【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年   作:バイル77

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PHASE9 聖剣が折れる刻

『ちっ、全身がレーザー砲の塊なのかよっ!』

 

 

飛来するレーザーを零落白夜のシールドで無効化しながら一夏が叫ぶ。

先程からレーザーの合間を縫って、エクスカリバー本体に取り付こうとしているが迎撃のレーザーの嵐にチャンスをことごとく潰されている為、愚痴をこぼす。

 

 

『以前戦ったデストロイとかいうISに似ているな。こちらが先かもしれないが』

 

 

一夏の愚痴にラウラが返し、成程と一夏が頷く。

 

 

『あの巨大なISかぁ、でも大きさはこっちのほうが大きいね。真が言ってたMAって機種と同じなのかな』

 

『どうだろうな……シャルロット、エネルギーの補給は完了したぞ』

 

『うん、ありがとう、箒』

 

 

紅椿の【絢爛舞踏】によって機体のエネルギーを補給したシャルロットが返事をする。

 

 

『で、どうすんのよ、一夏。このまま膠着状態じゃジリ貧なのはわかってるわよね?』

 

『そりゃそうだけど……』

 

 

一夏から見ても状況は膠着している。

この膠着を打破するには何か切欠がいる、とそこまで考えた時であった。

 

白式のハイパーセンサーが下方から高速で接近する2つの反応を捉えた。

 

 

『この反応は……来たか、飛鳥に更識っ!』

 

 

迫るレーザーを次々にブレードで切り払うという神業を披露しつつ、千冬が叫ぶ。

高速接近してきた2つの反応、それは【デスティニーガンダム・ヴェスティージ】と【飛燕】であった。

 

 

『遅れてすいません』

 

『いや、いい。そちらは問題なく終わったようだな』

 

『ええ、まあ。あれがエクスカリバーか……実物を見ると、やっぱりMAみたいだな』

 

 

作戦説明時に画像データによって把握はしていたが、やはり自身の記憶にあるMAが一番近い。

 

 

『飛鳥、そのMAと戦闘経験があるお前の意見を聞きたい。エクスカリバーの何処にエクシア・カリバーンはいると思う?』

 

 

飛来するレーザーをAMBACで避けながら、真は再度エクスカリバーを観察する。

 

 

『……おそらく、機体中心部。ここですね、コックピットみたいに見えます』

 

 

C.E.では一般的であった機体中心部のコックピットハッチらしき箇所を画像データで皆に転送しながら回答する。

千冬達ではただの装甲のつなぎ目にしか見えないが、真から見ればMSやMAのコックピット周辺の構造と酷似していた。

 

 

『よし、分かった。各機、これより作戦を伝える』

 

 

千冬のラファールから全機にチャンネルが開く。

 

 

『飛鳥、お前のIS、ガンダムの能力でレーザーを吸収して織斑と共に突っ込め。残り全ては援護だ』

 

 

千冬の作戦は真の予想の通りであった。

 

エクスカリバーの主砲ならともかく、迎撃用のレーザー程度の出力ならば問題なく今の実戦状態のデスティニーで無力化できる。

 

そして白式の零落白夜をコックピット周辺に叩き込めれば、エネルギーを無効化してシステムに不具合を起こすことが可能だ。その隙をついて救出対象を救い出せばいい。

 

 

『了解しました』

 

『俺もか……よし!』

 

 

一夏が気合を入れるように雪片弐型を構える。

それを見て笑みを浮かべて真が確認した。

 

 

『ついてこれるか?』

 

『へっ、当然だっ!』

 

 

マニピュレータをコツンとぶつけ合った二機。

真と一夏はニッと笑い合う。

 

その様子を見て箒達と簪は胸をときめかせていたがそれは割愛しておこう。

 

 

『デスティニーガンダム・ヴェスティージ、飛鳥真……』

 

『白式・雪羅、織斑一夏……』

 

 

『『行きますっ!』』

 

 

二人のコールが重なり、共に機体のスラスターを全開で噴かせて、エクスカリバーに向かっていく。

 

 

『一夏、レーザーは全部俺に任せてくれっ!』

 

『分かってるっ、頼むぜ、真っ!』

 

 

白式を守る為と単純な速度差からデスティニーが先行し、その背後を白式が追いかけていく形で二機はエクスカリバーへの距離を縮めていく。

 

迎撃の閃光がデスティニーに迫る。

だがその全てがVLユニットから広がる光の翼に吸い込まれていく。

 

