細々とした修正はしましたが、大半はそのままになります。
すみませんが、宜しくお願いします。
●S‐4 アーエルの森・追跡者
青年が太い枝の崩落を目にするよりも5分だけ、時間の張りを遡ろう。
ただただひたすらに疾駆する人影は総勢で三十。それが七つの集団を作り、陣形を組んでの行軍だった。一群ごとに四人、二群のみ五名を抱く集団が神域には及ばないアーエルの森を疾(はし)る。
状況そのものは単純で、異常な所などどこにもない。そんな風に見れなくもない。だがしかし、やはりその光景は異常としか言いようがなかった。
黒衣に身を包んだ人影の集団。それが森の浅瀬とは言えないよう場所を走っている。それも。
他のどこかであるならばいざ知らず、
「問題はない。征くぞ」
と、彼らは獲物を駆り立てんと未だ視界に捉えきれない相手を補足せんと地を駈ける。ある集群は太い木の枝と枝の間を、ある集群は幹と幹の合間を、ある集群は宙空(ちゅうくう)を。ひたすらに走っていた。
目指すは前方一五〇メルト。こげ茶の外套に身を包むエルフの青年。しかし、追えども追えども逃げ切るエルフに対し、よくやるものだと追跡者達を束ね、先陣を切る男は考える。その思考はしかしすぐに切り替わる。このままではイタチごっこが終わる事がないだろう、と。
ならば、
それでもまだ奴が我々から逃げきれていないのは、さすがのエルフと云えど神の地(アーエル)においては木々も容易に味方はしない、という事なのだろう。
男はそう、思考した。が、思考が切れる前に標的が方向を転換してきた。
即ち、こちらへの進撃という形に。
「奴め。とうとう諦めた……?いや、違うな。あの手の輩は諦めなどと言う上等な思考は持ち合わせない。なんだ?だとしたなんだというのだ。………まあ、いい。どちらにしたところで、
細めた瞳の色は紫銀。首に巻いた臙脂のチョーカーを人差し指の腹で一撫でし、口元を引き締めた。
そして、自分の直後。後方を走る大男に命じた。
「銀の奏弾をここへ。弾蓋を割り、儀式経典を展開する。彼奴の位相を捉えろ。撃ち果たすぞ。」
中心にあり、周囲を囲む人影に、そう伝えた。
右を走る四人の先頭を走る紫髪をツインテールにし、
「位相はここに。カザン、伝えよ」
右目をくすんだ鉛色の眼帯で覆ったエルフが腰のポーチから一枚、葉を取り出して唇へ、触れるか触れないか、空気を振るわせ、
「
続くように緑髪を短く刈った男が口の中で囁き、手の中に握った鈍く光る瓶の中の水銀を
「
緑髪の後方を走る鈍い金髪の女が囁く。同時。宙に放られた水銀が意志を持ったように展開。走り続ける黒衣の集団三十名を点に、円を描く。
「
先陣を切る男がぼそりと呟く。
銀の円環に瞬間、紫の混じった碧翠の紫電が奔(はし)る。
が、直後左目を
鈍い光が木々や葉、霧を抜けて届く。直後、空気の震えが伝わってきた。
男が『眼』を凝らし観測す(視)る必要もなく、目標は避けきったようだ。否、避けたというよりは銀髪の与えた屈折によってそもそも中る軌道から大きくずれたというべきだろう。
「お前……」
何事か言いかける男を制し、銀髪が口の端を愉快気に歪めた。
「ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!避けられちまったなぁ、大将!ここは一つ、俺に
周りに合わせたのだろう。元は青の刺繍を施さねばならない筈のそれを黒く染め上げた民族衣装を纏い、背に担いだ
「………いいだろう。仕掛けてみろ。」
「応さ。任せな!合点承知。委細無用。
愉快げに笑い、テキトーに言葉を連ね、直後突出した。彼にはエルフの青年の姿が見えていた。
木々も霧も関係なく、彼には青年の姿が見えていた。
「ああっ、楽しいぜ楽しいぜ楽しすぎるぜ!森の中でエルフだぜ?こんな燃える展開つったらもう、陛下と
背のハルバードに手をやり、楽しげに楽しげに楽しげに、男はエルフの彼に対して進撃を開始した。
追手の黒衣の数は総じて三〇。
その中の一角が動いた。
この一戦をもって、長く続いた追撃戦は一点、近接戦闘へと変じたのである。
あとがき
すみません、③とついているので新作かと思われたかもしれませんが、新作ではないです。
微妙に改訂してますが、微妙です。
次回にあたる「④ (改訂版)」のS―5は大幅な書き換えがありますのでその点に関しては新作と言って言えなくもしれません。
…いや、恥ずかしい事に場面の切り替えをしたせいか、矛盾と言うか、なんか前と後ろで言ってること違うじゃん!って部分を見つけてしまいまして、修正しない事には仕方ありません。
ってなワケで、次の更新は昼くらい。
でも、この前まで掲載されてた続きはまだ書けてないのでその分は更新できないのです。
ごめんなさい。
見捨てないでー!