【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年   作:バイル77

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PHASE5 かつての虚影

射撃訓練場

 

囮として出撃するメンバーのISへの宇宙用パッケージ装着完了まで残り数時間。

射撃訓練場ではゴーグルと遮音ヘッドホンを付けたセシリアが射撃訓練を行っていた。

次々に出てくるターゲットのほぼ中心点を次々に撃ち抜いていく。

 

やがてマガジン内の弾丸全てを撃ち終えた彼女はふうと息を漏らして、訓練用拳銃を台に置く。

表示されたスコアは、15/16と表示されていた。

 

彼女が選択した訓練難易度では、表示されるターゲットは1秒未満で切り替わるベテランの軍人でも10点取れれば御の字と言う、最大難易度のものだ。

偏向射撃をマスターした彼女の射撃能力と集中力ならば、調子が良ければオールクリアを取れるだろう。

 

 

「……駄目。こんなものに梃子摺っている様ではエクスカリバーを完璧に撃ち抜く事なんて……」

 

 

少しだけ弱音を呟いてしまう。

 

ブルーティアーズとアフタヌーンブルーの接続作業は順調に進んでいる。

すでに残り数時間で作戦が始まる段階に来ているのだ。

こんなものに梃子摺っている場合ではない、だが落ち着いて待っている事も出来はしなかった。

 

 

「ここにいたか」

 

 

射撃訓練場に響く声、それを確認すると黒髪の青年。

真と共にかつてC.Eと言う世界で戦い抜いた男、カナード・パルスがそこにいた。

 

作戦では彼が狙撃担当の自分をサポートしてくれる手筈だ。

 

 

「カナードさん、どうしてここに?」

 

「連絡に来た。ISへのパッケージ装着は時間がかかる。後2時間はかかるだろう予測だ」

 

「……そうですか」

 

「射撃訓練か?」

 

「えぇ、少し気晴らし……と言う訳ではないですが」

 

「……そうか」

 

 

セシリアが苦笑してカナードに言う。

するとカナードは彼女のいる訓練スペースに入ってくる。

 

 

「カナードさん?」

 

「……気になった点がある。よければ構えてくれ」

 

 

それにしたがってセシリアは持っていた銃を構える。

 

 

「オルコット。お前はトリガーを引く際にほんのわずかだが右腕を動かす癖がある」

 

 

自分の腕でトリガーを引いた際の銃の動きをジェスチャーで示しながらカナードが伝える。

 

 

「えっ、そのような癖が?」

 

「あぁ。ISに搭乗している時はISが自動的に補正を入れて直しているんだろう。その癖のせいで射線がわずかにぶれる、意識して直した方がいい」

 

「……成程」

 

「意識してやってみろ、お前の射撃能力ならこの程度で撃ち漏らしなどないはずだ」

 

「分かりました」

 

 

その言葉を確認したカナードが彼女から少し離れて、訓練開始の操作を行う。

ブザーが響き、ターゲットが表示された刹那、炸裂音と共にターゲットが次々に撃ち抜かれていく。

アドバイスを意識して、いつもより少しだけ力を右腕に込めてトリガーを引き続ける。

先程とは違いより正確に中心を撃ち抜けている。

 

そして終了のブザーが響いた。

表示されるスコアは16/16のパーフェクト。

それを確認したカナードは笑みを浮かべた。

 

 

「……これならばエクスカリバーの狙撃も安心して任せられるな」

 

「ありがとうございます、カナードさんもどうですか?」

 

「……気晴らしにはいいな」

 

 

セシリアから拳銃を受け取る。

リロードを終えたカナードが構えると同時に訓練開始ブザーが鳴り、炸裂音が木霊する。

表示されるターゲットの中心点を的確に次々に撃ち抜いていく。

 

 

(……ターゲットの視認と射線の変更が恐ろしく速いっ。視界の端に入った瞬間にはターゲットの位置把握が完璧でなければできない速度っ、しかもそれでいてなんて正確……っ!)

