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妙な宗教団体が本拠地として使っていた施設。
まるで城のようなそこに、なぜか香坂夏美が移送された。
侵入して真相を確かめようにも、なぜか城に立てこもっているマフィア一味とそれを取り返そうとする信者の抗争が激化していてうかつに近づけなかった。
軍警察に連絡を付けようにも、地元の数少ない電話は破壊されていた。
加えてなぜかそこに、いわゆる大手営利企業の人間が関係していることまで掴んだ時に、透からとんでもない内容の機密通信が飛んできた。
「ロシアの東西分断!? しかも核の発射用意が進んでいる!? 間違いないのか!?」
『俺も信じたくないけどマジなんですわぁ、安室さん』
情報の重大さとまるで正反対な、能天気ともいえる声で透が答える。
周りでこの通信を聞いている面々は、沖矢さんですら顔を引き攣らせているというのに……っ!
「核の狙いは!?」
『ちょっと待って、今連れが調べていて……あっちゃあ』
「どこだ!?」
『わかりました。狙われてるの、日本です』
「なんだと!?」
『場所は北海道の一部と東北の主要都市……うげぇ、今年七槻達と行く予定のスキー場んトコまで含まれてやがる』
首都圏ではない……?
そうか、ロシアにとって近くて目障りな地域を核で使えなくするつもりか! 馬鹿共が!
『まがりなりにもロシアほどの大国を東西に分断するためには大戦が必要ってことでしょう。多分』
だからどうしてお前はそう呑気なんだ!
「しかしそれじゃあ……いや、そうか。ロシアの先制攻撃による大戦勃発……同時にロシアの沿岸部を含んでいる東部がそれに反発した形で蜂起、太平洋側の西側勢力の橋頭保になる。そういう……?」
『ついでに今も先もやっかいな競争相手の日本の力も削いでおきたいってとこですかね? 攻撃した罪を全部モスクワの人間と軍に押し付けて最終的に勝利すれば、分断した後のアレコレが終わった後に親,反露感情で複雑な事になっているEUや東欧諸国に対しての緩衝地域になる』
素人考えですけどね。と透は言うが、そもそも状況が異常すぎる。十分に考えられることだ。
「どこまでも……っ」
『日本を撃てば確実に米軍は動く。……ひょっとしたらすでにアメリカとも話もついてるか……あるいはアメリカもガッツリ関わっているかもしれませんね。在日米軍に動きがあったのを今確認しましたし……あぁ、そうか、違う。蜂起じゃなくて、占領してもらう気かも』
「……無理やりにでも資本主義を根付かせるために?」
『失敗しても恨まれるのはアメリカだし、ドルを始めとするかなりの外資が地域に流れ込む。どう転がっても統治はやりやすくなる』
黒幕が誰だか知らないが、ずいぶんと巧妙に動いてくれる。
どう転んでも表向きは被害者、あるいは義憤に立ち上がったヒーローになるつもりか。
……いや、
「しかしミサイル攻撃ならば跡が付く。となれば発射基地への調査から黒幕に足が付くぞ。後々他国が調査に関われば不味いハズだ! 仮にアメリカが後ろについていたとしても、全てを握りつぶすのは無理だ!」
『連れの話によると、それをどうにかしちゃうやっかいなモノを枡山さんが持ち込んじゃったみたいです』
「あのクソ野郎!」
ピスコ! また貴様か!!
「老人が! くそっ、どうなっているんだ!」
『ホントどうなってるんだ……なにかがこっちに混ざって流れがバグってるのか? キッドみたいな泥棒案件よりも殺人事件を恋しく思う日が来るとか……本当にメインストリームはこっちなのか疑わしくなってくるとか俺にどうしろと――』
「なんの話をしている?!」
『……世界の話かなぁ』
いつも時折意味の分からないことを言いだしたり指示を出して、その実いつだって物事の核心を突くのが浅見透という男だと知っている。散々思い知らされている。
だが、同時にいつも思うがもっと分かりやすく話せ!!
瀬戸さんが吐きそうな顔をしているし、あのキュラソーですら頭を抱えているだろうが!
『まぁ、安室さん達は予定通りそっちお願いします。そっちもかなり混沌としてるんでしょう? 情報を聞いて、こっちで仲良くなった警官隊にフル装備でそっちに向かうように手回ししたんで、突入に乗じて――』
「いいから! 今すぐそっちに戦力を回す!」
アメリカのマフィアとなぜか武装している宗教団体といえどプロではない。
むしろ正規軍を相手に殴りこむ可能性が出てきたそちらの方が!
