【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年   作:バイル77

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PHASE5 Xの傷跡

そして1週間がたった。

 

第3アリーナ

 

現在このアリーナでは、とある武装の稼働テストが行われていた。

 

 

『よいしょーっ!』

 

 

打鉄やラファールとも異なるISを身に纏った本音の声と共に、ISの背部に装備されたシルエットから有線式誘導武装が射出された。

 

本音が身に纏っているISは打鉄よりも軽装であり背部にはシルエットシステムと酷似したバックパック。

機体色は【インパルスガンダム】と同じくトリコロールカラーだ。

背部や脚部には【インパルスガンダム】や【ガイアガンダム】と同規格のスラスターが備えられている。

 

この機体の名は【インパルスガンダムマークⅡ(仮)1号機】

打鉄に奪われた量産機のシェアを取り戻すために日出工業が開発中の量産試作機の1機である。

 

背部のシルエットは第一世代ドラグーンの稼働データを集める為にシルエットの余剰パーツを使用して急造された【ドラグーンシルエット】だ。

無線式でないのはまだ稼働データが少なく、ロストしてしまう可能性を考慮したものだ。

このシルエット自体はジェーンが趣味で作成していたモノを流用した為、僅かな時間で完成している。

 

射出された【フェイルノートビームクロー】はまるで意志を持っているかのように、ビームの鉤爪は目標のバルーンを正確に貫いた。

 

そして別のバルーンに向かってクローは伸び、破裂させる。

 

 

『やったぁ、上手くできたよー!』

 

 

整備室でモニターしている真と簪、そしてジェーンがその様子を眺めていた。

 

 

「流石ね、本音ちゃん。ドラグーン適正Aは伊達じゃないわね」

 

 

この1週間ジェーンはシルエットを完成させるために4日徹夜し、3時間寝て、3日徹夜と言う、常人なら過労でぶっ倒れるスケジュールをこなしていた。

そのせいで目元の隈が酷いことになっており、流石にシャワーは浴びているようだが髪の毛も乱れていた。

 

 

「急造のドラグーンだってのにあそこまで動かせるのか」

 

「テストの時にシミュレータ上で使ったけど、あんなに自由自在には動かせなかった。凄いよ、本音」

 

「動かせるって時点で俺からしてみれば羨ましいけどな」

 

 

そう真が言うと簪は苦笑していた。

真は自分のドラグーン適正が低いことを内心気にしていたのだ。

 

 

「私の可愛いマークⅡちゃんの稼働データがガンガンたまってきてるぞぉ!」

 

 

歓喜の声を上げながらジェーンは集まっているデータを眺めている。

 

何故、本音がインパルスガンダムマークⅡ(仮)に搭乗しているのか。

それはジェーンから話を持ちかけられたのだ。

 

稼働段階に入った量産試作機の稼働データを収集するのと、日出に足りないドラグーンの稼働データ収集を行える数少ない人材である本音にジェーンは目をつけていた。

 

本音としては最初は悩んだものの、最新のIS技術に関われるのと、ジェーンの技術をモノにできるかもしれないため、最終的には同意した。

もちろんこの話は優菜にも通っており、許可も出ている。

その為、インパルスガンダムマークⅡ(仮)一号機はほぼ本音の専用機となっている。

 

 

「本音ちゃん、射出するバルーンを増やしてみたいんだけどいいかな。どのくらいまでなら一度の射出で落とせると思う?」

 

『えーっと、十個くらいまでなら大丈夫でーす』

 

「了解。じゃ、次は十個で」

 

 

整備室のコンソールを操作してダミーバルーンを射出する。

デスティニーのマニピュレータから射出されるモノと同様のバルーンが十個、アリーナの上空に浮かぶ。

 

バルーンの射出が完了したことを確認した本音は、再度ドラグーンに攻撃指示を出す。

 

 

『いっけー!』

 

 

彼女の指示通りに次々とバルーンは破裂していく。

ドラグーンを正確に操る彼女であったが、真はあることに気づいていた。

 

 

「……同時制御はまだ難しいのか」

 

 

そう、本音は先程から動かず滞空したままドラグーンを操作している。

かつてのセシリアと同じく同時制御ができていない状況だ。

 

