1945年
大日本帝国の条件付き降伏により第二次世界大戦終戦。その際に原子爆弾は落とされていない。
その後、東西冷戦の戦力としてアメリカなど西側諸国からの支援を受け復興。
日本はポツダム宣言を受け入れておらず、軍が存在しているが一部施設はアメリカが駐屯し管理を行っている。
しかし、旧日本軍が建造、使用していた艦艇は全てほぼ史実通りの結末を辿っているため、新日本軍が使用しているのはアメリカから譲渡された艦艇(度重なる近代化改修によりほとんど別物と呼べるほどまでの変貌を遂げた)。
◇◇◇
2006年
深海棲艦が突如太平洋上に出現。アメリカ海軍の哨戒中だった艦艇を全て轟沈。
それから幾度も現れるようになり制海権を奪い始めた。
◇◇◇
2008年
アメリカ海軍を中心に大規模反攻作戦『シーレクーバー作戦』決行するも失敗。アメリカ海軍は戦力の約4割を失う。
それと同時期に日本のシーレーンが深海棲艦に封鎖され物資供給が滞り始める。
アメリカは「戦術核を使用すれば勝利できた」という声明を発表、各国からの批判を浴びる。
戦術核を大量に使用しても深海棲艦を全滅させる事が可能とは思えない、その後の海洋汚染などの様々なことが反対の理由として数多く挙げられた。
◇◇◇
2015年
深海棲艦が太平洋の約7割の制海権を奪う。
その後、大西洋、インド洋にも出現を確認。日本のシーレーンが完全に深海棲艦に封鎖される。
また、各国のシーレーンも徐々に狭まり始める。
◇◇◇
2019年
物資はこの頃には完全に足りておらず各地で暴徒が多数発生。軍が出動し鎮圧する。ということが頻繁に起きた。
合成食品の生産量を増やすなどしての状況打開を図るがあくまでも応急的なものだった。
◇◇◇
2025年
日本を主導とし二回目の大規模反攻作戦【明星作戦】を決行。
敵旗艦を撃沈、ほんの僅かなシーレーンを奪還するも新種を6種確認。
しかし、この作戦の成功により物資の供給量が比較的上昇、また、各国からの支援も多く受けることができるようになった。
◇◇◇
2027年
深海棲艦用兵器の開発を開始。その兵器は日本主導で開発を行うことを条件に各国共同で進められる。
◇◇◇
2030年
艦娘完成。専用設備のある鎮守府も同時期に建造される。
現状
「私が、新しい部隊の指揮を、でありますか?」
その広い部屋はかなり広い。30人は余裕で入ることができる会議室。
だが、その無駄に広い部屋に対し、人はかなり少ない。
まずは疑問を口にした青年、そして長机を挟んで青年の向かい側に椅子に座る男性3人。
彼らは青年の上官だ。
たったこれだけの人数しかいないせいでその部屋の物寂しさや冷たさをより強調させている。
そして、男性たちの後ろにはスクリーンがあり、そこにはとある部隊の概要が映し出されていた。
「ああ、そうだ。不満はあるまい?」
男性3人の内、中央にいる初老の男性は余裕を感じさせる面持ちで告げた。
青年はため息を押し殺し、それを隠すように顔を下す。
(有ろうと無かろうと無理矢理やらせるくせに、よく言う……)
青年は舌打ちを堪え心の中で愚痴る。
そんな青年の心の内など知る由もない両サイドにいる中年の男性たちが続けざまに言う。
どちらも青年をどこかバカにしているような面持ちと声色だった。
「これを引き受ければ君は晴れて昇進、少佐になるのだぞ?悪い話ではあるまい?」
「そうだな。むしろ喜ばしいことではないか」
男性2人のニヤついた表情を見て青年は舌打ちと罵倒の言葉を堪えるためにスクリーンに視線を移す。
(……喜ばしい、か。厄介払いついでじゃないか。こんなもの……)
