「艦娘グラフティ4」(第8部)「執務室の午後」 作:しろっこ
≪恥ずかしいと思いませんか? 司令!≫
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「艦娘グラフティ4」「執務室の午後」(みほ8ん)
:第36話(改)<山で遭難です?>
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実はもう17:00を回ろうとしている。もう降りたほうが良いだろう。
「ねえ、どこまで上がるの?」
秋雲、あのなあ……てか、そもそも全員、上がる気で居るのか?
まだ日は長いけど海軍の私でも山を甘く見ると遭難の危険がある。ただ艦娘たちの眼差しを見ていると……私も弱いな。その日の私はどこか、おかしかったに違いない。結局ズルズルとまた登り始めて気が付くと『ここはどこ?』状態になった。
しかも4合目からはガスが出て来て幻想的というよりは不気味な雰囲気だ。それでも下手に下山するよりは開けた方へ出るべきだと考えて、上へ上へと上がり続ける。
やがて周囲の木々も小ぶりになり空が見えるようになって登山道も明るくなってきた。ちょっとは歩き易くなった頃に、やっと5合目。そこでしばし休憩。
「どこまで行くんですか?」
「開けたところまで」
10分くらい休憩した後で登山を再開する。電チャンが呟く。
「きついのです……」
確かに5合目から急に傾斜が急になる。それでも励ましあいながら何とか6合目まで来た。ガスは晴れたが回り野山は全く見えない。大山そのものにガスが掛かっている。それがまた見通しが利かず不安を煽る。
時計を見ると時刻は18:30。単なるバカだ。そもそも登山の準備もしていないし降りようにもライトすらない。今はまだ明るいが下山すると同時に暗くなるだろう。
『遭難』と言う文字が頭の中をよぎった。だが司令たる私が動揺してはダメだ。いざとなれば直ぐ側にコンクリ製の怪しい避難小屋もあるし、野営訓練だ。
どこかに連絡を……そうだ、無線! ここは大山だから標高がある上に周りは遮蔽物もなく強力な電波の発信源も無い。美保にも届くだろう。
「えっと……寛代!」
「……」
無言で振り向く彼女。
「直ぐに鎮守府司令部に打電、その……」
何て言うべきかな?
実際に遭難したわけでもないし、この子達に心配をかけてもいけない。
そのとき寛代が反応した。受信か? 何かブツブツ言っている。やがて彼女はどこからともなくヘッドセットを取り出して私にくれる。そんなものいつも持ち歩いているんだ、と思う間もなくそれを頭にはめる。寛代が何かを言うと、すぐに怒鳴り声が聞こえてきた。
≪司令!≫
あぁ、秘書艦だ……声が割れた。私は思わずその場で頭を下げた。
「ごめんなさい!」
だがインカムの向こうの声は淡々と続いた。決して大声ではないが凄みがある。
≪今、何処で何をやっておられるのですか?≫
一瞬詰まった。まさか大山の夏山登山道なんて言い難い。
≪まさかとは思いますが、大山を登っていませんか?≫
うわ、なぜ分かる? 千里眼か? 思わず固まる。
≪図星ですか≫
祥高さんの呆れたようなため息が聞こえてくる。
≪何かあれば連絡が頂けるものと思い、あえて黙っていましたが≫
ああ、怖いよ……こら、ニヤけるな寛代。
≪陸軍から直接連絡を頂きました……恥ずかしいと思いませんか? 司令!≫
はい、十分に恥ずかしいです。
≪非番の陸軍将校が夕方まで駐車場に停まっている美保の軍用車を見て、心配して連絡を下さったのですよ!≫
ああ、昼間出会った将校の家族だな……まったく私は海軍の恥さらしだな。
≪司令はともかく艦娘たちを危険に晒すとは、どういうことですか!≫
司令はともかく……って、その言い方はショックだ。
≪……≫
あれ? 笑っている祥高さん……今のは冗談?
≪無事で……良かったです≫
まずい、祥高さん涙声になってきた。後ろには大淀さんも居る気配だな。
≪とにかく……陸軍が救援部隊を上げて下さいます≫
なんと? そこまでさせてしまったか?
≪一時間ほど、その場を動かないで下さい。夏山登山道ですよね?≫
ここまで来てようやく私も返事をした。
「そうだ、6合目だ」
あ、明らかに絶句している祥高さん。
≪その旨、陸軍にも伝えます≫
笑われるな、陸軍に。
「なにぃ? 司令、降りるの?」
屈託が無いな秋雲は。でもその明るさが救いでもある。
「どうするのですか? 司令」
電ちゃんも聞いてくる。私は応える。
「祥高さんに救援を依頼した。ここは山だから恥を忍んで陸軍にも協力を要請した。今から救援部隊を向けるとしても、最低2時間は覚悟だな」
『ええ?』
叫ぶ艦娘たち。辺りは徐々に暗くなっていく中で2時間はキツイか。
「直ぐに降りませんか?」
電チャンが言う。
「いや、山の夕暮れは早い。降りている間に真っ暗になってしまうだろう。それよりは救援部隊を待ったほうが良い。相手は陸軍だ。山のプロを寄こしてくれるだろう」
観念したように黙る艦娘たち。私も含めて自分たちの浅はかさを身にしみて痛感した。
取りあえず私たちは6合目にあるベンチで座って待機する。この時間になると一般の登山客は全く居ない。辺りは静寂に包まれる。
「静かですね」
「ああ……」
それでも寛代は何かを聞くようなしぐさをする。
やがて周りのガスが晴れてきた。すると夕日に照らされた大山の北壁が切りの中にぼんやりと浮かび上がってきた。電チャンが叫ぶ。
「あれを見て……きれいなのです」
「おお! スケッチ、スケッチ!」
「……」
その光景は幻想的でありキレイだった。なるほど山も良いものだな……私も開き直ってベンチにふんぞり返って山を見上げる。すると電チャンが立ち上がって何かを取り出す。
「あの……私、さっき大山の牧場で買ったお土産のお菓子があるので、これを分けるのです」
電チャンは優しいな……キャラメルか。高いだろうに……取りあえず皆は、それで腹ごしらえをした。やはりちょっと空腹だった。
そのとき、下のほうからバタバタという感じの音が響き渡ってきた。
「あの音は?」
何かを叩くような機械音。雷とも違うし何かの航空機だろうか? それにしては妙だ。深海棲艦でもない……そもそも連中の航空機はあんなこれ見よがしの轟音は立てない。
「考えられるのは……陸軍だが」
私もそう応えるのが精一杯だった。
そのうちに霧が晴れて星が見え始めると同時に徐々に気温が下がり始める。艦娘たちは寄り添っている。
「寒いか?」
私が声をかけると、秋雲が言う。
「……少し冷えるみたい」
他の二人は割りと平然としているが秋雲は寒さは苦手なようだ。私は自分の制服を脱ぐと彼女に羽織らせた。何かを言いかけた秋雲に私は無言でうなづいた。
「良いよ、私も寒さには強いから」
彼女は無言でうなづいた。山はどんどん暗くなっていく。島根半島のシルエットと中海(なかうみ)に反射する夕日がきれいだった。艦娘たちも、その美しさに感動しつつも、同時に不安もあって何ともいえない状況だった。
ああ、私は馬鹿だよなと反省する。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも整備したいけど~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ8ん」とは
「美保鎮守府:第八部」の略称です。