 

「そりゃね。急造の試作ドラグーンもいいところだし、適性が高くても練度がまだ少ないから仕方な……」

 

 

そうジェーンが告げた時であった。

震動が、アリーナを襲った。

 

 

『っ!?』

 

 

咄嗟にデスティニーを展開して、簪とジェーンを抱き寄せる。

デスティニーの搭乗者保護機能とシールドバリアで2人を守る為の行動だ。

 

 

『何々ーっ!?』

 

 

チャンネルから本音の困惑した声が溢れる。

そのまま数十秒待機して危険がないことを確認した真は二人を自身から離した。

 

 

『……二人とも、大丈夫だよな?』

 

「うっ、うん。大丈夫」

 

「おー。年下の子に抱きしめられるのって結構ドキッとするね」

 

 

簪は少し顔を紅くして、ジェーンは少しふざけた様に返す。

ジェーンの方は無視して、真はチャンネルを本音に繋げる。

 

 

『本音さん、そっちは大丈夫か?』

 

『うん。あれ、あっち煙上がってる?』

 

 

本音がマニピュレータで空を指さす。

指した方向からの空に黒煙が上がっていた。

 

 

『簪、本音さん。俺が様子を見てくるから二人はジェーンさんや残ってる皆の避難を』

 

『うん、分かった』

 

『りょうかーい!』

 

 

簪が飛燕を展開して真に返す。

本音も了承する。

 

頷いて整備室から飛び出したデスティニーが上昇して行く。

アリーナの上空まで飛びあがった真は、黒煙が上がっている箇所を確認する。

 

 

『第3アリーナだけじゃなくて他の場所もかっ』

 

 

センサーが拾った情報によると、現在いる第3アリーナだけではなく第1アリーナ付近と本校舎付近からも煙が上がっている。

 

 

『カナード、聞こえるか?』

 

『ああ、聞こえている』

 

 

オープンチャネルをカナードに繋げる。

彼もすでにISを身に纏っていた。

 

 

『お前、今どこにいる?』

 

『校舎の上空だ。真、お前はどこだ?』

 

『俺は第3アリーナ。カナード、被害の状況は?』

 

『飛鳥、パルス。聞こえるか』

 

 

チャンネルに千冬が参加したらしく、ディスプレイが表示される。

 

 

『飛鳥、第3アリーナの状況を確認して連絡してほしい。頼めるか?』

 

『分かりました。負傷者が出ているかも確認します』

 

『私とパルスは校舎付近で確認する。パルス、確かこの時間ラキーナが第一アリーナで訓練の申請を出していたはずだが、連絡は?』

 

 

千冬がカナードに質問する。

すでにラキーナに通信を行っていたカナードがその結果を報告する。

 

 

『……繋がらない。第一アリーナはアスラン・ザラに向かわせる。束、聞こえているか?』

 

『オッケー、今アスラン・ザラが丁度出撃したところだよ。くーちゃんも出撃準備中!』

 

 

ディスプレイが立ち上がって束がチャンネルに加わる。

 

 

『了解した。飛鳥。通信はこのままに周囲の確認を。パルスは不審者がいないか確認してくれ』

 

 

通信を繋げたまま、真は頷いて第3アリーナの現状を確認する。

外壁部分の一画が綺麗に吹き飛んでいた。

センサーで確認するが、自動消火装置が作用してすでに火災は収まっているようだ。

 

 

(……小火騒ぎじゃない。アリーナの付近で誰かが爆発物を使った。けど……)

 

 

だが、何の為にと疑問がよぎる。

爆発の規模が小さいし、なにより意図が分からないからだ。

 

テロリストの襲撃ならばもっと人気のある場所を狙う筈。

だというのに校舎から離れたアリーナの一画を狙った。

 

 

『……誘き出されたってことか?』

 

 

真がそう呟いた瞬間であった。

コンソールに奔るロックオン警報。

 

 

『っ!』

 

 

咄嗟に瞬時加速を行い、前方に加速。

数瞬までいた空間を下方から来たビームが薙いだ。

 

下方からビームを放ったISをセンサーが捕えた。

 

