ドラえもんのいないドラえもん  ~超劇場版大戦 地球は何回危機に遭う~   作:ルルイ

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 感想及び誤字報告ありがとうございます。
 タグを使い始めましたが、ちょっと見にくいかな?



真・鉄人兵団23

 

 

 

 

 

 撤退を開始したハジメ達とメカトピア軍は、崩壊を続ける地下施設の通路を駆け抜けていた。

 施設全体の揺れは収まることなく続き、どこかでエネルギー漏れが起こって遠くの方からも爆発音がいくつも聞こえる。

 通路にも崩壊を始めたことによって落ちてくる鉄材が散らばり、時折落ちてくるものに当たってしまう兵士も何人かいた。

 しかしここにいるのは人間ではなく鋼鉄の装甲を纏ったロボットばかりで、天井からの落下物程度の衝撃で行動不能になるものはほとんどいなかった。

 

 順調に通路を駆けていたが、前を進んでいたメカトピア兵の足が止まる。

 何事かと思いながら、前が止まってしまった以上ハジメ達もそこで足を止めざるを得ない。

 

「何があった?」

 

「申し訳ありませんアシミー様!

 縦穴の前の出入口が大量の落下物で塞がってしまっているようなのです」

 

 兵士たちの向こうを見れば、天井から降ってきたと思しき鉄材の山が見えた。

 

「退かせないのか?」

 

「時間を掛ければ少しづつ瓦礫を退かせそうですが…」

 

「その様な時間はない、か」

 

 アシミーは仕方なく一度戻って別のルートを進もうとハジメに提案しようとする。

 

「僕が瓦礫を吹き飛ばします」

 

「出来るのか?」

 

「迂回するならそれを試してからです。

 兵士に道を開けさせてください」

 

「わかった。 総員、道を開けろ!」

 

 アシミーの命令で兵士たちはあっという間にハジメが駆け抜けられる道が生まれる。

 

「瓦礫の前の兵士も下がってください!」

 

 そう忠告しながら、ハジメは兵士たちの間を駆け抜けていく。

 

俺のこの手が真っ赤に燃える。 勝利を掴めと、轟き叫ぶ

 

 必殺技のキーワードに従い、背部の羽と胸部の装甲が展開し輝きを発し始める。

 更に両腕を左右に開いて、両手のプロテクターもスライドさせて力をため込む。

 流石にこの兵士たちの見る中で叫ぶのは恥ずかしいと、小声で前座のキーワードを呟く。

 必殺技を出すのにこのキーワードを言わないといけないと設定してしまったので、人前であってもこのワード詠唱は必要不可欠だった。

 省略しても使えるようにしておけばよかったと、つまらない遊び心に少し後悔する。

 

爆熱! ゴッドフィンガー!!

 

 その叫びと同時に両手を道を塞ぐ瓦礫の山にたたきつけた。

 

バースト!

 

 続けた掛け声とともに爆発のエネルギーを前方に向けて一斉に開放した。

 近接で敵を倒す以外にエネルギーを前方に拡散させるやり方が出来るように機能を追加していた。

 先ほどリルル達と合流した時に扉を壊したのもこのやり方だった。

 

 瓦礫の山はハジメの予測通りに必殺技のエネルギーに耐えられず、爆発によって前方に押し出され通路を開くことが出来た。

 その先は上下の吹き抜けになった広い大きな縦穴になっており、空を飛べば兵士もジム達が全員は入れるスペースがあった。

 ハジメが一足先に縦穴に出て飛んでみるが、崩壊によって上から色々落ちてきており、注意しなければならないと感じる。

 

「大丈夫だ。 だが上から落ちてくるものには注意しろ」

 

 ハジメの呼びかけに兵士たちがハジメに続いて縦穴に出て飛び上がってくる。

 流れるように兵士たちは通路を抜けて、後方にいたアシミー達とそれに続いてファーストとジム達も抜けてくる。

 

「ハジメ殿、よくやってくれた」

 

「気にしないでください。 それよりも急ぎましょう」

 

 アシミーの感謝を流し、ハジメは時間がないと急かす。

 上からは巨大な鉄管などもバラバラと降ってきて、崩壊が進んでいることがうかがえる。

 全員急いで地上に近づくように上に向かって飛んでいく。

 縦穴の天井は地上には通じておらず、再び横への通路が四方にあるだけだった。

 

