ドラえもんのいないドラえもん  ~超劇場版大戦 地球は何回危機に遭う~   作:ルルイ

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感想、及び誤字報告ありがとうございます。

今回も時間ぎりぎりの執筆でしたので誤字確認が間に合ってません。
もっとスラスラかけるようになりたいなー


真・鉄人兵団7

 

 

 

 

 

 メカトピア近辺の宇宙宙域にて、今日もメカトピア軍とハジメ達の軍勢は戦闘を繰り広げていた。

 メカトピア軍は全ての兵士に武装を全開放し、一般兵でも上級兵が持っていたプラズマブラスターやヒートブレードが配備され、モビルソルジャー達にも損傷を与えうる攻撃力を獲得していた。

 しかしモビルソルジャー達が十回の攻撃に耐えられるのに対し、メカトピア兵はビームサーベルやライフルの攻撃を受ければ一撃で破壊される程度の耐久力しかない。

 それがお互いの戦闘での損傷率に大きな差を作っていたが、新たに戦場に投入された超大型ロボットによりモビルソルジャー達の損傷率が急激に上がった。

 

「やっぱり大きいというのはそれだけで影響力があるからな」

 

『単純に質量による破壊力が出るからな。

 搭載兵器も出力が高いからか量産型のモビルソルジャー達も落とされる数が増えている』

 

 モニター越しにオリジナルのハジメと実行部隊隊長のハジメが言葉を交わす。

 

『超大型ロボットをとりあえずジュド級と呼ぶとして、現状ではどれほどの脅威になっている?』

 

「確かに量産型には十分な攻撃力を備えているが、数はそれほどでもない。

 量産型でも数で押せば撃破も難しくないようだ。

 既に何機か落としている」

 

 超大型ロボットジュド級の武装はその巨体による攻撃だけでなく、内蔵エネルギーによる通常サイズのロボット兵とは比べ物にならない高出力の十指から一斉に放たれるフィンガーレーザー、背部に背負った大型バスターカノンに腹部のレーザー砲と、強力な武装が搭載されている。

 土木作業用として送り出されたジュドとは違い、戦闘面に多くの武器が追加されていた。

 

 量産型でも当たり所が悪ければ一撃で落ちる火力を備えているが、量産機を統括する指揮官機もそんな相手を警戒しないほど人工知能の性能は低くない。

 盾を備えているジム部隊を壁としてムラサメ部隊の機動力で急接近し、光学兵器を使いづらい間合いに入り素手による攻撃を掻い潜って、装甲のない関節部を狙う様に攻撃を仕掛けた。

 これまで同等のサイズのロボット兵だったことで強度の低い関節を狙うのは量産機には難しかったが、ジュド級のサイズならば関節という的も大きくなり狙いやすかった。

 関節を狙う事で行動を制限し、動けなくなったところを電子頭脳のある頭部を破壊する事で撃破した。

 

 一度攻略すれば有効な戦い方がわかるので、ジュド級もそれほど脅威とは成り得なかった。

 しかし学習しているのは何もこちらだけではなかった。

 

『なるほど、だが戦闘記録の戦果を見ると、日を追う毎に戦闘時間とこちらの消耗率も上がってきてないか?』

 

「それは仕方ない。 メカトピアのロボット達もモビルソルジャーと戦う事に慣れてきている。

 いくら指揮官機がいるとは言え量産機では、経験を重ねてきた心を持つロボットに学習能力で劣る。

 性能が向上しているわけじゃないだろうが、量産機に簡単にやられるロボットはだいぶいなくなってきてるみたいだ」

 

 メカトピアの兵達も連日の戦いでモビルソルジャーの動きに慣れて、交戦しても簡単に落とされることはなくなってきている。

 何せ量産性を優先した無人機なのである程度行動パターンが出来ており、人間並の柔軟な思考を持つメカトピアのロボットには動きが読まれ始めているのだ。

 性能差で未だ圧倒しているが、このまま戦闘が幾度も繰り返されれば量産機だけでは対応が難しくなるかもしれない。

 

『ではどうする? ジュド級に対抗するためにモビルスーツも出撃させるか?』

 

 アークエンジェル一番二番三番艦には従来のモビルスーツの発着口も残っており、カベ紙格納庫に収納されている通常のモビルスーツも配備されているので、ジュド級とも正面から十分戦うことが出来る。

 

「………いや、モビルスーツを出すのはまだ早いと思う。

 モビルスーツを出せばジュド級でもあっさり倒してしまって、戦線のバランスが傾き過ぎてしまう気がする。

 戦線の維持にはモビルソルジャーの量産機を増員する事で調整しようと思う」

 

『モビルスーツは温存か。 せっかく用意しておいて使わないのは残念だが、それもまあ仕方ないか』

 

