア達も共有している。
セシリア達3機がデストロイから離れ、自然とデストロイは向かってくる飛燕に砲口を向ける形となる。
ビームライフルを展開してトリガーを引く。
放たれたビームは展開された、デストロイ本体の【ソリドゥス・フルゴール】によって阻まれる。
『っ、その偽りの翼っ!お前がいなければ、ラクス様の心は傷つかなかった!ラクス様がお心の内で泣くこともなかったぁぁっ!』
簪の姿を確認したオータムの表情が怒り狂った様な声を上げる。
同時に全身のビーム砲塔が飛燕に向けられる。
砲口の射線を読み取り、VLから溢れる蒼の粒子を撒き散らしながら回避し、ビームを連射。
しかし、先ほどと同じようにビームシールドに弾かれる。
だがこれは簪の狙い通りだ。ビームライフルの射撃はあくまで牽制だ。
(彼と……真と同じようにっ!)
彼女のIS【飛燕】
その名は【空を飛ぶ鳥】に追いつき共に飛ぶための名だ。
機体も彼と同じようにVLユニットを搭載している。
ならば彼の【とっておき】が自分にも使えるはずだ。
ビームライフルを格納、VLユニットの稼動域に干渉しないように肩と腰部に【大型ミサイルコンテナ】が展開される。
【マルチロックオンシステム搭載40連ミサイル】
コンソール上でのロックオンが完了し、コンテナからミサイルが次々に射出されていく。
『ちぃっ、ミサイルかっ!』
オータムは舌打ちしつつもソリドゥス・フルゴールを展開し続ける。
デストロイは【PS装甲】を搭載しているが40連のミサイルで消費されるエネルギーとビームシールドを展開し続けることで消費されるエネルギーならば後者の方が少ない。
よってシールドを張り続ける事を選択したのだ。
次々とミサイルがビームシールドに着弾――爆発がデストロイを包む。
『次はこれぇっ!』
肩と腰部に展開した【ミサイルコンテナ】を破棄。
同時に両マニピュレータに【ビームブーメラン フラッシュエッジ】を展開し、投擲する。
『最後は……バルムンクッ!!』
光り輝く戦輪となったフラッシュエッジと共に、機体全長と同等の大型実体剣【バルムンク】を展開、光の翼を広げて翔ける。
コンソール上でバルムンクの刀身ビームを操作し、刃全てをビームが包み込むように調整する。
『これでぇぇぇぇっ!!』
バルムンクを【突き】の形で構えたまま突撃する。
これが簪のとっておき。
言うならば飛燕の武装を全て使用した彼女なりの【
爆炎と煙がようやく晴れたデストロイの回避は間に合わない。
またアームユニットのソリドゥス・フルゴールは角度の問題で展開できない。
元々バルムンクには対ビームコーディングが施されているためソリドゥス・フルゴールの貫通は可能であるが。
牽制のためのフラッシュエッジは弾かれてしまったが、バルムンクはデストロイ本体のソリドゥス・フルゴールを貫き、胸部。
ちょうどオータムとISが接続されている接続部の付近に突き立てることが出来た。
『この餓鬼ぃっ!!』
『まだぁっ!』
簪の叫びとともに、突き刺さったままのバルムンクの形態が変化する。
突き刺さったまま【斬撃モード】から【砲撃モード】に変形し、損傷部を押し広げつつビームが放たれた。
デストロイの巨体を高出力ビームが貫き、背部から貫通したビームが空へと消えていく。
与えたダメージは大きい、確かな感触を得た簪であったが――そのために【離脱】が遅れた。
『この程度で、私が落ちるかぁぁっ!!』
本体から切り離されたアームユニットを操作して、飛燕の機体を握り締める。
確かに与えたダメージは大きいが、それは通常のIS相手の話である。
デストロイはその巨体からして通常のISではなく、まだ戦闘可能な状態だ。
『ぐっ……あぁっ!?』
凄まじい勢いでシールドエネルギーが減少していく。
また通常のISよりも大型のデストロイのマニピュレータによってVLユニットが握りつぶされていく。
各部装甲も悲鳴をあげ、次々に亀裂が生じていく。
『このまま、握りつぶしてやるよぉおっ!』
オータムの狂喜の声が響く。
同時に【白い影】がオータムの目の前に現れた。
――――――――――――――――
簪のマニューバ。
バルムンク突撃がデストロイに決まった瞬間、アームユニットが切り離された事を離れた箇所で見ていた一夏は気づいたのだ。
同じく見ていた千冬や楯無もアームユニットが切り離されたことに気づいている。
『っ!?』
誰よりも早く――考える前より身体が動いた。
全開の出力でスラスターを吹かせ、白式で翔ける。
――その時であった。
『このままじゃまずいね』
『あぁ、あの少女はこのままだと敵に捕まるな』
『っ!?』
突然、女性の声が2つ響き、驚いた一夏は思わず振り返る。
振り返ると目の前に【白いワンピース】を着た少女と、【白い鎧】を身に纏っている女性騎士の姿があった。
両名ともISなどを身に着けていないのに空中に浮いている。
『きっ、君達は……っ!?』
『……今はそんな事を気にしている場合ではないだろう?』
少し呆れたような声を女性騎士のほうが出す。
女性騎士の顔は鎧のガードによって見えないがどことなく姉である千冬に似ている雰囲気だ。
『一夏、どうしたいの?』