「次はどっちに行く」

 

「ここは地上にだいぶ近いはずです。

 この天井をぶち抜いて脱出します」

 

「もう一度さっきの攻撃をやるのか?」

 

「いえ、下からの攻撃では崩落して危険ですし、地上までは先ほどの障害よりも分厚いので抜けるか分かりません。

 仲間に連絡して上から穴を開けてもらいます」

 

 ハジメは船に通信を開き、隊長に連絡を取る。

 

「隊長、聞こえているか?」

 

『ああ、そちらの様子は把握している。

 だが外も凄い事になっているぞ』

 

 船から地下にいるハジメ達の様子をモニターしている隊長は、地上の様子も同時に把握している。

 地上では何かが起こっているらしいが、今は脱出を優先させたいとハジメは聞き流す。

 

「凄い事? この施設の崩壊と関係があるのかわからないが、ウイングは今空いてるか?」

 

『ウイング? …ああ、なるほど、そういう事か!』

 

 様子を窺っていた隊長には、ハジメが何を求めているのかウイングの名前を聞いて察しがついた。

 

『外の雑魚の掃討も終わって、今は手は空いている状態だ。

 全力でぶっ放させるから、そっちの準備が終わったら声をかけてくれ』

 

「察しが良くて助かる。 巻き込まれないように退避させるから少し待ってくれ」

 

 同じハジメである隊長には、ハジメの望んでいることを察するのは難しい事ではない。

 

「アシミーさん! 兵士を横の通路に逃がしてください。

 天井を地上からの攻撃で穴を開けるので、縦穴から避難させてください」

 

「わかった。 総員、横の通路に入って縦穴から離れろ。

 天井が崩れるぞ!」

 

 アシミーの指示に兵士たちは従い、迅速に横の通路に入っていく。

 

「ファーストもジム達を横の通路へ!」

 

「了解です」

 

 ジム達も横の通路に入っていき、最後にハジメ達も通路に入って、縦穴にいるものは誰もいなくなった。

 

「隊長、こっちはいつでもOKだ」

 

『了解した。 ウイング、目標の地下の縦穴の位置は分かっているな!』

 

『問題ありません。 データと照合して縦穴の上部に待機しています』

 

 隊長の方はウイングに既に指示を出して配置に着かせていた。

 

『よし、バスターライフル、フルパワーで発射だ!』

 

『了解。 バスターライフル、発射します』

 

「来るぞ! 衝撃に備えろ!」

 

 ハジメが通路に避難した者達の声をかけた直後、施設の揺れとは別に大きな衝撃が起きた。

 僅かに時間が開いた後に縦穴の天井が赤熱化して、次の瞬間には巨大なビームが突き抜けていった。

 もし縦穴に残っていれば、多くの兵士が成す術もなく飲み込まれて消滅していただろう。

 

 ビームは天井を貫いてすぐに止み、あとには貫かれた天井の大穴の側面が赤く熱を発しながら溶け残っている。

 これでモビルソルジャーのウイングのバスターライフルの威力なのだから、オリジナルのサイズになれば相当な破壊力になるだろう。

 

「あとは外に出るだけです。 アシミーさん、兵を送り出してください」

 

「わ、わかった。 全員急いで穴から脱出しろ!」

 

 メカトピアの兵士を優先して外に送り出し、アシミーは通路前の縦穴で全員が出るのを確認するために様子を見ている。

 

「地上からここまで貫くとはすさまじい威力だったが、先ほどのは戦艦の砲撃か?」

 

 縦穴の天井から地上までは、貫かれて道が出来たことによってその厚みが明確になっている。

 その厚みは十メートル以上は優にあり、並の威力の武器では一度で破壊するのは無理だとはっきりわかる。

 

「いえ、あの真上にいるロボットの高出力のビームライフルの威力です」

 

 貫かれた天井から見える上空には、バスターライフルを撃った後のウイングが待機していた。

 こういう事をやらせるのだったら、ツインバスターライフルを持つウイングゼロを連れて来ておけばよかったとハジメは少し思った

 

「………あのサイズのロボットでこの威力が出せるとは、つくづく地球に戦いを挑んだ我らの馬鹿さ加減に呆れる」

 

