「艦娘グラフティ4」(第8部)「執務室の午後」   作:しろっこ

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大山の登山道6合目で救助を待つ提督たち。やがて徐々に気温が下がってきて……。


第37話(改)<艦娘の気持ちと温度>

「ちょっと……寒くて」

 

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「艦娘グラフティ4」「執務室の午後」(みほ8ん)

:第37話(改)<艦娘の気持ちと温度>

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さすがに大山6合目では19:30を過ぎると辺りはどんどん暗くなっていく。あわせて気温も初夏であっても容赦なく下がっていく。やはりここは高山なのだと実感する。

 

「あの……済みません司令」

 

秋雲が珍しく弱々しい声で聞いて来る。

 

「どうした」

「ちょっと……寒くて」

 

 私の制服を羽織っても寒いらしい。まあ秋雲の制服はもともと薄い感じだよな。さっきからベンチで両腕を擦るようにしている。艦娘同士で固まっても、さほど暖かくはないのだろう。そういえば艦娘の体温とか全く知らないけど文字通りの『艦娘』なら表面温度は意外と低かったりするのかな?

 

「どうする? お前が良ければ私にしがみ付いてもいいが」

 

私は半分冗談で言ったのに秋雲は真顔で答えた。

 

「うん、そうする」

 

……ってか、マジかよ? と思う間もなく彼女は私の隣に移動してくる。

 

「ちょっとこれ」

 

と言いつつ私の制服を抱えた彼女はいったんそれを私に羽織らせた。直ぐにその内側に潜り込んできた。おいおい、お前は巨大な猫か? 

 

 ただ駆逐艦娘って小学生みたいだから妄想を抱く以前に小さい子供を抱っこしているような感覚になるよな。精神年齢は意外と高いんだけどね。

 

 案の定、秋雲の身体はちょっと冷えていた。かろうじて彼女の両手がほんのりと暖かいくらいだった。

 

「司令……暖かいよ」

「それは良かった」

 

我ながら、つれない返事だよな。そうこうしているうちに向こうに座っていた寛代まで無言でこちらに来ると秋雲の反対側にしがみ付いた。何だよお前ら、本格的に猫だな。

 

 すると今度は、私たちから離れたベンチに独りで座っていた電チャンが、こちらをチラ見しながらモジモジシしている。私は声をかけた。

 

「いいよ、電もこっちに来い」

 

こうなったら何でも来い! そう思った。

 

「ハッ……済みません」

 

 でも既に私の左右には駆逐艦が『停泊中』だけど電チャンはどうするのかな? ……と思っていたら私の背中側のベンチのスキマに上手に座ると「これで良いのです」と言いつつ背中に顔を押し当てるような格好をした。私は背中越しに聞いた。

 

「それで寒くないか?」

「大丈夫なのです。私は寒いというよりも」

 

そこで一瞬、電の言葉が詰まった。彼女は私の背中を掴む様にして言った。

 

「ちょっと……寂しいだけなのです」

 

【挿絵表示】

 

そう言いながら苦笑したような感じ……そうか、電チャンでもそういう気分になるのか。

 

すると私の左脇の辺りから秋雲が喋る。

 

「ねへ、司令へ……」

 

何だよ『へ』って……制服ごしだからちょっとモゴモゴと聞こえる。

 

「なんだ?」

「秋雲はサァ……」

 

ちょっと間が空く。やがて彼女もまた私のカッターシャツをぎゅっと掴んで言った。死ぬほどくすぐったい。

 

「『お父さん』っていうの秋雲さんにはよく分かんないんだけどさぁ……司令官ってのはやっぱり艦娘にとって『お父さん』になるのかな?」

「……」

 

いや私は独身だから何とも答え難い質問だ。すると彼女は構わず続けた。

 

「青葉とかに聞くとさ、帝国海軍だっていろいろあって美保みたいな鎮守府ばっかりじゃないって言うんだけど……でもさ美保の場合はしっかりした秘書艦も居るでしょ? 祥高さんって美保の艦娘にとっては、みんなの『お母さん』みたいなことになるんだよね?」

