夢だったかもしれない幻想入り   作:歌 華

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#14 別れと再会

  とうとうこの日がやってきた。

 

  1週間くらい白玉楼に住み込みで妖夢から色々教わったが、今日この日をもって、俺はここを離れないといけなかった。いや、そこまで強制では無かったんだけど、やっぱり早く家に帰りたかったからこうすることにしたのだ。

 

 「今までお世話になりました」

 

  俺は2人にそう告げると、幽々子と妖夢は何かを思い出したかのように、慌てて屋敷の中に引っ込んでしまう。

 

  しばらくして、2人は走って俺の元に戻ってきた。

 

 「これ、よければ差し上げます」

 

 「紫が言ってた鍵の事をすっかり忘れてたわ!ごめんなさいね」

 

  妖夢は剣、幽々子は何かの南京錠のようなものを持ってきた。そういえば、かなり前に誰かが鍵がどうのこうの言ってたな。

 

 「お、おう・・・頂戴するぜ」

 

  妖夢の手に乗せられた剣を静かに取り、幽々子のは・・・適当に3つあるうちの鍵を1つずつ挿せばいっか。

 

 カチャカチャ、カチッ。

 

  お。たまたま選んだ鍵が正解だったらしく、南京錠の掛け金が上の方にちょっとだけ伸びた。

 

 幽々子は外れた南京錠を投げ捨て、てかよく見たら箱だったのか・・・箱の蓋を開けた。

 

 「紫がね、言ってたのよ。貴方がなんかの項目を修了したら、これの中身のものをあげろって」

 

 ということは、シークレットアイテムが貰えるってことか。何が貰えるんだろう。

 

 箱に近づいてよく見ると、中身はなんと黒いナイフとお守りが入っていた。

 

 「はあ、すげえ物騒な・・・」

 

 俺は今後誰かに目をつけられてしまうのだろうか?そんな不安を持ちながらナイフとお守りを取り出したが、ナイフを持った瞬間にそんな不安はすぐ消えた。

 

 むしろ興奮した。俺にとってはナイフを見て触るのは人生初だった。このナイフさえあれば包丁なんてもういらない!そう思った。

 

 でもあまり使いたいとは思わなかったから、ケツポケにホルダーと一緒にしまって、お守りは財布の中に入れた。

 

 「紫には感謝しないとな・・・妖夢、幽々子。今までありがとう・・・お世話になりましたっ」

 

 妖夢と幽々子に向かって、俺はお辞儀した。ここはこの世界で一番平和なところだった。その代わり白いのがうようよしてて不気味というか、気持ち悪かったが。

 

 「もーう、後で私にお団子を貢いで来なさいよぉ~?」

 

 「へへっ、そんじゃあな!」

 

 俺は走るようにして、白玉楼の階段を駆け下りて2人の元を後にした。

 

 

 ☆彡

 

 

 ようやく階段を下りきったぞ!俺はただそれだけで喜んでいた。しかしある問題に気付く。

 

 "これからどうしようか"

 

 そう、何も予定を考えていなかったのである。そして俺は未だに空を飛ぶ事はできず、妖夢から剣術を教わっただけである。まだ何か物足りないのか?これ以上何かを求めてもただの高望みでしかないんじゃないのか。

 

 俺は特に何も考えないまま適当に道を歩いていくと、なんと湖が見えた。まだ朝だからか、湖は霧に覆われていて視界が悪くなっている。

 

 道がわからなくなる前に来た道を戻ろうとしたが、時は既に遅し。後ろも真っ白で何も見えなくなった。自分の体と手足以外真っ白な世界に覆われて、まともに動けなくなった。

 

 あまりに場所が悪すぎる!それに寒いし・・・幻想郷というのは、本当に山奥に存在しているみたいだ。

 

 全視界が見えなくて突っ立っていた俺だが、そんなとき、後ろの方が声が聞こえてきた。

 

 「ごめんなさい祐介さん!」

 

 こう耳打ちされた俺は、思わずびっくりして、へっ?と間抜けた声を出してしまった。

 

 意味がわからずぼーっとしていると、突如後ろからバチバチッ!と電撃を受けたようで、俺は人生初めて気絶という感覚を味わった。

 

 

 ☆彡

 

 

 気絶している(あいだ)というのは実にあっという間で、聴覚が僅かに生きている状態だった。意識が戻り目を開けると、見覚えのある場所に俺はいた。

 

 電源が入ってない番号式のインターホン、カーテンが開いたままでも真っ暗な管理人室・・・。

 

 なんでマンションのエントランスにいるんだ?

 

 照明すら点いておらず、誰もいないかのように静まり返ったエントランス。実に異様な光景である。

 

 その瞬間、電源がないと開かないはずのロック式のセンサードアがなぜか開き、懐かしい人物と遭遇する。

 

 「あれ、お前・・・」

 

 「・・・お久しぶりです、祐介さん。先程のは私がやりました。申し訳ありません。突然ですが、私の事を覚えてますか?」

 

 赤いリボンの入った黒い帽子、紫色の髪の毛。いつも重力に逆らっているかのように浮いている掛け布団もとい羽衣・・・。

 

 「・・・衣玖、だったか」

 

 いく。普段からよく聞く言葉だし単純な名前であることから、すぐに覚えられた名前だ。

 

 「はい、そうです。会うのは数週間ぶりでしょうか」

 

 「だと思うけど・・・?でさ」

 

 「はい」

 

 「何がしたいんだ?」

 

 「え?それはどういう・・・」

 

 「俺に何か用があるんだろ。わざわざ気絶させてまでここに連れてくるくらいなんだから、とっておきの事があんだろうな?」

 

 俺がそう言うと、衣玖は黙り込んで顔を俯きながらこう言った。

 

 「・・・貴方、総領娘様に何かしようと企んでますね?度々見かけるのですよ。貴方があの屋敷で必死こいて何かを振り回してるところ」

 

 「!」

 

 やはり見られていたのか。衣玖にも黙っておこうと思ってたのだが、雲から空飛んでりゃ、そりゃ見えちゃうのもしょうがないな。

 

 「・・・そうだよ。俺はアイツに用がある」

 

 「用とは?」

 

 「俺は、あいつがむかついてしょうがねえんだ。このイライラモヤモヤした気持ちを、いつかアイツにぶつけてやらないと気が済まねえ」

 

 「・・・」

 

 衣玖は何を思ったのか、また黙り込んで動かなくなった。そのスキをついてドアを無理やり手で開けようとしたところ、意識が覚めた衣玖が俺の手に何かバチンとやってきた。すげえ痛かった。

 

 「そんな理由で、私が貴方を総領娘様のところに通すとでも?」

 

 そんな事言ってるけどよ、ここは元々俺の住居でもあるんだぞ。

 

 「じゃあどうすりゃアイツに会えるんだよ」

 

 「・・・実を言うと、私も少しイライラするんですよね、あの方といると」

 

 「だろ!?なら俺と・・・!」

 

 「・・・いつから、私は貴方の味方であると錯覚していた?」

 

 お前そのセリフ・・・俺の部屋にある漫画を読んだのか?

 

 「・・・は?どういう」

 

 「総領娘様に手を出すなど、私が許しません。どうしてもというのなら、まず貴方の腕を試させてもらいます!」

 

 こんな感じで、俺と衣玖はエントランスにて戦闘を開始することとなった。

 

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