【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年   作:バイル77

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EXTRA PHASE
PHASE1 運命 VS 霧纒の淑女①


8月某日 IS学園 第3アリーナ

 

 

夏季休暇真っ盛りの8月中旬、IS学園の第3アリーナに生徒達が集まっていた。

その理由は――

 

 

『行くわよ、義弟君っ!』

 

 

【霧纒の淑女】を身に纏った学園最強(生徒限定)かつ生徒会長の更識楯無が主武装であるランスを構えて叫ぶ。

 

彼女が相対している相手は【紅い翼】を広げる【デスティニーガンダム・ヴェスティージ】

搭乗者である真は展開したアロンダイトを構えつつ、眉間に皺を寄せて微妙な表情をしていた。

 

 

センサーで背後のBピットの様子を拾う。

展開されたディスプレイには真を応援する簪の姿が映されている。

また観客席には一夏や箒の姿も見える。

 

 

『やる気満々じゃないかっ! アンタって人はーっ!!』

 

 

己の心境を吐露し、頭を抱えたくなる思いを叫びつつ迫る楯無に相対する。

何故2人がISを用いた試合を行っているのか、その理由は数日前にさかのぼる。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

数日前――生徒会室

 

 

「ぬわぁん、簪ちゃんがかまってくれないー! 義弟君からも私に構うように言ってよー!」

 

 

ぐでーっと執務用の机に突っ伏した楯無が威厳などまるでない表情で、少し離れた執務用机で虚の作業を手伝っている真に向けて叫ぶ。

彼女の手には携帯電話が握られており、どうやらSNSを使って簪とやり取りをしていたようだ。

 

 

「真君、無視ですよ、無視。ああなったお嬢様は非常に面倒くさいので」

 

「分かってます、あ、書類できました、確認お願いします」

 

「ありがとうございます……はい、大丈夫ですね」

 

 

真から手渡された各種部活の予算を計上した書類の値をチェックし、虚は笑みを浮かべる。

 

簪は数日前より実家に帰省中、課題もすでに終わっており少し寂しい思いをしていたところに虚から協力を頼まれたのだ。

なんでも休み明けに行われる【学園祭】に向けての予算等の計上が全く終わっていなかったとのことである。

 

これについては【歌姫の騎士団】の襲撃により学園運営に少なくない影響が起こったことによるしわ寄せなのだが。

書類仕事は性格的に苦手としている真だが、かなり切羽詰まった状況であった事と歌姫の騎士団には因縁があったため、どうしても断れなかったのが実際である。

 

 

「ふう、ようやくひと段落……ありがとうございます、真君。せっかくの夏休みに態々」

 

「いや、大丈夫ですよ。こっちも暇してたんで」

 

「そういってもらえるとありがたいです」

 

 

微笑む虚にやはり性格的にも雰囲気的にもかつての仲間であるアビーに似ていると真は感じていた。

物思いにふけっていると、後頭部に何やら柔らかいものが当たる。

女性の象徴、恋人の簪よりも大きな2つの果実――

 

 

「無視はよくないわよー、義弟君っ!」

 

「ちょっ、刀奈さんっ!?」

 

 

気配を消して楯無がいつの間にか近づき、背後から抱きついてきたのだ。

前世を通じて歴戦の戦士となった真でも、流石に気を張っていない状況では、楯無程の達人が気配を消していたら気づくことなど不可能である。

 

また真と簪の正式な交際を蔵人が認めた後、楯無は真の事を義弟と呼び始めている。

それに合わせて、真も楯無の事を彼女の本名である【刀奈】と呼んでいる。

こちらについてはそう呼ばないと返事をしないため、呼ばされているが正しいのだが。

 

閑話休題

 

 

「どう?どう? 簪ちゃんよりも大きい?」

 

 

後頭部に自身の胸部を押し当てつつ、真を逃がさないように首に腕を回そうとして来る。

 

 

「このっ、またかっ、アンタって人は―っ!!」

 