 

……よね?っておい、決め付けるのかよ。

 

「そうなるとさ、大淀さんは強いお姉さんの前でビクビクしている気の弱い妹……艦娘にとってはやっぱお姉さんかな?」

「それは賛成なのです」

 

おい背中の電チャン! いきなり何を同意しているんだよ。うわ……くすぐったい! 右脇の寛代が激しく被りを振る。やめろって。

 

「じゃ、決まりね。司令は『お父さん』」

 

だから秋雲め、勝手に決めるなって!

 

「大丈夫、これはここにいる三人だけのローカルルールだからさ」

 

おいおい何だよ『ローカルルール』って。

 

「……なのです」

 

もう知らん。勝手にしてくれ。私は無言で艦娘たちを抱っこしたまま、ほうっとため息をついた。

 

 ふと気がつくと西の太陽は既に西方の山の後ろに沈んで行った。その日没方向にある山々のシルエットが薄っすらとオレンジ色に縁取られている。その周りの空もボンヤリとオレンジ色に染まり、さらにその上の空は青いグラデーションを成している。

 

 ボンヤリとその空を見ていたら、やがて上空にはポツポツと輝く星が出始めた。

 

「あ、星だよ」

 

急に元気になって勢い良く夜空を指差す秋雲。首だけ出しているとマジ猫だな。

 

 チラッと腕時計を見ると時間はもう20時を回っていた。この辺りは山の風が出てきて少し肌寒くなる。6合目周辺のガスは完全に消えて正面には群青の青空をバックに漆黒の塊となった大山が三角形に浮かび上がっていた。

 

 艦娘たちも皆、黙っていたが不思議な時間が過ぎていた。それでも6合目のベンチはホンノリと暖かかった。

 

 やがて登山道の下の方からライトをつけた人影が上がってきた。登山者ではない……近づいた人物は軍服着た少女だった。大きな荷物を背負っていたが彼女が陸軍の救援部隊だと分かった。

 

 ええ? 独り?……私たちはお団子状態から分離してベンチの前に軽く並んだ。少女は大きな荷物を背負ったまま私たちの前で直立して敬礼をした。

 

「お待たせしました! 海軍美保鎮守府の皆様でお間違え御座いませんでしょうか?」

「ああ、そうだ」

 

私が応えると彼女は言った。

 

「陸軍米子駐屯地所属『あきつ丸』と申します! 司令部及び美保鎮守府のご依頼により大山6合目にて立ち往生している皆様の救助へと参りました」

 

やっぱり陸軍らしく硬いな。

 

「皆様、お怪我など御座いませんでしょうか?」

 

 一気にキビキビとまくし立てられたので私たち美保の面々は一瞬、呆気に取られていた。だが私はふと気付いた。

 

「あきつ丸……ひょっとして陸軍の艦娘か?」

 

 それを聞いた彼女は「ちょっと、失礼致します」と言いつつ背中に背負っていた荷物を一旦降ろした。そして再び姿勢を正しながら改めて言った。

 

「私の名前をご存知とは、光栄至極です!」

 

いや知っていたわけではなく雰囲気でそう思っただけなんだけど……

 

「『まるゆ』も提督殿の鎮守府にてお世話になっていると伺って居ります。まるゆに代わって御礼申し上げます!」

 

『まるゆ』と聞いて、こっちの艦娘たちも囁きあっている。別に美保では虐めていないハズだが、何となく本人が肩身の狭い思いをして居る雰囲気はあるよな。

 

「陸軍司令本部から私に指令が出たときは、何と言う巡り合わせだろうか? と感謝・感激致した次第です」

 

よく口が回る子だな。あの米子駅の憲兵を連想する。『まるゆ』は大人しい子だけど基本的に陸軍はお喋りが多いのだろうか? ふとそんなことを考えてしまった。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも整備したいけど~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ8ん」とは
「美保鎮守府:第八部」の略称です。
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