満天青空の下、蝉がわんさか鳴いている。つい最近までいた、あの場所とは大違いだな。
そんな中、俺と霊夢は車に揺られながら獣道をえっちらおっちらとノロノロ走っていた。
流石ド田舎だぜ。舗装道はおろか、農道すらない。ただひたすら広い獣道が続くばかり。
しばらくすると、今度は田畑にありそうな、土の道の真ん中に草がある道に出た。ひでえ参拝道だ。誰も整備しようとしないってのが、かえって不思議だ。
「あとはここをまっすぐ進めば、里に着けるわよ」
霊夢の口数も少なくなった。そろそろ着くか?
☆ミ
「ああ疲れたぁ~~~・・・」
「全くよ、もう・・・」
神社を出て40分、ようやく里の入口に着いた。長くエラいドライブだった。自分で言うのもあれだが、運転初心者にしてはかなり上出来だろう。
「・・・で、ここで何するのよ」
「え?ちょっと様子見をしてみようかなって」
何せ建物があるのだ。きっと人がいるに違いないと思って、この場所をえらんだからな。
「あっそう?ついでに私もここに用があるから、降りていいかしら?」
「いいけど」
「・・・道覚えた?」
「そうだな、うん、1発で覚えた」
「凄っ!じゃああとは1人で帰れるわね?」
「そうだな」
「んじゃ、くれぐれも妖怪にはお気をつけて~」
霊夢はそう言うと、ドアを閉めてどこかに消え去った。続けて俺もドアを閉めて、適当にブラブラと里を巡回するとしよう。
☆彡
食品、雑貨、ファミレス(みたいなところ)、本屋・・・。それ以外を除けば、あとは屋敷ぐらいか。
案外なんでもある。村人も普通に遊んでたりしてたし、至って平和だった。あんな、西アジアとかでどっかの団体がやらかしてるような国とは違うな。という俺は日本国籍を持った日本育ちだから、そこについて詳しくない。
本屋か。
この世界の本って、どういう本が売られているんだろうと思い、興味本位で「鈴奈庵」という名の店に入った。
すると、
「あれ?また会ったわね」
霊夢がいた。
「霊夢さんのお知り合いですか?」
その隣に飴色の髪の色をした、やたら派手な服を着た女子が立っていた。
「いや?ついさっき会ったばかりよ」
「そうなんですか」
そうなんだよ。
「そうよ」
霊夢に構ってる暇はないので、ゆっくりと本棚を見渡す。
「そうだ、お客さま!何かお探しでしょうか」
目が合ったせいか、霊夢じゃない奴に話し掛けられた。その髪の色はコイツの地毛なのだろうか?
「特に探し物とかはないですけど」
「そうですか!それではごゆっくり」
と言って霊夢のところへ戻っていった。
殆ど資料関係なんだなぁ。それでいて小説が全くない。そもそもここは貸本屋だとか書かれてたから、誰かが借りていったのかもしれない。
このままぼーっとしてるのもアレだから、俺は鈴奈庵から外に出た。
村人を見て思う。この世界の時代設定は江戸時代か何かなのだろうか。こんな大きく「魔改造」と書かれたダサダサな黒Tシャツを着てる奴など、この世界で俺しかいなかっただろう。
これ以上する事も無かったので、俺は車のある場所に戻り、車に乗り込もうとした・・・その瞬間だった。
「やっと見つけた。あなたったら、こんなところにいたのね」
誰かの声が混ざったような声。声がした方を向くと、そこには誰かの顔を混ぜたような顔をした女性が立っていた。
あまり覚えていないのだが、コイツはおそらく、風見幽香というキャラと十六夜咲夜の顔がそれぞれの顔の部位に組み込まれてた感じがする。今思うと怖いよ。けど当時はなんとも思っていなかった。声は実際に俺が会った人が数十人合わさったような合唱声だった。
「誰ですか?」
「貴方ですよ」
「だから誰」
「私は、この世界でいうあなたです」
「・・・は?」
「知らなかったの?私と貴方って、実は考えも同じなのよ?」
(顔も貴方と少し似てるでしょう?)
この言葉に少しドキッと来た。恋心に目覚めたわけじゃない。けど何故かドキッとした。
当時はなんとも考えていなかったためか、コイツの顔を見てもなんとも思わなかった。というか似てない。
「そうか」
もう1人の自分が目の前にいるのに、なんで怖いとも気持ち悪いとも思わなかったのか、今でも不思議である。
「まぁ、これは本当の姿ではないのだけれどね。少しの間、他人の顔と体を借りてるの。だから手短に話すね」
「さらっと怖い事言うなよ」
「あなたがこの世界に行ったことで、あなたの世界の歴史が段々変わってきてるわ。そう、あなたが元々住んでたあの土地は、中途半端に畑になってるよ」
まぁ、マンションごと幻想入りしているもんな。
「知らねーよ。俺はこんなところに行こうとも思ってねえし、お前がなんかしたんだろどうせ」
「ご名答。ちょっと幻想郷で事故っちゃって」
「ふざけんな。さっさと俺を元の世界に戻しやがれ」
コイツがなんらかの事故をやらかしたせいで、俺が幻想郷というところに来てしまったらしい。
てっきり俺の前世がスーパーマンのような男だったから、復活させてまたこの世界で人生やり直さないか?という理由で幻想郷に来たのだと思ってたから、残念で迷惑極まりない。
「でもね?それだとあなたの住居が消えてる状態で戻ることになるよ?だから当然、学校にも入ってない事に・・・」
「は?嘘だろ・・・」
「本当よ?このまま帰ると、あなたの将来にも影響するのよ?」
「じゃ、じゃあどうすりゃいい?」
「異世界特有のお約束、あれをあなたにもやってもらおうかな!」
「う、うーん?」
異世界特有のとか言われても、そんな地味な趣味を持っているわけではないのだから、この時の俺にはわかるまい。
「カギを見つけて、無事にそれ
「・・・勝負か?」
「そうよ?自分同士の戦い」
「あ、ふーん・・・」
もうどうでもよくなったので、適当に流してコイツと別れた。ようは鍵さえ見つけりゃいいんだろ。
こうして俺は再度車に乗り込み、数分ぼーっとした。
さて、祐介はいつまでホームレス生活が続くのか・・・