 

『この程度で俺達を止められると思うなぁっ!』

 

『よっし、取り付けたっ!』

 

 

光学兵器に対するデスティニーの能力の相性もあり、デスティニーと白式は問題なくエクスカリバーに取りつくことができた。

 

そして先程真が示したポイントを見つける。

 

 

『ここだ、コックピットだ!』

 

『よしっ、離れててくれ、真っ!』

 

 

白式が【零落白夜】を発動し、コックピットと思われる箇所に向かって雪片を振り下ろす。

流石に装甲が厚かったのか完全に切断はできなかった。

だが、零落白夜の効果でエネルギーの供給が経たれたのか、歪んだハッチ部分がわずかに開かれている。

 

それを確認した二機がマニピュレータで無理やりこじ開ける。

 

開いたコックピットの中、まるでにある種の彫像にも見える形で一人の少女が機械に組み込まれていた。

そしてその周りでぐったりと倒れている女性が二人。

 

真にも見覚えがあった。

金髪の方はアメリカの代表候補生【ダリル・ケイシー】、もう一人はギリシャの代表候補生【フォルテ・サファイア】

 

完全に意識を失っているようだ。

コックピットはすでに開かれているが搭乗者保護が機能しているようで、問題はない。

 

 

『この子がエクシアさんか……んで、この二人は学園から消えてた亡国のスパイだっけ』

 

 

真が楯無から以前聞かされた事を思い出す。

この二人はオリジナルラクスが倒れた数ヶ月後、丁度今年の秋ごろに学園から姿を消していたのだ。

楯無曰く、ダリル・ケイシーもといレイン・ミューゼルとフォルテ・サファイアはデキていたらしい。

 

何故こんなところにいるかは分からない。

二人の頭部には脳波測定デバイスのようなものが付けられている。

おそらく切り捨てられ、生体CPUの補助としてここに閉じ込められたのだろう。

 

 

『……ひでぇっ。こんなの人のやる事じゃないだろっ!』

 

 

ああ、と真も素直に同意する。

脳裏に浮かぶのはステラを代表するエクステンデット達。

特殊な薬物や処理を受けなければ日常生活も送れない彼等、今エクシアが陥っているのは彼らと同じ状況だ。

 

 

『真、彼女を引き離さないとっ!』

 

『ああ、分かってる。ただちょっと待ってくれ……束さん、聞こえてますか?』

 

 

一夏の提案に待ったをかけ、真はチャンネルを束につなげる。

 

 

『うん。聞こえてるよ、あっくん』

 

『束さん、さっき送った【データ】って解析できましたか?』

 

『データ?』

 

 

一夏が疑問の声を上げる。

 

 

『ああ、ラクスを倒した時に手に入れたデータなんだ』

 

 

ホワイトネス・エンプレスを撃破した後、AIラクスより送られた2つの【データ】

それを真はここまで来る間に束に送信していたのだ。

 

 

『うん、2つとも解析できてるよ。1つは彼女、エクシアちゃんに関するデータだったよ』

 

『……助ける事はできますか?』

 

『もちっ!意識を失わせる薬物は使用されているけど、C.E.のエクステンデットみたいな劇薬は使用されてないみたいだよ。安心して』

 

真の懸念事項を予測していたのか、束がそう告げる。

ほっと一息ついた真を見た一夏が束に尋ねた。

 

 

『どうすれば、助けられますか。束さん』

 

『いっくん、君の零落白夜を発動させた雪片をコックピットに突き立てて。そうすればシステムに不具合を起こせる。搭乗者保護もたぶん同時に切れるから、彼女をどっちかの機体で保護するのを忘れないで……後、裏切った二人の回収もよろしく』

 

『分かりました、デスティニーで保護します』

 

『よし、なら早速……っ!』

 

 

デスティニーがエクシアに寄り添う形で待機しているのを確認した一夏が、再度零落白夜を発動させる。

そしてその刃をエクシアに当てない様、コックピット上部を狙い突き立てた。

 

ガクンッと、エクスカリバーが不穏な振動を起こし、今まで放っていた迎撃用のレーザーが止まる。

それと同時に埋め込まれていたエクシアの身体のロックが解除され、彼女が解放された。

 

すかさずデスティニーで三人を保護。

機体の保護機能の対象に含める事で宇宙空間の影響から守る。

 

 

『おっけぃ!成功!』

 

