平成のワトソンによる受難の記録   作:rikka

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111:仕事、取引、捜査。ついでに紛失

 

「うん、うん。とりあえず元気そうでよかったよ透君。……うん、わかった。こっちの事は任せて。うん、それじゃあ」

 

 いつもと違い、透君がこまめに連絡をしてくる。

 それは嬉しい事であるハズなのに、却って不安を煽ってくる。

 本当にしょうがない男だ。

 

 電話を切ると同時に、隣に控えていたふなちが、専用のパソコンを操作しながら深いため息を吐く。

 

「で、どうだった?」

「わざわざ浅見様が秘匿回線を使うので念のためにチェックしていたらまぁ~~~~出てきますわ出てきますわ。色んな所が通信を聞こうとあの手この手で暗号を解こうとしていましたわ」

「……浅見君の所は当然だけど、こっちもセキュリティを強くしないとダメか」

 

 いつのまにか入ってたノアズアークっていうセキュリティのおかげで実質的な被害は今のところ出ていないが、なにかの隙に顧客情報の類が漏れでもしたらとんでもないことになる。

 

「次郎吉さんが提案してくれた強化案、乗るべきかな?」

「えぇと……確かキッド様対策で考えていたものですよね? 情報漏洩対策とかで鈴木財閥の総力を挙げてアレコレ考えたとかいう……」

 

 あの事務所の行動をサポートするために、独自の人工衛星を打ち上げるという話もあったし、鈴木財閥は本格的に僕たち――いや、透君と関わるつもりらしい。

 

「会長の史郎様はともかく、朋子様は透様の事務所の根っこを掴むことで透様を鈴木の中に引き込もうとしていますわね」

「うん。……なんとかして透君を園子ちゃんの婿にって企んでるみたいだね」

「そこまでなんですの!?」

「そこまでなんだよなぁ……」

 

 元々蘭ちゃんと一緒によくここに遊びにくる子だし、朋子さんはイケると踏んだんだろう。

 あの子の目当ては安室さんなんだけどなぁ……。

 

 ……いや、そうか。朋子さんにとっては鈴木家の娘である園子ちゃんが、浅見探偵事務所とは入り浸るくらい仲が良いという事実さえあればいいんだ。 

 

 この間、鈴木財閥の中の人が雑誌に妙なスキャンダル風のリークをしようとしてたんだけど……。

 あれ内部のお調子者とかじゃなくて、わざとだったのかもしれないなぁ。

 

 恩返しのつもりでこっちから手をまわしておいたんだけど、実は自分達にとって命拾いだったのかもしれないなぁ。

 

「ちなみに七槻様、その情報はどちらから?」

「ん? ノアズアークが鈴木の内部情報引っ張ってきてくれたんだ。こっちの内部情報拾おうとした時に自動で反撃してくれたのかな」

「……ノアズアーク様、便利ですわね」

「便利すぎな気もするけど……まぁ、不利な要素は分かる範囲では一切ないし。もちろん、それでも警戒は必要だけどね」

 

 念のためにプログラマーの金山さんに全部チェックしてもらったけど、覗き屋のカットとカウンターしかしていないっていう事だし……多分大丈夫だろう。

 

「問題はネットを通してじゃなく、直接盗もうとしてくる連中かぁ」

「透様が事務所の人員をスカウトに絞ったのは正解でしたわね……こちらでは、ちょっとパートタイムを募集したら、フリーランスのライター様が紛れ込もうとしていましたし……」

「家の近くをうろつく人間も増えたしねぇ……警察の人たちが素早く動いてくれるから、こっちはそこまで気にならないけど」

 

 阿笠博士も色々と考えてくれている。

 哀ちゃんの件があってから、ひどく責任を感じているようだ。

 博士は何も悪くないんだけどなぁ。

 本物の銃を突き付けられたら、普通誰だって逆らえない。

 

 銃で撃たれたらヒャッハーってテンション上がってレッツパーティとはしゃぎだす透君は頭が悪いんだ。

 

「そうだ、幸さんから言われていた警備部の人員はどう?」

 