黒と紫を基調にした装甲に脚部にはアスランのインフィニットジャスティスの様なブレードが見える。

そして最大の特徴は背部の大型ユニットだ。

ビーム砲やマニピュレータのようにも見える。

 

打鉄やラファールとは根本的に異なる機体の特徴から、専用機であることが推測できた。

 

そして搭乗者は橙色の髪の美女。

かつてデストロイに搭乗して戦った搭乗者であり、拘束された彼女のデータを見たことがあった。

亡国機業のエージェントの一人――

 

 

『アンタはオータムっ!?なんでここにっ!?』

 

『決まってんだろ、ラクス様の仇を討つためさっ!』

 

 

一射、二射、三射とオータムのISが装備しているビームライフルが火を噴く。

所謂牽制射撃、真はその全てをAMBACで回避して、同じようにビームライフルを展開しつつ、繋がったままのチャンネルに吼えた。

 

 

『カナードっ、千冬さんっ!敵は亡国のオータムだっ!』

 

 

そう叫んだ真であったが、チャンネルからは先程まではなかった【ノイズ】が流れるだけで、カナードと千冬の返答はない。

 

 

(通信妨害っ!? ジャミングされてるのかっ!まだ他にも敵がいるっ!)

 

 

そう判断した真は周囲への被害を抑えるために、機体を上昇させる。

 

 

『はっ、逃がすかよっ!』

 

 

そう言いつつ、オータムはビームライフルを連射する。

デスティニーの機体速度の方が速いため中々正確な射撃とならないが、何発かはデスティニーを捉えていた。

 

だがその程度はすべてAMBACで回避できた。

 

 

『カナード、千冬さん、束さん、聞こえますかっ!』

 

 

下方から発射されるビームをすべて回避しながら真はチャンネルに叫ぶ。

 

 

『こ……ら、カナードだ。聞こえるか?』

 

 

すると、先程よりは鮮明にカナードとの通信が回復した。

 

 

『カナード、敵はオータム、亡国機業だ』

 

『ああ。こちらはスコール・ミューゼルがISで現れた。今海上を追跡中だ』

 

『って、学園の外に出てるのか!』

 

『少し離れた海上にいる。クロエがこちらに向かってきてくれている。こいつらを落として吐かせればいい』

 

『……分かった』

 

『頼む』

 

 

通信を一旦切った真はビームライフルと、クラレントをビームライフルモードで起動し、下方から迫るオータムに狙いをつける。

 

 

『アンタ達を落として何のためにこんな事をするのか吐かせてやるっ!』

 

『はっ、やれるもんならやってみろやぁ!』

 

 

オータムもそう叫んでデスティニーに照準を合わせた。

 

――――――――――――――

一方、海上

 

真との通信を一旦切ったカナードの目の前で逃走していたスコールのISが停止した。

IS学園からかなり離れた海上。回りは海だけのポイントだ。

 

 

『……ここまで貴方を引きつければ問題はないわね』

 

『陽動のつもりか?学園にはセシリアはじめ代表候補生達もいる。俺だけ引き離したところで意味はないぞ』

 

 

カナードの言うとおり、あまりにもお粗末な陽動だ。

学園にはまだ代表候補生達がいる。加えて真や千冬もいる。

すでにこちらにはクロエも向かってきてくれている。

 

 

『別に陽動じゃないわ。私達の目的の為に、貴方には離れてもらう方が都合がいいのよ』

 

『……何故学園を襲ったのかは、貴様を捕えた後に口を割らせればいい訳だ』

 

『自信満々ね。そういう子は好きよ。ただ、今の私を以前までの私と思わないことね』

 

 

そうスコールが告げた瞬間、射撃武装を展開する。

展開速度はほぼ互角。しかしスコールが展開したのは標準的なビームライフル、対するカナードが展開したのはライフルよりも連射性能が高いビームサブマシンガン【ザスタバ・スティグマト】だ。

 

一発一発の威力はライフルよりも小さいが、その分弾幕も張れる。

飛来したスコールの一撃はドレッドノートH最大の特徴である光波防御壁【AL】で難なく弾く。

 

対するスコールは飛来するビームの雨を、背部の大型スラスターを操作して回避していく。

回避しつつ大型のスラスターに装備された小型ビーム砲からお返しとばかりにビームが放たれる。

 

