夢だったかもしれない幻想入り   作:歌 華

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#17 激痛の彼方

 俺はもう、内蔵という太鼓が強く叩かれていた。

 

俺はまだこういう争い事だとか怒鳴ることに慣れていないため、暴言を口にした時はもう心臓がバクバク言うのだ。今まさに、そんな気持ちである。

 

 

 

「へぇ~、天人の私に刃向かう気ね?人間のクセして偉っそうに!」

 

 

 

 そう言って天子は笑った。おそらく俺が刃物を持っていることがおかしいのだろう。

 

 

 

「いいわよ?かかってこないの?」

 

 

 

 こうして天子が気を抜いている最中にジョキ!っと斬ってしまえば、コイツ死ぬのかな。

 

 

 

「遅い!」

 

 

 

 俺からの攻撃を待っていた天子が、なんとヤツから攻撃してきた。刀で天子の剣から守り切れるかと思い、早速ガードすべく、刀を下から上に上げた。

 

 すると、天子は力を抜いていたのか、緋想の剣が刀に弾かれて俺の後ろに飛んでいった。

 

 天子が無防備な時がチャンス、まさに今がそうだ!!

 

 

 

「てえあっ!」

 

 

 

 天子に刀を振りかざした、そのときだった。

 

 瞬間、気がつけば俺は居間の方に弾き飛ばされていた。

 

 

 

「ん~もう終わり?デカイ口叩くわりには弱いじゃない。やっぱ、所詮人間は人間よね。期待はずれだわ」

 

 

 

 体中が激痛に襲われ、俺は動けなくなった。このままじゃ、死ぬかも・・・!

 

 天子がゆっくりと俺の方に近づいてくる。やがて天子は俺の前でピッタリ止まり、子供に話しかけるようにしゃがみ込んだ。

 

 

 

「まさか、もう力尽きたとか言わないわよねぇ?」

 

「そんなわけ・・・!」

 

 

 

 俺は頭がフラフラする中、限界を振り絞って応えた。

 

 

 

「なら、私をもっと満足させてみなさいよ」

 

 

 

 天子がそう言うと、俺は天子に胸倉を掴まれ、ベランダにつながる窓ガラスに潰すように思いきり俺を押しつけ、天子は俺の苦しむ顔を見て笑っていた。

 

 そしてとうとう窓ガラスは圧力に耐えきれなくなり、割れてしまったせいで俺はベランダの柵に頭を強く打ってしまった。

 

 もう限界だ・・・俺は間違いなく死ぬ。

 

 虫の息寸前、俺はベランダで死を迎えるのをただ待っていた。

 

 しかし、天子がそれを許さなかった。

 

 この時の俺は、まともに目すら開けてなかったので何をされているかわからなかったが、天子に何か食わされたのを覚えてる。どういうものだったかは、味が無かったのでわからなかった。

 

 しかし俺はそれを食った瞬間、何かに目覚めたように、急に元気が湧いてきた。

 

 もう頭の激痛なんかはどうでもいいほどに、本当は痛いけど気にするほど感じなくなった。

 

 足元がヨレヨレなまま、俺はベランダを立ち上がった。

 

 

 

 「もう俺は、今までの俺なんかじゃない。」

 

 

 

 

 そう思えてきた。

 

 

 だから天子に一発くれてやったぜ。そしたら天子のやつ、俺がずっこけると思って気を抜いてたらしく、見事俺の拳を素直に受け取ってくれて、天子は玄関の方に転げ落ちた。

 

 俺はこの時初めて天子に弾かれずに触れたのだ。

 

 しかし、これで勝ったとは思いもしなかった。これで勝てたなら、俺は死んでもいい!死ぬほど恨みを天子に晴らせられるのはいいが、俺は生きてる天子に恨みを晴らしたいんだよ・・・!

 

「うぎぎ・・・やってくれるじゃない」

 

 天子はゆっくりと、その場で剣を杖替わりにして立ち上がった。俺は天子の方に歩いていく。

 

 

 

「その調子よ・・・ふふふ・・・あはは」

 

 

 

 天子も段々狂い始めてきたか?俺はさっき言われたことを言い返す。

 

「そんな事を言っている暇があるのは羨ましいな」

 

 今までケツポケに隠してたナイフを素早く取り出し、俺は天子に抱きつく感じでナイフをぶっ刺した。やった。これで天子は重傷を負って、俺に降伏してくれる───

 

 

 

はずだった。

 

 

 

「な・・・!!」

 

 

 

 ナイフがなんと、天子に貫通はおろか、ヤツの服にすら触れていなかったのである。

 

 思わず天子の顔を伺うと、その瞬間張り倒されて馬乗りされ、両手を足に挟まれてしまった。

 

 

 

(しまった!!)

 

 

 

 圧倒的な怪力を持つ天子の足から手を引こうなんて無理にも程がある。だからと言ってむやみに暴れるのは体力がすり減るだけだ。

 

 

 

「このっ・・・よくも私のに触ってくれたわね!!ふんっ!!」

 

バキぃっ!

 

「ぐあぁッ!」

 

 

 

 身動きが取れない俺は、ただただ天子のパンチを喰らい続ける。

 

 私のにって、俺はヤツの一体どこに触れてしまったのだろうか。自分では気づかなかったが、ヤツにしかわからないところを俺は触れてしまったのかもしれない。

 

 

 

「それ、こちょこちょこちょ~!お仕置きっ!」

 

 

 

 俺は天子に馬乗りされているので、何も出来なかった。よって俺は天子からのこちょこちょに耐えきらなければいけなかった。

 

 

 

「あ゛は゛っ゛!あ゛は゛は゛は゛っ゛!や゛め゛ろ゛お゛天子ぃ゛」

 

 

 

 悪魔祓いでよく聞くような、あんなデスボイスが自分の声から出てきた。こうして、俺の体力の限界になるまでこちょこちょ攻撃は続いたものだから死ぬかと思った。

 

 

 

「さ~て、次は何をしようかしらね・・・って、ちょっと!?」

 

 

 

 子供の頃に体操やっておいて良かったぜ。なんと俺の脚が天子の首に届いたのだ。そして俺はこの脚を使って天子から解放させ、今度は俺から馬乗りした。

 

 しかし怪力女は、あっという間に俺を玄関のドアに叩きつけた。

 

 またもや頭が激痛に見舞われ、今度はまともに動けなくなった。

 

 

 

「このォォ!!」

 

 

 

 動けない俺を、天子は緋想の剣で俺の頭を何度も叩きつけた。ガッ!ガッ!ガッ!と。

 

俺が最後に聞いた言葉は、天子の雄叫びだった。

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