 透君が燃え盛る炎から身を挺して助けた人。今は透君の秘書として彼を助けてくれている人。

 彼女とは透君の事務所に関して色々と話し合うことが多く、歳こそ少し離れているけど良好な関係を築けていると思う。

 最近は以前よりも少し笑ってくれるようになった。

 

「ヴェスパニア王国の要人警護でしたね。以前から透様からの要請で、特に訓練を強化しておくように言われていましたので……。ただ、訓練途中というのもありますので、使える人員がどうしても限られますわねぇ。あ、七槻様、こちらが警備部から上がった警護に使える人員のリストですわ」

「ありがとうふなちさん。えぇと、どれどれ……」

 

 この間もそうだったけど、退役したばかりの警察官や自衛官がほとんどか。やけにそこらの採用希望者多いな。

 あ、この間透君が新設用意に関わってた情報保全隊の関係者だった人もいる。この人は使おう、透君も信用してた人だ。

 

 過去の経歴も……犯罪歴は特になし。宗教を始めとする思想面でも特筆する事項はなし、と。

 地域振興課の人たち使って近所の噂なんかも合わせてチェックしておけば問題ないかな。

 

「うん、このリストの人達でチームを編成させるように指示しておいて」

「かしこまりました」

 

 これでこっちはよし。

 あと決裁が必要なのは……透君から渡されてたリストに書かれている人物のヘッドハンティング計画に調査部の増員、治安解析課との会議もあるし地域振興課から出てた住宅街でのパトロール支援に防犯対策の配布物やら講演やら児童帰宅時の防犯対策強化策に関するレポートの山に目を通して……っ! 次郎吉相談役から言われていた、私立の大学設立の運営スタッフに教授陣の選定なんてのもあったなぁっ! もう!! ToDoリストが減らすのと同じ勢いで増えていくのはなんでなのかなぁ!

 

「今の状況だと、忙しいのは悪くないんだろうけど……それでも腹立たしいよねこうも山積みだと!!!」

「……そうですわね」

 

 さて、仕事だ。

 透君や事務所の人間が必要なものを、必要だと思った瞬間に手配できる組織。

 それが多分、この会社に求められている物なんだろう。

 

 そんな忙しい時に、また電話が鳴りだす。

 秘書のような仕事をさせてしまっているふなちが電話を取り、応対していると眉を顰め、こっちをチラチラ見だす。

 

 指でふなちのデスクの電話を指さして、今度は自分の電話機を指さす。

 ふなちが頷いて、自分の電話機に回してきたのを見て外線を押して取る。

 

「はい、社長の越水です」

『あぁ、越水社長。すいません、金山です』

 

 金山さん? 珍しいな。彼は基本的に浅見探偵事務所で、例のコクーンとかいうシミュレーターのメンテナンスとアップデート、それに訓練や現場のシミュレートデータの作成を主としているから、そっちでよほどのトラブルがない限りは向こうから掛けてくることはないと思うんだけど。

 

「えぇ、金山さん。先日のセキュリティチェックはありがとうございました。今日はどういったご用件で?」

『先日の誘拐事件の一件で導入した、DNA探査プログラムは覚えていますか?』

「? はい。確かシンドラー・カンパニーから購入したんですよね? 阿笠博士と小沼博士がすごい騒いでいたから覚えているんですけど」

『それが……どうも妙な話になっていまして』

「???」

 

 

『シンドラー・カンパニーは、そんなソフトは自社で取り扱っていないって言ってるんです』

 

 

「……どういうこと?」

『分かりません。例のパティシエ……えーと、香坂夏美さんの件で使用して実証したので、それに関してのお礼をとこちらから一応電話をしたのですが、そしたら』

「そんなものはない……って言われたんだね?」

『はい。自分も阿笠博士たちと一緒に、かなりの数のメールのやり取りをしていたり電話をしていたので間違いないと思っていたんですが……なぜか』

「お金の流れは? 支払いは確かに完了しているんだよね?」

『今ちょうどそっちを調べてまして……それくらいなら調査員じゃない自分でも出来るので。それで支払先をこちらで確かめたところ、なぜかまったく別の所にたどり着いていました』

「どこだったの?」

『それが……どうも樫村(かしむら)さんの所みたいなんですよね』

「樫村さんって……誰だっけ……」

 