 

流石にこれ以上は容認できない真は声を上げつつ、椅子から転げ落ちるようにして彼女から離れる。

 

 

「事務仕事は終わったんですよね! なら俺は失礼しますっ!」

 

 

そのままの勢いで体勢を立て直して生徒会室を飛び出す。

全速力で走りながら背後を振り返る。

 

刀奈は追ってきていなかった。

 

 

「……ふう、勘弁してくれよ、ホント」

 

 

真が頭を悩めるのはこのスキンシップの頻度だ。

正式に更識家に交際を許可された後、なにかとこうして密着するようなスキンシップを彼女は多く行うようになっていた。

 

最初の内は笑ってあしらっていたが流石に頻度が多すぎる。

一度簪に密告して釘を刺してもらう必要があるかもなと真は考えていた。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「あらら、逃げられちゃった……残念」

 

「……お嬢様、流石にやりすぎでは? 彼は簪様の……」

 

 

虚の言葉に笑みを浮かべつつ、刀奈は振り返る。

 

 

「ええ、分かってるわよ」

 

「では何故? 正直、私から見ても過ぎたスキンシップだと思いますが?」

 

 

チラリと横目で虚を見て、苦笑を浮かべる。

 

 

「まぁ、真君可愛いし?彼が義弟になるって考えると嬉しくてね、だからついついね」

 

 

そう刀奈はお茶目に笑う。

妹の大切な人間でいずれ義弟になる存在、つまり弟ができたのだ。

しかも適度に弄りやすく反応も良い。

となると彼女としては弄らずにはいられないのだ。

 

 

「……そうだ、最近ちょっと刺激が足りないし。ふふ、いい事を思いついたわ、そうとなればお父様に……!」

 

(……ああ、また面倒な事になりそうですね……ご愁傷様です、真君)

 

 

自身の主がなにやら考え付いて笑みを浮かべている事に虚は心中でため息をつく。

そして彼女の懸念は数日後に見事的中してしまうこととなったのであった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

数日後――真の部屋

 

 

「……そんなことがあったんだ……っ、腕を上げたね、真」

 

「っ……まあ、あの人はからかって楽しいんだろうけどな……くっ、流石に強いな簪っ」

 

「かんちゃんもあすあすもがんばれー」

 

 

ガチャガチャとコントローラの操作音を部屋に響かせつつ、真、簪、本音はTVゲームに興じていた。

簪は昨日からIS学園に戻っていた。元々簪の帰省も蔵人がしつこく頼んだためであったらしいと本音の談である。

 

プレイしているゲームは【IS EXVSFB】であり、真と簪がプレイし、本音は後ろでお菓子を食べながら観戦している形だ。

余談だが、真が使用しているのは自分を模した【シン・アスカ】ではなく別キャラクターである。

ゲームオリジナルの男性IS搭乗者、名前は【エイジ・エリン】、搭乗しているISもゲームオリジナル【シックザール】と呼ばれる機体である。

 

対する簪の使用しているキャラクターは、つい先日DLCに登録された【デスティニーガンダム・ヴェスティージ】搭乗のシン・アスカであり、先ほどからその圧倒的なスピードと攻撃性能に真は防戦一方である。

 

シックザールとはドイツ語で【運命】を意味する言葉、奇しくも2機とも【運命】の名を冠している。

加えて男性搭乗者キャラ同士であるためか特殊な戦闘台詞がDVE(ドラマチック・ボイス・イベント)で再生されている。

 

 

『さかしいんだよっ、シンッ!』

 

『さかしくて悪いかぁっ! 仲間を信じないお前に負けるつもりはないっ!』

 

『そうやって青いことを言うんだから……っ! お前も聞いたはずだ、俺達の主張をっ! 共に戦ったお前なら、今の世を変えるためには意識を変えるしかないって事、分かるだろっ、シンッ!』

 

