「艦娘グラフティ4」(第8部)「執務室の午後」   作:しろっこ

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転落しかけた艦娘を受け止めた提督は、その震える身体に心の動きを感じた。しかし……。


第45話(改)<登山再開>

「良いなぁ、電チャン」

 

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「艦娘グラフティ4」「執務室の午後」

(みほ8ん):第45話(改)<登山再開>

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 大山の登山道中腹で起きたアクシデント。そこで感じた不知火の冷たい姿勢。それは意図的なものではないだろう。ただ不知火は心の中に何か尋常でない物を秘めているに違いない。その姿を見ると私は大井を思い出すのだ。あの子も私が原因でいろいろな葛藤を通過し悲劇的な最期を遂げたのだ。

 

そう思っていると私の腕の中でハッとして思い出したように謝罪する電チャンが居た。

 

「あの……司令官、済みません」

 

上目遣いに謝罪する電チャン。

 

「良いなぁ、電チャン」

 

私たちのすぐ側に居る秋雲が茶化す。この子も平常心に戻ったようでホッとする。そして秋雲の言葉に私達は弾かれるようにしてお互いの身体を離した。

 

「ほ、ホントに、すみません」

 

小さな声だけどアクションは大げさに謝る電チャン。おいおい、山道でそんなに頭を下げるとまた転落するぞ。

 

「もういいよ、危ないから……」

 

私は応えながらも彼女は本気では謝っていないと思った。事実そんな表情だ。正直私も彼女との触れ合いの時間は少々嬉しかった……お互いに心が通じたような不思議な瞬間だった。

 

そうは言っても私も電チャンも恐らく今、真っ赤な顔をしているだろう。今宵が月夜で幸いだった、お互いに。私は照れ隠しをするように秋雲に聞いた。

 

「そういうお前は、もう大丈夫なのか?」

 

彼女は月明かりの中で長い後ろ髪に手をやりながら白い歯を見せてニタニタしている。

 

「オッケーです。これも貴重な体験ですからね」

「はあ?」

 

その『貴重な体験』は、お前の登山のことか? それとも今の私たちのことか? ……まあどっちでも良いや。秋雲も冗談を言えるくらい元気なら問題ないだろう。

 

そのとき陸軍の無線が反応する。私は受けた。

 

「どうぞ」

≪宜しいですか?≫

 

軍曹だった。なかなか後列が上がってこないから心配したのだな。私は慌てて無線に返事をする。

 

「大丈夫だ、登山を再開してくれ」

≪了解です≫

 

無線越しに軍曹は返事をする。

 

≪7から8合目は足場が悪いうえに見通しも悪いです。無線は問題なく通じるので何かあったら遠慮なく呼び出して下さい≫

「済まない、了解した」

 

やがて艦娘たちは再び登り始める。私たちも改めて体勢を整える。

 

そのとき後ろの時雨が声をかけてきた。

 

「電チャン……大丈夫?」

 

あまりにも意外な出来事に私と電チャンは目を丸くした。

 

「あ……はいなのです、大丈夫なのです」

 

電チャンは笑顔で返した。気のせいか彼女は少し感極まってウルウルしているようだった。そうだよな、私も時雨のこの態度には貰い泣きしそうだ。頑なだった彼女がが少しずつ変わりつつある。それはこの山の状況と相まって感動的ですらあった。

 

ところが……である。下から上がってくる不知火を見た私は現実に引き戻された。さっきの鋭い眼光は影を潜めたが、こういう艦娘の突発事態に対しても彼女は、ほとんど表情が硬い……いや恐らく感情すら動かしていない。

沈着冷静? そうじゃない。彼女は冷静というより最初から醒めている。他人事なのだ。

 

もちろん秋雲のように過度な反応は期待しない。それを言ったら寛代も無表情だ。ただそんな寛代も感情の動きは感じる。陸軍の軍曹や、あきつ丸ですら海軍の私たちに、あれこれ心配してくれる。事実、陸軍は海軍の艦娘に、いろいろ気を配ってアドバイスもくれている。

 

 だが、あの不知火にはそういった人間的なリアクションがほとんどない。それでも幸いなことは彼女はあからさまな『悪意』はないことだ。それは実に妙な感覚だ。むしろ深海棲艦のように、これ見よがしの敵対心の方が、まだ分かりやすい。軍人としても対処のしようもある。

 

しかし不知火は少なくとも艦娘であり友軍だ。仲間だ。それがこの有様……何だろうな?