 聞き覚えがある名前だけどパッと出てこない。

 すると横からふなちがひょっこり顔を出して、

 

「樫村? ひょっとして、樫村(かしむら)忠彬(ただあき)様でしょうか?」

「え、ふなち覚えてるの?」

「ええ、ちょうどその時打ち合わせで向こうに行ってたので……樫村様は、コクーンの開発主任を務めていらっしゃるお方ですわ」

 

 あ、そうか! こっちの会社運営で忙しかったからハッキリと見てはいなかったけど、向こうの事務所へのコクーンとその周辺機材搬入の時に来てくれた人じゃないか! 名刺もらってたの忘れてた!

 

『さすがだ、ふなち。そう、その樫村さんなんですが、問い合わせたら向こうも突然大金が入金されていて、こっちに連絡しようとしていた所だったと……どういう事なんでしょうか?』

「……誰かが偽装していた? でも、偽装した手段が分からないし目的も分からない。DNA探査プログラム自体は本物だったんだよね?」

『えぇ、阿笠博士も念のために都の博物館や大学の研究室からサンプルをお借りして、念入りにチェックテストをしていたのでそれは間違いないと思います。先ほど阿笠博士にはこのことを連絡したので、これからさらに再チェックとなりますが』

「うん、それでいいと思う。阿笠博士なら信頼できるし安心だ」

 

(……にしても分からないな。資金の行先が変わっていたのも問題だけど、分かりやすい詐欺っていう話でもないようだし……。透君にDNA探査プログラムを渡して、なにをしたかった……というか、させたかった? まさか枡山元会長? ……いや、話に聞く枡山憲三なら、今頃透君のところにピスコの瓶が送り付けられているハズだし、それなら配送品のチェックをする下笠さん達が騒いでいるハズ……)

 

「わかりました。こちらで調べておきます。……ちなみに、どちらかからアクションは?」

『ありました。シンドラー・カンパニーの方は最初は電話担当の受付で切られていたんですが、後でシンドラー社長本人から電話が入りまして……』

 

(トマス・シンドラー……IT産業界の帝王が直々に電話を?)

 

『詳しく事情を聴きたいので、次の来日予定時……ウチのとは違う、完全にゲーム機器としてリモデルしたコクーンの発表会ですね。その時に、できれば現物を持ってきてほしいとのことでした』

「……OKって言っちゃった?」

『いえ、自分はあくまで出向ですので。浅見所長の指示を聞いてからお返ししますと……』

 

 よかった、よくわからない状況で相手のいう事をホイホイ聞いてたら、どこかで取り返しのつかないことになる可能性がある。

 これに関してはじっくりと進めていかないと。

 

「うん、それでいいと思います。そっちは透君達が帰ってきてからかな。で、樫村さんの方は?」

『似たような感じですね。やはり、コクーンの発表会の時にお会いしたいと』

 

 コクーン発表会はまだまだ先だ。

 うん、それなら透君も帰ってきてるだろうし、ヴェスパニア王国のパーティもとっくに終わってる。

 

「分かりました。それじゃあ、阿笠博士との再チェック、よろしくお願いしますね?」

『えぇ、まぁ専門外ではあるんですが……微力を尽くさせていただきます』

 

 これでよし。

 例によって例のごとく今日一日だけでTodoリストが馬鹿みたいに増えたけど。

 終わりが見えなくてちょっと吐きそうだけど。

 くそぅ、透君がいたらもうちょっと楽に片付くのになぁ。

 

「帰ってきたらどうしてやろうかなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、また監禁なさるので?」

「いくらなんでも人聞き悪くないかなぁふなちさん?!」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「江戸小僧……か。そういえば中森の旦那が前に事務所に飲みに来た時に愚痴ってたなぁ。日本全国荒らしまわってる広域指定の強盗……だっけか」

 

 ボウヤからの電話を受けて例の舞台に着けば、すでに佐藤と目暮の旦那を始めとする警視庁捜査陣が到着していた。

 殺害されたのは近石鉄夫、35歳。例の役者転校生の劇団お付きの劇作家――つまりは脚本家だ。

 