しかし、その程度ではカナードを捉える事は不可能だ。

ALを展開しつつ、回避行動に移行。

避けきれないビームだけをALで防ぎ、それ以外はAMBACで避けていく。

 

 

(……奴の機体、ビーム兵器を搭載しているという事はこの世界純正の機体という訳ではないという事か)

 

 

もちろんフレイ・シュヴァリーの機体の様にデータの流出によるコピーである可能性もある。

何があるかは分からない。

 

だがドレッドノートならばやりようはある。

 

 

『貴様が何をしようが……俺とドレッドノートに届くと思うなよ』

 

 

そう呟いた彼の操作により、ドレッドノートのALハンディが最大展開される。

そして機体を翡翠色の輝きを放つ【球体】が包み込んでいく。

 

 

『っ、させないわよっ!』

 

 

スコールのISからビームが飛来するが、その全てが【完全展開されたAL】に弾かれてしまった。

 

 

『無駄だ。一度完全展開されたALを破る術は……ないっ!』

 

 

ドレッドノートの背部Hユニットがバスターモードに変形し、高出力ビームを発射する。

外からの攻撃を完全に弾くALだが内部からの攻撃はそのまま素通りする。

 

その特性から一方的な攻撃が可能になる。

【完全展開】は切り札であると同時に諸刃の剣でもある。

 

MSのスーパーハイペリオン、ドレッドノートとは異なり、ISのエネルギーには限りがある。

そのためどうしても活動限界が存在してしまい、ALの【完全展開】は使う分だけそのエネルギーを大きく消費してしまう。

戦闘機動の為の消費エネルギー、武装の消費エネルギーとあわせればその分活動限界は早く訪れる。

 

だが強力な機能である事には変わりない。

スコールのISからの攻撃をすべて弾き、精密射撃によってスコールのISにダメージを与えている。

 

戦闘の流れは完全にカナードが握っていた。

だが、スコールはまるで焦ってはいなかった。

 

そして笑みを浮かべる。

バスターモードのビームにエネルギーを削られており、すでに彼女のISのエネルギーは四割ほどに減っていると言うのに。

 

 

『……まったくこれを使う羽目になるなんてね。流石ヒルダを落としただけはあるわね。でも、これで終わりよ、失敗作君?』

 

 

そう告げたスコールの機体の背部ユニットが展開され、フレームが露出する。

同時に機体の各部位が同じように展開され、金色のフレームが露出した。

金のフレームからは禍々しい紅い光が溢れ始めた。

 

何かあると、直感でカナードは距離を取る事を選択した。

ALを展開しながらならば攻撃もすべて弾ける。

 

――はずであった。

 

 

『っ!?』

 

 

しかし、機体がいう事を聞かない。

それどころかドレッドノート最大の特徴である、ALの光がまるで死に際の蛍の様に散っていく。

 

絶対的な防御能力を与えるはずの光が、今は手元から離れ拡散していく。

マニュアルで発生率の変更を行うが、そもそも出力が上がらない。

 

 

『なんっ……だとぉっ!?』

 

 

同時にさらなる不調が機体にも現れた。

PICの稼働率とシールドバリアの出力が大幅に下がっていく。

通常の稼働率を100%とするなら現在は20%程度まで低下し、さらに下がっていく。

 

ISが既存兵器を超越した兵器の証明でもある、PICとシールドエネルギー。

その二つの急激な変化と不調。

 

これらを起こせる原因を彼は1つしか知らない。

 

 

『【単一仕様能力】かっ!?』

 

 

スラスターで無理やり姿勢制御を行うが、PICの稼働率が下がっている為適切な機体制御も困難だ。

 

 

『ご明察。貴方のご自慢のALは、【アマツ】の能力と相性最悪みたいね』

 

『【アマツ】、まさかマガノイクタチと同様の……だがPICとシールドバリアに干渉する能力だと……っ!?』

 

 

カナードの記憶の中にあるアマツの名を持つ機体は【アストレイゴールドフレーム天ミナ】

ロンド・ミナ・サハクが搭乗していたMSであり、その武装の一つに【マガノイクタチ】と言うものがある。

 