『よしっ!』

 

 

一夏と束の歓喜の声が響くと同時に、保護したエクシアが瞳を開いた。

 

 

『……ここは?』

 

『君のお姉さんの友達だ、助けに来たよ』

 

 

そう英語で告げて、真が微笑む。

それに弱々しいが、確かに笑みをエクシアは浮かべる。

 

 

『お姉ちゃんが……ごめんなさい、少し疲れちゃった』

 

『今は俺達に任せて。ゆっくりとお休み』

 

『……うん、ありがとう』

 

 

そう言ってエクシアは瞳を閉じ、意識を失う。

 

 

『残るはこのデカブツだけだな』

 

『ああ、けどちょっと待ってくれ。一夏、エクシアさんとこの二人を頼む』

 

『ん、ああ』

 

 

真からエクシアとおまけの二人を託された一夏が三人を抱え上げつつ、どうして?と首を傾げた。

真はデスティニーのVLユニットやマニピュレータ部分だけ解除した後、コックピット内に入り込んでコンソールを起動させる。

 

システムはまだ生きていた。

 

 

『束さん、今からエクスカリバーに残ってるデータをありったけそちらに送ります。サルベージに少し時間がかかりますが、解析の方頼みます』

 

『まっかせて!』

 

 

束の返事を確認した真はコンソールを操作しだす。

コンソールの画面自体は空間投影ディスプレイである点を除けば、C.E.で使用されていたモノと大差がなかった。

その為、馴れた手つきで情報を引き出していく。

その際、一夏がタイピングはやっ、と呟いていたがそれは無視する。

 

そして数分で残っているデータを全て引き出し終えた真は、それらすべてを束に送信する。

 

 

『結構な量があるね、ちょっと解析に時間かかりそう』

 

『これは後で大丈夫ですね。まずはエクスカリバーを破壊しないと』

 

 

コックピットから外に出た真は再度デスティニーを完全展開する。

 

 

『うん。じゃあ、カナ君とセシリアちゃんに繋ぐね』

 

『お願いします』

 

 

真の返答の後、束の操作で別ディスプレイが開かれ、狙撃班であるセシリアとカナードにチャンネルが繋がる。

 

繋がったのだが、表示されたのはクロエに頭をポカポカ殴られているカナードの不機嫌そうな顔と、セシリアの困ったような顔であった。

 

 

『カナード様のバカバカバカっ、朴念仁っ、自分と歩いてくれって言ったじゃないですかっ!嘘だったんですかっ!聞いてますかっ、聞いてますよねっ!?カナード様っ!耳引っ張っちゃいますよっ!もーっ!』

 

『……えーっと、何してんの?』

 

『……くーちゃんが壊れた?』

 

 

純粋な疑問から真は、苦笑していたセシリアに尋ねてしまった。

束も珍しく理解できないという表情になっている。

 

 

『何と言ったらいいんでしょう。これが痴情のもつれ……と言うものなのでしょうね』

 

『おっ、おう』

 

 

その様子を見て背後の一夏はカナードも大変だなと呟いていたが、お前がそれを言うのかという言葉を何とか飲み込んだ真であった。

 

 

『……それで、終わった様だな、真』

 

 

未だクロエに頭をポカポカ殴られているカナードは青筋を立てながら真に尋ねた。

長考の為にクロエの愚痴通信の音声をカットした事がばれてしまったため、甘んじて受け入れてはいるが流石にそろそろ限界である。

 

しかもこの通信はオープンチャネル。

先程のクロエの声は箒達にも聞こえており、そういう関係だったのかと驚愕の声を上げている。

 

 

『ああ、AIラクスも倒したし、エクスカリバーからエクシアさんも救出した』

 

『良かった……チェルシー、良かったですわね』

 

 

セシリアが真の報告を聞いて胸を撫で下ろす。

 

 

『こっちは全て終わった、後はセシリア』

 

『ええ。お任せください、真さん、一夏さん』

 

 

セシリアが自信を持ってそう告げた。

 

 

――――――――――――――――――――

地上 絶対対空砲【アフタヌーン・ブルー】敷設地帯

 

陽動班からの連絡を受けた、狙撃班はその役目をようやく果たす時が来た。

 

 

『BT粒子の供給量、問題ありません。BT粒子加速……射撃、できます』

 

 

チェルシーの声が響き、狙撃端末を握るセシリアが射撃体勢に入る。

すでに周りの騒音はセシリアの耳には届いていない。

 

