そんな事は一度も口にしたことはないけれど、これからもいうつもりは無い。
お前は、俺らの家族だ。
もちろん、そんなことを言うつもりはない。
天子を見送ったあとに後ろを向くと、廊下の奥に2人ほど誰か立っていた。
天子と衣玖では無いが、どちらも派手な服装なのには変わりなし。1人はナイトキャップを、もう1人は獣耳にハメられそうな、札の貼られた帽子をかぶっている。
ナイトキャップのヤツは紫のドレス衣装を身に纏い、扇子で口元を隠しながらこちらを手招きしていた。
指示通りにふたりの近くに寄ると、突然ナイトキャップを被ったやつからこう言われた。
「おつかれさま」と。
何がお疲れ様なのかイマイチ不明だったので、適当に無視をすることにした。
「あら、見なかったことにするのかしら」
「つか誰なんですかキミらは!一体どこから入ってきたんですかっ!?」
「まぁまぁ、そんな事はどうでもいいじゃない」
どうでもよくないから聞いているというのに。
「大丈夫よ。ちゃんと貴方に用があってきたんだから、そんなに暴れないの」
「何ですか話って。てか誰なのホントに!」
「記憶が無いのね……。それも後で説明するから、ね?大人しくしてて頂戴」
「わっわかったよ!」
先に少しだけ教えちゃうが、俺とこの人は前にも会ったことがあるらしい。
天子と衣玖の他に、こんな奴とも会って話してたなんて……俺知らなかった。
そんなことはさておき、そのあと俺と女性……?2人はリビングにて話し合い的な展開が巻き起こっていた。
まず、このナイトキャップを被ってらっしゃるヤツの名前が確か八雲紫とかいう名前で、もう1人のものすげえ変なものを後ろに付けてるヤツの名前が八雲藍と言うんだそうだ。
ちなみにものすごいものとは、なんとこの人には不思議な事に、キツネの尻尾が生えており、それも九本くらい生えている。
2人は妖怪らしく、八雲紫は不明、八雲藍が九尾という大妖怪の部類にあたる。
ちなみにこれはどうでもいいことなのだが、2人は姉妹でもなんでもなく、実は八雲藍という名前は、この八雲紫というヤツが名付けた名前らしい。
まあ、これらの事はほとんどネットで調べたんだがな。とりあえず、あの尻尾のインパクトさはとてつもなく凄かった。
さて本題へと移ろう。
「幻想郷は、いかがでしたか?」
紫が俺に問う。しかし俺は──
「?げん、そうきょう?って何ですか?」
確かに俺は幻想郷にいた記憶はある。だが細かいことまでは覚えておらず、あの世界が幻想郷だという名前であることを、俺はすっかり忘れていたのである。
「でも、まぁ……楽しかったですよ」
でも幻想郷というのは多分天界の事を指しているんだろうと感じた俺は、なんとなくそう答えた。
「そう、それはよかったわ」
「?」
「うん?いや、なんでもないの。あははっ」
ヤツは俺がその反応を不思議に思ったのか、何故か誤魔化す。
これは推測?に過ぎないが、これを書いてる時に八雲紫という人物を調べてみたところ、ヤツが幻想郷を管理している賢者ということが判明した。よって紫はこの時、何らかの理由でその世界を管理しているという事を知られたくなかったのかもしれない。
「あの天人とうまくやれた?そうでもなかったりする?」
「案外……普通?なんか家族みたいな感じで接してきましたけど」
「なるほどね。さ、お戯れはここまでにしといて……」
ちなみにどうでもいいことなんだが、ちらっと紫の隣に黙って座っている人の方を見てみると、表情はぼけっとしてそうな無表情で紫の方をずっと覗いていた。何しに来てんのコイツ、と当時は思っていたが、これもまた調べてみると、なるほどね、と思えてくるような理由でここにいた。
「突然だけど、貴方は……」
またあの天人に会いたいと思う?
