「艦娘グラフティ4」(第8部)「執務室の午後」 作:しろっこ
『司令を守るのは私です』
-------------------------------------
「艦娘グラフティ4」「執務室の午後」
(みほ8ん):第54話<エピローグ>
-------------------------------------
私は軍曹に言って予定通り6:00より下山を開始する旨を伝えた。各自散らばって下山の準備を始める。その姿を見ながら私は考えた。
人間と違って真摯に対応すればそれ以上の精誠を以って返す艦娘。彼女たちが生粋の軍人ということもあるだろう。しかしロボットという心無い批判を覆すほどの彼女たちが持つ精神性の高さと深さは、軽薄な人間以上のものがある。
不知火が人間に愛想を尽かした気持ちも分かる。軍人の中ですら自己中心的に朝令暮改を繰り返すバカ指揮官も少なくないんだ。
そういう私だって最初は正直、押し付けられたような気持ちだった美保鎮守府。だが今では司令官という立場を超えるものを感じ始めている。そうだな、時雨の言った『いつか還る場所』の一言も効いた。また大井や不知火との確執も今となっては得がたい経験といえる。
命令すれば済む人間の兵士に比べたら実に手のかかる兵士たちだ。それをウザいとか反抗的だと捉えたらブラック鎮守府になるのだろう。だがジックリ彼女たちの言い分を聞けば、決してむやみに反抗している訳ではないことが分かる。
やがて6:00になり下山を開始する。
「これから登ってくる人もいますから、途中5合目と6合目の中間から沢伝いに降りるルートを選びます」
陸軍の軍曹が付き従ってくれて助かった。大きな問題はなかったが彼らが居ることで、どれだけ心強かっただろう。
でも艦娘たちも同じだろう。自分たちを信頼してくれる指揮官が居れば大井や不知火のような艦娘は現れないはずだ。バックアップへの信頼があればこそ時雨のように戦い切る決意も出切るはずだ。
6合目で小休止した後、軍曹の言った沢伝いのルートへ行く。その後、河原を渡ってから大神山神社の横へ出た。その壮麗さに艦娘たちは感嘆の声を上げた。さすが艦娘、神仏系には反応が良いな。
博労座へ到着すると霞が着ていた。そこで陸軍とは分かれたのだが、軍曹たちへの迎えが来ていた。そして彼らから差し入れまで貰ってしまった。
その後、米子の陸軍とは少しずつ交流が始まった。もともと山陰では陸軍と海軍の仲が悪いわけではなかった。
今回のことが契機になったのか艦娘にも山の訓練、また逆に陸軍にも海の訓練を検討する動きが始まった。国土の護りは全体で有機的にやるべきだろうな。いずれ空軍も巻き込みたいが……父親に話をするかな。
不知火と時雨の私への態度が変わったのは誰の眼にも明らかだったが意外にも秘書艦に褒められた。その後、不知火と時雨は教育隊になった。ああいう細かい感情の世界があるからこそ教育にも向いている訳だ。もちろん既存の神通さんも妙に張り切っていたが。
防衛次官が裏で手を回したのか新しい車を手配してくれた。これは電チャンが運転手に立候補した。
『司令を守るのは私です』とか言い始めて、まさか不知火や時雨に対抗意識を燃やしている訳でも無さそうだが。あまり無理をするなよ。ただ電チャンの運転は上手くなった。霞も驚くくらいだ。
今回の記録はこの辺りで閉じる。午後からは陸軍の米子駐屯地司令との打ち合わせだ。今日も忙しくなるな。
「艦娘グラフティ4」「執務室の午後」(みほ8ん)<完結>
---------------------------------
※これは「艦これ」の二次創作です。
---------------------------------
サイトも整備したいけど~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
---------------------------------
PS:「みほ8ん」とは
「美保鎮守府:第八部」の略称です。