夢だったかもしれない幻想入り   作:歌 華

21 / 26
#20 epilogueⅡ

戦って以来、一切の行方がわからなくなった衣玖。ヤツがいなくなってから、そろそろ5日が経とうとしていた。

 

本来の仕事を放棄してまで、相当ストレスでもたまっていたのか、または傷の手当でもしに行ったが、入院をせざるを得なかったのか、俺にはさっぱりわからない。

 

なぜ俺が総領娘様……もとい比那名居天子のお目付け役をしないといけないのだ。

 

おかげで散々な目にあったり振り回されてばかりだ。

 

衣玖は妖怪だからこんなことはちゃちゃっとやってのけるんだろうけど、俺はなんの力もない、ただの人間なんだぜ?

 

それがどうしたって言いたいんだろうけど、当然お前がこんな事知る由もない。

 

俺が言いたいのはただ一つ……

 

辛い。

 

ヤツのお目付け役をやって、6割がそれを占めている。では残りの4割は?

 

"面白い奴"だ。

 

俺は正直衣玖が羨ましい。なんでもっと早く気づけなかったんだろうか。

 

天子は、反応、顔面、性格、言葉遣い、容姿、いい意味で全てが面白い。

 

まさか本当にあんな大人びていながらワガママで、自己中で、反応が過剰で、本当に何も成長してない子供みたいなのがいると思ってなかった。

 

さらに家がお金持ちときた。

 

まさに『お嬢様』という言葉にぴったりなヤツだぜ。そんなヤツが誰の助けも必要とせず自ら母親になるって、マジで笑えてくる。

 

お前にはまだ早すぎると言ってやりたい。

 

だがヤツは凄かった。人間じゃないから凄いのかもしれないが、そんなの関係ねえ。

 

アイツ、"我が子"のために自分を捨てているんだぜ?自己中でワガママなヤツがだよ?

 

普通、そんなのプライドが邪魔して中々治らないと思うんだよね。

 

けどアイツはこれを何年やったのか知らんが、結構人の言う事は聞くし、俺をあたかも子供のように優しく接してくる。

 

衣玖も見ただろ?あの天子が、人とまともにふれあっているところ。お前でも多分こんな事はありえないと思っただろ?

 

俺は天子の事なぞ知らないからどうか知らないけど、それでいて、よく子供が変な思考回路にならないものだ。

 

その子供が誰かは知らないけど……俺が初めて天子を見たとき、アイツは俺を息子だと思い込んで普通に話しかけてきたから、多分『この世界の俺』だと思うんだ。

 

その俺とは一度だけ会ったことがあるが、まるでオネエだな、あの俺は。これも全部、天子の仕業か?それとも俺はここでは女の子なのか?

 

まぁいいや。

 

俺がどんな性別や性格していようと、俺は俺だ。それが自分だ。

 

そこの俺は天子をメインに助けを借りて育っているが、この俺は天子とは別の親の知識を貰って生きている。

 

だからなのかね、こう……天子に反抗的に対応していまうのは。いや、実の親もこんな感じだけど、俺かは天子を他人だと思ってない。最初こそ『勝手に住み着いて嫌味言ってくるムカつく女』だと思ってたが。

 

むしろ今は天子がいないとこの世界は面白くない。それに家も失ったんだ。娯楽もクソもないこの世界は殺風景で非常に退屈だ。

 

だから衣玖、お前がいれば、この状態がもっと盛り上がるんだぜ。なるべく早く帰ってこいよ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。