ワンピースの少女が一夏に問いかける。
『どうしたいって……簪さんを助けるんだよ、当たり前だろっ!?』
『……確かにこのまま突っ込めば助けることは可能かもしれない。だが相手からの反撃がないとも限らない。事実奴は今追い込まれている、何をするか分かったものではない……それでもか?』
女性騎士のほうから冷たい声が返される。
少し前までの一夏ならば彼女の言葉に返せなかっただろう。
だが――強い視線のまま女性騎士に告げる。
『それでも行くんだよっ!それに見つけたんだ……俺はやっと自分の【戦う理由】を見つけたんだ』
『……ほう、聞かせてみろ』
女性騎士が続きを促す――ワンピースの少女も同じように続きを待っているようだ。
『アイツから……真から少し前に教えてもらったんだ、【簪さんと一緒にいると小さなことでも楽しい】って』
以前、学生寮の大浴場で真から聞いた言葉を思い出す。
『それはきっと簪さんも同じなんだ……俺は皆に【笑顔】でいて欲しい。だから俺は【笑顔】を守る為に……簪さんを助ける』
力強く目の前の2人に一夏が告げる。
その言葉を聞いて、2人は頬を緩めて微笑みを浮かべる。
『……無鉄砲に【助ける】事だけ考えているかと思ったが、少しは力を持つことについて考えているようだな』
『もう……最初から【私達】は力を貸すつもりだったのに……ホント素直じゃないんだから』
ワンピースの少女が笑いながら、女性騎士に告げる。
そして少女は【白式】の胸部装甲部分に手を当てる。
同時に白式の装甲から【光】が溢れていく。
その光景を一夏は知っている。
真から聞いていたのだ。
それと共に2人の【正体】についても察しが付いた。
『……君達は……まさか』
『ん、それよりはまず彼女を助けるんでしょ、一夏?』
『振り返らず翔けろ、一夏』
『……ああ、ありがとう』
一夏の呟きと共に、2人の姿が消え――【白式】の姿が変わる。
【第二形態移行】――真の【インパルスガンダム】が【デスティニーガンダム・ヴェスティージ】に進化した現象が白式にも起こったのだ。
『新しい白式……【白式・雪羅】っ!!』
左マニピュレータに大型の【多機能武装腕 雪羅】が発現、スラスターも大型化したウィングスラスター4基に増設されている。
4基に増設されたスラスターを用いて【二段階加速】を実行。
以前の白式と比べ物にならない速度でデストロイに接近する。
『うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』
加速したまま【零落白夜】を最大展開。
光り輝く白き刃が簪を拘束しているアームユニットを上段から断ち切る。
アームユニットによる拘束がなくなった為、簪が生きているスラスターを使って離脱する。
『なぁっ!?』
『このままぁっ!』
返す刃でデストロイの胸部を切り裂く。
【零落白夜】の一撃であるため、デストロイのエネルギーがレッドゾーンまで減少する。
零落白夜の出力が【第二形態移行】により上がっているのか、明らかに威力が以前よりも上昇していた。
『なっ、こんなっ、こんな餓鬼共に私がっ!?』
『逃がすかよぉっ!』
取り乱したオータムに左手の【多機能武装腕 雪羅】を叩き付ける。
本来ならば【エネルギー爪】を起動させることができるが、今回は起動せずにそのまま叩き付ける。
それでもこの状況では非常に強力な武器となった。
『がぁっ!?』
雪羅を叩きつけられた衝撃によって、オータムの視界が歪む。
だがまだアームユニットは残っている。
目の前の一夏に気づかれないように、アームユニットを操作する――が反応がない。
『無駄な抵抗は止めろ、貴様の負けだ』
操作しようとしたアームユニットは暮桜、【雪片】に串刺しにされていたのだ。
またデストロイの機体各部のスラスターが次々に破壊されていく。
セシリアや楯無達がビームライフル等で破壊しているのだ。
もはやオータムにこの状況でなすすべはない。
――すなわち【詰み】だ。
『くそ……が……』
雪羅を叩きつけられた衝撃によって混濁していた意識の中で、最後まで悪態を付いてオータムは意識を失った。
『一夏、よくやったな』
『それよりも千冬姉、この人をっ!』
デストロイがその機能を停止していく。
搭乗者であるオータムを千冬が保護し、一夏は拘束されていた簪に通信を繋げる。
『簪さん、大丈夫か?』
『……うっ、うん。ありがとう、織斑君……それとごめん、あんなに自信満々に言ったのに心配かけちゃって』
少し申し訳なさそうに簪に告げる。
『いや、簪さんが無事でよかった……助けられて良かったよ』
『……ありがとう、織斑君』
簪が笑顔を向ける。
その笑顔に一夏も笑顔で返す。
そして空を――その先にある【宇宙】を見上げる。
(……真、こっちは何とかなったよ……そっちも踏ん張れよ……!)
宇宙に向かった親友に心の中でエールを送る。
同じく簪も宇宙を見上げる。
(真、待ってるから。)
空の向こうで戦っている最愛の人に向かって祈った。
簪版フルウェポンコンビネーション。
次回予告
導きを得たクロエと彼女を否定するスコール。
再度その刃が交わる――その結末は――
「乗り越える定め」
――少女を青年は受け止める。