もうこうなったら山猫のメンツを全部そっちに回してでも――
『いや、時間ありません。というかもうこっちは動いているんで。安室さんも気を付けて。焦りは最大のトラップですよー』
「お前がそれを言うな! ……動いて? 待て、ノイズと思っていたがすごい数の銃声が聞こえるぞ! 透、お前今なにをしている!!」
『ちょっと世界救ってまーす』
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「坊や、真純。王女様見つけたってのはマジかい?」
サクラサクホテルのレセプションパーティで起こった王女毒殺未遂事件。
ホテルスタッフのソムリエと入れ替わったチンピラが、ワインに毒を――本人は下剤と聞かされていたようだが――混入させて飲ませようとしたのだが、事前に煙草を吸っちまったために、鼻の利く坊やや瑛祐にあっさりバレて、慌てて逃げ出そうとしたところで真純の蹴りを食らってその場で確保された。
とまぁ、そこまではよかったのだが……。
怖くなったのか、あるいは嫌気がさしたのか、その王女様が火災警報器を利用してドレス姿のまま逃走しちまった。
キースって伯爵様は頑なに捜索は必要ないとしか言いやがらないし。
パーティの警護も終わったし帰るって形で自分もキャメルもリシも街を探し回っていた。
『うん! だけどどういうわけか、ウチ……あぁその』
『どういうわけか、ボクの学校の制服を着てたんだ! いったいどこでアレ手に入れたんだ!?』
「帝丹高の制服って……そりゃあ、毛利の嬢ちゃんと見た目変わんなかっただろう」
『後ろ姿なんて完全に蘭君だったよ。普通に声かけちゃった』
「真純、お前さんいつもカメラ持ち歩いてるだろ? 記念に一枚くらい撮っといたか?」
『そんな余裕があるわけないだろ!?』
ち、やっぱダメか。是非とも毛利の嬢ちゃんに見せつけて「お姫様」呼びしてからかい倒したかったのだが。
「まぁいいさ。場所を教えな。車で探してるキャメル達を向かわせるさね。ついでに交通部の婦警も動かす。女捕まえるには絶対に女一人つけておかないと面倒くさい事になるからね。アンタじゃ男に間違われるかもしれないし」
『悪かったねぇ!』
事務所員用の防弾防刃のスーツは、お洒落というか皆同じ服にならないように色やデザインのバリエーションはあるけど、そういえば女性用のスカートはなかったな。
まぁ、動きやすさっていう点だと、格闘する時もあるから悪くないんだけどさ。守る面積も多いし、防御力も上なんだが。
(……今度、真純を連れて街に出るか。クリスは記憶失くしててもセンスはあるし、ちょうどいい。鈴木の嬢ちゃんは……嬢ちゃんはどうするかねぇ)
とにかく今は王女様だ。この時間に制服でいるなら、補導員に手を回して監視網を広げるか。
王女が外に出ている以上、多少こちらが派手に動いても構わないだろう。
『初穂さん! キャメルです!』
そんなときに、うちの名ドライバーから通信が入る。
「あぁ、キャメルかい。ちょうどよかった、真純たちから連絡が――」
『王女を発見しました! 何者かが運転するバイクの後ろに乗って逃走中!』
「…………はぁ?」
一瞬の間に、まぁたワケのわからないことになってるね。
「アンタから見て手練れかい?」
『かなりの! 機体のチョイスにカスタム、テクニックにルート取りもプロのそれで! いえそれより!』
「それより?」
『そのバイクに目掛けて、この街中で銃火器を発砲している連中がいます!』
発砲。
銃火器。
銃火器を発砲。
……発砲?
この街中で?