 

 

射撃技能はIS学園を含めた全IS搭乗者の中でも、最高レベルに到達している現在の彼女だからこそ分かる。

彼のそれはあくまで【競技用】の自分とは違う、【先手を取り相手を確実に撃ち殺す】――戦場で生き残る為の技術。

 

真から彼の事は聞いていた。

何でも最高のコーディネーターの失敗作であったという事を。

コーディネーターと言う人種やC.E.世界については聞いているが、抑止力でもあるはずの核兵器を筆頭に大量破壊兵器を惜しげもなく使う、所謂【絶滅戦争】がわずか数年で2度も起こった世界だという。

 

そんな世界を生き抜いてきた彼は想像を絶する苦難に直面したのだろう。

あの技術もその苦難を乗り越える為に会得せざるを得なかったのだろう。

 

 

(……何処か悲しい力ですね)

 

 

そんな事を考えていると訓練終了のブザーが鳴り、拳銃を台座に置く。

表示されたスコアは16/16のオールクリア。

 

 

「お見事です」

 

 

パチパチと拍手すると、少しむず痒そうな顔をカナードは浮かべていた。

 

 

「こんな事ばかりうまくなってもな。まぁ、気晴らしにはなった、お前はどうだオルコット?」

 

「……そうですね。やはり少々、怖いという訳ではないのですが……緊張はしています」

 

 

それは彼女の正直な気持ちだ。

今回の作戦では彼女が最も重要なポジションにいる。

 

いくら代表候補生と言えど、実戦で重要なポジションを任されれば緊張しないはずがなかった。

 

 

「……気負うなとは言わない、少なくとも俺はお前を全力で守る。ドレッドノートは軟じゃない」

 

「ふふ、頼りになる騎士様ですね、ありがとうございます」

 

「騎士なんて柄ではないんだがな」

 

 

カナードが苦笑しつつ、答える。

 

 

(以前よりも雰囲気が柔らかい気が……ああ、なるほど)

 

 

ちらりと射撃訓練場の入り口に目を向けると銀髪の少女、クロエがじぃっとこちらを見ていた事に気付いた。

ラウラの瞳と同じ黒に金の瞳、その瞳には困惑と嫉妬の感情が読み取れる。

彼女のその態度から、そういう関係になっていたのかとセシリアは少女の直感で理解した。

 

それに気づいたのかカナードが少々ため息を付く。

 

 

「……後でクロエには言っておくから今のアイツは放っておいてくれ、正直あぁなると敵わないんだ。マドカがいれば抑えてくれるんだが、今はブレイク号の留守を任せているからな」

 

「なるほど、承知しました」

 

 

笑顔で返し、それを確認したカナードは連絡通路に向かう。

 

 

「どちらへ?」

 

「ドレッドノートへの外付パッケージ【M.E.T.E.O.R】の調整に戻るんだ。元々まだ時間がかかると伝えに来ただけだしな」

 

「【M.E.T.E.O.R】? 失礼ですが、今回の作戦では【O.V.E.R.S】を使用するのでは?」

 

 

セシリアの言う【O.V.E.R.S】、正式名称【Output.Variable.Energy.Reverse.System】可変型出力増大昇華装置。

真やカナード達以外は、倉持技研所属の篝火ヒカルノが持ち込んだこの装置を使うことになっている。

 

その仕様は少量のエネルギーを取り込み、増大させ機体に還元させる事でより強大なエネルギーを引き出す装置だ。

 

カナードはこの仕様を聞いたとき、倉持に対する警戒度を引き上げた。

それは束も同じ意見であった。

 

 

「……篝火ヒカルノ、倉持は正直信用できない」

 

「え?」

 

 

きょとんとした顔のセシリアにカナードが続ける。

 

 

「限定的かつ劣化しているが【O.V.E.R.S】の機能、あれは【紅椿】の【絢爛舞踏】だ」

 

「……言われてみれば確かにそうですね」

 

 

カナードが頷く。

 

 

「どうせよからぬことでも企んでいるのだろう、量産化とかな。それにデータを取られる可能性がある。リスクは負いたくない」

 

「ですが【O.V.E.R.S】のソフト・ハードともに軍が確認済みですよ?」

 

「……念のためだ。特に俺達や日出の機体にはC.E.の技術を元にした武装や機能が多いからな。技術者って言う人種はチャンスを与えると何をやらかすか身に沁みて理解しているつもりだ」

 

 

苦虫を噛み潰したような表情のカナードにセシリアは思わず笑みを零してしまった。

おそらくは束が暴走しようとしたら彼が物理的に抑えているのだろう。

 

そして彼の言葉について心中でなるほどと頷いた。

 

