神主さんに話も聞けたことだし、今度は本殿の神様に話を聞くことにする。
さらっと考えてしまったが、冷静に今の考えを思い返してみると狂人扱いされてもおかしくない。神様に話を聞くだなんて、そんなこと普通なら頭を心配されるか、子供の戯れ言として受け流されるかだ。くちには気をつけなければならない。
そんなことを考えながら本殿の戸を開ける。
「こんにt」
「おや、誰か来ましたね?我が神、どうします?排除します?」
…………!?
だ、だだだ誰?排除ってどういうこと……?
『不必要 彼女 緒方真竹 我が朋友』
「!?それはなんと。貴女の友人!?我ら眷属とも滅多に交信なさらない貴女の!?」
『失礼 貴方たち 狂喜する 我 少し怖い』
「そうでしたか。ということは貴女に執着する姿さえ見せなければ交信を考えてくださるので?」
『それはそれ これはこれ』
「なんとそれは手厳しい」
…………
本当にこれはどういうことなのか。
私を排除するかあの男………男?…………性別不明のナニカが神様に聞いてから怒濤の勢いで話が進む。
それに、
「眷属?」
「これはこれは私としたことが失礼。人間の少女よ。私は“笑謔の聘”ロフォカレ。導きの神“覚の嘯吟”が眷属です。と、言っても分からないでしょうがね」
『心配無用 紅世のこと 我らのこと 説明済み』
「貴女ご自身が人間に対して説明するなど、何と畏れ多い。そこの人間、自分の幸運に感謝することですね」
…………
いや、やはり展開が読めない。とりあえず話に参加してみようか。
「えと、ありがとうございます?」
「そんな安っぽい言葉で済ませられないほど光栄なことなのに何故この人間は分からないのか…………」
…………何この人、メンドクサい。あ、人じゃないか…………
神様への並々ならぬ崇敬の念は分かったけれど、何だろう、かなり胡散臭いし面倒なのがこの数分だけで分かる。なんでこんなのがあの神様の眷属なんだろうか。
『我 気にせぬ むしろ 眷属より 心地よい』
「!?我ら眷属よりもこの人間といるほうが楽しいと!?我ら眷属はこんなにあなたを敬愛しているというのに!!?」
「いや、そういうところが煩わしくて崇敬して来ない相手を探していたのでは?」
「なんと!?我らの好意がむしろ仇になっていたとでも!?そんなバカな!!我が神よ!本当にそうなのですか!?」
『鬱陶しい』
「おお…………。そうなのですか。ならば、神託が降るのは霊告『知らしむるべし』の際のみの筈なのに今回私に交信できたのは!?」
『眷属 盲信 怖い』
「」
ああ、やっとこのロフォカレさん、黙った。
今は予想以上の面倒臭さにため息を吐きたくなる。
それよりも神様とその眷属だよね?この二人。漫才してるようにしか見えない。
『加え 真竹 貴方に 興味 呼んだ』
つまり、この面倒臭いのを呼んだのは私のため?…………確かに興味はあったけどそんなこと一言も言ってないし、うーん、つまりどういうことだ?そもそもこんなのだと分かっていたら遠慮したのだけれど。
そんなことを考えているうちにロフォカレさんが復活したようで、また話し始める。
「この人間が私に興味、ですか?人間がまた何故?」
「貴方がこの神社の成り立ちとミサゴ祭りの前身である祭祀に関わっていたと聞いたからですね」
「この神社…………?少し待ってくださいね、思い出してみます」
今回は話が通じたようで安心する。彼はこの場所に関する記憶を思い出しているようである。とりあえずこの今日教えてもらった神社の成り立ちを話す。すると、かれはいう。
「確かにそれは私ですね。祟りだの何だのとうるさかったので、もう喰らってしまおうかとも考えたのですが、何の気まぐれでしたかね、適当に言い含めることにしたのです。」
へえ。あの話にそんな裏があったのか。人を喰らうとか言ってるのを聞いて、そういえばこの人も紅世の徒だったななんて考えながら思う。
「ああ、それよりも我が神よ!もしこの場所が本当にその時の場所ならば、ここほど拠点として優れた場所は有りません!あの時、この丘陵地がかの星麗殿、天道宮と共に造られたという、月光楼だと判明したのです。当時は私もフレイムヘイズに追われており回収する余裕がなく、結局そのまま放置していましたが、ここがそうでしたか。」
…………ん?つまり、どういうこと?
『月光楼 我が眷属 拠点? 我が神器 鏡 加え 月光楼 隠密性?』
「まさにそういうことです!拠点にするにはもってこいですとも!」
…………つまり、これから紅世の徒がこの町に常駐するということ?それは困る。この町の人々が喰われる可能性が増える。
「ああ、そこの人間、心配せずとも我らはこの町では極力人を喰らいませんとも。フレイムヘイズが集まる要因となりますので。ここでは人喰いは厳禁だと決めておきますとも」
それならば安心である。
「そう言えば私、自己紹介もしていませんね。緒方真竹、この近くに住む5歳の幼子です。以後よしなに」
「あなた、本当に子供ですか?人間の幼子を育ててみた実例を近くでみていたことも有ったのですが、その際はここまでハキハキと話し、我らの話について来て考えを咄嗟に言えるなどと言うことは有りませんでしたとも。いったい何者で?」
「ただ少し特殊なだけの人間です。それ以上のことは言えませんとも」
ええ、今はまだ言えませんとも。
補足
ロフォカレ
導きの神の眷属たる紅世の徒。世界を見聞することに長けており、その性質から導きの神の耳目となって旅している。いつか導きの神の神意召還、嘯飛吟声をおこなう日を夢見る危ないヒト(徒)。