青年は男性3人に視線を戻す。
(俺をこれ以上置いていても仕方がない。しかし、おいそれと手放す訳にもいかない、か。……だが、他に選択肢も無し)
青年はしばらく目を閉じ、決心すると目を見開いて敬礼を男性3人に向けた。
「はっ。
海斗の答えに満足したようで初老の男性は頷いた。
続けて少し明るめの声音で告げる。
「……そうか。では、よろしく頼む。詳しい事は後日資料を配布するのでそれを参照するように。貴官の武運を祈る」
男性3人も敬礼を返した。
◇◇◇
「それでは失礼いたします」
海斗は礼をしながら会議室を出た。
そして廊下を歩き出そうと振り向いた時に声をかけられた。
「大尉。話はなんだったのですか?」
「……源中尉か」
声をかけたのは
海斗の数少ない同期で友人でもあるが階級のせいで外ではあまりそういう態度を取れないのを海斗は少し気にしている。
ちなみに海斗が隊長を務めている部隊の副官でもある。
海斗が歩き出すと真也はその左後ろ斜めに続いて歩き始めた。
「なに、新しい部隊の指揮をしろとのことだ。喜ばしいことに俺は昇進するそうだ」
海斗のどこか投げやりな言葉に慎也は疑問を感じながらも笑顔を浮かべる。
「それは、大変喜ばしいことではありませんか。何故、そのような表情をしているのですか?」
慎也の言うとおり海斗の表情は重く同時に暗くもあった。
海斗は立ち止まり辺りに気配を配る。
それで人がいないことを確認すると少し小さめの声で言った。
「……今は、極秘扱いだがどうせそのうち一般人にも知れ渡ることだから少し話そう。俺が着任する部隊は【対深海棲艦用の部隊】だ」
それを聞き慎也の表情は一瞬で驚愕に変わった。
「な!?そ、それは本当か!?」
だが、しばらくするとその表情は怒りに変わっていく。
拳を握りしめ、歯を食いしばっているところから込み上げる怒りを無理矢理に押さえつけていることが容易に察することができた。
「落ち着け中尉。ここでは––––」
彼の制止により我に帰った慎也は頭を下げた。
「っ!!?す、すみません、大尉」
「……いや、中尉が怒る理由もよくわかる。まぁ、俺は怒りよりも呆れが出たがな。俺を使うことにまだ諦めていないのか、と」
「……ですが。なぜ、大尉に?」
その言葉には「自分でも問題がないだろうに」というニュアンスが含まれていた。
「色々と扱い易いんだろうな。なに、直接殴りあうわけではないよ」
(少なくとも今のところは……)
2人は自分の部隊の司令室にたどり着いていた。
海斗は少し硬い空気を和らげるように明るく言った。
「今日は少し呑まないか?おそらく、しばらくは一緒に呑めないだろうしな」
「……はっ。お付き合いします。大尉」
2人は笑顔を浮かべながら使い慣れた司令室に入った。
突如として太平洋に現れたそれを日本軍(新日本帝国軍)はそう名付けた。
日本が条件付き降伏をしたことで第二次大戦が終息、冷戦状態もひとまず落ち着き世界は少しずつ平和への道を歩み出した。
そんな時だった。
太平洋上にいたアメリカ海軍の艦を謎の攻撃が襲ったのだ。
もちろん応戦はしたがその小ささから主砲、魚雷が当たることはなくあっという間に轟沈。
他の通常兵器も導入されたが命中することはなくむしろ被害が増えていくだけ。
運良く攻撃が命中しようとも【特殊空断層】と名付けられたフィールドにより攻撃は一つの例外なく無効化された。
その後もその状況は続き深海棲艦は次々と行動範囲を広げ、現在では人類は制海権の約8割を深海棲艦に掌握。
それに対して有効な打開策もなく、劣勢を強いられている。