 

ALやVL、ドラグーン等は確かにこの世界の技術よりも数歩先の技術だ。

そのデータは現在、日出と束陣営が独占している。

 

日出は所属している真経由で情報が流れているが、ビーム兵器やVLユニットの実現は世界各国のIS研究機関でも頓挫している状況だ。

そんな機体の詳細データは技術者としても喉から手が出るほど欲しいだろう。

 

 

「真も同じ考えだ。もっとも、アイツの場合は更識の機体の件でいいイメージを持っていないのも大きいだろうがな。篝火ヒカルノが来ていると聞いたときの顔だが、それは酷かったぞ。」

 

 

カナードの言葉に確かにと呟いたセシリアは苦笑した。

 

 

その約2時間後、作戦に参加する全機へのパッケージ接続が完了した。

 

――――――――――――――――

囮組のISへのパッケージ接続とブルーティアーズへのアフタヌーンブルーの接続が完了し、いよいよ作戦が開始される30分前。

 

更衣室にてISスーツに着替え終わった真はロッカーの扉を閉めた。

現在の彼のISスーツは以前のザフトレッドのパイロットスーツをモチーフにしたものとは異なり、傭兵時代、そしてネオ・ザフト時に身につけていた黒と赤を基調にしたパイロットスーツモチーフのモノへと変化している。

 

 

「なぁ、真」

 

「ん?」

 

 

同じくISスーツに着替えた一夏が真に呼びかける。

それに振り向くとどこか暗い表情をした一夏の姿が目に入った。

 

 

「どうした?」

 

「……いや、ちょっとな。宇宙ってやっぱ初めてだからさ」

 

「おいおい、今更過ぎるだろ一夏。ビビったのか?」

 

 

苦笑してそう返すと、それに釣られたのか一夏も同じ表情で返す。

 

 

「ビビッてねぇし……ってのは嘘だな。ちょっと不安だって心のどこかで思ってる」

 

「……なら下がるか?」

 

 

一夏の答えは分かっている。

伊達に長い間友人をしているわけではないし、彼の戦う理由はちゃんと知っているからだ。

だがあえて真は彼に問うた。

 

しっかりと自分で選択させるために。

 

 

「いや、それはないって。俺は皆の笑顔の為に戦うって決めた。AIラクスを放っておけば誰かが絶対に泣くことになる。そんなのは嫌だ」

 

「……あぁ。花は吹き飛ばさせない、だから俺達でやるんだ」

 

「うん。ありがとう、真。元気出たよ」

 

「おう」

 

 

互いにこつんと右拳を合わせる。

 

 

「そうだ、真。この作戦が終わったら飯でも食べに行こうぜ?」

 

「お、いいな。けどイギリス料理か……朝飯を3回食べろだっけ?よく言われるやつ」

 

「あー、それ俺も聞いたことある。後はお菓子が美味しいらしいな」

 

「スコーンってやつか?」

 

「そう、それそれ!」

 

 

2人はそんな雑談をしながらロッカールームを後にする。

他愛のない話をしながらも、真と一夏、2人の瞳には戦意の炎がしっかりと宿っていた。

 

――――――――――――――――

 

『皆さん、陽動をよろしくお願いしますね』

 

『オルコットの護衛は俺とクロエに任せろ。お前達は役目を果たせ』

 

 

投影ディスプレイに映るのはすでにアフタヌーンブルー設置地点まで移動したセシリア。

セシリアとチェルシーの護衛の為にカナードとクロエも一足先に移動しており、ドレッドノートHとXアストレイは【M.E.T.E.O.R】を接続して、防衛に当たっている。

 

またイギリスに来る途中でシャトルを守るために飛び出した楯無から連絡が入っていた。

彼女は【アフタヌーンブルー】を守る護衛班に加わって参戦するとの事だ。

 

 

第2重力カタパルトでは、現在日出組が出撃の準備を行っている。

隣の第1重力カタパルトでは一夏達残りのメンバー及び、千冬が出撃準備を行っている。

 

 

『ああ、任せてくれ。セシリアも狙撃頼んだ』

 

『はい、全力を尽くします』

 

 

笑顔で真に返し、通信が切れる。

 

 

『おほん。いい? 今接続している【M.E.T.E.O.R】は実のところ試作品もいい所だからね、無理はしちゃダメだよ。危なくなったらパージして良いからね』

 