「ですが、金族に取り入ったヤドリの暗躍が原因ではないですか」

 

「我ら以外の思惑によって動かされていたのでは、尚の事呆れるではないか」

 

 メカトピアの議員として地球のロボットの(こわ)さに、改めて失敗を自覚して自虐する。

 その間も兵士たちは迅速に地上に抜け出していき、ハジメ達と後にはジム達が続く。

 

「外では何か起こっているようです。

 上に逃げる様子だったヤドリ天帝の事達も気になります。

 僕らもそろそろ上に上がりましょう」

 

「そうだな、このまま奴らを逃がすわけにはいかない」

 

「急ぎましょう。 ヤドリが上に行ってるなら早く捕まえないと」

 

 リルルはヤドリを逃がすわけにはいかないと地上を目指して飛び上がり、アシミーとハジメも追って上に飛び、それに続いてファーストとジム部隊がついていった。

 地上に抜けようとしたリルルは、先に外に出た兵たちが全員同じ方向を見ている事に気づく。

 それにつられてリルルも地上に出ると同時に同じ方向を見ると、次の瞬間には絶句する。

 

「っ!!」

 

「どうしたリルル」

 

「アシミー様、あれを!」

 

「なっ!!」

 

 リルルが指示した方向にあったのは、聖地から生える見上げるほど大きな巨大なロボットの上半身。

 しかも地下からせり上がってきており、その全容は予想するだけで全長一キロ近い物になると予想できた。

 

「奴ら、あんなものを地下で作っていたのか!」

 

 アシミーのいう奴らとはヤドリかオーロウかはわからないが、あの大きさの物を建造するとなれば相当昔から作られてきたのだと予想できる。

 それに気づけば、ヤドリがメカトピアにやってきたのはごく最近であり、おそらくオーロウ率いる金族によって時間をかけて作られたのだろうと予想出来た。

 あれほどの物を作ろうという金族の考えは碌なものではないとアシミーは察するが、まず間違いなくあれを操っているのがヤドリ天帝だ。

 

「ヤドリ天帝が言っていた力とはあれの事か」

 

「あれほど大きなロボットであれば、確かに動かすだけで多くを圧倒出来る力でしょうね」

 

「どうしよう、ハジメさん」

 

 その巨大さに圧倒されて、リルルはハジメを頼るように尋ねる。

 

「確かに大きさは脅威だけど、大きいなら大きいでやりようがある。

 正面から戦おうとはせずに、あのロボットの中に潜り込んで動力なんかの重要機関を破壊すれば倒せるだろう。

 あれだけの大きさだ。 内部に動き回れるスペースもあるはず」

 

「そ、そうね!」

 

「なるほど、それならばあの巨体相手でも倒す事は出来るか。

 俺は艦隊の司令部に合流して兵たちの指揮を取り直す。

 あれのせいでだいぶ混乱しているようだからな」

 

 周りを見れば、兵士たちはあの巨大なロボットの威容さに飲まれて狼狽えている。

 統率を取り直す必要がありそうだ。

 

 そんな時に、周りの兵士たちが騒ぎ始め、ロボットの方を指で指し示すものが増える。

 

「何だ?」

 

「見て! あの大きなロボットの腕!」

 

 リルルが気付いた指を指し示す方向には、巨大ロボットの腕があった。

 近寄りせり上がってくるロボットはついに指の先まで地上に姿を現していた。

 その腕が地上にすべて出ると同時に動き出し、両手を広げながら少しずつ腕を上げ始めていた。

 

「何かしようとしているみたいです。

 アシミーさんは何が起こってもいいように、兵士たちの指揮を取り直してください」

 

「わかった、すまないが行かせてもらう!」

 

 アシミーは指揮をとるために司令部に向かって全速力で飛んでいく。

 

「リルルはどうする?」

 

「この姿じゃあアシミー様と一緒に行っても目立つだけよ。

 ハジメさんについていくわ」

 

「なら僕らも旗艦に戻ろう」

 

 ファーストとジム部隊も引き連れ、いったん自分たちの船に合流するために飛んでいく。

 旗艦にたどり着くまでもうすぐといったところで、隊長から通信が入る。

 

『気を付けろ! あの巨大ロボットの両腕にエネルギーが集まっている!』

 

「なんだって」

 

