この世界の片隅で(更新停止)   作:トメィト

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今回は短い上にステラしません。


聖都に訪れるは聖夜の告げ

 

 

 

『目の前には聖都。こちらの士気は十分だ。尤も―――』

「―――やはり策を講じて来たかアグラヴェイン。城壁に居る弓兵の数が想定の三倍以上にまで膨れ上がっている。……これでは戦力の半分聖都に辿り着ければいい方と言ったところだろう」

 

 ようやくたどり着いた聖都。目と鼻の先には相変わらず立派な城壁を備えた都市が鎮座していた。

 ランスロットの言葉を受けて城壁の上に視線を向けてみれば、確かにそこにはかなりの数の弓兵が存在していた。背後には補給部隊の姿も見えることから弓矢が切れる、なんて状況は待たない方がいいだろう。だが、それと同時に向こうは弓兵にかなり力を入れていることが伺えた。地上部隊の数が明らかに少ない。間違いなく、味方の被害を抑えるためだ。

 

「……その辺は神獣兵団と合わせて戦力を分散させるしかないと思う。こちらもできる限り応戦するよ」

「弓矢と言えばおれだからな。残された時間、やってやるさ。存分に」

 

 もちろん。俺達だけでフォローなんてできるわけがない。戦いに置いて数は力だ。一騎当千の英雄であろうとも万の兵にはかなわない。……まぁ、ここに居る英霊は万夫不当の英霊たちだけど。そこはキニシナーイ。

 

「弓兵の方は壁に張り付き次第我々の方で間引きいたしましょう。魔術師殿、アーラシュ殿には我々が行くまでの間、お願いいたします」

「任せろよ、呪腕殿」

 

 俺達がこの特異点に来る前から行動を共にしてきた二人。最早言葉は不要というような会話だった。

 それを眺めているとマシュが一つ声を上げる。

 

「正面の門はアーラシュさんが破ってくれるということですが、ガウェイン卿の相手はどうしますか?」

 

 彼女が上げたのはガウェインの相手をどうするのかということだった。今の彼は夜という弱点を消した完全な騎士。常時三倍の状態だ。そのようなサーヴァント相手に立ち向かうことができる戦力は限られている。

 

「ガウェイン卿の相手は私に任せてもらおう」

 

 静かに声を上げたのは、相変わらず状況に似合わない白い袋を掲げた黒服ミニスカの騎士王。カルデアのカオスな方のアルトリアが一対、サンタ・オルタである。

 その恰好こそシリアスブレイカー的な雰囲気を作り出していたが、彼女の顔はごくごく真面目であった。……確かに、この場に置いて、常時三倍の彼を止めることができるのは技量で勝るランスロットか、彼らの王であるアルトリア二人だけだろう。しかし、意外だった。俺はてっきりXが出てくるのかと思ってた。相手セイバーだし。

 

「今回私は鳥公の方に向かうので、三倍マシュポテトはそこのパチモンにくれてやったんですよ。今の彼に対抗できるのは私だけでしょうから」

 

 ……Xの言葉には納得できるところが多かった。正直、今のトリスタンに対抗するのであれば、俺達では相性が悪い。その点、戦闘に置いて色々な意味で頼もしいヒロインXは相手として問題ない。心情的にはセイバーのガウェインよりもそちらに行ったことがとても気になるのだが、こういった場面では流石に空気を読むということだろう。

 

「サンタ・オルタは何か秘策がある?正面からは勝ち目は薄いと思うけど」

「任せておけ」

 

 とても頼もしい一言をくれた。

 

「……そろそろ、向かいましょう。呪腕殿、号令をお願いします」

「―――本来であれば、暗殺者の仕事ではないと断りを入れさせていただくところですが……お任せください」

 

 ベディヴィエールの言葉にこの集団に所属する大部分の人たちの頭である呪腕さんが頷き、そのまま闇夜と一体化するかのような黒い衣をはためかせながら集団の前に躍り出た。

 

「皆の者、武器を取れ。是より我等は進軍を開始する。―――信仰を取り戻すのだ」

 

 

 呪腕さんの言葉と共に、天に届かんばかりの声が響き渡る。大地を揺らしていると錯覚できるほどに張りつめられたそれは、まさにこの世界に生きる人々の生きる力だと、そのようなことを思った。

 

 

 

――――――――

 

 

 

「伝令です。ガウェイン卿。遂に賊が攻めてきました。敵の数はおおよそ2万ほどだと思われます」

「アグラヴェイン卿の予想通りですね。……当初の予定通り、賊の処理は弓兵を主とします。我々はその矢に当たらぬよう注意を払いながら、うち漏らした敵の掃討です」

「ハッ!」

 

 あらゆる害悪、悪意から発せられる攻撃。それを完全に防ぐことができるキャメロットの城壁の前で、円卓にて彼のアーサー王が所持していた聖剣エクスカリバーとの姉妹剣を所有する騎士――ガウェインは静かに淡々と指示を出していた。

 

 報告によれば攻め込んできているのは約2万の兵。しかし、その殆どは難民たちからなる者であり、練度はほぼゼロに等しい。アグラヴェインはそのことを理解しているからこそ、弓兵を大量に配置した。