彼女の瞳はただ一点、宇宙に浮かぶ撃つべき目標を捉えていた。

 

 

『……狙い撃ちますわっ!』

 

 

そしてトリガーを引く。

アフタヌーン・ブルーから発射された眩い閃光は、宇宙へと駆け上がり聖剣を真ん中から撃ち抜いた。

 

――――――――――――――――――――

 

エクシアを救出した真達は少し離れた宙域に退避し、地上からの狙撃を眺めていた。

 

閃光が迸った瞬間、MA程の大きさを持つエクスカリバーの中心を閃光は撃ち貫いていた。

エクスカリバーの各部から爆発が生じ、それが連鎖していく。

 

そして一際大きな爆発を上げ、聖剣の名を持つ兵器は宇宙に散った。

 

 

『……終わったな』

 

 

一夏がそう呟く。

その言葉に皆が頷く。

 

 

『そのようだ。皆、よくやった』

 

 

千冬がそう告げると、通信が届く。

 

 

『皆お疲れ』

 

『優菜さん、どうしたんですか?』

 

 

その通信先は、真の上司である優菜であった。

 

 

『今丁度利香から作戦成功の報告があったからね。その労いと君達が地上に戻る手段の連絡だよ』

 

『帰還手段ですか?』

 

『うん。今その宙域に【アメノミハシラ】から【イズモ】を向かわせてるから。いやー、前に出撃させたときは無許可だったから政府からこっぴどく怒られたけど、流石は【ギルバート・デュランダル】……おっと、【更識蔵人】さんか。政府に許可取ってくれて助かったよ』

 

『なっ、なるほど……あれ、怒られてたんですね』

 

 

そりゃもうこっぴどくねと真の言葉に優菜が返した。

 

 

『帰還手段ってどんな手段なんですか?』

 

 

疑問に思った一夏が優菜に尋ねる。

 

 

『ん、【IS用バリュートシステム】。ISの背部に装着して大気圏への突入の際に機体を保護するんだ。シールドエネルギーの節約も出来る装備だよ。ま、元はMS用からの流用だけどね』

 

『……シャトルじゃなくてISでの大気圏突入ですか』

 

 

MSでの大気圏突入を経験したことがある真からしてみても、いくらISとバリュートがあるとはいえ恐怖度は段違いだ。

 

 

『イズモやアメノミハシラに丁度帰還用シャトルがないタイミングだったからね。ま、安全性は問題ないよ、作ったのはジェーンだしね。それじゃイズモの座標送るね』

 

 

そう言うと優菜からイズモの座標が送られてくる。

それを一夏達にも真は転送する。

 

 

『それじゃ、地上で待ってるよー』

 

 

そう言って優菜からの通信は切れた。

 

 

『……聞いた通りだ、優菜からの指示に従ってイズモに向かうぞ』

 

『ちっ、千冬姉、マジでISで大気圏突入するのかっ!?』

 

『……仕方ないだろう、これしか手段がないのだ』

 

 

千冬も動揺しているのか、一夏が千冬姉と呼んだ事に突っ込まなかった。

 

 

『じょっ、冗談だろう……?』

 

『はは、流石にこれは恐怖を感じるな……』

 

『絶叫マシーンなんて目じゃないよね、これ』

 

『もっとましな帰還手段はないのーっ!?』

 

 

箒は苦笑を浮かべながら、少々震えながらラウラが、シャルロットは半ばあきらめた様に、鈴は理不尽な現実から目をそらして叫んでいた。

 

 

『……あはは、さすがにちょっと怖いかな』

 

 

簪も少しだけ震えながら、真に告げる。

だが真はプライベートチャネルを開いているようであった。

 

 

『真?』

 

『ん、ああ。ごめん』

 

 

チャンネルを切ってから、真が簪に向き直る。

 

 

『篠ノ之博士から?』

 

『ああ、ちょっとな。すいません、千冬さん』

 

 

そう言って真が千冬に話しかける。

 

 

『束さんに頼まれて、エクスカリバーの残骸処理をしなくちゃならなくて。先にイズモに向かってください』

 

『……そうか、分かった。皆、向かうぞ。覚悟を決めろ』

 

 

千冬のその言葉で一夏達はため息を付きながら、彼女の後を追う。

残ったのは簪だけだ。

 

 

『残骸処理?なら私も……』

 