「うん。時代劇の泥棒みたいに屋根をぴょんぴょん飛び回ったり逃げたりしてた所から、警察が仮に付けてた『江戸小僧』って名前がマスコミに漏れてそのまま定着したんだ」

「時代劇の泥棒……軽業師みたいな奴……なるほどねぇ」

 

 容疑者は当然、同じ一座の面々だ。

 特に怪しい……というか、妙に挙動不審な高校生座長なんか、ガタガタ震えちまっている。

 

「で、坊や。ここの一座が揉めてた原因っていう脚本が無くなっているのは間違いないんだね?」

「ああ、近石さんはフロッピーに入ってるって言ってたんだけど、それがどこにも見当たらないんだ」

「アンタの事だから、そいつをもう皆の前でわざとらしく指摘したんだろ? 不審な動きをした奴は?」

「わざとらしくって……まぁ、いたよ。座長の玉之助さん。ただ、現場を見た時に何かを慌てて探していた様子だったから……」

「フロッピーを盗んだのは少なくともあの子じゃないと思われる。けど、重要視していた……ってとこかい」

「ああ」

 

 毎度毎度、よくもまぁこんなややこしい事件を引っ張ってくるもんだ。

 そんでもって、この坊やはここ最近の落ち込みがウソのように平然としている。

 舞い上がっているとか楽しんでいるとかそういう不謹慎なモノは感じないが……。

 

(もうちょっとこう……子供らしく出来ないものかねぇ)

 

 手間がかからないのは別にいいが、ここまで子供らしくないと心配になってしまう。

 普段子供らしく毛利の旦那や嬢ちゃんに甘えたりしているが、アレが全部演技なのだとしたら、それはこの坊やにとって、周りの世界が窮屈という事ではないのだろうか。

 

 別に泣きわめけとまでは言わないが……。

 怖い物を素直に怖いと言い、逃げたいなら素直に逃げるくらいのそれらしさは見せてほしいと思うんだけど……。

 

 

(まいったね、坊やに深入りしすぎかぁ? いや、まぁ、この坊やを戦力として利用している悪党のアタシにそもそも言えた事じゃあない、か)

 

「OK。とりあえず一度整理しようじゃないか坊や」

 

 まぁ、なにはともあれだ。少しでも元気を取り戻したんならそれはそれでヨシとしよう。

 

「アンタらが舞台稽古を見終わった後、アンタらは座長が被害者の近石って野郎から暴力を振るわれているのを目撃した。理由は?」

「台本のオチの部分が勝手に変更されていたんだって。で、それを書き直すように言った座長に対して……」

「二人とも台本を重要視していたってことかい。まぁ、一座の座長と脚本家なら当然っちゃ当然だけど。……で、その台本の題材ってのが、例の江戸小僧」

「うん。玉之助さんが江戸小僧で新作を作るって言いだしたって、被害者の近石さんは言ってた」

「座長の子はオチを変えた事に文句を言っていた。ってことは……話の大体は座長が考えていたって事かい?」

「……多分。少なくとも、近石さんと打ち合わせはしていたみたいだけど……」

「ふぅん……」

 

 わざわざ実在する強盗を題材にして脚本を作った。しかも細かくオチまで決めて……。

 それを決めた座長はあの通り震えるくらいだから芯がそこまで強いわけじゃなく、一方で殺された脚本家は、仮にも座長に暴力を振るったくらいだからそういう……『力』を行使することを躊躇わない奴か。

 

(なるほどねぇ、なんとなくは分かった。けど……)

 

 なんとなくこうじゃないかという推理とも言えない想像はあるが、それはあくまで動機のみであって犯人が誰かまではまだピースが足りていない。

 

「んで、それからしばらく舞台を回ったり劇を見たりしたんだね」

「うん、それでその後米花駅前でチラシ配りをしてたんだけど……気になって俺は戻っちゃって」

「で、それに気付いたガキンチョ連中と真純,瑛祐が付いて行って、一緒に戻った」

「……夕方くらいだったね。それで通し稽古を見学して……あれ? そういえば世良――の姉ちゃんと本堂さんは?」

「今じゃあの二人、ウチのバイトとはいえ一応調査員というかスタッフだからね。二人で組ませて情報収集に出してるのさ。で、通し稽古が終わってちょっとしたあたりで、アンタにお熱の座長の妹さんが?」