YES / NO
アンケートとかギャルゲーにありそうな選択肢が頭に浮かぶ。紫が俺の回答次第で何をしだすかわからない恐怖が襲いかかってくる。
そして悩みに悩んだ挙句俺の回答は遂に出た。
俺の答えは……
「NO」だ。
これで良かったんだ。もう悔いも何も無いし、これで面倒事に巻き込まれなくて済む、あんな異様な環境下で暮らさなくて済む。こんなメリットしか無い選択肢はNO以外ありえない。
俺はもういい。天子だの衣玖だのにまた会ったとしても話すことも何もないし、あいつらはあいつらで楽しんでいればそれでいい。
「……本当にそれでいいのね?」
「もちろんです。もうあいつらに出会いたくないです」
「……よくわかりました。藍、あれをやるわよ。準備して頂戴」
「かしこまりました」
……えっ?何をするつもりだ?
「準備が整いました」
藍の報告を聞いた紫は、
「祐介。今すぐ私の前に正座して目を瞑りなさい」と言った。
これから何かされるのか。そう思うとビビって動けなかった。何せ紫の威圧感が凄まじかったもので。
「何を怯えているのかしら?何も怖い事も痛い事もしないわよ」
「本当ですかそれ」
「本当よ。ほんの少しだけ説教するだけ」
「(怒られんのかよ……)わかった座りますよ」
ビクビクしながら、床に敷かれた座布団の上に正座して目を瞑った。
すると紫に、これから先私が目を開けてもいいと言うまで、何があっても絶対に目を開けるなと言われた。
俺は何も言わずに目を瞑ったまま、頭を上下に振って大人しく肯定した。
また、病院に自分はいた。
どうしてか、頭がものすごく痛い。
……それもそうか。なんたって自分は、昨日以前の記憶が全く無いのだ。
だから、今の俺の頭に天子の事を聞いても、天子って誰の事?という状態にある。しかし天子と衣玖以外の事は、はっきりと覚えている。あ、ちなみに東方キャラ自体会ったことすら覚えてない。
だから、あのような出来事があったというのは、退院後に知った。
なぜかというと、以前の俺がノートにビッシリとその様子を、日記形式とそれの補足、詳細を書き記してくれていたのだ。
退院後、偶然にも隠されていたそのノートを見た俺は、詳細まで書いてくれてるのだから、小説形式にして書き直そうという謎発想が浮かんだ。
記憶喪失のため、原文を若干アレンジした小説形式にしてノートに書き直してから2ヶ月ぐらい経った頃、ようやく全て書き終えた。
さて、これをどうするか。どうせなら、某掲示板サイトにこの事を書き込むか?いいやめんどくさい。
押し入れの奥に、誰にも見られないように閉まっておこう。
そう思った俺は、即座に自分の部屋の押し入れに、このノートを封印した。
それから10年後。ノートは誰の手に触れることなく、今の俺によって再び発掘された。
なお、原文版も同じ場所に閉まっておいたはずなのだが、どうしてか見つからなかった。
今思えば、こんな嘘みたいな出来事が過去にあったんだな、と冗談のつもりでこれを公開している。
もし前の記憶が残っていたのなら、もしくは、あの時の「またあの天人に会いたい?」という紫の問いに「会いたい」と答えたら、どうなっていただろうか。
さぁ、あの人の考える事はよく分からないからな。
まあもう、あの天人共に会うことは二度と無いんだ。どんな人だろうと、俺は天人だと気づかない。
もしこれから出会うとなったら?
そんな事は知らん。普通に他人行儀で接するぜ。
それから数ヶ月して、俺は天子にそっくりな奴と付き合う事になった。
やはり、あんな世界よりこの世界の方が幸せだよ。どんなに辛い事もあって、楽しい事もハプニングも、この世界にはある。一方あっちは、まわりに男はおらず、非常に退屈だ。
チート能力を持ってるのなら、あっちの方が存分に発散できるかもな。
それでも俺は、この世界がいい。
それと最近の事だが────────
とんでもない美女が、家に来るようになった。
夢だったかもしれない幻想入り おわり
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。これにて、本編完結でございます!!!!
いや、最近なんかごめんなさい。旅行計画や部活やらバイトで更新ペースが遅くなってしまったことをここにお詫び申し上げます。
次も、頑張って新規小説を投稿しようと思います。
と、その前にメインを片付けなければ(^^;
それでは、また次でお会いしましょう。
夢だったかもしれない幻想入り、完結です。ご愛読ありがとうございました。