 戦いの心構えができていないものに、視界を覆い尽くすほどの弓を降らせればどうなるか。目の前で仲間が死んでいく様を見せつけられればどうなるか。そのことを容易く予想できるからこそ、この手段を取った。また、彼らが放つのはただの矢ではない。その殆どには即効性の毒が塗りつけられている。掠っただけでも全身を侵し、激しい激痛の最中に死んでいくような……いかにも不安を煽るようなものだった。

 

「………愚か……。いや、どんな側面とは言え、アーサー王が組している。であれば、態々倒されに来るような策をとるはずがない……」

 

 ガウェインはアグラヴェインの用意した策を進んで肯定することはなかったが、また否定することもなかった。相手にはアーサー王と既に五つの特異点を越えて来た人類最後のマスターが存在している。ガウェイン自身も彼ら相手に一度失態を演じてしまっているのだから。付け加えるならば、既にモードレッドにランスロットまでもが彼らに下されていることもある。

 

「考えられることとすれば、弓矢に対する対策ができているということ。しかし、あのマスターが矢避けの加護を付与できるような存在とは思えない」

 

 自分の得物である聖剣。転輪する勝利の剣を携えながら、思考する。五つもの特異点をどのようにして乗り越えて来たのか。その光景を直接見ていない彼にとっては全てを見通すことはできない。

 しかし、嘗て邂逅した時のことを加味して考えるのであれば、おおよそ普通のマスターとしての役割を全うして越えてきたわけではないだろうと考えていた。粛清騎士を千切っては投げ千切っては投げ……などとしていくような人間が真っ当な職務に当たるとは欠片も考え付かなかった。判断材料は円卓に転がっている為に割愛する。

 

「―――しかし、何をしようとも変わりません。我々がするべきことは、我等が王の……獅子王の目的を成就させることなのですから。もう、迷いません」

 

 握りなおす。

 一度揺らいだ忠誠心。それは、己が抱いた後悔を呼び起こすには十分なものであった。故にもう太陽の騎士は迷うことはない。此度こそは揺らぐことのない忠誠を誓い、最期まで共に居ようと――――

 

 

『―――聖夜に沈め……!』

 

 

―――何故でしょうか。今猛烈に嫌な予感がするのですが。

 

 

 自分の勘に従い、もしかしたらギフトに何かしらの不具合が生じたのではないかと思ったガウェインは思わず天を見上げる。そこには獅子王から与えられたギフト『不夜』によって輝く太陽があった。……だが、変わらず輝く太陽を見ても嫌な予感が収まる気配はない。

 長い間戦いに身を置き、強敵と戦ってきた自身が警告する。今すぐその場を引けと。

 

「―――!」

 

 確信を持ってから回避するまで、時間は必要なかった。

 彼の身体は意識に後れを取りラグを出す、などという無様を晒すことなく脳から送られてきた指令を忠実に実行してガウェインの身体を宙に躍らせる。すると、その直後―――

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガァァァン)!!』

 

―――黒い光の奔流が、彼がいた地点を飲み込んでいった。

 

 ガウェインは素早く見覚えのある攻撃が飛んできた方向に視線を向ける。するとそこには予想通りの人物が、予想外のモノに乗ってやってきていた。

 

「―――見たかトナカイ。これで弓など恐るるに足りず。ユガンダイトの見解など私の前では何の役にも立たん」

「まさか真の意味でトナカイをやらされるとは思わなかった……。そして、隙あらばランスロットディスるのはやめて差し上げろ。人のこと言えないけど」

 

 モノ―――その表現は正しくないだろう。

 適切なものに言い換えるのであれば、者。……そう、ガウェインが予想した通りの人物。アーサー王の側面(?)であるサンタ・オルタは自身のマスターである仁慈の背中に乗りながら宝具を撃ってきたのだ。

 

 ツッコミどころは腐るほどある。

 なぜマスターに乗っているのか。そのような不安定な場所で宝具を撃つのか。そもそもどうして射線上に居るはずのマスターが無事なのか……挙げればキリがなかった。

 

「――――!」

 

 ガウェインは決意した。

 必ずやこの珍妙不可思議なアーサー王を獅子王に合わせてはいけないと覚悟した。先程とは別の意味で、しかし明確な意図を以てして剣を握りしめる。

 

 跳び上がっていた体が再び地面に降り立つ。対峙するのは、己の主。姿、正確、クラス……そのすべてが見覚えのない者であろうとも根幹は変わっていない。彼の知る騎士王は確かにその中に居る。

 

「多少はマシな面になったようだな」

「―――えぇ。お陰様で」

 

 その口調は、王に向ける者ではなく敵に向けるためのもの。

 サンタ・オルタはこれで確信を得る。目の前に居るのはまごうことなき太陽の騎士。円卓の中でも卓越した技量を持つ完璧な騎士。ガウェイン卿であると。

 

「我等が王に仇なす者として、貴女を排除させていただきます」

「ちょうどいい機会だ。貴公にも教えておこう。―――決して王とは、ビームを放っているだけの存在ではないことを……!」

 

 円卓の時代には―――否、今後も決してあることはないだろうカード。騎士王・アルトリアとその右腕であるガウェイン。ある意味で夢のカードと言ってもいいその戦いが今幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――陽のいと聖なる主よ……」

 

 

 

  

 




ライダー(真)
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