 量産機の量産には秘密道具のフエルミラーを多用している。

 増やそうと思えばいくらでも用意できるので、どれだけ量産機を破壊されても戦力不足になる事はない。

 

 更にハジメ達のこの宙域での戦闘目的はメカトピアの兵力を消耗させつつ、こちらの脅威を知らしめる事だ。

 ハジメ達の戦力であれば数に任せてメカトピアを一気に壊滅させられるが、それをしてしまっては始めに降伏勧告をした意味がない。

 戦力の圧倒的不利と更に手加減されていることを理解させて、敗戦を自ら認める判断をさせる事がこの戦線を維持するハジメ達の目的だ。

 

 メカトピアの兵士は人間の兵士と変わらない扱いなので量産機の様に増やす事は出来ず、消耗し続ければ遠くないうちに兵力不足に陥る。

 そのタイムリミットを意識させるように一定の兵力を毎日戦闘で削り続け、損傷率が低すぎず高くなり過ぎないようにメカトピアの議会に圧力をかけ続けている。

 その成果は先日の議会の様子を見る限り着実に出始めているが、終戦に至るまではもう少し時間がかかりそうだ。

 

『量産機のモビルソルジャーへの対応力は予想していなかったが、その辺りは数を調整する事でいくらでも対応が出来る。

 やっぱり向こうに敗戦を意識させるには、内側からの圧力が必要になりそうだ』

 

「さっきリルルとその担当のコピー、それと護衛のドラ丸がメカトピアに降下した。

 アシミー議員に会って働きかける事で、状況が一気に進展すればいいんだが…」

 

 

 

 

 

 メカトピアに降下したハジメ達は人目に付かないように都市郊外に降り立ち、リルルの先導であまり目立たないように都市内部に潜入していた。

 

「これがメカトピアの街並みか。 モニターで確認していたが、金属製の建物が多いからか固い感じはするけど、地球の都市部と似た雰囲気がある」

 

「でしょう。 ここら辺はまだ住宅街が近いから人通りはあまりないけど、もう少し行けば繁華街に出て人がたくさん行きかうようになるわ」

 

「議会場はその先だったね」

 

「ええ、メカトピアの主要機能が集中する首都中心部よ。

 早速行くの?」

 

「アシミー議員には極力誰もいない状況で接触するのが望ましい。

 まずは下見に議会場の場所を確認しに行くだけだよ」

 

「わかったわ、ついてきて」 

 

 リルルの先導の下、ハジメとドラ丸はメカトピアの都市の中を歩いていく。

 リルルは元からロボットだが人間の姿をしているので、ハジメと一緒にロボットの外装を着けて姿を変えている。

 ハジメに至ってはモビルソルジャーに小さくなってコクピットに乗り込み、サイコントローラーを使う事で操縦ミスが無い自然な動きで動いている。

 そしてドラ丸だが、リルルもそうだが元々ロボットなので普段通りの姿で行動している。

 

「そういえば、ドラ丸と一緒に街を歩く事なんて初めてだよね」

 

「そうでござるな。 拙者のような姿のロボットが人間の街を歩いていたら不自然でござるからな」

 

 アニメでは当たり前の様にドラえもんは町中を歩いているが、そこからして不自然な事に結構気付いているものが少ないと思う。

 ハジメもドラ丸を作ってから気づいたが、この姿では街中での自然な護衛役など出来そうにない。

 事件の間は人間の街中を歩くようなことはなさそうだが、事件が終わったら人間の姿に変わる機能でもつけてみようかと考えていた。

 

「ところでドラ丸の姿はメカトピアでは不自然ではない?」

 

「確かに珍しい姿だと思うけど、同じような体格のボディを持ったロボットもいないでもないわ。

 兵士たちは戦闘用の装甲の関係で姿を統一しているけど、一般市民なら個性を出すためにファッションとしてボディパーツを付け替えることくらい当たり前だし、体格変更の改造も近年では一般家庭でも安価で受けられるようになってきているわ」

 

「意味は分かるけど、人間に例えるなら美容整形感覚での改造か?

