目が覚めるとなぜか病院にいた。
いつの間にかごく普通の私服から病服に着替えられており、頭に何か巻かれ、右手には点滴が打たれていて、左手には腕章と心拍数?を測る機械を人差し指に挟んでいる。
そして横を見ると、俺の母さんが座ったまま寝ていた。
なぜ自分が病院のベッドに寝転がっているのか、まったくわからなかった。
それに体に違和感とかがあって気持ち悪い。さっきまで俺は家で寝ていたような気がするのだが、その後に一体何があったのか、母さんが起きたら色々と問い詰めてやる。
「……??え!!?」
自然の明かりが薄暗くなり照明の光が段々と目立ち始める頃、目の前にいる母さんは俺が起きてる事にビックリしたのか、飛び起きた。
「つ、遂に目が覚めたんね!!母さん心配したんよ!?」
母さんは俺の両肩を掴んで揺らしながら言う。
「な……なんだよいきなり」
「いやー最初は死ぬんじゃないかと思ってたけど、助かってよかったわぁ……!」
そんな母を無視して、俺は話を進めることにした。俺の心配してくれたのは嬉しいが、今は聞きたいことが山々なんだ。
まず最初の違和感その1。
時計は5時45分頃を回っているが、外が既に薄暗くなっているのはなぜか。今の季節上この時間は、まだ真昼間のように明るいんだがな。
親に、今って何月の何日なん、と訪ねると、
「えっと……9月の24日かな」
「……9月??7月じゃなくて?」
「もう9月、あとちょっとすれば10月よ?2ヶ月も寝てたんよ、お前」
「……なんで俺、こうなってん」
こう聞くと、親は
「私が家に着いたら、アンタがテーブルの上で頭から血を流して倒れていたから、私がなんとかしたからアンタがここにいる」と言った。
原因不明の出血か。そんな、俺はオッサンでも何でもないのに、いくらなんでも早すぎないか、脳出血なんて。
そして俺は、母親から衝撃の事実を知ることとなる。
「アンタ、寝言酷かったよ?なんか、『てんし』だの『いく』だのって、名前を呼ぶように何度も言っててさ、相当夢の世界にいたみたいね」
天使?イク?なんだそれ?てか誰だ?そんな意味不明な単語を何度も発してた自分が怖いね。
当時はそう思っていた。だから天子とか衣玖達の存在などは、夢のように一瞬にして消え去ったのだ。
しかし、妙に引っかかる。天子、衣玖……どこかで聞いたような名前かもしれない。
姿はわからんが、その2人の名前を呼んだことは確かにあるような気がする。もちろん夢の中のようなところで。
実質2ヶ月も寝てた事に驚きだ。
俺からすれば、あの時に寝て起きるとあら不思議、私は2ヶ月後に飛ばされていました~って感じだ。本当に少しだけ眠るだけの予定なのが、59日も寝ていたとは。
でも、あの時寝て起きたら自分の部屋に似た部屋で起きた気がするのだが、記憶がゴチャゴチャしていて訳が分からなかった。
んでまぁ、あんな夢は無かったことに無理矢理忘れてみたものの、次々と俺の身に災難が降りかかることとなった。
翌10月中旬、俺は退院する。
学校には通えるようにはなったが、しばらくはクラスに入れてもらえない。そりゃ今のままクラスインしたら、当然勉強についていけるはずも無いわけよ。
だから先生共から色々と難題を押し付けられたりするから気が狂いそうだ。
そこで、災難が降りかかる。
まず、「なんで~~なんだ!!」など、色々なやつからキツい対応をさせられる。
それと同時に、来んでええのにというのうな目で俺を見てくる馬鹿どもや、一学期の頃から仲が良かったやつさえも俺の顔を忘れてるという、異世界のような教室に迷い込んだ。
災難その2。
家に帰っても隣人が終始喧嘩してて、まともにゆっくり出来んかった。この頃から俺は夜になると外出するようになった。
そして冬になると、コタツの電源が入らなかったり、給湯器の故障が相次ぐなど個人的な災難が多かったが、これはまだ序の口の方だ。
とうとう、俺の睡眠まで邪魔してきやがった。
夢は悪夢だけ見るようになり、母親は一時期キチガイになり、突き指が2、3回とかもあった。
だがこれは、永遠に続いたわけではなかった。
同年7月、俺が倒れてから1年が経つ頃にそれがピタっと無くなる。ついに疫病神が観念したのかと思い、内心ホッとした。
そんな7月もそろそろ終わり、あと4時間程で8月になろうとしていた7月31日の夜、俺は『10ヶ月』ぶりにヤツと出会ってしまった────────