「……誰か今すぐうちのボスをここに連れてきてくれ」
『いない人間を数にいれても仕方がなかったのでは!?』
「わーかってるよ! キャメル! 今乗ってる車は爺さんたちの手が入ったヤツかい?」
『はい、完全仕様です!』
「んじゃ、盾になってやんな」
『あっさり言いますね。いえ、まぁ今そうしているのですが』
「あぁ、道理で雨も降ってないのに雨音がすると思った」
『問題はそれをやっていると王女を見失いそうになるということなんですが!!』
そりゃあそうだろうねぇ。
前だけ注意してやっとの状況で後ろも注意してどっちも完璧にこなせなんて無茶もいい所だ。
いつもなら一台の車には最低二人は乗せるのに、今回は人手不足の面から別々に分けている。
「銃撃されているって事実を目暮の旦那に挙げて警察を動かす。とにかく後ろの連中を前に行かせなさんな。王女様が撃たれでもしたらそれこそアウトだ」
『バイクの運転手は?』
「バイクなんていう装甲もクソもない所にバカスカ撃ってきてるんだ。少なくともお仲間ってわけじゃないだろ。逃がすわけにはいかないのは同じだけど、危険度の高いのはどう見ても追手の方さね。出来るだけ無力化しな。王女様の方にはちょうどもう一組が追いつきそうだしねぇ」
もう一つの携帯で、目暮の旦那の番号を探りながら対処を考える。
「――真純、話は聞いてたね?」
『あぁ、コナン君も例のスケボーで追跡している!』
「もう動いちまったのかい坊やっ。いいかい真純、適当に追うだけでいい。銃撃の話を聞いたらいくら上からの圧力があったって非常線を敷かなきゃいけないハズさ。その時までに王女の大体の位置を捕捉できてりゃそれでいい。追い詰めすぎるんじゃないよ? 言ってる意味わかるね!?」
『分かってるさ鳥羽さん! それじゃあまたあとで!』
…………。
(ホントにわかってんのかねぇ)
主力陣に一歩及ばない所があるとすれば、危機回避力というか引き際を見誤りそうな印象が拭えない所かねぇ。
リシを付けておくか……いや、
「もしもしリシ? 急いで今キャメルがいるところに行って、その後の追跡してくれ。GPSで分かるだろ? 途中でキャメルが無力化させた奴がいるなら、片っ端から拘束を頼む」
『ミラ王女を追っている世良さん達ではなくてですか?』
「逃げてる奴はプロだ。だったらその行動には一定の信頼がある。怖いのは危ないおもちゃ振り回している素人が、捕まるの怖さに馬鹿やることだ」
『……っ。わかりました、すぐに向かいます!』
とりあえずはこれで良し。後はいかに早く数で当たる警察組織を動かせるか、か。
(あぁ、ボス。つくづく思い知ったけど、ボスや恩田のありがた~い手回しってのは……簡単に真似できるもんじゃないねぇ)
「あー、もしもし目暮の旦那? 王女様を見つけたよ。だけどややこしい事になっていて――」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「銃撃戦!? 間違いないのかね初穂君!」
『あぁ、今キャメルがガードしている。王女の方はなんとか逃げ場の少ない米花ブリッジの方に追い込むつもりだけど、今のままじゃあ保護できるかどうか微妙なラインだ。とにかく、下手に怪我人出させないためにキャメルに物騒な連中を無力化させてる』
鳥羽君から連絡をもらってすぐさまヴェスパニア側にミラ王女の捜索を進言したのだが、なぜか肝心のヴェスパニア側が捜索を渋っていた。
ヴェスパニアのSPが王女を取り逃がしたので、すかさず非常線を張るよう指示を出していたが……遅かったか!
『キャメルの話だと、どうも撃ってる方は素人みたいでね。撃ち方も追いかけ方もてんでなっちゃいない。武器にろくに触ったことない奴らだってんなら、むしろプロよりも面倒なことを起こしかねない。急いで拘束してほしい』
「わかった。すぐにそちらに人を送る!」
「目暮警部!」
「おぉ、白鳥君。大至急―」
「このホテルの正面入り口にて、ミラ王女を発見しました!」
「…………はい?」
『……旦那。白鳥の坊ちゃん、今なんて?』
そこには、綺麗なドレスに身を飾った少女がいた。
「そんな、ダメだってば新一。突然そんなことを言われたって……」
少女はほほを赤く染めて、身をよじらせていた。
「えぇ、だって……そんなこと急に決めちゃ……嫌じゃないけど――」
ヴェスパニア王国王女、ミラと同じ格好をして同じ顔をした少女が、
「でも、困っちゃう。もう♪」
一人で勝手に舞い上がっていた。
「高木君」
「はい」
「王女は……なにをしとるんだ?」
「……さぁ」
「警部殿、こりゃあ……ガラスに映った自分に見とれてますな」
ガラス一枚を挟んだ父親の目の前で、醜態をさらしている一人娘の姿があった。
「……このガラス、見えるのはこっちからだけで向こうからだと自分が写るだけですからね」
『……そういや、帝丹高校の制服を着ていたとか真純が言ってたっけなぁ』
〇ジョドー、残ったカゲを率いて宗教団体の本拠地に潜入。目的の物の確保に動く
〇安室透、総力を挙げて宗教施設に潜入。軟禁状態になった香坂夏美を発見、確保
〇浅見透、何者かの私兵集団に襲われヒャッハーとテンションが上がり、皆と一緒にレッツパーティ