 どうも地球の文化と似通ってるけど、人間とロボットでズレが生じるから奇妙な感じがする」

 

「私も人間の都市を見に行った時に同じことを感じたわ」

 

 もしもボックスで地球人がロボットだったらという世界にしたら、このような世界なのかもしれない。

 

「…殿、拙者ら見られてはござらんか?」

 

「なに? …確かに、少し見られてるみたいだ」

 

 隠れて監視されているといった類ではなく、道行く人々の目に留まって意識されるような見方をされている。

 先ほどまでは人通りが少なかったが、リルルの言う様に繁華街に近づいたことでこちらを見る人が増えてきている。

 

「リルル、この姿ならメカトピアの街中を歩いても問題ないんだったよな。

 注目を集めている気がするが、どういう事だ」

 

「あら、こんな姿なら当然注目されるわよ」

 

「なんだと」

 

 リルルの返答にハジメは警戒心を持ち、ドラ丸もここで裏切る気かと疑い腰の猫又丸に手をかける。

 

「こんな素敵なボディをしてるんだもの。 人目を集めても全然不思議じゃないわ」

 

「は? ボディ?」

 

「でござる?」

 

 ハジメとドラ丸はリルルが何を言っているのか一瞬解らなかった。

 

「ええ! 外装とはいえこんな素敵なボディバランスと釣り合いの取れた装飾パーツで作られた装甲は、トップモデルだって早々着飾る事の出来ないクオリティよ!」

 

「トップモデル?」

 

「ござ?」

 

 ハジメとドラ丸はやっぱり訳が分からなかった。

 

「だからこの外装は私たちの視点ではとてもハイセンスなファッションなのよ。

 ファッションに五月蠅い女性たちなら注目せずにはいられない新しいファッション分野の開拓よ」

 

「えっと、その姿がそんなにすごいの?」

 

「もちろんよ! 姿を変える為とはいえ、こんな素敵な外装を着けられるとは思わなかったわ!

 地球の人間はロボットがあんまりいないのにファッションセンスがあるのね」

 

「あ、そう…」

 

 そういえば外装を纏う時にリルルがなんかすごくうれしそうだったなと思い出す。

 リルルの姿は女性でロボットでモビルスーツと言うワードから、ノーベルガンダムの姿に成っている。

 ガンダムを女性の体形にしてセーラー服を着せたというハジメの感想では珍妙なモビルスーツなのだが、リルルがこれがいいと選んだので、リルルが着込んで動けるように改良した。

 選択肢の中には女性パイロットが乗るモビルスーツモデルのモビルソルジャーを用意していた。

 

「それに私だけじゃなくって、ハジメさんの今の姿も十分トップモデルで通用する姿よ。

 自信を持っていいわ」

 

「それはありがとう、でいいのか?」

 

 ハジメの操縦しているモビルソルジャーはゴッドガンダムのモデルで登場ストーリーを合わせてのチョイスなのだが、この姿は注目を集めてしまうという事を理解し、失敗したかとハジメは考える。

 ちなみに、メカトピアにはモデルという職業もあるのかというツッコミは、リルルの剣幕に流されてしまった。

 

「しかし潜入する以上あまり注目を集めるような恰好はしたくなかったんだが…。

 派手な装飾の少ないジムかザクのような量産機タイプの姿にすればよかったか」

 

「もったいないわ、せっかくそんなカッコいい姿なのに。

 確かジムとザクと言うのはあの兵士階級のロボット達よね。

 ジムと言うのはフォーマルな感じで悪くないけど、ザクはちょっとワイルドでラフな感じがするから一般にはあまり好かれないと思うわ。

 一つ目と言うのも奇抜過ぎるもの」

 

 モノアイの良さがわからないとは、メカトピアのロボットのセンスはますます地球人のハジメには理解し難いと思った。

 そんなことを話していると、二人のロボットが近付いてくるのにハジメは気づく。

 ボディカラーと体系から、おそらく二人とも女性のロボットだろうと辺りを着ける。

 

「す、すいません、ちょっといいですか!?」

 

「なにかしら?」

 

 少し緊張した声色で話しかけてくる女性ロボットに、リルルが対応する。

 

「モデルの方なのでしょうか!? 素敵な装甲です!」

 

「是非写真を撮らせてもらいたいんですが、よろしいでしょうか?」

 

「えぇー…」

 

 ミーハーな女性に声をかけられたと思えばいいのだろうか、ハジメは困惑しっぱなしである。

 

「そうね、どうしたらいいと思う?」

 

 いわゆる潜入任務中なので、記録に残る行為はやめた方がいいのではないかとハジメに確認を取るリルル。

 

「…別にいいんじゃない」

 

「いいみたいよ」

 

「「やったぁ!」」

 

 投げやりになったハジメの返事にリルルが代弁して答え、ロボット女性二人は黄色の声を上げて喜ぶ。

 メカトピアのとある写真に、ノリノリでポーズを決めるノーベルガンダムと肩を少し落として疲れ気味に見えるゴッドガンダム、ついでに背筋をピンと伸ばして緊張しているずんぐりむっくりな青いロボットが写った写真が残る事になる。

 

 更にその後街中を歩いていればリルルがナンパされること5回、ハジメの乗ったゴッドガンダムがナンパされること2回、ドラ丸が何処のゆるキャラであるかと聞かれること1回、と何かと注目され声を掛けられる事になり、道行は遅々としたものとなった。

