「艦娘グラフティ4」(第8部)「執務室の午後」 作:しろっこ
「お前たちは何か食べたいものはあるか~?」
-----------------------------------------------
「艦娘グラフティ4」「執務室の午後」(みほ8ん)
:第6話<市街地へ出かける>(改)
-----------------------------------------------
<<提督執務室:出発>>
執務室に入ってきた祥高さんが茶封筒を手渡す。
「司令、こちらが経費です。領収書は無記名でお願いします」
「ああ、分かった」
私は封筒を受け取ると帽子を取って二人の駆逐艦に声をかけた。
「……じゃあ出掛けようか」
「はい!」
「……」
反応はそれぞれだな。
今日は良い天気だ。私たちは車庫へ行くと私は後ろへ、電チャンが運転台、寛代は助手席に乗る。
「あの~どちらへ向かったらよろしいでしょうか?」
それを聞いてハッとした。何も考えていなかった。
そういえば境港市の観光案内を開いていたときに電ちゃんが来たんだっけ。それから金剛にバカ呼ばわりされて……アタマのネジが一本くらい飛んだかな?
「君たちは今日は非番?」
「はい」
「……」(黙ってうなづいている寛代)
そうか、時間があるならちょっとくらい遠出してみるか。艦娘にとって海は珍しくないから……山だ!そうだ大山(だいせん)へ行くか。
私は電チャンに指示を出す。
「とりあえず海岸道路を米子方面へ向かってくれ……米子市内のどこかでレストランに入ろう。出してくれ」
「了解なのです」
電チャンは軽く敬礼をするとエンジンを始動させた。
「出発します!」
軍用車はゆっくりと車庫から出発した。新車だから軽やかだな。
ふと見ると玄関先で鳳翔さんと榛名さんが手を振っていた。見送りが、あの二人で良かった。他の戦艦連中とかだと追撃や索敵しかねないからな。
<<鎮守府正面:ロータリー>>
「あ!」
急に小さく叫んだ電ちゃんが急ブレーキを掛けた。キキーという音と共に前のめりに急停車する軍用車。電チャンは運転手だからいいとして私は危うく前の方に放り出されるかと思った。寛代はシートベルトをしているが、さすがに驚いた感じだが……。
「どうした?」
「あの……司令、すみません」
そう言いながら電チャンは鎮守府入口ゲートを掌で指し示した。そこには箒セットを持って掃除をしている秋雲が居た。
「秋雲さん、いつも奉仕活動で大変なのです……もし出来れば……出来たらで良いのですけど、その……」
私は直ぐに電チャンが何を言わんとしているのか分かった。直ぐに寛代に言った。
「寛代、すぐに祥高さんに言って、秋雲も連れて行くけど良いか確認を取ってくれ」
意外とすんなりうなづいた寛代、すぐにシートベルトをしたまま通信を始める。
「電ちゃん、許可はまだ下りていないけど行く前提で秋雲に声をかけてくれ」
「は……はいなのです!」
軽く敬礼をすると、電チャンはすぐに軍用車を降りて秋雲の元へ。ゲートでなにやら会話をする二人、大げさに驚く秋雲。
「秘書艦……許可出た」
寛代が呟く。よし、良いぞ。
すぐに秋雲を連れて戻ってきた電チャン。秋雲は掃除道具を抱えたまま言う。
「あのぉ~ホントに良いんですか?司令」
「ああ。秘書艦の許可も下りたから、早く乗れ!」
「あのぉ掃除道具が……」
「良いよ、後ろに突っ込んでおけば」
失礼しますと言いつつ、後ろに乗り込んでくる秋雲。そういえばこの艦娘の制服は変わっているよな。この山陰でもちょっと目立ちそうだが。
「早くしろ。戦艦連中に見つかるとうるさいから」
鳳翔さんと榛名さんはニコニコして手を振っている。秋雲も愛想良く手を振り返している。この感覚は独特だよな。でも榛名さんあたりから金剛姉妹にバレバレになるだろうから、帰ったら覚悟しておこう。
「出発なのです」
「ああ~、スケッチブック忘れたなあ~」
秋雲は呟いた。
<<南下:米子市街へ>>
防砂林の真ん中を延々と続く海岸道路。今日は青空が広がり、時々浮かんだ白い雲が気持ち良い。思い付きとはいえ今日こうやってドライブできるのは良いものだな。
軍用車だからエンジン音と風きり音でほとんど会話は出来ない。それがかえって、お互い会話下手な者同士、黙っていても不自然な空気にならないから良かった。いや、秋雲は賑やかそうだが……さすがにこの急展開振りに、ちょっと遠慮している感じだ。
それでも前の二人は沿道風景を見て何かを指差し、お互いに会話をしている。へえ~意外とこの二人って仲が良いんだな。まあ口数が少ないところも似ているし。秋雲は黙って車外の風景を見ている。時々、悔しそうなオーラを振りまいている……よっぽどスケッチしたいんだな。
車は陸軍の三柳飛行場の手前を右へ緩やかに蛇行する。このまま行けば米子市街だ。実は境港には、ほとんどレストランというものが無い。このご時勢ということもあるが基本的に人口が少ないからな。港と空軍と海軍しかないような町だ。
それに比べると米子市はさすがにお店も飲食店も多い。あまり贅沢は出来ないが、そこそこのものは食べられるはずだ。
とはいえ私も着任後はほとんど鎮守府に居るかブルネイへ遠征していたから現在の米子市がどうなっているのかさっぱり分からない。それでも幹線道路を走っていれば適当な店はあるだろう……と思う間もなく左手にいくつかのレストランが見えてきた。
「お前たちは何か食べたいものはあるか~?」
私はちょっと大声で問いかけた。
「いえ、特ににないのです!」
「そうですね~秋雲さんも何でも良いです」
「……」
寛代は無言で首を左右に振る。それなら適当なファミリーレストランだな。
しかし米子市に出て正解だったな。境港市だと、いつどこで旧友や幼馴染と出くわすかもしれない。そんなとき駆逐艦を二人、いや三人もも連れていたら?いくら私が軍服を着て三人は制服だとはいえ微妙に勘違いされてしまうだろう。
「はあ~」
秋雲は何ともいえないため息を付いている。いつもの明るさとは裏腹に、この艦娘も複雑な背景があるからなあ~。今日は楽しませてやろう。
--------------------------------------
※これは「艦これ」の二次創作です。
---------------------------------------
サイトも整備したいけど~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
---------------------------------------
PS:「みほ8ん」とは
「美保鎮守府:第八部」の略称です。