「艦娘グラフティ4」(第8部)「執務室の午後」 作:しろっこ
「……では出発します」
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「艦娘グラフティ4」「執務室の午後」
(みほ8ん):第44話(改)<冷たい目>
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そんなこんなで、ほぼ全員が装備を背負った。軍曹が登山道を背にして全員の前に立って言った。
「では先頭は自分が参ります。大山登山は初めての方も多いかと思いますので、さほど急ぎません。夜間なので各自の装備品にあるヘッドライトをつけて登ってください」
さすがに6合目から上ではむき出しの岩場が増える。艦娘たちの電探も電波の乱反射で『夜間登山用』としては無意味だろう。
「あと艦娘の時雨殿が体調不良気味ですので、歩調を合わせますので少しペースを落とします。ただここから8合目までは急で狭い岩場道が続きます。遅い方が登りやすいので皆さんは私に合わせていただければ結構です。……では出発します」
軍曹を先頭に私達は6合目からの大山登山を始める。月明かりは想像していた以上に明るい。高山だから空気が澄んでいるのだろうか? 多少風はあるが、むしろ心地よい感じだった。
私は制服を秋雲に預けて荷物も持たないから手ぶらだ。でも現場の指揮官としては、これで良かったのだろう。登山に不慣れな艦娘たちの挙動を見るためには私が下手に荷物を持っていない方が身軽で動きやすい。
特に今は、時雨の直ぐ前を登りつつ後ろを適宜振り返る形で登る。彼女の様子を見ることと突発事態への対応をする為にも、これは結構重要に思えた。
最初は、お喋りをしたり嬉々としていた艦娘たちも直ぐ無口になり始めた。岩場の登山は思った以上に大変だ。足場も悪いし角度はキツイ。何しろ私でも息が荒くなるくらいだ。いくら艦娘とはいえ私より小柄でさらに荷物を背負って居れば、それなりに大変だろう。でも電チャンを始めとして駆逐艦娘たちは一生懸命に登っている。無口な寛代は『それなり』だけど。
振り返ると時雨はどことなく表情が豊かになってきた。時々振り返ると目が合う。そのたびに少し微笑んでくれる。まずいな……こういう状況での艦娘の笑顔は破壊力がある。
それに引き換え少し後ろから来る不知火は相変わらず『機械的』に登っている。艦娘だから文字通りそれでも良いんだけど。汗をかきながらも周りの仲間と和気あいあいと登っている電チャンたちと比べると、ついつい不知火はアレで良いのかなあ? ……って考えてしまうのだ。
そういえば彼女はこの救援部隊にしても『命令だから』と言っていたな。不知火が心底そう思っているなら、この登山に関しても不平不満を抱くはずはないはずだが。
私たちが登ってしばらく経った頃。7合目はまだかな……と思い始めたらアクシデントが起きた。岩場で電チャンが手元を狂わせて一瞬バランスを崩したのだ。その後ろを登って居た秋雲と寛代を巻き込む形で彼女たちは次々と姿勢を崩した。
あっ、転がるか?
そう思った次の瞬間、彼女たちの直下に居た私は思わず近くの木の根っこを掴んだまま残りの手を広げて寛代と秋雲を確保しようとした。電チャンは「はわわ」と言いながらも止まった秋雲に引っ掛かるような形で何とか登山道の中間で踏み止まった。秋雲は一瞬の出来事に訳が分からなくなり絶句しているようだ。
電チャンが慌てて近くの根っこにしがみ付く。ザザザっと滑る音がして小石がパラパラと落ちていくが、それも直ぐに治まった。電チャンが留まったので秋雲は何とか転落せずに済んだが表情が固まっている。このままだと危ない!
直ぐに私の伸ばした手を寛代を掴んだ。すると寛代は意外にも反射的に反対側の手を伸ばして秋雲の手を握った。秋雲はハッとしたように反応してその手をつかんだ。
一瞬その場に居た数名に緊張が走ったが私たちが何とか踏み止まったのを見て安堵が広がった。
「大丈夫ですかぁ?」
異常に気付いた軍曹が上の方から叫ぶ。私は大声で返す。
「ああ、大丈夫だ」
「……」
寛代が意外と冷静だった。この子の沈着冷静な性格が役に立ったのだろうか? 彼女に確保された秋雲だったが一瞬パニックになったのか言葉が出ない。よっぽど驚いたんだな。可哀相に……私は硬直する彼女に声をかけた。
「秋雲?……大丈夫か」
その言葉でようやく彼女は反応した。
「あ……はぁ……」
まだ驚いて混乱しているな。やはり海と山ではアクシデントが起きても反応が違うのだろう。
そのとき私は後ろを振り返る。時雨はちょっと調子が悪そうだったが、私の顔を見るとOKのサインを送ってくれた。彼女自身、だいぶ明るくなったようだ。
ところが更に下から登って来る不知火が目に留まる。その目は感情を押し殺したような冷たいものに感じられた。この騒ぎにも一切動揺していない。それは純粋に登山を楽しんでいる目ではなく義務的に登っている。楽しさとか喜びはほとんど感じられない『人形』のようで感情らしきものは一切なかった。
これが普段の『不知火』なのか。私は一瞬、ゾッとした。ただ意図的に感情を押し殺しているようにも感じられた。あの大井のように彼女にも何か傷を負った過去があるのではないか?
私は思わずため息をついた。頂上に着いたら時間があるだろう。そのときに彼女と少しでも話が出来たら良いな。
やがて電チャンも落ち着いたのか登山道の上の方から震える声で言った。
「お……驚いたのです」
「大丈夫か?」
私が問いかけると彼女は軽く頭を下げた。
「はい済みません司令……あっ」
小さい叫び声を上げながら彼女は姿勢を崩して倒れかかる。
「危ない!」
私は慌てて両手を差し出して彼女を受け止めた。幸い完全にバランスを崩すことなく無事に電チャンを抱き止めることが出来た。
私自身、荷物を何も背負っていなかったのも幸いだった。こういうフリーな立場の人間も必要なんだな……陸軍の判断は正しかった。やれやれ本当に冷や汗をかく。私はホッとため息をついた。
私の腕に抱かれた電チャンは小動物のように震えていた。その暖かい感触が私の両腕に伝わってくる。そういえばこの子を抱っこするのは初めてのことだろう。
最初は震えていた彼女も私に抱えられて少しは安心したのだろう。僅かな時間に不安な気持ちから安堵の気持ちへ変化する繊細な心の動きを感じた。それは鈍感な私には新鮮な感覚だった。
普通の人間でも果たしてここまで感じることができるだろうか? もちろん艦娘には不知火のように難しい子も居る。だが電チャンは特に素直な艦娘だからこそ私でも感じられたのだろう。
絶対に艦娘はロボットや機械なんかじゃない! この瞬間に改めてそういう想いを強くした。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも整備したいけど~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ8ん」とは
「美保鎮守府:第八部」の略称です。