『聞いたさっ! アンタの主張の正しいところも分かるっ! でもだからって無関係な人を巻き込むアンタのやり方を認めるけにはいかないんだっ! 仲間として、エイジッ! 俺はアンタを止めるっ!』

 

 

互いの機体のエネルギーはレッドゾーン、しかし簪の方がエネルギー残量が多い。

デスティニーガンダム・ヴェスティージは搭載武装全てがビーム、つまりはエネルギー消費率の高い装備であるのだ。

シックザールは実弾兵器も搭載しているが、より燃費の悪い機体で追い詰めてくる彼女の腕前は賞賛されるものであろう。

 

加えてシックザールはBT兵器に類ずる武装を搭載した高機動機体であるが、射撃戦に比重を置いたバランスであるため同じく高機動型であるデスティニーにレンジを詰められて不利な状況に持ち込まれているのも押されている要因の1つであった。

 

ビームサーベルを展開したデスティニーが突っ込んでくる。

それを背部スラスターを噴かせて回避に移るシックザール。

 

しかし背部VLの煌きと共にデスティニーがさらに加速し、その右マニピュレータには輝く紅いビームの光。

回避中で格闘コマンドを受け付けなかったシックザールには対処はできなかった。

 

 

『これでぇえっ!』

 

 

デスティニーのクラレントビームサーベルがシックザールを切り裂く。

同時にシールドエネルギーの残量はゼロになった。

 

 

『ぐうっ!?っ くそ、ここまでかぁ……っ!』

 

 

そしてTV画面には簪の勝利が表示された。

それを見た真は、ふぅと深呼吸をしてコントローラを床に置く。

 

 

「はぁ、また負けたかぁ」

 

「ちなみに今何連敗中?」

 

 

彼の背後のソファでお菓子をばりばりと食べつつ、本音が真に尋ねる。

 

 

「ん、覚えてる限りで10敗くらいかなぁ……あー、勝ちたい」

 

 

少しだけ疲れたように横目で簪を見ると、彼女は微笑んでいた。

 

 

「ふふ、そう簡単に勝たせないよ、真」

 

 

簪が真にそう返した時であった。

コンコンと部屋の扉がノックされる。

 

 

「ん、一夏か?」

 

 

現在のIS学園は夏休みであるため寮に残っている者は少ない。

付き合いの深い友人達で残っているのは一夏や箒くらいである。

セシリアや鈴等、各国の代表候補生達は祖国に一度帰国し、報告や各々の休みを過ごしているのだ。

 

真は立ち上がって部屋のドアを開ける。

するとそこには、よく知った顔、刀奈が立っていた。

笑みを浮かべているが何処か表情が固い――無理やり笑顔を作っているかのような違和感を真は一瞬感じた。

 

 

「あれ、刀奈さん?どうかしたんですか?」

 

「ん、ちょーと真君にお話がね……簪ちゃんもいるわね?」

 

「ええ、いますよ」

 

「ならちょうどいいわ、お邪魔するわね」

 

「はぁ……?」

 

 

するりと真の横を通り抜けて部屋に入る。

 

 

「あれ、たっちゃんかいちょー?」

 

「あら、本音ちゃんもいたのね」

 

「え、お姉ちゃん?」

 

 

お菓子を食べていた本音と今度は1人モードでゲームを進めていた簪が部屋に入ってきた刀奈を見て声を零す。

 

 

「ええ、お姉ちゃんよ簪ちゃん」

 

「んで、何のようです? あ、お茶でもどうぞ」

 

 

冷蔵庫から麦茶を取り出しコップに注いで刀奈に差し出す。

ありがとうと空いていたソファーに座り込んだ刀奈が簪、真の順に視線を移す。

 

 

「早速だけどね、私がここに来た理由なんだけど……真君、貴方と戦うためよ」

 

「……へ?」

 

 

一瞬彼女が何を言っているか分からなかった真の口から声が漏れる。

それに苦笑した刀奈が続ける。

 

 