『いや、飛燕はビーム兵器、少ないだろ。時間かかっちゃうし、簪は一時とはいえラクスの能力の影響下にあったんだ。先に行ってイズモで休んでいてくれ。俺も処理が終わったら向うから』

 

 

そう簪に告げる。

 

 

『……分かった、ならイズモで待ってる』

 

『ああ、頼むよ。俺も後片付けが終わったらすぐに行くから』

 

 

コクンと頷いて簪は先に向かった千冬たちを追いかけていく。

それを確認し、飛燕のスラスターが光の点のように見えるまで真は待機していた。

 

 

『そう、後片付け(・・・・)さ』

 

 

そう静かに告げて、デスティニーは光の翼を翻して宇宙を駆けていく。

 

――――――――――――――――

 

「……エクスカリバー及びラクス様の反応、消失しました」

 

 

エターナル艦橋、現在ミラージュコロイドで隠蔽したこの艦は、戦闘宙域からの離脱を計っていた。

艦橋、艦長席に座るのは初老の男性。

その男性は数年前に突如失踪した科学者であった。

 

彼の失踪は亡国機業、元を辿れば歌姫の騎士団に加入したというのが真相であった。

 

そしてこの男こそ、AIラクスを作り上げた元凶。

全ての発端とも言える人間である。

 

 

「博士、いかがいたしましょうか?」

 

 

部下からの質問にふむと相槌をうってから答える。

 

 

「まあいい。ラクス様のAIのバックアップはまだここにあるのだ。【彼等】との合流まで少し時間がかかるが、充分再起は可能だ」

 

 

彼がそう答えた瞬間であった。

艦橋内にアラートが迸った。

 

 

「当艦上方より高速熱源接近っ!」

 

「なっ!?」

 

 

博士の驚愕の声と共に、エターナルのメインスラスターはビームに貫かれた。

メインスラスターはビームに貫かれたことにより爆発し、エターナルが身に纏っていたミラージュコロイドは剥がれその派手な艦色の艦体を宇宙にさらけ出した。

 

爆発の振動が艦橋を襲う中、オペレータである男性が更に声を上げた。

 

 

「とっ、当艦上方にデスティニーがっ! こちらを狙っていますっ!」

 

「なっ、何だとっ!?」

 

 

そう、エターナルを狙撃したのは真が駆る【デスティニーガンダム・ヴェスティージ】

 

何故、真がここにいるのか。

それは機能停止する寸前にAIラクスから提供されたデータの一つ。

それは精密な座標データであった。

 

親切なことに進路予測までされていたそのデータ通りにエターナルまでたどり着けたのだ。

それが真が先程簪に告げた、【後片付け】の真相。

 

エターナルは先程の一撃で航行不可能な状態に陥っている。

止めを刺すために、艦橋にテレスコピックバレル式ビーム砲塔の照準を合わせる。

 

 

『ま、待つんだ、シン・アスカッ!』

 

 

トリガーを引きかけた真にエターナルから通信が届く。

 

 

『君の望みは何だっ!? 我々はその要求を呑む用意が出来て……っ!』

 

オープンチャンネルの通信であり、通信先の男性は相当焦っていた。

 

 

『……』

 

真は男への返答を行わず、肩部から展開されているテレスコピックバレル式ビーム砲塔からビームを発射することを選択した。

 

発射された高出力ビームはエターナルの艦橋を易々と貫いて内部を蹂躙していく。

元々戦艦の艦橋の装甲と言うのは他の箇所に比べて薄くなる場合がほとんどだ。

さらに念には念を入れて、【単一仕様能力】【運命ノ翼】を併用してビームの出力を限界以上に高めている。

 

二射目は艦の中央部、三射目はすでに目も当てられない有様のスラスター部分に直撃させる。

爆発は次々に連鎖していく。

 

エターナルが完全に轟沈した事を冷たい目で確認した真は、通信を繋げる。

通信先は束だ。

 

 

『束さん、聞こえますか?』

 

『ん、あっくん。聞こえてるよー、これでAIのバックアップは消去できたね』

 

『はい、エターナルは沈めました。今からイズモに帰還します』

 

『りょーかい、お疲れ、あっくん』

 

『いえ、問題ないです』

 

 

通信に出た束に軽く笑みを返して、デスティニーはその宙域を去った。

 

 




次回予告

「Epilogue 家族になる日」


「三人で写真を撮りましょうっ!」


『謀ったな、セシリアーっ!!』


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