基本的に電力で動いているMSのバッテリーを強制放電させてエネルギーを奪う武装だ。

技術不足で稼動当初は直接触れなければ効果を発揮させる事はできなかったが、カナードがミナに接触した時点で技術の発展により周囲のMSから触れずに電力を吸収できる武装となっていた。

 

その【マガノイクタチ】と同種の能力に囚われてしまったのだ。

 

 

『この能力まだ名前はないのよね……そうだ、【拡散結界】とでも名付けようかしら。まぁ、これで貴方は終わりよ、カナード・パルスっ!』

 

 

ビームライフルを満足に動けないドレッドノートに向ける。

だが、まだカナードの戦意は消えていなかった。

 

 

『この程度で……俺を舐めるなぁっ!!』

 

 

ビームライフルの射撃と同時に咆哮と共に無理やり機体を前方へ加速させる。

狙いが外れた事で、ビームはドレッドノートの左マニピュレータを吹き飛ばす結果に終わる。

 

マニピュレータが破壊され、カナードの生身の左腕が露出している。

まともな保護機能が働いていないため裂傷だらけの左腕だが、その手には破壊されたマニピュレータの破片が握られていた。

 

 

『喰らえっ!!』

 

 

ナイフの様に尖ったそれをスコールに投げつける。

 

だが――

 

 

『っ!』

 

 

カナードのその行動に冷や汗を流しながらも、投げつけられた破片を弾く。

 

 

『なんて執念……。でも残念、今度こそこれで終わりよっ!』

 

 

そして再度、ビームライフルの照準を合わせてトリガーを引く。

 

今のドレッドノートは拡散結界に囚われ、シールドバリアも満足な稼働率を維持していない。

【絶対防御】もこの能力下では本来の防御能力を発揮しない可能性が非常に高い。

そこにビームを受けてしまえば、結果は見えている。

 

だがドレッドノートにビームは届かなかった。

 

 

『カナード様っ!』

 

『っ!?』

 

 

咄嗟に彼を突き飛ばし庇った機体がいた。

それはX字のスラスターを背負う機体。

 

出撃したカナードに追いついたXアストレイを駆るクロエだ。

ドレッドノートをタックルで弾き飛ばしたXアストレイだったが、そこはスコールのISの【単一仕様能力】【拡散結界】の中。

 

つまりは彼女の機体も先程のドレッドノートと同じ影響を受ける。

ビームはXアストレイのスラスターを貫いていた。

 

そしてスラスターの爆発にバリアもロクに効いていないクロエは飲まれた。

 

 

『きゃあっ!?』

 

 

クロエが爆発によって弾き飛ばされ落下していく。

その様子が、カナードには酷くスローモーションように見えた。

 

 

『クロエェェェェッ!!』

 

 

叫びと共に機能が回復したドレッドノートは落下していくクロエに向かっていく。

落下した彼女を受け止めて彼女の状態を確かめる。

火傷は少なかったが爆風が彼女の身体を裂いて出血、右腕はまがってはいけない方向に曲がっていた。

 

かなりの重傷であり、すぐさま応急処置と適切な処置を行わなければ危険な状態だ。

そんな状況でまだ意識を保っていた彼女がカナードを見て弱々しく微笑む。

 

 

『無事で……よかった……カナ……ド……』

 

『……死ぬなっ、死ぬな、クロエっ!すぐに離脱するっ!』

 

 

スコールに対する激情を残った理性で無理やり抑え込んで、すぐさまスラスターを全開にして離脱をはかる。

 

 

『あら、逃げるの。判断は間違ってないわね、ただ逃がすと思う……っ!?』

 

 

突如飛来したビームに間一髪で気づいたスコールはビームを回避する。

冷や汗を浮かべながら、発射した移動砲台を確認する。

 

かつてゴールデンドーンが敗北した切欠、【プリスティス・ビームリーマー】がボロボロの状態で浮かんでいた。

 

 

『あの怪我でドラグーンを……素敵ね、彼女』

 

 

ボロボロのプリスティスを撃ち落としたスコールは、そう言って戦域から離れていくドレッドノートを一瞥し自身も離脱にかかった。

 





次回予告
「PHASE6 悪夢は再び」


「貴女はまさか……っ!?」

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