 

出撃準備中の真達に利香の通信が届く。

真耶と共に利香と節子、ジェーンも司令部でサポートをしてくれることになっている。

 

 

『分かってますよ、利香さん』

 

『いや、簪ちゃんはともかく、真君は無茶するからなー。 危なくなったら真君のサポートよろしくね、簪ちゃん』

 

 

ジト目で真に告げた後、簪に利香はそう告げた。

それにため息を付いて苦笑いしつつ、真が尋ねた。

 

 

『利香さんの中の俺って、そんなに無茶してるイメージなんですか?』

 

『うん。テストパイロット時代に根詰めてぶっ倒れたこと、忘れてる?』

 

『うぐっ……』

 

 

脳裏に蘇るのはC.E.での苦い記憶。

MSインパルスのテストパイロットになったばかりの頃。

インパルスは戦闘機であるコアスプレンダーをコアとして、チェスト、レッグ、シルエットで構成されるMSであった。

当然、それらはパイロットであるシンが正確にコントロールして合体操作を行わなければならないため特殊なシミュレーターを使って訓練していた。

 

当時中々合体操作が上手くいかなかった為、訓練時間が終了してもシンは訓練を続けていた。

それこそ休憩時間をも削ってだ。

そんな無理を連日続けていれば、頑丈なコーディネーターでも影響が出てしまう。

 

リーカとコートニーが、シンが寝る間を惜しんで訓練をしていると聞いてシミュレータルームまで足を運んだところ、倒れていたシンを見つけたのだ。

当然、その後医務室へ連れて行かれ、リーカとコートニーにはきつく叱られた事を思い出した。

 

 

『シミュレータの中でぶっ倒れてるのには、私もコートニーも驚いたなぁー』

 

『……あの時は本当にすいませんでした』

 

『そんなことがあったんだ。分かりました、任せてください』

 

『ま、簪ちゃんがいれば真君も無茶はしないだろうし。 ラキーナちゃんとアスラン君もよろしくね』

 

 

利香の言葉にため息を付いた真を見て、簪は苦笑していた。

 

 

『はい、分かりました』

 

『了解です、利香さん』

 

 

ラキーナとアスランが軽く笑みを浮かべて返事をした。

その時であった。

 

 

『各員、こちら司令部のエーカーだ』

 

 

司令部のエーカー少佐からIS全機へ通信が届く。

 

 

『現時刻よりエクスカリバー迎撃作戦、作戦名【カムランの丘】を開始する! 各機発進っ!』

 

 

エーカー少佐の指令が響き、ついに作戦が開始される。

 

 

『司令部より各機へ、コントロールを譲与します』

 

 

真耶の声が響き、コントロールが譲与された。

同時に心のスイッチを切り替える。

戦士としてのスイッチを入れ、意識を集中する。

 

意識の中に浮かぶ違和感、【S.E.E.D.】を受け入れると共に意識の中で弾け飛んだ。

 

夏に起こった楯無との一件の後、理由は不明だが真はある程度自身の意志で【S.E.E.D.】を発動させることができるようになっていた。

 

【S.E.E.D.】とISハイパーセンサーの相乗効果によって広がる視界と感覚。

ふぅと一息ついてから、コールする。

 

 

『飛鳥真、【デスティニーガンダム・ヴェスティージ】、行きますっ!』

 

『更識簪、【飛燕】、出ますっ!』

 

『ラキーナ・パルス、【ストライクフリーダムガンダム】、行きますっ!』

 

『アスラン・ザラ、【インフィニットジャスティス】、出撃するっ!』

 

 

出撃コールと共に、【M.E.T.E.O.R】の大型スラスターと重力カタパルトが起動。

一気にISの限界速度まで加速した4機は、まさに【流星】の様に宇宙を目指して翔けあがっていった。

 

――――――――――――――――

 

第1カタパルトより射出された一夏達と真達は上昇しながら、合流していた。

現在の真達の機体は通常のISよりもかなり巨大な【M.E.T.E.O.R】が接続されているため、合流したといっても編隊飛行をしているような形となっているが。

 

【O.V.R.E.S】を装着した一夏達と通信が繋がる。

 

 

『おお、それが【M.E.T.E.O.R】ってヤツか』

 