 

 

 

 

 

 メカトピア最高議会の議員は何も会議するばかりが仕事ではない。

 連日の戦闘で議会場での会議も毎日行われているが、そればかりで議員の仕事は終わらない。

 議員それぞれには専用の執務室が用意されており、議長であるオーロウも仕事の為に部屋に戻ってきて机に座っていた。

 

「全く嘆かわしい。 人間共に敵わぬ軍もそうだが、敗戦を視野に入れるアシミー議員共もだ。

 絶対的な力を誇示していた王の君臨するメカトピアであればこんな無様を晒さぬものを!」

 

 オーロウは金族であり今でこそ共和制の議会の議長の席で落ち着いているが、その本心は王制こそがメカトピアの正しい姿と思っていた。

 嘗ての戦争で共和制に破れ、金族の議席を約束させることで権力を残す事に成功したが、チャンスがあればメカトピアを王制に戻す事を諦めていなかった。

 今は議長の席で我慢し、王の様に絶対的な力は振るえずとも政を担いその手腕を示し続けていた。

 オーロウはズォーターとは違い、確かに上に立つ者の資質と実力を備えていた。

 

「随分荒れているようだな」

 

「っ! 貴様ら、なぜここにいる!?」

 

 自身の執務室に現れた存在にオーロウは怒鳴りつける。

 それはオーロウが議会にも存在を隠している自身の協力者だった。

 そんな存在がここにいるという事は隠している場所からここに来たという事であり、その道のりで誰かに発見される危険性があったことになる。

 

「安心しろ、見つかるようなヘマをするほど我らは愚かではない。

 それに我々は貴様の協力者であっても部下になった覚えはない。

 必要以上の指図は受けん」

 

「もし見つかる事になれば私がお前たちを処分する事になるかもしれんぞ」

 

「そうならぬことを願っているのだろう、協力者よ」

 

「ふん」

 

 オーロウにとってこの協力者達は替えの利くものではなかった。

 自身の立場が脅かされるなら止む無しだが、役割を果たしてもらうまではいなくなるのは困るのだ。

 

「お前に朗報を持ってきたのだ。

 頼まれていた例の物の製造ラインが稼働を開始したぞ」

 

「そうか、ついにか! よくやった!」

 

 目的の物の成果が上がった事を聞いたオーロウは歓喜し椅子から立ち上がる。

 

「我々は約束を果たしたがお前の方はどうなのだ?

 人間を連れてくるという話は失敗して、噂を聞く限り戦争になってしまっているようではないか。

 その上戦況はかなり良くないという話も聞く。

 我々は約束を果たしたというのに、お前が果たせないのではこの成果もお前に渡すわけにはいかないな」

 

「ま、待て! 戦争にはなったがまだ負けたわけではない。

 人間はそこまで来ているのだ。 必ず捕らえお前たちの元に連れてくる!

 その為に人間奴隷化計画を立案したのだからな」

 

 人間を奴隷にしようと立案したのはオーロウであり、それは協力者に対する対価を支払う為であった。

 真の思惑は別にあったが、オーロウは人間を捕らえるために労働力という名目で議題に挙げ、議員たちを説得するなどの骨を折っていた。

 実際に労働力の問題は前々から上がっていたので、それをうまく誘導しオーロウはこの計画を正式に承認させることに成功したのだ。

 その結果がハジメ達との戦争に繋がってしまったのだから自業自得と言える。

 

「確かにその計画を実行に移させた手腕は認めるが、実際に人間を連れてこなかったのでは意味がない。

 取引を違えた代償は貴様自身に支払ってもらうことにするか?」

 

「待て、まだ失敗したと決まったわけではない」

 

 オーロウは協力者たちの力を知っている。

 その力は自分たちメカトピアのロボット達と相性が悪く、全てを奪われかねない恐ろしい力だ。

 彼らと初めて接触した際に、自身の配下が全てを奪われるところも目撃している。

 

「…まあいい、人間が近くまで来ているのであれば、こちらにも打てる手がある。

 約束を待ってやる代わりに、貴様にはもう少し動いてもらう事にしよう」

 

「何をしろと言うのだ」

 

「なに、この戦争に少し手を貸してやろうというのだ。

 成功すればお前も我々も目的が早く達成されるだろう」

 

「………」

 

 オーロウは協力者の提案を飲み、議長と金族の権力を行使することになる。

 金族の自尊心からロボットでもない者達に従わねばならぬ事に怒りを覚えるが、それを口にして協力者の機嫌を損ねる訳にはいかない。

 彼らこそがオーロウの元にやってきた王威を取り戻すチャンスなのだから。

 

 

 

 

 


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