「だから私と貴方が戦うのよ、真君。よく考えたら私、貴方の実力を知らないのよね、だから簪ちゃんの全てを任せるに値するかどうかテストしなきゃいけない思ってね」

 

「えっ……えぇっ!?」

 

 

彼女が何を言ってるのか理解できなかった真と簪であったが数秒経ってから声を上げる。

 

つまりは簪との交際を続けたければ自分と戦えといっているのだ。

 

 

「いや待ってくださいよっ!俺と簪が正式に交際するって事、前にデュランダル議長……じゃなかった、蔵人さんに許可貰ったじゃないですかっ!」

 

 

真の声に彼の隣の簪もコクコクと頷いている。

 

 

「ああ、お父様の事からの許可の事なんだけどね。私がこの事を話したら喜んで……承諾、してくれたわ」

 

 

そう笑みを浮かべる彼女だが、何処か表情が固い、と真は感じていた。

 

 

「お父様は、見せてもらおうか、簪を守るだけの力がある男かどうかを……って仰ってたわ」

 

「……お姉ちゃんは……なんでそんなに楽しそうなの?」

 

 

底冷えした簪の声と視線。

当然だろう、いきなり姉が自身の恋愛関係に首を突っ込んできたのだ。

しかも許可を貰っているのに、その仲を引き裂こうとしている。

 

真も正直理不尽なその要求に困惑が怒りに変わり始めていた。

だがすぐにその怒りは消えることとなる。

 

 

「……私だってつらいのぉっ!」

 

 

簪の視線を受けて、余裕の表情を浮かべていた刀奈は一瞬で泣き崩れ、彼女に抱きついたからだ。

その変貌に真と簪、同席していた本音が驚愕の表情を浮かべる。

 

 

「ちょっ、お姉ちゃんっ……!?」

 

「ホントはね! ちょっと2人にちょっかい出してからかうだけだったのよっ! お父様も本気には取らないだろうなぁと口からでまかせを言ったのは私だけど、まさかこんなことになるとは思わなかったのよぉっ!」

 

 

えらく取り乱しているのを見るとそれは本当なのだろうと真は感じ、視線でこちらにどうしようと対応を求めてきている簪に頷く。

 

 

「……刀奈さんから蔵人さんにあれは冗談だったって言えばいいじゃないですか」

 

「あー……うん、そうなんだけどね……それなんだけどね」

 

 

至極全うな真の言葉に刀奈が冷や汗をダラダラと流し始める。

 

 

「お父様に言ったのよ、あれはちょっとふざけてましたって……でもすでに真君の所属の日出工業とかにも話が行っちゃっててね……トントン拍子で話が進んじゃって、断るにも……」

 

「あー……つまり、取り消せないと?」

 

 

日出としては国家代表である刀奈と真の戦闘から得られるデータは喉から手が出るほど欲しいだろう。

そのチャンスを優菜が逃すとも真には思えなかった。

 

 

「……ええ、本当にごめんなさい」

 

「……はぁ、分かりました。刀奈さんと戦えばいいんですよね?」

 

 

ため息をつき、取り乱して簪に抱き着いていた刀奈に真がたずねる。

 

 

「ええ。ただとても言えた立場じゃないけど、国家代表として、学園最強として手を抜くつもりはないわよ?」

 

「分かってます。でも刀奈さんと戦って認めてもらわないと簪の隣にいられないんですよね? ならやりますよ、俺は」

 

 

簪から離れた刀奈の視線と真の視線が交差し、彼女がフフっと笑みを浮かべる。

先程まで取り乱していた人物と同じには見えない程視線は鋭く、【戦士】のモノに変化していた。

 

 

「なら見せてもらうわね、簪ちゃんを守れるか力があるかどうかを」

 

「やって見せますよ」

 

 

真の視線も同じく戦士のモノに変化していた。

譲れない大切な場所を守る、その視線からは明確な決意を感じる。

 