「うん。めぐみちゃんが近石さんの遺体を発見した」

「で、今に至る、と。死後一時間程度……か」

「うん。皆立ち稽古で舞台にいた。俺たちは客席にいたから全員の動きが分かる。出番じゃない人達も皆袖にいたし……」

「それでも完全にじゃないだろう? どんな時だい?」

「えっと……衣装替えの時と、あとは……奈落を使った時、かな」

 

 奈落って確か……舞台中央にある、あの穴だっけか。下からせり上がってくる。

 

「ちなみに、奈落が上まで上がってくる時間は?」

「1分40秒。それこそ、江戸小僧の役を演じていた村木さんが、ストップウォッチで測りながら上がってきていたから覚えてる」

「なるほどねぇ」

 

 ん~~。少なくともアタシにはまだピースが足りていない。

 真純達も呼び寄せて、集めた情報を擦り合わせるか。

 

 見る所はちゃんと見ている二人と坊やが情報を擦り合わせれば、多少は今見えていないモノも見えてくるだろう。

 

 

(あぁ、クソ。本当に安室さんか沖矢がいればねぇ……っ!)

 

 さっき日売テレビの玲奈から、マスコミがもう嗅ぎつけてこっちに向かっているという連絡があった。

 相手は広域指定の強盗。場合によっては組織立っている可能性もあるからもうちょっと時間を稼いでほしかったけど、一アナウンサーに求めるのは酷だったか。

 

 テレビ受けのする安室さんか双子姉妹。あるいは、こういう時にうまく立ち回れる恩田がいればもう少し焦りも少なくて済むのだが、そうなっていないから現状がある。

 

(くっそ……ここでキャメルを呼んだら意味がないし……キッツいねぇ)

 

 やっぱり真純を本格的にこちらに参加させるべきなんだろう。

 

 いつぞや毛利蘭が記憶を失った事件の頃はこちら側の何かを探っている気配があったが、最近じゃあエラく真純はボスに懐いている。

 仕事が関係ない時は透兄(とおにい)とか呼んでるくらいだ。

 少なくとも、早々あからさまに裏切ることはないだろう。

 

 多少そういう気配が見えた時に、自分が牽制してやればいい。

 

(さて、調査を進めていけば……まぁ、このメンツなら追い詰めることはできるんだろうけど)

 

 状況から考えて、もう一波乱あってもおかしくないか。

 座長さんがどうして江戸小僧を題材に劇を作ろうとしたのか、殺された脚本家がなんでオチを勝手に変えたのか。

 そこらへんは大体わかった。

 問題はその事実と『その先』を他の人間が知って、さらに脚本家のように利用しようとした時だ。

 もしそうなったら、さらに犠牲者が出かねない。

 

(一課の連中に声かけて数の不足を補ってみるかぁ? ボスの一件もあって捜査一課の連中、なにかあればすぐに呼べって息巻いてたしなぁ)

 

 なにはともあれ、真純たちと合流してからか。

 アタシはどこまで行っても看護師。

 推理は本職に任せるとするさね。

 

 

 

 




・次元、一足先にヴェスパニア公国に向かう
・浅見、メアリーと共に情報収集。港湾部や空港の監視カメラをチェックしてそれらしい車を確認。 
 向かった先の特定に全力を注いでいる。
・ルパン、アジトにて五右衛門と合流。










「お~う、遅かったな五右衛門……あれ? 五右衛門?」
「…………」
「どったのその様子? ……あんれまぁ、斬鉄剣はどったの?」





「……失くしてしまった」





「…………………なんて?」





「頼むルパン! 後生である!」
「うわっととと! ちょ、放せって五右衛門!」
「なにとぞ! なにとぞ斬鉄剣の捜索に助力を願いたい! あ奴がこの地に持ち運んだことは間違いないのだ! 頼む! なにとぞ! なにとぞぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「だああああああああああ!! わーかった!! わーかったから放せぇいっ!!!!!!!」


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