『【O.V.R.E.S】に比べるとかなり大型だな、各機あまり近付き過ぎるな、適度に分散しろ』

 

 

千冬のラファールから指示が飛ぶ。

投影ディスプレイに映る一夏、箒、鈴、シャル、ラウラが【M.E.T.E.O.R】を見て軽く驚いた表情を浮かべていた。

 

 

『まあ、正直なところデスティニーで【M.E.T.E.O.R】ってのも不思議な感じだけどな』

 

『え、そうなの?』

 

 

シャルロットの意外そうな声が割り込む。

 

 

『ん、MSのデスティニーは【M.E.T.E.O.R】が接続できなかったんだ。それに何故かザフトから【M.E.T.E.O.R】のデータが消えてたしな』

 

 

そう言って別の投影ディスプレイで繋がっているラキーナとアスランに視線を向ける。

2人は冷や汗を流しながら視線をそらしていた。

 

 

『……あー、なるほどね』

 

 

過去に何かあったんだろうという事を察した鈴が苦笑いしながらつぶやく。

その瞬間であった。

 

ハイパーセンサーに動体反応。

そして熱源反応が急速に高まった。

 

 

『『散開しろっ!』』

 

 

アスランと千冬の声が重なり、真達は機体を咄嗟に動かす。

上空から降り注ぐビームの雨が、先程まで密集していたポイントに降り注いだ。

 

 

『来たかっ!』

 

 

ラウラが叫ぶ。

彼女の言葉通り、上昇を妨害するように2機のISが立ちふさがっていた。

 

1機はトリコロールカラーに背部バックパックの機動翼を広げた機体。

1機は鶏冠型の頭部、大型リアクターを背負ったワインレッドの機体。

 

 

C.E.では伝説的なMS。

【フリーダム】と【ジャスティス】。

 

無人機ISとして生まれ変わったそれらが、真達の前に現れた。

しかし、敵機を確認して最初に動いたのは同じく【フリーダム】と【ジャスティス】の名を背負った【2人】

 

 

『そこっ!』

 

 

ビームライフルの緑色の閃光が無人機フリーダムとジャスティスに放たれた。

2機には回避されてしまったが、それでも【道】を開くことはできた。

 

 

『……私達で道を切り開くっ!』

 

『先に行くんだっ、真っ!』

 

 

動いたのはラキーナとアスラン。

それを確認した真は2人に告げる。

 

 

『……死なないで下さいよ、2人ともっ』

 

『分かっているさ、こんなところで死ぬつもりはない』

 

『そうだね、私達にはまだやるべきことがあるんだし』

 

 

少しだけ笑みを浮かべたアスランとラキーナに頷いて、真が叫ぶ。

 

 

『行こう、一夏。俺達はエクスカリバーをっ!』

 

『……分かったっ!』

 

 

デスティニーと白式に続いて箒達も再び高度を上げていく。

 

 

『頼むぞ、パルス妹。そしてアスラン・ザラ』

 

『ええ、ここは任せてください。ミス織斑』

 

 

アスランが笑みを浮かべて千冬に返す。

それを確認した千冬は再度機体を加速させ、先に上昇して言った真達を追う。

 

上昇して行った仲間達の背後を守るように、【ストライクフリーダムガンダム】と【インフィニットジャスティス】、2機のISは【M.E.T.E.O.R】をパージしてビームライフルを展開する。

 

【M.E.T.E.O.R】は破格の機動性と殲滅能力を与えるマシンだが、運動性能を大きく低下させてしまう欠点がある。

己の全ての力で相対するために、ラキーナとアスランは【M.E.T.E.O.R】をパージしたのだ。

 

同時に相対するフリーダムとジャスティスが動いた。

フリーダムが後方に下がり、その形態を変えていく。

バラエーナとクスフィアスを展開したフルバーストモードだ。

 

 

『ラキッ!』

 

『分かってるよっ!』

 

 

だがそれはラキーナのストライクフリーダムも同じであった。

高機動形態であるハイマットモードから砲戦形態のフルバーストモードへ。

 

 

2機のフリーダムの名を冠する機体から発射された砲撃は、ほぼ同時であった。

ビームとビームが、電磁加速された弾頭とがぶつかり合い、凄まじい爆発が発生した。

 

 

『うぉぉぉぉぉっ!』

 

 