 

 そのとき私は秘書艦を連想した。祥高さんの狙いは、ここにあるのか? 彼女は司令代理を務めるだけあって観察力や洞察力は人並み以上だ。私のような無愛想で鈍感な人間よりも遥かに敏感で繊細だ。その彼女が救援隊に選抜したのが不知火と時雨。何か意図があるよな、きっと。

 

「どうかしたのか?提督」

 

時雨が話しかけてくる。彼女は本当に表情が豊かになってきた。

 

「いや、大丈夫だ」

 

月明かりの下で見る時雨の微笑が交じった顔は、着任当初の鎮守府でのクラクラ感を思い出した。このギャップだよ、艦娘と接して参ってしまうのは。私は山から転げ落ちないように腹に力を入れた。

 

 私が妄想を膨らませているうちに隊列は大山の7合目に到着した。軍曹は気を遣っていったん全体は小休止となった。まだまだ登山道は岩場が続くが空を見上げると月がキレイだ。

 

遥か遠くを見れば夜景に縁取られた弓ヶ浜半島が見える。そこから視線を少し右手にずらせば日本海の漁火も見えた。最近は美保鎮守府が積極的に夜の哨戒活動を行っているので深海棲艦もここ山陰沖では活動が停滞気味となっているので夜間の出漁も可能になっている。その光景は何とも幻想的であり絶景といえるだろう。

 

「わぁー、すごいな」

 

やはりこういう光景に直ぐに感動するのは秋雲だ。あとは電チャンくらいか。でも彼女はさっきの転落のゴタゴタがあったからだろうか妙にボーっとしている。

 

人間である軍曹も夜景を感慨深そうに見ている。その他のあとの艦娘たちの反応はまあ普通か。不知火は相変わらず眼中にすらない。もはや彼女たちに何かを期待する方が無理なのかな。

 

 艦娘たちに馬力があるとはいっても水平移動だけの海上とは勝手が違う。登山では疲れ方が全く違うようだ。秋雲と寛代を除いて軒並みぐったりしている。ここまでドロドロになると不知火が愛想が悪かったとしても気にならないレベルになってくる。これはこれで良いのか?

 

全員でドロドロになった結果として艦娘同士で一体感が得られたら良いのにな……そんな青春スポーツ根性物語のような希望を持つ私だった。

 

 ふと見ると時雨もキツそうだ。顔を伏せたまま岩に腰をかけている。

 

「時雨、調子悪いか?」

「……」

 

最初無言だった彼女。やがてゆっくりと顔を上げた。

 

「ゴメンね提督……さすがに疲れてきたよ」

「そうか。まだ回復しないか?」

「うん……」

 

私は軍曹に声をかけた。

 

「うちの時雨が調子悪そうだ。だがここまで来たら、あとは確か8合目から先は水平だよな」

「左様です」

 

私は無線機に手を掛けながら言った。

 

「あまり全体を遅らせても悪い。時雨には私がついてここに残って様子を見る」

「ハッ」

 

更に続ける。

 

「私たち以外で部隊を分けて先発隊として少しペースを落としながら登山を続けて貰えないか? 頂上に着いたら無線で知らせてくれ。その時点でのこちらの位置を知らせる」

 

それを聞いて軍曹はうなづいた。

 

「承知しました。では部隊を二手に分け、時雨殿は司令殿にお任せいたします。

何かあれば適宜、無線でお知らせ下さい」

 

私が敬礼すると彼も敬礼を返し、全体に声をかける。

 

「では、そろそろ参りましょうか」

 

軍曹の声に立ち上がるメンバーたち。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも整備したいけど~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ8ん」とは
「美保鎮守府:第八部」の略称です。
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