試合は3日後、第3アリーナを貸し切って行う手はずとなっていると刀奈から説明があった。

また試合には日出工業の優菜を筆頭に、更識家からは蔵人が視察に来るとの事だ。

 

―――――――――――――――――――――――――

「さてと……」

 

 

刀奈と本音が部屋を去った後、ソファーに座りなおして真は今後の対策を考え始めた。

 

 

(相手は代表候補生じゃなく国家代表の刀奈さんだ。まずは情報収集だな)

 

 

手始めにタブレットを操作して、一般公開されている範囲で国家代表としての刀奈の情報を集め始める。

 

現代戦において情報を持っていると言う事は絶対的なアドバンテージを持つ。

C.E.でもそれは同じであった。

かつての核動力MSであるフリーダムガンダムの性能やパイロットの戦術、クセ等をレイ・ザ・バレル等戦友たちと共に分析し対策を練ることで、性能で下回るバッテリー機のインパルスガンダムで見事撃墜に成功しているのだ。

傭兵となった後も、信頼できる情報を提供してくる情報屋に対して金に糸目は付けなかった。

小規模な傭兵集団であった【赤鳥傭兵団】がC.E.でもある程度有名になれたのはシンやアビーなどのこうした姿勢があったからである。

 

公開されている動画や気になる記事等を片っ端からタブレットにダウンロードしていく。

彼女との試合まで3日しかない、情報収集は迅速に行う必要がある。

また日出の利香達にも情報を貰うため連絡を行う必要がある。

 

 

「……真」

 

 

隣のソファーに座って黙っていた簪が真を呼ぶ。

 

 

「ん、どうした?」

 

「ごめんね……迷惑かけて」

 

「簪が悪いとかじゃないと思うけど……」

 

 

今回の騒動に簪は何も関与していないといっていい。

刀奈が勝手に空回りして自爆しただけだ――まさか自分と簪に飛び火してくるとは思ってもみなかったが。

 

 

「やるからには全力でやるさ。そうすれば刀奈さんも認めてくれるって……まあ、ほとんど認めてくれるっぽいけどな。今回は盛大に自爆をかましてくれてこっちに被害でたけど」

 

「……うん、お姉ちゃんには後できつく言うから。もちろん応援するし手伝うよ、真」

 

「ああ、なら今から簪のタブレットにもデータを送るから纏めてくれ」

 

「分かった」

 

 

彼女を励まして2人で作業を進めていく。

そして並行して、真はタブレットでメールの作成を始める。

 

宛先はかつての敵であり、今はカナードと共に束の元に身を寄せている少女。

 

 

(……切札はあって損はないよな)

 

 

真の考える切札。

それは自身の中にあるという【因子】

歌姫の騎士団との戦いでも幾度となくその力を発動させた能力。

 

 

(【S.E.E.D.】の使い方……ラキーナなら多分知ってるはずだ)

 

 

未だに自身の意志では発動させることができない【S.E.E.D.】

束曰くISに自身やアスランが乗れる要因の1つだという。

 

MS/ISに搭乗している時や集中力が極限にまで高まった時だけ発動して感覚が研ぎ澄まされる。

普段できないようなマニューバや機体操作も覚醒状態ならば可能になるまさに【切札】である。

 

【S.E.E.D.】を自在に操ることがスーパーコーディネーターであると以前カナードが言っていた事を思い出す。

ならば完成されたスーパーコーディネーターであった――ラキーナならばその使い方を知っているはずだ。

 

ラキーナと完全に和解したわけではない。

以前は気まずい雰囲気であり、歌姫の騎士団による混乱の為聞く暇も、訓練する暇もなかった。

だが歌姫の騎士団との戦いを乗り越えた今ならば、以前よりは歩み寄れる気がする。

 

使えるものならば全てを使う――すべては大切な人の傍にいる為に。




今回からEXTRA PHASE(おまけ)になります。


次回予告
「運命 VS 霧纒の淑女②」

『これがデスティニーと俺の……俺達の力だぁ!』


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