 隊長の通信は全ての自軍に送られており、警告を聞いたモビルソルジャー達が警戒態勢を取った。

 ハジメとリルルの周りに巨大ロボットに対して壁になるように、ファーストがジム達を集結させる。

 

「隊長、メカトピア軍への警告は!?」

 

『そちらにも警告は送っている! それよりも動きがあるぞ!』

 

 ハジメが改めて巨大ロボットを見れば、腕が水平に持ち上げられ手を開き指を広げている。

 両腕の装甲の各所が開いて、そこから砲身が飛び出してエネルギーを貯めているのがわかる。

 巨大なロボットの腕だけあって装甲の面積はとても広く、装甲が開いて飛び出す砲身の数が数え切れなかった。

 

『攻撃来るぞ! 全員防御態勢! バリア出力最大!』

 

『了解、バリア出力最大』

 

 隊長が命令を下した直後、巨大ロボットの両腕の無数の砲身から一斉に光線が放たれた。

 

 

――バシュシュシュシューーーーーーン!!!――

 

 

 花火の様に広がった無数の光線は無差別にこの場にいたロボットに降り注ぎ、盾を持ったモビルソルジャーは耐え抜いた者が多くいたが、バリアすらないメカトピア兵たちは直撃すれば無事では済まなかった。

 無数に放たれた光線故に威力は低いように思えるが、放ったのは見上げるほど巨大なロボットだ。

 一条一条の威力は戦艦の主砲ほどではなくても、人サイズのロボットでは容易に貫かれて複数体纏めて破壊されたロボットもいた。

 ハジメ達のモビルソルジャーもそれなりに被害が出ている。

 

「結構な威力だ。 これだけ無差別の連続攻撃なら威力はそこそこ低いはずなんだが」

 

「あれほどの大きさだもの。 その分高い出力の動力を備えているはずよ。

 ジム達が盾を構えてくれなかったら、私達も危なかったわ」

 

 ハジメ達の前にジムが並んで盾を構える事で、光線を一切通す事はなかった。

 他の場所に飛んでいった光線が、味方を纏めて貫いて撃墜するのが見えて、その威力に少なからず慄く。

 

『どうだ見たか、地球のロボットよ、メカトピアのロボット共!』

 

 攻撃を終えた巨大ロボットから外部スピーカーによって大きな声が響き渡る。

 その声は先ほど地下施設で遭遇したヤドリ天帝の物だった。

 

『これこそ金族の生み出した絶対的な力、機神ガインだ!!

 下らぬ虚栄心の為に生み出されたコレを使うのは業腹だが、我が臣民を殺した物共を断罪出来るのであれば手段は選ばん!

 塵芥に還るがいい、地球軍!』

 

 

――バシュシュシュシューーーーーーン!!!――

 

 

 再び腕の無数の砲身から光線が発射される。

 今度は無差別ではなくハジメ達地球側のロボットや戦艦に多く当たるように、攻撃を地球側に集中させている。

 ジム達の盾によってハジメ達は無傷で済んでいるが、光線の雨は散発的に放たれ途切れる事がない。

 

「これは思ったより拙いかもしれないな」

 

「少なくともメカトピア軍のロボットじゃ、さっきハジメさんが言ってた作戦を決行する前にこの光線の雨にやられちゃうわ」

 

「この光線も量産機には無視できない攻撃力だ」

 

 盾に隠れた横目で見れば、盾を持たないムラサメや火力重視のザクが回避に失敗して落とされるものがそこそこ見受けられる。

 

『工作員、そのまま耐え続けるのは辛いだろう。

 一旦船に帰還するか戦艦の後方に回れ。

 この攻撃も船のバリアなら十分耐えられる』

 

 ハジメ達が自軍の船の方を確認すれば、無数に放たれる光線をバリアが全て弾いていた。

 

「よし、一旦船の中に戻るよ」

 

「わかったわ」

 

 ハジメ達は攻撃に晒されていない後部のバリアを解除してもらい、旗艦の中へ退避した。

 

 

 

 

 

 





ウイング「任務完了」

 セリフは場面上出せなかったけど、きっと言っていたと思う。

 残念ながらウイングはゼロではなくTV版の初期型です。
 なんか調べてみたらウイングっていくつもバージョンがあるんですね。
 地上をぶち抜くシチュエーションに気づいてくれると嬉しいです

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