そしてその爆発を2機のジャスティスが切り裂く。

互いの連結したハルバート形態ラケルタビームサーベルが干渉し合って火花が飛ぶ。

そして脚部のビームブレイドを起動。

 

右脚で相手を蹴り上げブレイドによる両断を狙うが、ラケルタビームサーベルの連結を解いたジャスティスのビームサーベルに弾かれる。

そして返す刃で切りかかってくる。

 

 

『っ、やるなっ!』

 

 

瞬時加速で距離を取り、ビームライフルで牽制。

しかし、AMBACによる姿勢制御で相手のジャスティスはビームを避けていく。

 

今までのやりとりからラキーナとアスランはあることに感づいていた。

それは【行動が自分達と全く同じ】である点。

 

 

『……戦い方が完全に私達だね』

 

『……そのようだ』

 

 

このフリーダムとジャスティスは完全に過去の自分達だ。

つまりは【キラ・ヤマト】と【アスラン・ザラ】を再現している無人機である。

 

 

『前に戦った無人機とは質がまるっきり違う。なんでラクスはこれを使わなかったんだろう』

 

『……これは推測でしかないが、エクスカリバーを母機にしているから……じゃないだろうか』

 

 

ストライクフリーダムのフルバーストモード時の機動力は、通常時よりも大幅に下回る。

それをカバーするために、アスランはビームライフルと【ソリドゥス・フルゴール】を展開してラキーナを守りながら答えた。

 

 

『どういう事?』

 

『チェルシーさんも言っていたが、ラクスのAIには欠点があると。そのAIがエクスカリバーに搭載されていて、この無人機達はそのAIによって操作されているとしたら……ラクスが使わなかったことにも合点がいく』

 

『……つまりは?』

 

 

球状の投影コンソールが表示されると同時に【マルチロックオンシステム】が起動する。

マルチロックオンシステムは視線でのロックオンを行うシステムだ。

 

相対するフリーダムは現在、ハイマットモード。

ジャスティスは元々格闘戦用に設定されており、高機動力も併せ持っている。

VLユニットを使うISよりは劣るが、それでもかなりの機動力だ。

 

だが、捕えられない訳ではない。

視線で補足すると共にマニュアルで狙いを微調整する。

フリーダムとジャスティスの機動力を予測し、予測射撃を敢行しながらラキーナがアスランに問う。

 

 

『要するに、AIラクスの欠点は【出来が良すぎる】んじゃないかという事さ。ラクスと全く同じ思考をしたAI、彼女本人からすれば自分がもう1人いる事と同じこと。便利かもしれないがそれは足枷にもなる』

 

『……つまりは互いで互いをつぶし合うかもしれないかもしれないって事?』

 

 

ラキーナの脳内で【ミーア・キャンベル】の様な影武者ではなく、能力も思考も同じ2人のラクス・クラインがC.E.にいた場合の地獄の様な有様が想像できてしまった。

恐らくはアスランが予測したように最終的は互いに滅ぼしあうだろうとも。

 

 

『あぁ、だがもう本人はいない。だから何者かがラクスのAIを凍結から解除させたんだろう』

 

 

チェルシーも言っていたが敵はエターナルを旗艦としているらしい。

エターナルに搭乗していた連中全てが、所謂ラクス信者ともいえる連中であることを知っている。

狂信的な連中程何をやらかすか分かったモノではない。

 

 

『……ホント、私達はどうして彼女を見抜けなかったのかな』

 

『……彼女が何枚も上手だったという事だろうな。けど間違ったのならやり直せる、そうだろう?』

 

 

ビームサーベルを展開したジャスティスに相対して、アスランもサーベルを構える。

アスランが構えているサーベルに粒子が集まり、光り輝く。

まるで【零落白夜】のように。

 

 

『俺達は、過去の自分達を乗り越えるっ! そこをどけぇっ!』

 

 

アスランの意識の中で翡翠色をした【S.E.E.D.】が弾け飛ぶ。

 

同時に【零落白夜】を発動したサーベルが相対したジャスティスのビームサーベルを切り裂き、返す刃で右腕を切り落とした。

 

 




次回予告
「PHASE6 ぶつかり合う想い」

『愛シクて、愛シクて……アナタを壊したイ。壊しタくてタまらないのです、シンッ!』

『アナタなんかに真は渡さない、絶対にっ!』

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